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スケルツォ倶楽部”発起人/作 オリジナル・ストーリー
「サンタクロース物語 ~ It’s A Small World ~  」
この物語は、2010年11月30日から同年12月25日に投稿しました、
“スケルツォ倶楽部”発起人.作 の オリジナル連載小説に 手を加えたものです。

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古代クリスマスの典礼音楽(Archiv) 聖地のクリスマス音楽(Archiv‐Legend )
(5)ニコラウス、駆ける 

 さて翌日の朝、ニコラウスは 仕上げた木製のおもちゃを ひとつずつ大きな袋につめ込みながら、博士たちのもとへ出かける準備をしていましたが、ふと 入口のドアの足元を見下ろすと、その隙間に いつのまにか 一通の手紙が 外から差し込まれていることに気づきました。
「おや? 」
その差出人は、東方の三博士でした。どれどれ - と ニコラウスが支度の手を休めながら 掌ほどの羊皮紙を広げた瞬間、文面に「大至急 出発 」、「独りで目的地へ 」などと書かれた文字が目に飛び込んできました。
「なに? 」
彼は 思わず直立不動の姿勢のまま 手紙を読み始めます。

「   前略 ニコラウス殿
   
   遂に 今日の明け方、“メシアの星 ” が止まった。
   今宵、“御子” が お生まれになるのだ。
   われら三人は 星の終着地点を特定し、その方角へ向けて
   大至急 出発しなければならなくなったことを
   まず この書面をもって お知らせする。

   そこで 誠に申し訳ないことだが、
   ニコラウス殿は 独りで “メシアの星 ” の位置を頼りに
   本日の夜までに 目的地へ向かってほしい。
   われらの計算間違いでなければ その場所は
   エルサレムの都ではなく、意外なことに
   そこから さらに7㎞ほど南に下った
   ベツレヘム - という村らしい。

   エルサレムの都を通り過ぎてしまうことになるので、
   われらは 途中 ヘロデ王の宮殿へ 挨拶に立ち寄るつもりだ。
   ( ・・・ それは、もしや 神の御子についての情報を
     王宮がつかんでいるのではないか と期待してのこと。 )

   万一、われらと すれ違って合流できなかったとしても、
   その時には どうか 「東の国の王から」だと言って、
   あなたの素晴らしい芸術品を 御子へ手渡してもらいたい。

   神のご加護があらんことを 心より祈る。        
   草々
         カスパール、メルヒオール、バルタザール 」


 ! 慌ててニコラウスが この手紙の日付を検(あらた )めると、何と それは 彼が三人の博士たちを訪問した すぐ翌日の朝に書かれたことになっています。
 彼は愕然としました。
 一心不乱におもちゃ作りに没頭していたニコラウスは、使者の訪問があった(らしい )ことに まったく気づかなかったのです。使いの者の立場になれば、室内から応答がなければ留守と判断して 手紙をドアに差し込んで帰ってしまうのも当然でしょう。
「落ち着いて、落ち着いて 」
彼は、あせって混乱した頭の中を 必死に整理しながら、考えました。
 今 手にしている手紙の文章は すでに七日前の情報ということになります。
 ここ エリコからエルサレムの都までは 徒歩で半日の行程、もし博士たち一行がヘロデ王の宮殿に立ち寄ったとしても そのエルサレムから目的地ベツレヘムまでは 数時間あれば着いてしまうほどの近距離なのです。途中ですれ違えるどころか、 三人の博士らは おそらく この手紙を書いたその夜のうちに 目的を達し、すでに東方への帰路にあることは 間違いないでしょう。
 ニコラウスは、ため息と一緒に 両膝も 床につきました。そして そのまま数秒間ほど放心していましたが、しかし 次の瞬間、全部のおもちゃを入れた大きな袋の口を 新しい麻ヒモでギュッと縛ると、どっこいしょと肩に担いで 明るい戸外へと飛び出していきました。
 
 ニコラウスには、もはやベツレヘムへ急行するしか 選択肢はないのです。
 彼は駆けました、「神の御子 」のもとへ!
 それは、とりもなおさず 愛するマルタとカルロスのもとへ!

- つづく - 


- 解説 ―
 私の「サンタクロース物語 It's a Small World 」の原形は はっきりしています。
 それは 中学生時代、私立のミッション・スクール - 明治学院大学付属東村山中学校 - に在籍していた頃、と言っても もうすでに正確な記憶はかなり失せていますが、おそらくクリスマスに近い時期 毎朝の礼拝で説教を務めていた教諭のひとりから聞かされた それは「四人目の賢者 」という物語でした。
 これに拠ると「東方三博士 」は 実は 3人ではなく、もともと4人組(! )で、3人から遅れてベツレヘムへ出発した もうひとりの博士がいた、という驚くべき伝承でした。4人目の博士は 医者でもあるのですが、彼はキリストへの贈り物として大粒の真珠や宝石を持っていきます。しかしベツレヘムへ向かう途中で瀕死の病人に出会い、彼を治療していたため キリストの生誕祝いには間に合わない - 。 ヘロデ王の幼児惨殺の場面に立ち会うというエピソードもたしかあり、そこでは 槍を持ったヘロデの兵士に追われた幼児を救うため、贈り物の宝石を兵士にひとつ渡して買収してしまうシーンもあったように記憶しています。
 その後 この4番目の博士は ひとりでキリストを探す旅を続けますが、その途上、病気で苦しむ者に出会っては 医者として治療を施しながら、同様に 貧しい者、空腹な者、困っている者、不幸な者などに、当初救い主への贈り物として用意しておいた宝石類を 次々と与えてしまうので、徐々にその贈り物は減ってゆきます。それから30年以上も 世界中 旅し続けるうち すっかり年老いてしまうのですが、探し続ける救世主の所在はつかめません。
 やっと情報を得られたのは聖都エルサレム、しかし それはキリストがまさに処刑されるためにゴルゴダの丘に向かったという日のこと。最後に手元に残った大粒の真珠を握りしめ、これでキリストの命が救えればと、博士はゴルゴダへと急ぎますが、その途中で 今度は貧しさから奴隷に売り飛ばされようとしている不幸な少女に出会います。見捨てておくことが出来ず、ここでも博士は 最後の高価な真珠を奴隷商人に与えて少女を救いますが、もはや彼の手元には何も残っていませんでした。しかも そうしている間、キリストは十字架上で絶命してしまいます。とうとう博士は間に合わなかったのです
 聖書の記述どおりに天地が暗くなり地震が起き、崩れた建物の下敷きになって死に瀕した老博士の前に あれほど求め続けたキリストが姿を現し、このように声をかけるのでした・・・
「お前は、わたしが空腹であったときに、食べ物を与えてくれたね
 わたしが渇いていたときに 飲ませてくれたね
 わたしが旅人であったときに 宿を貸してくれたね
 わたしが裸でいたときに 着る物を与えてくれたね
 わたしが病気をしたとき 治療を施してくれたね、
 わたしが牢にいたとき たずねてきてくれたね 」
瀕死の博士は 初めて出会うキリストに その苦しい息の下から尋ねます。
「主よ、いつ わたしがあなたにお会いしたのでしょうか 」
「よくお聞き。わたしの兄弟である 最も小さき者の一人にしたことは、すなわち わたしにしてくれたことなのである(マタイ伝 第25章 第40節 ) 」
イエスの言葉に送られつつ、4番目の博士は 彼の贈り物のすべてがキリストに届いていたことを悟り、深く満足して息を引き取ります - 。

 以上が 小説「サンタクロース物語 It's A Small World 」の原形となった伝承のあらすじです。これは キリスト者にとっては意外に知られた外伝であるらしく、過去アメリカでは映画化もされたそう(発起人は未視聴 )・・・。中学生の時 初めてこの魅力的な伝承を聞かされて以来、なぜかこの物語は 私“スケルツォ倶楽部”発起人の心に深く留まって離れることがありませんでしたが、ある時 ふと思いついたのです。 そうだ、この「4番目の博士 」を「サンタクロース 」と結びつけたら? - そうしたら どんどん新しいストーリーが 私の頭の中で加速度的に膨らみ、そのディテイルを具体的にしながら 30年以上も温めてきた結果が、一昨年 ”スケルツォ倶楽部”で、やっとこさ書き上げるに至った この「サンタクロース物語 It's a Small World 」でした。


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