本記事は 6月 5日 「 注目記事ランキング クラシック音楽鑑賞 」で 第1位 となりました。
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スケルツォ倶楽部 Club Scherzo
バーンスタイン 二度目の「春の祭典 」、
インパクト満点のジャケット = リチャード・ヘスの世界には
アンリ・ルソー が住んでいる。


ヘス=バーンスタイン_ロンドン交響楽団_春の祭典_CBS-SONY
ストラヴィンスキー作曲 「春の祭典 」
レナード・バーンスタイン(指揮 )
ロンドン交響楽団
録音:1972年 4月 ロンドン 推定
ロイヤル・アルバート・ホール ?
音盤:Columbia(CBS-SONY )

 
 ストラヴィンスキー作曲「春の祭典 」、バーンスタインによる 第一回目の録音(1958年 )については、先日 すでに話題に挙げさせて頂いたとおり、当時 常任指揮者に就任したばかりの ニューヨーク・フィルとの爆発するような激演の記録でした。
 それから14年ぶりとなる - 今回は ロンドン交響楽団との - 「夢の 」再録音 に対しては 当時おそらく世界中のクラシック・ファンから 過剰な期待がかかっていたことでしょう。CBSコロンビアもこれに応えるべく、その初出L.P.は 当時 話題の最新再生技術だった SQ4チャンネル録音が採用されていました。
SOCL-1046.jpg
4チャンネル・ステレオ (Quadraphonic Sound ) : アナログ・レコードに 通常の2チャンネル・ステレオに加え、リア・スピーカー 2チャンネル分の信号を追加、計4つのスピーカーによって 立体的な音響効果が得られるようにした再生方式。
 1970年代前半に 各社からいくつかの方式が発表され、対応ソフトも発売されたが、規格乱立による消費者の混乱、ソフトの不足、完成度の低さといった要因が重なり主流となることなく、短期間のうちに市場から消え去った(Wikipediaより )。


Leonard Bernstein Leonard Bernstein (5) Leonard Bernstein (3)
 ・・・もとい。旧録音(ニューヨーク・フィル 1958年 )が、オーケストラとは かなり近距離にマイクを置いてのレコーディングだったため、初期ステレオ録音の音位置にはありがちな「個性的 」ミキシングとともに、ニューヨーク・フィルの楽団員が放つ間接音や生々しい臨場感、足を踏み鳴らすバーンスタインの飛び散る汗までをも間近に感じられるほどの、それは 凄まじい音響でした。
 詳しくは ⇒ こちら
 これに対して、この 1972年の新録音(ロンドン交響楽団 )のほうは、また別の意味で個性的なレコーディングでした。

1871年のロイヤル・アルバート・ホールのオープニングセレモニー Leonard Bernstein (4)
 それは、相対的にマイクロフォンの位置を オーケストラからは遠くへ離し、各楽器の間接音を拾うことを慎重に避ける代わり、相当広いホールを(録音ロケーションのクレジット記載が なぜか無いのですが、この ぐゎんぐゎん鳴りまくる残響から察して やはりロイヤル・アルバートホールである可能性が高いと思います )派手に鳴らしまくった豊かな残響と そこでのオーケストラル・サウンドをゴージャスにとらえた、旧録音とはまったく異なる 対照的な仕上がりです。
ロイヤル・アルバート・ホールと バーンスタインに関連する話題 ⇒ こちらもどうぞ

 ホールの残響時間とは、長ければ長いほど サウンドも豊かになると思われがちですが、実は その明瞭度は 反比例して低下してしまいます。音像の輪郭は 芯を失い、焦点までぼやけてしまうのです。「春の祭典 」のような テンポの緩急や音量の大小が 激しく変動する特殊な音楽の場合には、残響時間の長いホールは適していなかったことが、この バーンスタイン / ロンドン響のレコードを聴けば、図らずも理解されることでしょう。
 旧盤デッドな(残響の少ない )音場に比べ、新(ロンドン響 )盤の 広いホール空間による長めの残響時間は、バーンスタインに 強(し )いて 遅いテンポを選択させることになったわけですが、ホールの選定まで レニーの意図したところだったかどうかまでは、正直 わかりません。けれど いかなる状況に置かれても ロンドン交響楽団 の 高いアンサンブル能力をバーンスタインが 完璧に統率していることは 音楽をお聴きになれば 瞭然で、これを疑う人は 決していらっしゃらないと思います。

ストラヴィンスキー「春の祭典 」1976年 ソニー「CBSステレオ1300 」シリーズ(13AC-21 ) ストラヴィンスキー「春の祭典 」バーンスタイン ニューヨーク・フィル 国内盤
 私 “スケルツォ倶楽部”発起人は ▲ バーンスタイン / ニューヨーク・フィルとの旧録音によって - 幸か不幸か ? - 初めて「春の祭典 」という名曲と出会ってしまったため、おそらく この個性的な「音 」の呪縛に まちがいなく一生捕らわれ続け(でも 喜んで諦め )るとは思いますが、もし主観を混ぜた比較を容れずに、単独評価で ロンドン響との新録音を聴いたとしたら、きっと凡百の駄演など太刀打ちできない、これはこれで 十分に素晴らしいレコーディングである と証言するでしょう。

 しかし 実は バーンスタイン二度目の「春の祭典 」録音の印象を さらに鮮烈にしたものは、おそらく古今東西、数多(あまた )のクラシック音楽レコードにおいて これほどインパクトも強烈なオリジナル・ジャケットは 他に存在しないのではないかと思われるほど 斬新なイラストレーションを描き上げた、ひとりのデザイナーの起用でした。

Richard Hess (2) Richard Hess (1) Portrait of Richard Hess by Mark Hess
リチャード・ヘス Richard Hess (1934 - 1991 )  ・・・ 少なくとも 私 “スケルツォ倶楽部”発起人 は、この才能あるイラストレイターのデザインを凌ぐほどのジャケット・デザインによる クラシック・レコード は(CDも含め )、決して他には 思い当たりません。んもう 手放しで絶賛したいです。

 ヘス Richard Hess についての詳しい情報は 残念ながら多くないのですが、この画家はデトロイト出身、若いころからグラフィック雑誌の表紙デザインを手掛けていました。やがて広告デザイナーとして成功をおさめ、デトロイト、フィラデルフィア、ニューヨークなどの広告代理店で活躍するようになってから後、独立してアート・ディレクターとしてのデザイン会社を経営するようになったようです。当時の主要なクライアントには IBM、デュポン、ゼロックス、パンナム PanAm、AT & T といった 超大手企業の名前が並んでいますので、その手腕と 高い評価のほどが うかがい知れます。
 その後、ヘスは 息子のマーク・ヘス Mark Hess を共同経営者として「ヘス & ヘス 」Hess & Hess.という会社を起こし、芸術性の高い絵画と広告媒体へのイラストレーションという二つの異なる経歴を同時に築きながら 成功を収めたのでした。
 その画風は、シュールレアリズムの画家として有名な ルネ・マグリット の作風に 強く影響を受けていると思います。

 ・・・もとい。
 CBSコロンビア・レコード - 1972年のバーンスタイン / ロンドン交響楽団 による - ストラヴィンスキー作曲「春の祭典 」のジャケット・デザインを手がけたリチャード・ヘスは、ここに フランス素朴派の画家と呼ばれるアンリ・ルソー Henri Rousseau のスタイルを投影させているように感じます。

▼ たとえば、ルソーの描く夜景には 必ず登場する 天空にのぼる 小さな満月 - 。
Henri Rousseau

▼ こちらは リチャード・ヘス : ストラヴィンスキー「春の祭典 」ジャケット(部分 )
Richard Hess_春の祭典(部分 )

▼ それから ルソーが描く 独特の緑の色、植物、灌木、花々・・・
Henri Rousseau_サン・クルー公園の小路 夢 (部分 )_Henri Rousseau

▼ こちらは、リチャード・ヘス : ストラヴィンスキー「春の祭典 」ジャケット(部分 )
Richard Hess_春の祭典(部分 ) (2) Richard Hess_春の祭典(部分)

▼ そして ルソーの作品世界の中には しばしば登場する、大自然に全裸女性
夢 1910年_Henri Rousseau

ルソーが 自作の原始林に配置する女性は、みんな どこか似ています。
Henri Rousseau_Eve

▼ こちらは リチャード・ヘス : ストラヴィンスキー「春の祭典 」ジャケット(部分 )
Richard Hess_春の祭典(部分) へびくん も上掲と共通ですね 「ウナギじゃないよ! 」


■ “架空の”リチャード・ヘス展
 ・・・さて、今宵のお別れに、リチャード・ヘス Richard Hess が遺した 個性的な絵画を いくつかご覧ください、素晴らしいです。 Bravo !

▼ チャールズ・アイヴズ がテーマです。
Richard Hess _Ives
"Charles Ives: The 100th Anniversary"
 Columbia Masterworks M4 32504 : The 5-LP set


▼ マグリット風の作品「ステップス
Richard Hess _Steps

▼ これもマグリット風、「アイデンティティ 」と題された作品
Richard Hess _Identity

▼ 「スクリューノート Screwnote 」(1973 )
Richard Hess_Screwnote1973

▼ 「平和の使い 」Dove
Richard Hess _Dove

▼ シュールな グラフィック・マガジンの表紙 Cover for Graphis magazine (1977 )
Richard Hess _Cover for Graphis magazine 1977

 今宵、話題にさせて頂いた リチャード・ヘスの情報は、Mr. Mark D. Ruffner さんの All Things Ruffnerian ( “Illustrator Richard Hess” ) から教えて頂いたものです。 深く感謝申し上げます。
Many thanks !

ヘス 春の祭典 うさぎ

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