本記事は 9月21日「 注目記事ランキング クラシック音楽鑑賞 」で 第1位 となりました。
実は クラシック音楽の話題じゃないんですが、スミマセン。これからも よろしくお願い申し上げます。


スケルツォ倶楽部 の メニュー は こちら ⇒ Novel List 
映画のスクリーンに貼りつけられた音楽 ⇒ Novel List   

スケルツォ倶楽部 Club Scherzo

主役の吹替えを務める「影武者 」歌手の悲哀 
その1
NHKドラマ「あまちゃん鈴鹿ひろ美天野春子 ) 」、
映画「雨に唄えばリナ・ラモントキャシー・セルデン ) 」・・・

NHK「朝の連続テレビ小説 」あまちゃん 『雨に唄えば 』Singin In The Rain

 今年(2013年 )上半期のNHK「朝の連続テレビ小説 」と言えば、宮藤官九郎氏の脚本によるヒット作、ご存知「あまちゃん 」(主演 天野アキ役、能年玲奈さん - 以下 敬称略 )です。

NHK あまちゃん タイトル NHK「朝の連続テレビ小説 」あまちゃん (2)
 わたし“スケルツォ倶楽部発起人のほう )、さっさとを カイシャへ送り出した朝、楽しく食器を洗ったり、新しい香りの柔軟剤を投入してから 便利な全自動洗濯機をまわしてみたりする側(かたわ )ら、点けっぱなしにしたTVから流れてくるNHK の画面を眺めているうち、このドラマ「あまちゃん 」が 4月にスタートして早々、ストーリー展開の巧みさと その意外な奥深さに 気づいてしまいました。

NHK 「あまちゃん 」春子とアキ母娘 宮本信子 NHK 橋本愛_NHK
 主人公「天野アキ 」を演じる能年玲奈と そのママ役の小泉今日子という「親娘 」二人の強烈な個性的演技をはじめ、「アキ 」の祖母「ナツばっぱ 」役の宮本信子の貫録と圧倒的な存在感。 「アキ 」の親友で ドラマの中でも重要なキャラクター「足立ユイ 」 - 彼女は 過去 何度 も憧れの「東京 」を目指すのですが、なぜかその都度 周囲に不幸な出来事が起きて、決して上京できないという、あたかも地方と都市との距離や格差を 象徴する存在のようです。その屈折した性格を 期待以上の表現力で演じるのが 橋本愛・・・

「原石なんて、ゴーロゴロ転がってるの。その中で磨いて光るのは、たった一個なんです。NHK <太巻>古田新太 NHK
 アイドルを目指す「アキ 」を応援することになる大女優「鈴鹿ひろ美 」役を務める薬師丸ひろ子の比類なき立ち位置、太巻プロデューサー - そのまんま「秋元康 」イメージを借りている古田新太のハマリ具合・・・

松田龍平 NHK NHK「あまちゃん 」_祖父 忠兵衛役を演じる蟹江敬三 尾身としのり NHK NHK「あまちゃん 」_北三陸高校潜水土木科出身。アキの先輩で初恋相手 種市先輩を演じる福士蒼汰
 松田龍平が演じる 若手プロデューサー「ミズタク 」のクールでコミカルな新境地、そのほか 蟹江敬三、尾身としのり、福士蒼汰、 さらに 渡辺えり、片桐はいり、杉本哲太、荒川良々、小池徹平、塩見三省、皆川猿時、ピエール瀧 などなど(ほかにも 熱演者の皆さん、大勢いらっしゃいますが スミマセン )・・・
 とにかく あらゆる脇役に至る出演者すべてのキャラの立ち具合の見事さに、毎回 少しずつ目が離せなくなってしまい、遂に「これは 見逃したくない 」気になって、今では 殆ど毎日 録画して観るほどまでに、もうすっかりハマってしまっているのでした。
 これほどまで「朝ドラ 」をオモシロく感じたのって、ずっと昔に放送されていた橋田壽賀子の名作「おしん 」と 近年の秀作「カーネーション 」とを「別格 」扱い すれば、ほかに思い出せないほどです( って、「オモシロさ 」の種類は、ドラマごとに かなり異なりますが )。

 本日現在進行形で すでにドラマは 北三陸の地域復興に向けて ラスト・スパートを予感させる時期に突入しており、震災後は仕事を辞めて地元に帰ってきた「アキ 」の許を 東京で係わりがあった関係者たちが次々に訪れ、やがて全員の力が 徐々に東北へ集結し始めているという 何だか わくわくしてくるシチュエーションです。

宮藤官九郎 NHK 「天野アキ(能年玲奈 )」NHK 
9月28日(土 )の最終回を迎えるまで もう僅か二週間ほどの放送予定になってしまいましたが、果たして クドカン こと 宮藤官九郎は、どんなエンディングを用意してくれているのでしょうか、楽しみですね。

 ・・・で、このドラマ「あまちゃん 」の中にクドカン氏が織り込んだ 数多い秀逸なエピソードの中でも、私“スケルツォ倶楽部発起人(妻 )が最も萌えたのが、過去の挿話として回想的に扱われていた、1986年リリースという架空のヒット曲「潮騒のメモリー 」レコーディングに絡む「天野アキ 」のママ = 「天野春子 (小泉今日子 ) 」の若き日の姿(有村架純 )を主人公とする、「あまちゃん 」前史とも呼べる もうひとつのストーリーでした。
有村架純 NHK 若き日の「春子(有村架純 )NHK (2)

 この興味深いエピソードの真相と顛末は すでに ドラマの中では 明かされていますから、もはやネタばれを考慮する時期でもないでしょう、この話題に触れてしまおうと思います。
 その物語とは 1986年というアイドル全盛時代、架空新作映画「潮騒のメモリー 」のヒロインとして主演、まさにブレイク寸前の大型新人だった「鈴鹿ひろ美 」のデビュー曲 - 映画と同じタイトルのテーマ・ソング - のレコーディングに際し、所属の芸能事務所では ある問題が判明し、上を下への大騒ぎになっています。それは、何と 当の「鈴鹿ひろ美 」 本人が フォローしようもないほどの「音痴 」だった・・・ という致命的な事実です。

若き日の古田新太 NHK NHK「あまちゃん」 ~「歌ってくれないかなー」
当時は まだ一介の若手プロデューサーに過ぎなかった「荒巻太一(古田新太 ) 」は 自分が行きつけの喫茶店でウェイトレスをしているアイドル歌手志望の「天野春子(当時18歳:有村架純 ) 」の歌唱力に目をつけると、切羽詰まって「鈴鹿ひろ美 」の代わりに歌わせることを思いつきます。

若き日の「春子(有村架純 )NHK
 自分の歌がレコードになると聞いて デビューできるチャンスかもしれない、などと無邪気に承諾する18歳の「天野春子 」、最初のうちこそ 少し緊張するものの 軽い気持ちでマイクの前に立ちます・・・ その結果、彼女が「影武者吹替え歌手の意 ) 」を務めて歌った「潮騒のメモリー 」は、何と その年 60万枚もの大ヒットを記録してしまうのでした。
潮騒のメモリー(鈴鹿ひろ美 )NHK 石井明美_CHA-CHA-CHA_SONY 中森明菜_DESIRE
 ・・・ちなみに、現実の1986(昭和61 )年度 オリコンの年間チャートによれば、「同年(笑 ) 」 第1位だったCHA-CHA-CHA(石井明美 )53万枚、第2位の「DESIRE - 情熱 - 」(中森明菜 ) 51万6千枚という売上でした。ですから「鈴鹿ひろ美 」の「架空の 」 デビュー・シングル「潮騒のメモリー 60万枚 (爆 )の凄さったら、容易に想像できますよね !
 不幸なことに、これによって ブレイクを果たした 大型新人アイドル歌手「鈴鹿ひろ美 」に 声の「影武者 」が存在するという事実は、ごく一部の関係者のみぞ知る「極秘事項 」として絶対封印され、同時に「天野春子 」の声は「鈴鹿ひろ美 」の声として使い捨てられることになったばかりか、当の「春子 」自身は、かわいそうに( ! )永久に 歌手デビューする機会を葬り去られてしまうのでした。
 この特殊な裏事情を 偶然の巡り合わせから ひそかに知り得たがゆえに「われ口外しようもんなら おんどれ東京湾に沈めてやるぞ あほんだら 」と「太巻 」に脅されつつも 「デビューできない幻のアイドル歌手 天野春子 の ファン第一号 」となった、若い個人タクシー運転手「黒川正宗( 森岡龍 ) 」と傷心の「春子 」とは 心を通い合わせるうち やがて結婚、二人に授かった女の子こそが ドラマ「あまちゃん 」の主人公「アキ 」です。

あまちゃん「ママに歴史あり 」
 故郷の北三陸から上京して「アイドル歌手になる 」という年来の夢を果たす前に ママになってしまった「天野春子 」は、自分を都合よく利用しただけで使い捨てた芸能界に対し、それ以来 怨みに近い感情を引きずって生きてゆくことになるのでした - という、これが本編以前の「ママの歴史 」です。

NHK あまちゃん
 そして十数年後、彼女の娘「天野アキ 」は可愛らしく健康に成長し、母の故郷 北三陸の自然に触れた結果 そこで初めて自分を見出すことが出来、のびのびと海女(あま )の修業をしたり 潜水士の資格を取得したり、親友「ユイ 」と結成した ユニット“潮騒のメモリーズ”で 地域密着型ローカル・アイドルとして 注目を集めたりと、忙しくも 大活躍。
橋本愛と能年玲奈_NHK
 詳細な経緯は スミマセン 省略しますが、やがて 全国区のアイドルを目指して 単身 東京へと戻り、そこで「荒巻 」や「鈴鹿ひろ美 」らとの劇的な出会いを重ね - 最初のうちは ママの芸能界との過去の経緯(いきさつ )など 全く知らずに - 一緒に仕事をしながら、広く交流を深めてゆくのでした。
 さらに「アイドル総選挙 」、解雇、挫折、復活 - と、盛りだくさんの紆余曲折があった末、25年ぶりにリメイクされることとなった 因縁のアイドル映画「潮騒のメモリー 」の続編製作という注目企画に、「天野アキ 」は 何と主役のヒロイン役として大抜擢、しかも かつて若き日のママ「春子 」が「影武者 」を務めた「鈴鹿ひろ美 」と母娘役で共演することになるという、そんな劇的で「大逆転 」な展開は、ドラマ「あまちゃん 」ストーリーの まさにハイライトでした。
 その頃 これも成り行きから 都内で小さな芸能事務所を経営することになっていた「アキ 」のママ「天野春子 」を演じる小泉今日子の、それまでずっと怨みに近い感情を抱き続けてきた「太巻 」や「鈴鹿ひろ美 」だけでなく、周囲の大勢の人々が自分の娘に寄せる信頼や好意的な態度と触れ合うことによって、引きずってきた芸能界へのわだかまりや かつて挫折した「心の傷 」すべてが 徐々に癒(いや )されていることに気づき ( これと同時進行で 実家の 母ナツ とも お互いに誤解が解けて 和解に至る その過程は 宮本信子 の名演技とも相まって 実に感動的 )、過去のこだわりを捨て去り 明るい表情を取り戻すまでの 迫真の演技は、ホント 素晴らしいものがありました。
小泉今日子と能年玲奈_NHK 母親役の小泉今日子 NHK
女優キョンキョンに、大拍手

わたし  「何らかの事情によって、本来の歌手の代わりに 本人以外の歌い手が 本名を名乗ることなく その代役を務めるという 興味深いエピソードについて、今宵は話題にするというわけね 」
    「 『吹替えで歌う 』という設定なら、おそらく誰もが 真っ先に思い描く、有名な映画作品といえば、1952年MGMミュージカル映画の名作 『雨に唄えば 』 Singin' In The Rain だな 」

■ 映画「雨に唄えば
リナ・ラモントの「影武者 」を務める キャシー・セルデン

『雨に唄えば 』Singin In The Rain 雨に唄えば Singin In The Rain

わたし  「あー、雨の中で 世紀の名優 ジーン・ケリーが、びしょ濡れになって歌ったり、水たまりでタップ・ダンスを踊りまくるヤツ・・・ たしかに 『影武者 』の女の子が 吹き替えで歌うシーンもあったわね 」
    「この『雨に唄えば 』は、映画史の一面を描くと同時に、これも良く出来たストーリーなんだよ。サイレント(無声 )映画が全盛だった時代、すなわち 1927年ワーナー・ブラザーズアル・ジョルソン主演によって ヴァイタフォン方式を採用した 史上初のトーキー映画 『ジャズ・シンガー 』が契機となって、ハリウッドには これからはトーキー映画だという大波が押し寄せる、その舞台裏のドタバタを描きつつ、映画芸術とは 実は 壮大な“つくりもの”文化に過ぎないという事実に やがて気づかせくれる、そんな深みもある作品なんだ 」
わたし  「 吹替え の話題に戻ると、無声映画の時代であれば 俳優たちは 自分の声の質や癖などをまったく気にせず 演技に集中していればよかったのに、トーキー映画になってから以降は そうはいかなくなった - という設定が、ドラマを動かすモーターとなるわけね 」
    「そう。主人公ドン・ロックウッド(ジーン・ケリー )は、サイレント映画の有名俳優で、映画界に入る前の長い下積み時代から 叩き上げの芸人だったという設定。歌って踊れる 豊かな才能を隠している 」
わたし  「つまり トーキー映画でも十分使える “食うに困らない”男というわけね 」
    「映画会社にとって 問題は、長年 ドンが相手役を務めてきた 大女優リナ・ラモント(ジーン・ヘイゲン )のほう。彼女は、無声映画の時代にはドル箱級のスターだったけれど、その表面上の美しい容姿や外見からだけの印象とは全く正反対に、超ワガママで自己中心的な性格であるばかりでなく、とにかくヒドイ悪声で訛りも強いため、今まで 常に彼女とセットで共演させられてきたドンの立場としては、もし映画界が新しくトーキー時代を迎えても 相変わらずリナとの出演を求められるようであれば、自分の俳優としての前途まで絶たれてしまう、もはや腹を切るしかあるまいと、真剣に頭を抱えているところ 」
わたし  「ドンは、下積み時代からの親友で 音楽家のコズモ・ブラウン(ドナルド・オ’コナー )や、恋人である若い新進女優のキャシー・セルデン(デビー・レイノルズ )らと夜を徹して対策を話し合ううち、映画会社でさえ 作り慣れずに もたついている このトーキー映画を、いっそのことミュージカル映画として作り直してしまったらどうだ、という斬新なアイディアを思いつくわけね 」
雨に唄えば Singin In The Rain (2)

    「リナの悪声は 可憐なキャシーの声と吹き替え、同様に歌も差し替えてしまうことによって、史上初の(架空の )ミュージカル映画は 大成功を収めるというわけ 」
わたし  「でも 困ったことに これに味を占めて カン違いも甚だしい “大女優”リナが、今後キャシーを ずっと自分の『影武者 』として 裏方に使う ことを、一方的に宣言 ! 」
    「さあ どうする、ドン。今や 自信過剰で 鼻息も荒くなったリナには 映画会社のオーナーでさえ 正面切って ものを言えない有様だ。コズモ、何かアイディアを出せ、そして 果たして 愛するキャシードンは 守りきることができるのか ? 」

雨に唄えば Singin In The Rain (3) デビー・レイノルズ
(左 )リナ役のジーン・ヘイゲン、(右 )キャシー役のデビー・レイノルズ
わたし  「 ・・・っていうところで、今回もネタばれ自粛というわけね(笑 ) 」
    「あ、でも いくつか興味深い話題を つけ加えれば、この映画で 大女優リナの吹替えを務める ヒロインのキャシー役を演じたデビー・レイノルズの歌もまた、映画中の一部歌唱で さらに別の歌手によって 吹替えが行われていた、という事実 」
わたし  「そんな複雑な・・・ 一体 どーゆーこと? 」
夫    「デビー・レイノルズは、アップ・テンポで元気のよい歌唱には定評があったものの、映画製作者側は 彼女の声が 緩やかなバラード調のナンバーには適さない とでも判断したのか、ごく一部の曲だけだが(サントラ盤には 劇中映画のエンディング曲 “Would You” に はっきりと、そのクレジットがある )、ベティ・ノイエス Betty Noyes という女性シンガーの歌に わざわざ吹替えられていたんだ ! 」
わたし  「ひゃー、『 事実は映画より奇なり 』 ・・・っていうところかしら ? それにしても 映画は 出演者も 裏方も 陰では 皆 たいへんねー 」

    「この『雨に唄えば 』は、後年 - 1983年に - ロンドン舞台ミュージカル化され、日本でも 1996年(ジェイムス・ロッコ、高平哲郎 / 演出 )松竹日生劇場で 舞台上演されたことがあったそうだよ 」
わたし  「よくできたストーリーだものね。 ・・・んで、日本公演の配役は? 」
    「主人公ドン・ロックウッド役は 東山紀之、彼の親友の音楽家コズモ・ブラウン川平慈英、大女優リナ・ラモント花山佳子 -  」
わたし  「リナ影武者を務めることになる 肝心のヒロイン、キャシー・セルデン役は、誰だったのかしら 」
    「ふふん。それが、 『あまちゃん 』の 鈴鹿ひろ美 ・・・ 」
わたし  「え ?  あー 薬師丸ひろ子 だったのね ! (笑 ) 」
    「きれいに つながっただろ ? 」

松竹ミュージカル日生劇場「雨に唄えば 」 キャシー・セルダン/薬師丸 ひろ子_松竹ミュージカル日生劇場「雨に唄えば 」
▲ 松竹ミュージカル日生劇場(1996年 )「雨に唄えば
  吹替え歌手 キャシー・セルダン役 (薬師丸ひろ子


でも この話題は さらに もう一回続きます・・・ ⇒ その2


↓ 清き一票を
にほんブログ村 音楽ブログ ジャズへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
blogram投票ボタン
人気ブログランキングへ
Club Scherzo, since 2010.1.30.



関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

トラックバック

トラックバック URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)