クラヲタに捧ぐ、ジャズ=フュージョンの名盤 ランダム辞典
スケルツォ倶楽部、
スティーヴ・ガッド Steve Gadd を讃える。
   
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「 One (はげ山の一夜 ) 」(ボブ・ジェームス ) 1974年  
Bob James “ ONE ”(C.T.I.~TAPPAN ZEE)VACM-2002 ガッド と ボブ・ジェームス(手前)1976年 ビデオアーツ
右の写真は、ヴァン・ゲルダー・スタジオ の ガッドボブ・ジェームス(手前) どちらも若い!

 こんにちは。発起人(妻の )コーナーです。
 前回ご紹介した リチャード・ティーの名盤「ストローキン 」は、70~80年代のフュージョン界の一翼を担っていたボブ・ジェームスのレーベル「タッパン・ジー Tappan Zee」から発表されました。
 ボブ・ジェームスは、1962年のスタートこそジャズ・ピアニストでしたが、クリード・テイラーC.T.I.レーベルから4枚のオリジナル・アルバムを発表(1974~1976年)後、自己のタッパン・ジーを設立、主体的な活動を開始し、単にキーボーディストとしてだけではなく、その音楽的才能と商才によって 総合的なサウンド・クリエイター、名アレンジャーとして ジャズ=フュージョン界で 独自の地位を築くことになるのです。
 今回は、そのボブ・ジェームスの C.T.I.時代の最初のアルバム“ ONE ”(国内盤のタイトルは、あろうことか「はげ山の一夜 」 )での スティーヴ・ガッド のプレイを聴くことにします。
  “ ONE ”というシンプルな原タイトルから察すると、ボブ・ジェームスのファースト・アルバムのように思われがちですが、実は これ以前にも 彼は 自己名義でリーダー・アルバムを すでに2枚 発表していました。今となっては その2枚の知名度も低く、このブログ・コーナーの主人公であるガッドが参加しているわけでもありませんけど、以下 簡単に触れておきたいと思います。

 ボブ・ジェームスの 最初のリーダー・アルバムを聴く (ガッド不参加 )
 若きボブ・ジェームスのデビュー・アルバムは、クインシー・ジョーンズに そのジャズ・ピアニストとしての才能を見出され、当時大手のジャズ・レーベルだったマーキュリーから発表した アコースティックピアノ・トリオ「ボールド・コンセプション Bold Conceptions 」(ベース奏者:ロン・ブルックス、ドラムス奏者:ボブ・ポーザー 1962年8月 シカゴ録音 Mercury ~ Verve / SR-60768 )です。
Bob James‐Bold Conceptions(Mercury) ボブ・ジェームス 最初のアルバムはスタンダードなピアノ・トリオ

 これは 基本的にはバップ・スタイルによる演奏フォームで、選曲もジャズ・スタンダードが中心ですが、ビル・エヴァンスにも通じるリリシズム、個性的なヴォイシングや音選び、力強い打鍵の炸裂が楽しめる、注目盤。たいへん聴きやすいです。( ボブの2つのオリジナル曲に限っては 次作での暴走を予感させるものがあるけれど・・・)、レナード・バーンスタイン作曲の「キャンディード」から 何と 総督が歌う「マイ・ラヴ」を選曲する という趣味の良さに、ボブの感性が窺えます。この曲が ジャズ・ミュージシャンに取り上げられること自体 たいへん珍しく、トリオによる演奏も まるで空高く滑走してゆくかのような飛翔感にあふれ、聴いた人は誰でも この新人ピアニストの将来に期待する気持ちになる筈です。もし中古盤店などで見つけたら、即ゲット(!)なさっても、この1曲には決して後悔されないと思いますよ。
 ・・・にもかかわらず、これに続く第2作「エクスプロージョンExplosions 」(ESPというレーベルですが、これはアヴァン・ギャルドなフリー・ジャズ・レーベルで、60年代にはアルバート・アイラー、当時のファラオ・サンダースといったフリーの猛者たちが所属していました)。
Bob James‐Explosions(E.S.P.) 今のボブ・ジェームスからは想像できない、第2作目はフリー・ジャズ

 こちらは、現在のスムース・ジャズ(・・・っていう呼称、はたして定着するんでしょーか?)の旗手ボブ・ジェームスのスタイルからは、まったく、これっぽっちも、想像できない 目茶めちゃに ヘヴィーなフリー・ジャズ(実験的に、ラジオの放送やアナログ・テープ・レコーダーの早送りの騒音などを一緒に鳴らしながら即興演奏を展開)です。けっこう凄くて個人的には面白いんですが、もちろん こんなのに ガッドが 付き合っているわけありませんから、今回は ここまでにいたします。

 ・・・もとい。「はげ山の一夜」での ガッドの強烈なプレイを聴く
 では ようやく ボブ・ジェームスの“ONE”(C.T.I.~TAPPAN ZEE/ビデオアーツ・ミュージックVACM-2002)に、ついて語りはじめようかな と。

Bob James “ ONE ”(C.T.I.~TAPPAN ZEE)VACM-2002  
お待たせしました、これが “ONE”です。スゴイですよ!
 
 参加しているミュージシャンは、ボブ・ジェームス自身のキーボード、ガッドのドラムス( 曲によって アイドリス・ムハメッドに替わります)の他、グローヴァー・ワシントンJr.(ソプラノ・サックス奏者)、リッチー・レズニコフ(ギター奏者)、ゲイリー・キング(ベース奏者)、ラルフ・マクドナルド(パーカッション奏者)や アンサンブル要員として トランペット(フリューゲルホーン持替)奏者に サド・ジョーンズジョン・ファディスなど名手を含み6名、トロンボーン奏者5名、フルート(リコーダー持替)奏者2名、これに15名編成の弦楽セクションが加わった、総勢37名という大所帯です。
 日本盤では アルバムのタイトルにも冠されてしまった、ムソルグスキー作曲「はげ山の一夜 A Night On Bald Mountain 」の アレンジの斬新さについては、すでに 多くの “ ジャズ・フュージョン小僧 & 少女 ”の皆さまによって語り尽くされた感、無きにしも非ず・・・ですね。
 この曲における スティーヴ・ガッドのドラムスの炸裂、特筆ものです。さすがに30年以上経過した録音の古さは イタイ ですが、しかし くるくる変わるリズム・パターンを まるで機械のように正確に打ち分けてゆく有様、タムを転がす凄まじさ、
雷神(俵谷宗達)Wikipedeia
  ↑ まるで雷神です。ドンナーです。バッキングであるにもかかわらず、全編ドラムス・ソロのような ガッドのプレイ、ぜひ 聴いてください!

 ・・・と、ここまで書いておきながら 告白ですが、実は わたし あまり好きじゃないんですよ、この曲が。決して ガッドのプレイが・・・ではありませんよ。わたしが苦手なのは、ここで素材にされてる曲( ムソルグスキー「はげ山の一夜」 )です。これって なんか デリカシーがないっていうか、グロテスクだし、ひたすら直球勝負だし。ムソルグスキーの原曲自体には、殆んど 共感できないなー、というのが本音。
 でも 今回、必要に迫られ、夫のCDコレクションから「はげ山」のディスクを 我慢しながら10種類以上も聴いてみました! 

素材となった原曲 ムソルグスキー「はげ山の一夜」を聴き比べる 
 もし どうしても聴かなくちゃイケナイ としたら、リムスキー=コルサコフの クラシカルな編曲のままで お願いしたいものデス。

Gergiev(PHILIPS 468 526-2)
たとえば コレ。 ゲルギエフ / ウィーン・フィル(2000年 PHILIPS 468 526-2 )盤 とかね。

Golovanoff(Dante LYS-481)
急加速・減速を繰り返す 暴風雨のような ゴロヴァーノフ / モスクワ放送交響楽団(1947年Dante LYS-481 )盤 の音の悪さにも なんとか耐え忍びました。

Stokowsky(Decca POCL-9881)
ストコフスキー / ロンドン交響楽団(1966年Decca POCL-9881 )盤 の(もちろんストコフスキー自身のペンによる ) 超強烈なアレンジったら( ヴァイオリンをハーモニクスでポルタメントさせるな~! コル・レーニョでリズム刻むな ~! 木琴を使うなー ! ) ・ ・ ・ はあー、疲労困憊しました。

Leibovitz(RCA BVCC-37343)
しかし 突風の音を再現する 楽器と言うより「装置 」 ウィンド・マシンまで動員する独自な豪華(?)アレンジ(木琴は使うな って、言っておいたじゃないか ~!)と金管セクションの大喧騒 レイボヴィッツ / ロイヤル・フィル(1962年RCA BVCC-37343 )盤 ・・・ 。 はげ山の夜明け後の 壮大な まるでハリウッドっぽい この あり得ない 大フィナーレ、な、なん何じゃ これは 一体(?)、ついに わたしも切れました。
もー イラナイッ! 

by Charles M. Schulz 
 これじゃ どんどん酷くなってゆくばかりじゃない。「はげ山」なんか、もう ゲルハルト・シュトルツェ だけでたくさんだわ!( って ・ ・ ・ 失礼 ) 
 いろいろ たくさんのディスクを聴きながら 実は ここまでで すでに5日間を要してます(肩で息 )。でも 気を取り直してと。 本当は ここからが 書きたかったこと なんですから。

スコット・ジョプリン 「Solace 」での ガッドのプレイを聴く。名演!
 実は わたしが“ONE”のガッドのプレイで、本当に注目するナンバーは、CD化されてから 初めて耳にすることになった1曲のボーナス・トラック(LP未収録 ) 「Solace 」 なのです。
 これは 当ブログ スケルツォ倶楽部夫のコーナーアフター・シュトラウス & バイ・シュトラウス 」でも すでにご紹介した スコット・ジョプリン の作曲したナンバー。
ソレースSolaceに注目! ボーナス・トラック スコット・ジョプリンの「Solace」に注目! 
 
 これ・・・ 素晴らしいんですよ。
 音楽は、ジョプリンの原曲どおり、穏やかなボブ・ジェームスのアコースティック・ピアノのソロで始まるのですが、イントロを終え ハバネラのリズムに乗せ、あの 何とも魅力的な 郷愁いっぱいの旋律(作曲者は 原曲に “ メキシコ風セレナーデ ” と名づけていました ) がスタートするや、そこでドラムスが、静かにリズムを刻みながら入ってくるのですが、その最初のリズムったら・・・何と、意表を突いた「マーチング・ドラム 」 なのです。これは、ガッド以外、誰にも思いつけなかったアイディアではないでしょうか。それは見事に「Solace」の持つ曲想にドンピシャ 決まっているのですから。初めて この一曲を聴いた時、そのオリジナリティの意外さ、凄さ に わたし 鼻水が出てしまいました(花粉症も一因か? すみません)。
 やがて ガッドが 刻み始める 本当に 心地よい 複合ビート(マーチング・リズムからの切替も見事! )に乗せて、レトロなストリングスも背景に ラグタイムのシンコペーションも快適に進み、少しずつ管楽器のソリストたちが入ってきます。クラリネット、トランペット、トロンボーン・・・といった、複数のソリストが同時にソロを取るアンサンブル。これは 夭折したスコット・ジョプリン自身は 聴くことのなかった、その後のニュー・オーリンズディキシーランド・ジャズを 暗示しているに違いありません。
 
 プリザーヴェーション・ホール(ニューオーリンズ)TDK 
 深読みし過ぎかも知れませんが、さらに ジョプリンラグタイムから ディキシーを経て、スイングモダンへと流れゆく、その先に 現代の自分たちの存在があるのだ、というジャズの伝統を担っているミュージシャンとしての自負さえ この一曲 「Solace 」 に施された アレンジから 感じ取れます。リズム以外は、必要にして最小限しか 原曲に手を加えていない点も、凝った編曲を (時に やり過ぎ ? )することが多かった 当時のボブ・ジェームスにしては むしろ珍しく、逆に 好感度アップ です。

 ちなみに このアイディアを、ボブ・ジェームスは 次のアルバム( “TWO” C.T.I.~TAPPAN ZEE ) の 「 夢のマルディ・グラ Take Me To The Mardi Gras ( 原曲 ポール・サイモン )」において 発展させている、と思われるのです。「マルディ・グラ 」 とは、言うまでもなく、ディキシーランド・ジャズの 発祥地 ニュー・オーリンズマルディグラ( New Orleans Mardi Gras )で、リオのカーニバルなどと並ぶ 有名な謝肉祭(カーニバル )ですよね。このアルバムにも ガッドはドラムスで 一部だけですが 参加してますので、またいつか 次の機会に お話を続けさせて頂こう・・・  と思います。
 今回は 結構な長文になってしまいました、ふーっ 三回くらいに分割してもよかったかな。 最後まで おつきあいくださって どうもありがとうございました。貴方に読んで頂けて、とてもうれしいです。

 次回 (5)「デ・ラビット」(エリック・ゲイル)1977年 に続く

↓ はげ山・・・もとい。はげましクリックを頂けたら、次回も がんばってみます。
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コメント

かえるの音楽堂 祝 お引越し !

かえるさま、こちらこそ ご無沙汰 すみません。
最近 かなりサボリ気味を自覚してる “スケルツォ倶楽部”発起人(妻のほう )です。
「新 」かえるの音楽堂の新装開店、おめでとうございます!
新しいほうはこちら ⇒ http://ameblo.jp/frog-music 
これからも 私たちには とても真似できない コンスタントで素敵な情報に 期待しちゃいます!

URL | “スケルツォ倶楽部” 発起人 ID:-

ご無沙汰しています

スケルツォ倶楽部(奥様)さま
ご無沙汰しています。
突然ですが、今度ブログのお引越しをしました。
旧”かえるの音楽堂”は来月を持って公開終了になります。
新しいブログも無事お引越し完了し公開済です。(もっとも
まだ記事もひとつだけですが・・・)
これまでに記事は持っていかないので、また見直しして改定
版を記事にしたり、もちろん新しい記事を書いたりします。
そんなこともあり、色々なアルバムを毎日通勤途中に聴いて
います。ボブ・ジェームスのONEとかTWOとかも最近また
聴いています。相変わらずほぼ週いちの更新ですが、是非
新装開店の”かえるの音楽堂”にお越しください。
まらお気に入りにいれてくださいね(^_^)♪

URL | かえる ID:-

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