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スケルツォ倶楽部 Club Scherzo

主役の吹替えを務める「影武者 」歌手の悲哀 
その2
ミュージカル映画「ウエスト・サイド・ストーリー 」、
マイ・フェア・レディ 」 ・・・ 
主役を歌っても 無名の マーニ・ニクソン

ウエスト・サイド・ストーリー_スケルツォ倶楽部 1970s, Marni Nixon on tour My Fair Lady_CBS

☆ 今回は その1 からの続きです。 未読の方は、⇒ こちらから

     「ところで お前、マーニ・ニクソン Marni Nixon(1930~ ) っていう女声歌手の名前を知ってるか 」
わたし   「ううーん、どこかで聞いたことがあるような・・・。誰だっけ? 」
     「かつてハリウッドのミュージカル映画で 吹替え専門の歌手とみなされていた 実力派のシンガー。声域はソプラノ、間違いなくクラシック音楽の訓練も受けた正統な発声がベースになっているけれど、自然な発声で とても可愛らしい声だよ 」
わたし   「ふんふん(うなづき ) 」

Gentlemen Prefer Blondes
     「1953年、映画『紳士は金髪がお好き 』で、マリリン・モンローの 『ダイアが一番 Diamonds Are A Girl’s Best Friend 』の一部を 吹替えで歌ったのを皮切りに、それ以来 1960年代後半まで 数々のミュージカル映画で、『歌唱を本業としない大女優 』に代わって、歌の部分だけ吹替えを務めたことによって『ハリウッドの声 (Wikipediaより ) 』として 知る人ぞ知る 名歌手なんだ 」
わたし   「へー、他には誰の声を、どんな映画で 吹き替えたのかしら ? 」
     「聞いたら、きっと驚くよ 」

1956年 映画「王様と私 」 デボラ・カー_王様と私_スケルツォ倶楽部
デボラ・カー
1956年 映画「王様と私 」
アンナ役(デボラ・カー )の歌唱全曲を担当

     「『シャル・ウイ・ダンス Shall We Dance ? 』で有名な、リチャード・ロジャース & オスカー・ハマースタイン二世による 全編名曲揃いの傑作ミュージカル映画・・・ 」
わたし   「 わたし、可愛い『口笛吹いて I Whistle A Happy Tune 』とか 名曲『Getting To Know You 』が 大好きなんだ。あ、この声がマーニ・ニクソンの声だったというわけね 」
     「個性が際立つシャム(現タイ )の王様は 名優ユル・ブリナーの当たり役、この演技でアカデミー主演男優賞を受賞している 」
わたし   「筋骨隆々、スキンヘッドでセックス・アピールむんむん(鼻息 ) 」
     「ええと、そういえば 現地の少女タプティムを好演する 脇役リタ・モレノは、この五年後、『 ウエスト・サイド・ストーリー 』で ジョージ・チャキリスベルナルド役 )の恋人アニタ役で、ナタリーウッドの吹替えを務めていたマーニ・ニクソンと 再び 共演することになるんだな 」
わたし   「リタ・モレノって、この当時すごく売れていた女優さんだったようで、そういえば 前回話題にした ミュージカル映画『雨に唄えば 』にも 端役で出演していたよね 」
夫     「じぇじぇ ! (驚 ) 」
わたし   「あ、さては アナタ 知らなかったんだ 」
     「ど、どこに出てた、リタ・モレノ
わたし   「ふふん、ネタばれ自粛(笑 ) 」
     「 (かなり悔しがる ) 」


ウエスト・サイド・ストーリー_スケルツォ倶楽部 ナタリー・ウッド_スケルツォ倶楽部 < I Feel Pretty
ナタリー・ウッド
1961年 映画「ウエスト・サイド・ストーリー
マリア役のナタリー・ウッドが歌う、歌唱全曲を担当

わたし  「それにしても マーニ・ニクソンの歌声って、よく伸びるソプラノ声域で、ホント可憐な美しさよね 」
    「意識して 歌声を聴いていると、たしかに 彼女の声は 何とも言えない、誰の耳にも心地よく響く声質なんだな。中でも『ウエスト・サイド~ 』の吹替えは やっぱり出色の素晴らしさだ。ナタリー・ウッドが演技しているヒロインのマリア役は、プエルトリコからの移民という背景だから その台詞にはラテン系の訛りを意識的に加えているわけだけど - 」
わたし  「これを吹替えで歌うニクソンの歌唱もまた ウッドの発音に しっかりと合わせてるところ、芸術的な域よね 」
    「そうそう、意識的に 二人が合わせて演技している発音の例を 具体的に挙げてみれば、そうだな・・・  For you を“フォルルュー”というように r の音を 巻き舌で みたいな -  」
わたし  「わかるわ、おかげで台詞と歌唱の繋ぎに 違和感がまったくないもの。それに エンディング近く、ティノに撃たれて 瀕死のトニーを腕に抱きながら マリアが 涙ながらに『サムホエア Somewhere 』を ア・カペラで口ずさむところ、あれもニクソンの吹き替えなんでしょ 」
    「ああ、あそこは 特に素晴らしい。マリアの切ない感情が溢れて千切れそうな台詞と一体化した歌唱だから、ニクソンも さぞ難しかっただろうけど 最後まで 見事に演じて成功を収めていると思うな 」


Audrey Hepburn in My Fair Lady_スケルツォ倶楽部 My Fair Lady_CBS 
オードリー・ヘプバーン
1964年 映画「マイ・フェア・レディ
イライザ役のヘプバーンが歌う、歌唱全曲を担当

    「そして、いよいよ コレだ 」
わたし  「イライザを演じるのがオードリー・ヘプバーンって、この映画を 未来から鑑賞する立場である わたしたちにとっては、既成のキャスティングとして 当然のように受け入れてるけど、リアルタイムでは そうはいかなかったようね 」
    「 『高級住宅街メイフェア地区のレディ 』のコックニー(下町 )訛りの響きが 実は そのタイトルに隠されている『マイ・フェア・レディ 』は、ワーナーBros.が 映画化を企画する前には、ブロードウェイの傑作ミュージカルとしてすでに有名で、そこでは ヒロインのイライザ役といえば オリジナル・キャストとして ジュリー・アンドリュースが 務めてきたことが 関係者の間ではよく知られていた 」
わたし  「ふんふん 」
    「だから 映画化に当たっては 本来なら ワーナーイライザ役として、舞台実績あるジュリー・アンドリュースを迎えるのが 自然ではあった 」
わたし  「でもハリウッドでは、当時ジュリー・アンドリュースの知名度は高くなく、むしろ一般の人々にとっては まだ無名に近い存在だったわけでしょ 」
    「たしかに商業的には 仕方なかったんじゃないかな、だって 『メリー・ポピンズ 』も『サウンド・オブ・ミュージック 』もまだつくられていない頃のこと。これに対し、映像的な仕上がりの面から検討すれば、オードリー・ヘプバーン完璧な八頭身のスタイルは、ヒギンズ教授によって レディとして磨き抜かれて以降のシーン(下町の花売り娘時代ではなく )、ハンガリー貴族の令嬢と間違われるほどの気品を湛えたイライザ・ドゥーリトゥル嬢として、スクリーンいっぱいに輝くほど そのヴィジュアルな美しさに比類なかった結果は、誰もが認めることと思う 」
Audrey Hepburn (2) My Fair Lady (2)
わたし  「けれどヘプバーンの歌唱力のほうに耳を傾けてみると ? 」
    「映画の開幕から間もなく、市場でイライザが歌うナンバー『素敵じゃないこと Wouldn't It Be Loverly ? 』を、ヘプバーンが自身の声で歌っているテスト音声が聴けるという貴重な特典映像が、手持ちのDVDの中に収録されていたことを思い出し、興味津々で聴き直してみたら・・・ ああ、なるほど、と深く納得 」
わたし  「どうだったの 」
    「ヘプバーンの歌唱は、音程には ほぼ問題ないんだけど、発声と呼吸が浅く、プロフェッショナルな歌手として歌うことには到底慣れていない、という印象。『素敵じゃないこと Wouldn't It Be Loverly ? 』は ミュージカル中では どちらかといえば 軽量級の小唄だから、この程度のナンバーで息切れしているようでは、さらにハードでしかもコミカルな『今に見てらっしゃい Just You Wait 』、とにかくリズミカルで音域も広い『一晩中 踊り明かせたのに I Could Have Danced All Night 』、猛烈に早口で大量の歌詞が続く『あなたなんかいなくても Without You 』などといった 負担の重いナンバーの数々を歌いこなすことは 少し無理だったのではないかな 」



▲ 舞台のオリジナル・キャストだった ジュリーアンドリュースによるWouldn't It Be Loverly


▲ オードリー・ヘプバーンによる貴重なテスト・ヴォーカルが聴けるWouldn't It Be Loverly


▲ マーニ・ニクソン吹き替え による 映画版で聴ける Wouldn't It Be Loverly

わたし  「 ・・・ そういえば、この『マイ・フェア・レディ 』の 3年前に公開されている 映画『ティファニーで朝食を 』では、まさに音域の狭いヘプバーンが『吹替えなしで 』歌えるようにと ヘンリー・マンシーニが苦労して作曲した テーマ・ソング『ムーン・リヴァー 』のメロディは、わずか『一オクターヴ 』以内という制約を満たしてつくられた旋律だったんだもんね 」
BREAKFAST AT TIFFANY’S(RCA )L.P.
ティファニーで朝食を 」及び 「ムーン・リヴァー 」の話題は ⇒ こちら

    「 そんな『ムーン・リヴァー 』が1961年のアカデミー作曲賞及び主題歌賞を受賞したのは 皮肉なことだったが、1964年のアカデミー賞において 鳴り物入りで騒がれた 『マイ・フェア・レディ 』に主演したヘプバーンは、相当の熱演だったにもかかわらず、今度は なぜかノミネートもされなかった。その理由は、やはり 本人が歌っていなかったからということと、マーニ・ニクソンによる 吹き替えのせいだったのであろう、というのが、今日(こんにち )では ほぼ定まりし評価ではないかな 」 
ヘプバーンとアンドリュースの2ショット_1965_スケルツォ倶楽部
ヘプバーンアンドリュースの 貴重な 2ショット_1965

わたし  「その代わり、翌1965年のアカデミー賞で 晴れの主演女優賞を受賞したのが - 」
    「そう、前年には 映画『マイ・フェア・レディ 』で 惜しくも ヒロインのイライザ役を オードリー・ヘプバーンに奪われる形になってしまった ジュリー・アンドリュースその人だった。アカデミー賞ディズニー映画『メリー・ポピンズ 』への出演に対してだったんだけど、ひとつ興味深いことに、実写とアニメーションを組み合わせた、このディズニー映画の『 楽しい休日 Jolly Holiday 』というナンバーの中に登場する 可愛い『ガチョウ 』役の吹き替えを 今回 担当していた マーニ・ニクソンと、主演のジュリー・アンドリュースが スクリーンの中で『共演(笑 ) 』することになった - というエピソード 」
わたし  「楽しい ! 」
メリー・ポピンズウォルト・ディズニー 1964
▲ 「メリー・ポピンズ 」音楽は スヌーピーの大冒険シャーマン兄弟 ・・・

    「さらに マーニ・ニクソンは、翌年 ジュリー・アンドリュース主演の名作『サウンド・オブ・ミュージック 』に、(これには 吹き替え歌手としてではなく )端役ではあるものの 初めて女優として出演することになったんだ 」
わたし  「あら、どの役を演じていたかしら ? 」
     「ザルツブルクの修道女のひとり シスター・ソフィア役。開幕早々、尼僧らのアンサンブルにおいて 高いソプラノ・パートを受け持ち、一際美しい声を印象的に聴かせてくれているよ。
Marni Nixon in The Sound Of Music The Sound of Music_35th Collectors Edition
     「 ・・・ それから、映画のラスト近く 修道院のシーンで再び出演、スイスへ亡命しようとするジュリー・アンドリューストラップ一家を幇助(ほうじょ )するため 機転を利かせ、追手であるナチス憲兵隊の車を足止めさせようと -  」
わたし  「Oh ! 思い出した。大胆にもナチの車両からエンジンの部品を外しちゃう尼さんの一人でしょ。ああ、わたしたちったら 神さまの御前で こんなイケナイことを・・・ って、院長に告解する 最後の表情も忘れがたい なかなかの名演技だったわね 」

マーニ・ニクソン本人名義の希少なディスク
1970s, Marni Nixon on tour
▲ 1970年代、楽旅中のマーニ・ニクソン

Marni Nixon Gershwin Songs
マーニ・ニクソン Marni Nixon
ガーシュウィン名曲集 Gershwin Songs
収録曲:Let's Call the Whole Thing Off、I've Got a Crush on You、But Not for Me、The Real American Folk Song、Blah, Blah, Blah、Blue, Blue, Blue、The Babbitt & the Bromide、Nice Work If You Can Get It、Someone to Watch over Me、Summertime、By Strauss、Embraceable You、I Got Rhythm、Soon / Maybe / Looking for a Boy、Of Thee I Sing、The Man I Love
音 盤:Reference Recordings (RR-19CD )
録 音:1985年 3月15日


Marni Nixon Classic Jerome Kern
マーニ・ニクソン Marni Nixon
ジェローム・カーン名曲集 Classic Jerome Kern
収録曲:The Song Is You、Lovely To Look At / The Way You Look Tonight、 Let's Begin、April Fooled Me、Swing Time Medley、You Are Love、 Californ-I-Ay、I Dream Too Much、The Folks Who Live On The Hill、Smoke Gets In Your Eyes、I Have Seen、All The Things You Are、Go, Little Boat、 Yesterdays、Day Dreaming、Ragtime Restaurant、I'll Follow Your Smile、Long Ago And Far Away、Can I Forget You、They Didn't Believe Me、Bill
音 盤:Reference Recordings (RR-28 )
録 音:1988年 1月24日、2月6日



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