本記事は 7月17日「 注目記事ランキング クラシック音楽鑑賞 」で 第1位 となりました。
皆さまのおかげです、これからも 何卒よろしくお願い申し上げます。


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スケルツォ倶楽部 Club Scherzo

NHK-FM 「きらクラ ! 」 7月 7日放送回 で
ディアナ・ダムラウ夜の女王のアリア 」が流れた。
: パーソナリティ 遠藤真理さん 選曲センス Very Good !


遠藤 真理 セゴヴィア_バッハ_Decca ディアナ・ダムラウ Diana Damrau (2) 

 こんにちは、“スケルツォ倶楽部”発起人です。
 毎週 月曜日の朝は 出勤途上のカーステレオで、NHK-FMのクラシック音楽番組「きらクラ ! 」の再放送 ( 本放送は、前日の日曜日 午後2:00から )を聴く習慣です。

NHK-FM きらクラ!
「独特の感性を持つタレント ふかわりょうと気鋭の女流チェリスト遠藤真理の二人が繰り広げる お気楽クラシック音楽バラエティ 」( NHKホームページ より引用 )は、当スケルツォ倶楽部の「音楽ジャンルの障壁を超える、屈指のメロディ 」コーナー でも 話題にしたばかり ⇒ 「はじまりはクラシック

 パーソナリティのお二人は、番組の選曲にまで関わっているらしく ( それがとてもよい )、二人の個性も顕著に表われる選曲傾向を聴き比べるのも楽しみのひとつ。
 感性が独特の「ふかわ選曲 」も もちろん悪くはないのですが、私が肩入れするのは、チェロ奏者 遠藤真理さん(横浜市出身、芸大卒 )の - いかにも演奏家の視点を感じさせる - 選曲のほう。

遠藤真理 遠藤真理

 最初に「おや? 」と 気にするようになったのは、遠藤真理さんが(ご出産後 )同番組への復帰をめでたく果たされて以降 -  4月 14日 放送回の時のこと。
 そこで真理さんは ニコロ・パガニーニ作曲の - 本来は 無伴奏ヴァイオリン独奏のための - 「24の奇想曲(カプリース ) 」から「第13番 」、これを名ヴィオラ奏者 ウィリアム・プリムローズ自身が編曲も手掛けた、珍しい「ヴィオラ版 」という たいへん貴重な演奏のレコードを選んで、私たちに聴かせてくださったのでした。

ウィリアム・プリムローズ - リサイタル_PRIMROSE, William Recital, Vol. 2 Paganini.jpg
▲ NAXOS盤
 プリムローズトスカニーニに招かれ、NBC交響楽団の結成メンバーとして活躍したことでも知られていますよね。
 関連記事はこちら ⇒ スヌーピーと「イタリアのハロルド


 「おや? これも 遠藤真理さんによるセレクトか 」と、次に私が萌えたのは、4月 28日 放送回J.S.バッハ作曲、コラール前奏曲B.W.V.622「おお 人よ、おまえの罪に泣け 」 - これを 細川俊夫氏がヴィオラ独奏と伴奏ピアノの二重奏に編曲した、これも珍しい版でした。今井信子(ヴィオラ )ローランド・ペンティネン(ピアノ )による演奏のCDでした。
今井信子_祈り Blessing Johann Sebastian Bach (1685 - 1750)
▲ 楽器編成がオリジナルと異なる場合、聴者は 楽曲それ自体を より一層深く味わうものではないでしょうか。

 次は 5月 12日 放送回。この放送日直前に 巨匠ヤーノシュ・シュタルケルが インディアナ州の自宅で 88歳で逝去しています。遠藤真理さんは 生前のヤーノシュ・シュタルケルに個人レッスンを受けたことがおありだそうで、私の聴き違いでなければ、その際にシュタルケルが教材として選んだ楽曲こそ、この日に真理さんが選ばれた一曲、
ヤーノシュ・シュタルケル_ヴィルトゥオーゾ・ミュージック・フォー・チェロ(DENON ) ロッシーニ Paganini.jpg
パガニーニによる( オリジナルは、ヴァイオリン独奏と管弦楽伴奏による )「ロッシーニの歌劇『モーセ 』の主題による序奏、主題と変奏曲 」 - さらに ピエール・フルニエ( この人も 言うまでもない巨匠チェリスト )による 独奏チェロとピアノ伴奏による編曲版 - でした。

 さらに 私が耳をそばだてたのは、5月 19日の放送回遠藤真理さんが選んだ楽曲でした。それは、J.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲 第6番 BWV1012 」第5曲「ガヴォット 」でしたが、その時もまた オリジナルのチェロ独奏版ではなく、何と 撥弦楽器の代表選手たるアコースティック・ギター(歴史的な大ギタリスト、アンドレス・セゴヴィア編曲 )で演奏された、セゴヴィア自身の演奏による たいへん珍しい版でした。(オリジナル版では )チェロによるアルコ(弓弾き )で豊かに歌われるべき旋律線が、このギター版では セゴヴィアによって パーンと弾(はじ )ける爪弾きへと置き換えられた結果、同じバッハであるにもかかわらず、まったく違う表情を聴かせてくれる、その音楽がもつ可能性に 感銘を受けました。
セゴヴィア_バッハ_Decca Johann Sebastian Bach (1685 - 1750)
▲ ちなみに セゴヴィアによる ギター編曲のバッハを 久しぶりに聴き直してみたら、やっぱり「シャコンヌ 」を筆頭に、それはもう圧倒的な名演でしたね。

 そして 6月 16日 放送回には、ドビュッシー作曲のピアノ独奏曲「月の光 」を オリジナルのピアノ独奏版ではなく、吉野直子による 繊細なハープ独奏ヴァージョンによる優れた演奏を聴かせてもらいました。
吉野直子_CLAIR DE LUNE - HARP RECITAL(PHILIPS ) Claude Achille Debussy
▲ やはり異なる楽器による演奏表現とその効果に 目が覚めるような思いをしました(PHILIPS )。

 さらに 翌週 6月23日には「きらクラ ! 」初めての「公開生放送 」というライヴ企画において、打楽器奏者 塚越慎子さんのマリンバ遠藤真理さんのチェロによる ドビュッシー「亜麻色の髪の乙女 」という隠し玉が飛び出し、そんな「異種格闘技 」的な楽器の組み合わせでありながら、聴いた結果 これが意外にとても合う( ! )という、そんな驚きの発見がありました。
 この日 もうひとりのスタジオ・ゲストとして登場なさったのが チャイコフスキー歌劇「ジャンヌ・ダルク 」から「森よ、さようなら 」、ビゼー「カルメン 」から名曲「ハバネラ 」という二曲を 力強い歌唱で披露された メゾ・ソプラノ歌手 清水華澄さんでした。そこで 清水さんのお話しによると たいへん興味深いことに、かつて声楽課で学んでおられた頃、彼女は 指導教授から「チェロのように歌いなさい 」 というアドヴァイスを受けたことがある、というエピソードを披露されたのでした。
 その言葉に、おそらく チェリストでいらっしゃる遠藤真理さんは ここで何らかの霊感(インスピレーション )を 受けたのではないか、と 私は勝手に想像してます。と、申しますのは、「チェロが人の声に近い 」という話は 昔からいろいろな場でよく耳にすることでしたが、逆に声楽家に対して その発声方法を「チェロのように 」意識させるという話は、たいへん珍しく、興味深い発想です。実際、偶然かもしれませんが、その翌週以降の「きらクラ ! 」から 遠藤真理さんの選曲には、おそらく無意識に、声楽曲が加わるようになったからです。

Maria Callas カラス_「トスカ 」_デ=サバタ プッチーニ
6月 30日には、プッチーニの歌劇「トスカ 」から「歌に生き、愛に生き 」を選曲、マリア・カラスのソプラノ(ヴィクトル・デ・サバタ指揮、ミラノ・スカラ座管弦楽団 - ということは、名盤の誉れ高い旧モノラル録音 )ですね。

 そして 本稿執筆中時点で 最新の放送 7月 7日の放送回には、二曲の女声アリアが選ばれました。
 そのひとつは、公開ライヴ放送の時に登場した 清水華澄さんが話題に選んでおられた、ヴェルディの歌劇「ドン・カルロ 」から エボリ姫激白「酷い運命よ 」 - アグネス・バルツァの火を噴くような熱唱、そして カラヤン / ベルリン・フィルという最強のパワーで炸裂するバックアップに、あらためて深い感銘を受けました。
Agnes Baltsa カラヤン_「ドン・カルロ 」EMI ヴェルディ
▲ この全曲盤は 何といっても ホセ・カレーラス(タイトルロール )、ピエロ・カプッチルリ(ロドリーゴ )、ミレルラ・フレーニ(エリザベッタ )、ニコライ・ギャウロフ(フィリッポ2世 )というオールスター・キャスト、もう最強です。端役に至るまで ライモンディ、ヴァン=ダム、グルベローヴァ、バーバラ・ヘンドリックスなどという ベテラン勢と当時注目の若手成長株をバランスよく揃える カラヤンらしい徹底ぶりに 脱帽です。


スケルツォ倶楽部ディアナ・ダムラウを讃える。
 ・・・さらに その日 番組の後半で 遠藤真理さんによって紹介のあった もう一曲のアリアが、モーツァルトの歌劇「魔笛 」に登場する 夜の女王の「復讐の心は 地獄のように胸に燃え 」だったのですが、そこで なんと 真理さんは 発起人も 目下 イチ押しのソプラノ、ディアナ・ダムラウ Diana Damrau による 注目の音盤を紹介してくださったのでした。
ディアナ・ダムラウ Diana Damrau_EMI-Virgin ヴァージン・クラシックスTOCE-56104 モーツァルト 最期の年
▲ ジェレミー・ローラー指揮
ル・セルクル・ドゥ・ラルモニー 
音盤:EMI-Virgin ヴァージン・クラシックスTOCE-56104


『魔笛』マクヴィカー演出、コリン・デイヴィス指揮 コヴェントガーデン王立歌劇場、レッシュマン、ハルトマン、ダムラウ(Opus Arte classic 2003 )
▲ 「ダムラウの アリアが聴けるDVDを わたし持っているんですけど 」と、遠藤真理さんは番組の中で語ります。 「その素晴らしいこと。家事とかなんか しながら DVDを流してるんですけど、この場面が来たら 『 やばっ、もう一回観なきゃ 』って、そこ、必ず巻き戻ししちゃう(笑 )ところなんですよね 」と、渾身のコメント。

 ・・・そうなんですよ。
 さすがに もう「注目の若手… 」なんていう形容は不要となった、もはや 知らぬ者もない ドイツの名ソプラノ ディアナ・ダムラウ Diana Damrau ・・・
ディアナ・ダムラウ Diana Damrau ディアナ・ダムラウ_0004 ディアナ・ダムラウ Diana Damrau (2)
 ドイツ バイエルン州ギュンツブルクの出身、ヴュルツブルク音楽院を経て 地方劇場で歌った後、1999年に バイエルン国立歌劇場R.シュトラウスの楽劇「ナクソス島のアリアドネ 」のツェルビネッタ役で鮮烈にデビューしてからは、ザルツブルク音楽祭に2001年初登場(以後、毎年のように出演 )、2004年のミラノ・スカラ座再建公演では サリエリの歌劇「見出されたエウローパ 」では 招かれてタイトルロールを務めています。
 ツェルビネッタ夜の女王では 高音とコロラトゥーラに優れた激しい表現を聴かせる一方で、中低音域での豊かな表現力も瑞々しく、卓越しています(ここの紹介文章のみ、EMI広告情報に 発起人が一部手を加えたものです )。


 遠藤真理さんも ダムラウが演じる夜の女王について、「(必ずしも )ドラマティックではないんですが、透きとおり過ぎた氷のような鋭さと、同時に軽やかさと正確性も求められる(中略 )、こんな歌声もあるんだって、ぜひ紹介したくて選びました 」と、この番組の中でも珍しいくらい 熱く語っておられました。うーん、無条件で同意です !

 私 “スケルツォ倶楽部”発起人が 初めてダムラウの歌唱に触れたのは、モーツァルト「後宮からの逃走 」の前身(? )だったという説もある、失われた未完の歌劇「ツァイーデ 」(アーノンクール指揮 / ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス DHM盤 )における タイトルロール でした。

歌劇「ツァイーデ 」(アーノンクール指揮 ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス DHM盤 )
▲ 未完成ストーリーの空白部分を埋める トビアス・モレッティによる補足のナレーション効果も素晴らしいのですが、やはり注目すべきは ディアナ・ダムラウが歌う 主人公ツァイーデの 豊かな表現力、たとえば 第13曲のアリア「虎よ、その鋭い爪を研ぐがよい 」における 激高する感情鋭い巻き舌で爆発するシーンにおいても 彼女の声質が 基本的に柔軟な特性を有しているため、あたかも 「なよ竹の風に任する身ながらも たわまぬ節はありとこそ聞け ( 幕末の会津戦争時、非業の死を遂げた 西郷千重子 辞世の句 )という表現が文字どおり ぴったりの、まさに鞭のような撓(しな )りを感じさせる 女性らしい力強さなのです。
 喜多尾道冬氏も ダムラウの歌唱による「ツァイーデ 」は、「血のかよった生身の人間として強烈な印象を与えた。かつてのロッテ・レーマンに近い“歌”の真実に久しぶりにふれられた思い。“歌”には常に“初心の感動”がなくてはならない。歌曲を歌うにあたって 近年の歌い手は テクニックこそ抜群でも、その微分的な追求にかまけ、血の気が失われかかっているように見えて仕方がない。対するダムラウには“歌”の感動がある (レコード芸術、2007年11月号「この才能に注目 ! 」から ) と、手放しの大絶賛を されていました。
 併せて 喜多尾氏は、ダムラウの活動初期の歌唱が聴ける、隠れた名盤、2005年 8月の実況盤「ザルツブルク・リサイタル(Orfeo C-702-061B ) 」も推薦なさっています。コレ、実は 私も強くおススメする一枚です。
 ディアナ・ダムラウの注目すべき功績は オペラだけでなく、今日(こんにち )積極的に ドイツ・リートを歌い続けている、ということが言える と思うのです。

ザルツブルク・リサイタル(Orfeo C-702-061B )
ザルツブルク・リサイタル(Orfeo C-702-061B ) ザルツブルク・リサイタル(Orfeo C-702-061B ) (2)
 全曲素晴らしい歌唱ですが、プログラムが進めば進むほど 表現・発声・発音・声の張りといった 音楽の要素すべてにパワーと勢いがどんどん加わってきて、果たしてどこまで行ってしまうのかと思わず手に汗を握る、稀有なリート・リサイタルの一夜です。
 たとえば ヴォルフの「こうのとりの使い Storchenbotschaft 」など モーツァルテウムの聴衆と一緒になって 思わず「ブラーヴァ 」の大拍手 !
 最後、鈴を振るように美しいドイツ語で アンコール・ナンバーを告げる彼女の生声まで収録するという臨場感満点なアイディアも ちょっとめずらしいのではないでしょうか。
シュテファン・マティアス・ラーデマン(ピアノ伴奏 )
録 音:2005年8月13日、モーツァルテウム大ホール、ザルツブルク
収録曲:ベルク「初期の七つの歌 」、マーラー「天上の生活 」、ツェムリンスキー「トスカーナ地方の民謡によるワルツの歌(全6曲 ) 」、ヴォルフ「メーリケの詩による5つの歌曲 」、R.シュトラウス「少女の花(全4曲 ) 」、「花束を作ろうと 」、「愛の神 」 + 以下 アンコール Zugaben(マーラー「誰がこの歌をつくったのだろう 」、ヴォルフ「小さなものでも 」、「ペンナにわたしの恋人がいる 」、リスト「それはきっと素晴らしいこと 」 )
音 盤:海外盤 Orfeo C-702-061B



▼ マーラー:歌曲集「少年の不思議な角笛 」全24曲版・世界初録音
ディアナ・ダムラウ_Telos ( 2CD. TLS-1001 ) Gustav Mahler ディアナ・ダムラウ
テーマ【子供と若者
 「無駄な骨折り 」~少年の不思議な角笛(デュエット )
 「いたずらっ子をしつけるために 」~ 若き日の歌(バリトン )
 「たくましい想像力 」~若き日の歌(デュエット )
 「自覚症状 」~ 若き日の歌(バリトン )
 「天上の生活 」~ 交響曲第4番 第4楽章(ソプラノ )
テーマ【別れ
 「塔の中で迫害を受けている者の歌 」~少年の不思議な角笛(デュエット )
 「もう会えない 」~ 若き日の歌(バリトン )
 「別離 」~ 若き日の歌(ソプラノ )
 「シュトラスブルクの砦の上で 」~ 若き日の歌(バリトン )
 「不幸な時の慰め 」~少年の不思議な角笛(デュエット )
 「外へ ! 外へ ! 」~ 若き日の歌(デュエット )
テーマ【自然から
 「夏の歌い手交替 」~ 若き日の歌(ソプラノ )
 「魚に説教するパドヴァの聖アントニウス 」 ~少年の不思議な角笛(バリトン )
 「ラインの伝説 」~少年の不思議な角笛(バリトン )
 「緑の野を楽しく歩いた 」~ 若き日の歌(ソプラノ )
 「お高き知性を誉め讃える歌 」~少年の不思議な角笛(バリトン )
 「誰がこの歌をつくったのだろう 」~少年の不思議な角笛(ソプラノ )
テーマ【生と死
 「起床合図 」(バリトン )
 「トランペットが美しく鳴り響くところ 」~少年の不思議な角笛(デュエット )
 「歩哨の夜の歌 」~少年の不思議な角笛(デュエット )
 「少年鼓手 」(バリトン )
 「浮き世の生活 」~少年の不思議な角笛(ソプラノ )
 「3人の天使が優しい歌を歌う 」~ 交響曲第3番第5楽章(ソプラノ )
 「原光 」~ 交響曲第2番 第4楽章(バリトン )
ディアナ・ダムラウ (ソプラノ )
イヴァン・パレイ (バリトン )
シュテファン・マティアス・ラーデマン (ピアノ伴奏 )
録 音:2003年 5月、9月
音 盤:海外盤 Telos ( 2CD. TLS-1001 )

 Telosの興味深い企画盤です。
 上掲をご覧のように、マーラーのライフ・ワークともいうべき傑作歌曲集「少年の不思議な角笛 」の “ 全24曲版・世界初録音 ” と銘打たれた新盤 - この案内に 思わず色めき立ち - しかも大好きなダムラウが参加しているからというわけで - うっかり釣られて購入したディスクの曲目を眺めると、何のことはない、従来から「少年の不思議な角笛 」として知られている12曲( 「無駄な骨折り 」、「塔の中で迫害を受けている者の歌 」、「不幸な時の慰め 」、「魚に説教するパドヴァの聖アントニウス 」、「ラインの伝説 」、「お高き知性を誉め讃える歌 」、「誰がこの歌をつくったのだろう 」、「トランペットが美しく鳴り響くところ 」、「歩哨の夜の歌 」、「浮き世の生活 」、「起床合図 」、「少年鼓手 」 )の他、 通常は「若き日の歌 」として編まれている 9曲( 「いたずらっ子をしつけるために 」、「たくましい想像力 」、「自覚症状 」、「もう会えない 」、「別離 」、「シュトラスブルクの砦で 」、「外へ ! 外へ ! 」、「夏の歌い手交替 」、「緑の野を楽しく歩いた 」 )、これに交響曲からの3曲(交響曲第4番から第4楽章「天上の生活 」、交響曲第3番から第5楽章「3人の天使が優しい歌を歌う 」、交響曲第2番から第4楽章「原光 」 )を加えた「全24曲 」が 初版のピアノ伴奏版で(魅力的と言えないこともない側面はあるものの )初録音されたということに過ぎません。 
 それでも、これらの歌曲の目新しいところは 確固たる見解に基づいて【子供と若者 】、【別れ 】、【自然から 】、【生と死 】というマーラーの音楽のキーワードとも言える4つのカテゴリーに 無理なく分類された上、各詩の内容に応じ 全楽曲が 4つの分類のいずれかに分けられていること、尚且つ 対話形式が多い詩の内容に応じて、かつてジョージ・セル = シュヴァルツコップフ = F.ディースカウという最強の布陣によって録音された「不思議な角笛 」(EMI盤 )を踏襲するかのように、男声と女声によるデュエットによる歌唱が多いところが この2枚組の特徴です。特に「トランペットが美しく鳴り響くところ 」は、デュエット歌唱による効果が大きいことを 発起人、実感していますので、ここは強力に支持したいです。また、「原光 」が ピアノ伴奏のみならず バリトン独唱で歌われているという珍しいヴァージョンで聴けたことも、大きな収穫でした。


シューマンの肖像画 Robert und Clara Schumann_Songs and Letters(Telos ) Clala Schumann
▲ シューマン:歌曲集「ミルテの花 」& シューマンとクララ 手紙の朗読
Robert und Clara Schumann: Songs and Letters
ディアナ・ダムラウ(ソプラノ )、イヴァン・パレイ(バリトン )
シュテファン・マティアス・ラーデマン(ピアノ伴奏 )
マルティーナ・ゲデック、ゼバスティアン・コッホ(朗読 )
録 音:2006年 2月
音 盤:海外盤 Telos(TLS-1006 )

 こちらもTelosの珍しい企画盤です。
 今宵ご紹介している他のディスクに比べると ダムラウが その本領を発揮しているとは 言えないかも知れませんが、シューマンの傑作、歌曲集「ミルテの花 」成立の背景となった時期、すなわち周囲の反対という高い障害を乗り越え、恋人クララと結ばれるまでの二人の往信記録としてのラヴ・レター11通 の朗読を しかるべき歌曲の間に挿入しながら聴かせてくれるという たいへん興味深い試みです。
 ぜひ すべての日本語対訳を付けて国内盤を出してほしいところなのですが・・・やはり こんなご時世、到底無理でしょうか。図書館で ロベルトとクララの この時期に往信した手紙・書簡集の日本語訳を探してきて、それを確かめながら聴くしか 今の私たちにとって 打つ手はないようです。


ディアナ・ダムラウ = ヘルムート・ドイチュ:シュヴァルツェンベルク・リサイタル
ディアナ・ダムラウ_Orfeo C-749-071A ヘルムート・ドイチュ_Helmut Deutsch
 上掲CDの、欲求不満を ある程度 晴らしてくれるような快作が こちらです。
 私 “スケルツォ倶楽部”発起人ドイツ・リートを歌う女声を聴いて、これほどまで 心に震えがくるほど感動させられたのは、個人的には 幼い日 エリー・アーメリンクの歌唱を イェルク・デムスハンマーフリューゲル伴奏(DHM盤 )で耳にして以来のこと。素晴らしいです。
 これは、2006年 9月 4日、シュヴァルツェンベルクのアンゲリカ=カウフマン・ザールシューベルティアーデで行われた、名手ヘルムート・ドイチュのピアノ伴奏で行われたリサイタルのライヴ録音
 敢えてシューベルト作品には 一切手を付けず、代わりに シューベルト周辺のロマン派の作曲家、すなわち シューマンとその妻クララ・シューマン、ブラームス、メンデルスゾーンとその姉ファニィ・メンデルスゾーン、ショパン、そしてリストの歌曲という、魅力的な選曲でプログラムが組まれています。いずれもダムラウ固有の声が温かい、本当に素晴らしい熱唱です。
 本来 第一曲の「献呈 」を 敢えて最後に持ってくることによって シューベルトの「アヴェ・マリア 」動機が際立つ効果も素晴らしい歌曲集「ミルテの花 」(抜粋 )は 自由に曲の配列を入れ替えた 工夫も際立つ好企画ライヴの実況盤です。
 会場からは 一斉に足踏みが鳴るほど 聴衆の熱狂が伝わる大喝采まで収録されています。これが短く編集されてしまって(残念 ! ) 4曲のアンコールが続きます。シューマンの短い「愛の歌 」、ザルツブルク・リサイタルでもアンコールで披露された(おそらくダムラウのお気に入り なのでしょうね )リスト作曲の短くも憧れに満ちた抒情的な一曲「それはきっと素晴らしいこと 」、続けて ここでも聴衆に曲名を告げるや否や明るい調子で始まる シューマンの民謡風な快作「悲しい響きで歌わないで 」、そして 最後を締めくくるのは ブラームスの有名な「子守唄 」、始まった瞬間 その意外な選曲に聴衆がざわつくのと同時に一部の熱心なファンが「シーッ(静かに ! ) 」と周囲を注意する空気がしっかりと収録されているのが微笑ましいです。「子守唄 」の後に きっと湧き起こったに違いない大拍手もカット( それとも聴衆は全員眠り込んでしまったのでしょうか? )。
ヘルムート・ドイチュ(ピアノ伴奏 )
録 音:2006年9月 4日、シュヴァルツェンベルクのアンゲリカ=カウフマン・ザール
収録曲:クララ・シューマン「それはある日のこと 」、「花よ、何を泣いているの 」、「あなたの肖像画 」、「無言の蓮の花 」、「月桂樹 」
シューマン「ミルテの花 」から「ズライカの歌 」、「まだ見ぬ人 」、「くるみの木 」、「お母さん ! お母さん ! 」、「彼の胸にすがらせて 」、「蓮の花 」、「献呈 」
メンデルスゾーン「新しい愛 」、「花束 」、「月 」、「魔女の歌 」
ショパン「愛する人 」、「リトアニアの歌 」、「闘士 」、
リスト「美しい芝生が広がるところ 」、「わが子よ、もし私が王様だったら 」、「ああ、私が眠るとき 」
ブラームス「セレナード 」、「メロディのように 」、「あの下の谷の底では 」、「どうやって扉の中に入ればいいの 」、「甲斐のないセレナード 」
ファニィ・メンデルスゾーン=ヘンゼル「山の憩い 」、「なぜばらが褪せているの 」、「南へ 」+ 以下 アンコール Zugaben( シューマン「愛の歌 」、リスト「それはきっと素晴らしいこと 」、シューマン「悲しい響きで歌わないで 」、ブラームス「子守唄 」 )
音 盤:海外盤 Orfeo C-749-071A


 このように、ディアナ・ダムラウの注目すべき功績は、オペラのみならず 積極的にドイツ・リートを歌い続けているということも特記事項です。

ダムラウ_R.シュトラウス 歌曲集(EMI Virgin) ディアナ・ダムラウ_リスト歌曲集EMI
▲ 比較的最近、ダムラウR.シュトラウスリストの 大変に素晴らしい歌曲集のアルバムを - 従来からの既発リサイタル盤には この二人の作曲家の作品も すでにとり上げてはきましたが - リリースしています。さすがに今宵は スタミナが尽きてしまいましたが、必ず また別の機会に あらためて語る気でいることを お約束します。

 本日は、前半は 遠藤真理さんの優れた感性についての話題、 後半は ディアナ・ダムラウの話題と、思いつく先から 興に乗るまま 書き綴り(打ちまくり )、甚(はなは )だ 文章にまとまりを欠きましたね。テーマから 二回に分けて書けばよかったです。最後まで読んでくださった 会員のかたには感謝するしかありません。これに懲りず(?) どうかまたご来訪くださいね。

▼ 「みなさん、またね ~ 」
Diana Damrau

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コメント

Re: いつも良コメント ありがとうございます。

木曽のあばら屋 さま! お久しぶりです、いつもながら見識のコメント、ありがとうございます。
「あらかじめ作曲者も、曲名も、演奏者も告げない 」ことによって「先入観のない状態で曲と対峙することで、より深く味わえる 」って、おっしゃるとおりと思います。
未知の名曲に 不意に出会える機会って 齢を取ると却って余計な知識量に邪魔され、求めても少なくなってしまいました、でも 個人的に思い出してみると まだ音楽を聴き始めの - 先入観も何もなかった - 小学生の頃なんて、FMラジオから流れ出てくる すべての音楽が「未知の曲 」でしたから、ホントに すべての音楽を食い入るように聴いたものです。。。
コンサートなどで、アーティストが 曲名を告げずに演奏を始める「アンコール 」が これに近い「わくわく感 」ですよね、ある意味、音楽を楽しむ本質的な要素であること、力強く同意します!

「ノタシオン 」の件、エマールだったからこそ なおさら良かったと思います。
最初に出会う楽曲は その演奏も とても幸運な要素ですね。「硬質な抒情がこぼれ落ちる 」っていう表現、素晴らしい! 木曽のあばら屋 さまったら詩人ですね!

URL | “スケルツォ倶楽部” 発起人 ID:-

聴き応えのあるコーナーです

こんにちは。
ダムラウの「夜の女王」素晴らしかったですね。

「きらクラ」の「好きな曲コーナー」のミソは、
あらかじめ作曲者も、曲名も、演奏者も告げないことじゃないかなと思いながら聴いています。
先入観のない状態で曲と対峙することで、より深く味わえるような気がします。
「夜の女王のアリア」も、「この透明で鋭く、華麗で正確無比な歌唱はいったい誰?」
と、耳をかっぽじって食い入るように聴きました。
遠藤さんの「まだ生きている方」とのコメントにはちょっと笑いました。
前回がマリア・カラスだったからかな。

この日はふかわさんの紹介したブーレーズ「ノタシオン」も驚きでした。
硬質な抒情がこぼれ落ちるような、なんという美しい響きの連続。
誰の曲だろうと思ったらブーレーズ!
聴かずギライだっただけに、耳からウロコが落ちる気がいたしました。

URL | 木曽のあばら屋 ID:GHYvW2h6[ 編集 ]

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