スケルツォ倶楽部 の メニュー は こちら ⇒ Novel List 
スケルツォ倶楽部”発起人/作 の オリジナル・ストーリー
「サンタクロース物語 ~ It’s A Small World ~  」
この物語は、2010年11月30日から同年12月25日に投稿しました、
“スケルツォ倶楽部”発起人.作 の オリジナル連載小説に 手を加えたものです。

► ストーリーを最初から読む

 イエペス_カタロニア民謡を弾く(D.G.)
(3) 聖母の御子 

 「なるほど。よくわかりました。ところで・・・」
と、ニコラウスは 思いだしたように 自分がここへ呼ばれた理由を尋ねました。
「皆さまが 木製のおもちゃを お探しだと 伺いましたが - 」
「いかん、いかん 前置きが長くて 忘れてしまうところだった 」
と、メルヒオールは 自分の額を叩きながら、
「われらは 深い敬意と友好を表すため、神の御子さまのご家族に贈り物を用意してまいったんだ。私は 没薬(もつやく )、エジプトで使われている超高級品だ、ほら 」
と、ニコラウスに高価な袋を わざわざ持ち上げてみせました。
バルタザール師も 自分が用意した贈り物の箱を持ってきて、
「わしは礼拝の時に捧げる 香の調合に必要な貴重品、乳香じゃよ 」。
寡黙なカスパール師も 重そうなケースを両手で運びながら、
「私は 自分に相応(ふさわ)しく 金(ゴールド)を用意したぞ。
ほら、『沈黙は 金 』とか言うだろ 」
などと 表情ひとつ変えずにのたまうので、メルヒオールとバルタザールは 一瞬顔を見合わせると 次の瞬間、二人とも笑いを堪(こら )えるのに 必死になりました。

「 ・・・ でも 肝心の御子さまに差し上げる贈り物がないのだよ 」
その無表情のまま、カスパール師は呟くように言いました。
話の木を接(つ)ぐように、メルヒオールが言葉を続けます。
「やっぱり お子さまは おもちゃがうれしいのではないか - と、考えたわけさ。御子さまに差し上げるおもちゃを 安全な木素材でたくさん作ってほしいのだ 」
ニコラウスは 思わず 言葉が口をついて出ました。
「生まれてきたばかりの赤ちゃんが 手遊びをおぼえるには まだ早いと思いますが ― 」
「いや、そんなことは お前が心配しなくても良いのだ、遥々(はるばる )遠くから祝いに訪れた われら異邦人が、ご両親に高価な 贈り物、しかも幼い御子さまにも きめ細かい気遣いを見せた、という姿勢のアピールには 十分なるのだから 」
と、笑いながらメルヒオール。
これにバルタザール師も ゆっくりと口をはさみました。
「よいか、たとえ子どものおもちゃとは言っても、わしらの高価な贈り物と 一緒に並べて御子に差し上げようというものじゃ。素朴なものでかまわないんだが、しかし 何と言うかな、貧弱な代物では困る。どうじゃな お若い人よ、ひとつお前の腕前を 見せてはくれぬかな?」

 ・・・ かつて わが子カルロスのため 心をこめて作った木彫りの動物や鳥を ニコラウスは自分の懐から取り出して 三人の博士たちの前に並べて見せました。
「ほう、サンプルというわけじゃな、どれどれ 」
彼らは、その小さな鳩やカラス、ひばりといった鳥たち、そして羊や犬、ライオンといった動物たちの木製のおもちゃを 長い時間 手にとっては真剣に眺めていましたが、やがて互いに顔を見合わせると 口々に絶賛し合いました。
「 ・・・素晴らしい出来だ、真に迫っているではないか 」
「これはただの工芸品ではない。ほら、この細部の彫刻を見てご覧、立派な芸術作品じゃな 」
「しかも 作った者の温かい気持ちが伝わってくる仕上りだ 」
博士の一人が ニコラウスに訊きました。
「この塗料の色は美しいな。だが 子どもが口に入れたら有害なものではないか 」
「いいえ、色鮮やかな花や草の汁を搾って調合した絵の具で塗ったものですから 舐めても平気なんです 」
これを聞いて、三人は一斉に膝を叩きました。
「決まった。これほど質の高い仕事ができる この男に任せようではないか 」
「そうしよう。よし 頼んだぞ、ニコラウス 」
「報酬は銀貨30枚でどうだ、前金で支払うぞ。さあ、取っておけ 」
「え、こんなに沢山 ・・・ ど、どうもありがとうございます」
ニコラウスは、博士たちが自分の腕をこの上もなく高く評価してくれたことを知って とてもうれしく思いましたが、決して軽薄に舞い上がるようなことはなく、逆に ぐーっと 気持ちを引き締めると  自然に深呼吸してから 頭を下げました。大きな仕事を任された時、彼は いつもそうしているのでした。
 屋敷を退出しようとするニコラウスの背中に、“沈黙博士” カスパール師の言葉が 追いかけるように飛んできました。
「マイスターのニコラウスよ、仕事を急いでくれ。“メシアの星 ” の動きが止まったら わしらは 即行ここを引き払って、すぐに出発せねばならぬから。くれぐれも 頼んだぞ 」

- つづく - 


- 解説 ―
1.「幼な児キリストにおもちゃをあげる 」 - という発想は、東方三博士が用意していったとされる高価な贈り物(没薬、乳香、そして金 )のどれもが、子どもにとっては 貰っても大して嬉しくないのではないか - と、私“スケルツォ倶楽部”発起人が勝手に思いつき、想像を広げた部分です。
 ・・・以下、脱線話。
 昔々、東京上野に赤札堂という老舗のデパートがあり、かつてそこは 都内でも有数の大型おもちゃ売場が場所を占めていました。また個人的なことで恐縮ですが、その店は - 私 “スケルツォ倶楽部”発起人の父親の実家が経営していました、私は おもちゃ屋の倅(せがれ )だったというわけ - 残念ながら その店はビートルズの解散と(偶然にも )同じ年に倒産してしまいました。しかし当時 まだ私は幼かったこともあって、この店の記憶は殆ど残っていません。

2.ニコラウスの作る木製のおもちゃ - 彼は もともと 自分自身の子 カルロスのために おもちゃをこしらえることを喜びとしていました。しかしカルロスの死によって、ニコラウスは おもちゃを作ってあげる対象も失ったわけです。
 しかし 神の御子である幼児キリストにおもちゃを差し上げる、という動機を東方三博士から請け負ったニコラウスは、そこに大きな生きがいを見出し、再び工具をふるいながら喜んで仕事します。この時、彼の心の中では、幼児キリストを 亡きわが子カルロスと潜在的に同一視しており、「神の御子にプレゼントを上げる 」という仕事は、ニコラウスにとっては 奪われた愛児カルロスに 再び 手作りのおもちゃを渡せる、まさしく その代償行為に他なりません。
 次の章で、一心不乱におもちゃを作るニコラウスの「作業中ずっと 彼の頭の中を占めていたものは、我が子カルロスの笑顔と 未だ見ぬ“神の御子”のイメージとが いつのまにか一緒になって混ざり合った姿でした 」という文章は、これを説明するものです。


↓ 清き一票を
にほんブログ村 音楽ブログ ジャズへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
blogram投票ボタン
人気ブログランキングへ
Club Scherzo, since 2010.1.30.




関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

トラックバック

トラックバック URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)