本記事は、5月22日 「音楽ブログ 注目記事ランキング 」、および
5月20日 「人気記事ジャズ ランキング 」 で それぞれ 第1位 に なりました。
皆さまのおかげです、これからも 何卒よろしくお願い申し上げます。

   
スケルツォ倶楽部 Club Scherzo
「空中に消えた音楽を つかまえることは、誰にもできない 」
タイトル You Can Never Capture “IT” Again … ⇒ もくじは こちら
こんなことは できないのだ
“When you hear music,after it's over,it's gone in the air.
 You can never capture it again. “  ( by Eric Dolphy

音楽は 聴きおわった後、 空中へ消えてしまうので、
再び つかまえることは 誰にも できないのだ (エリック・ドルフィー



マンハッタン・トランスファー  The Manhattan Transfer
モンクに捧ぐ夜 The Night That Monk Returned To Heaven

スケルツォ倶楽部 マンハッタン・トランスファー_モンクに捧ぐ夜 Manhattan Transfer(Warner Bros. )
マンハッタン・トランスファー The Manhattan Transfer
モンクに捧ぐ夜 The Night That Monk Returned To Heaven
作詞 / 作曲:ロバート・クラフト
リリース年:1983年
アルバム名:Bodies And Souls「(邦題 )アメリカン・ポップ 」に収録
音   盤:Warner Bros. ( ワーナーミュージック・ジャパンWPCR-14464 )


 …ここは 天国。白い雲の上を吹き渡る やさしい風の音がイントロです。

The Night That Monk Returned To Heaven モンクに捧ぐ夜
The night that Monk returned to heaven
  その夜、モンクは天に戻っていきました
Climbed every step and stood on seven
  天国への七つの階段を 昇ったところで 立ち止まり、
He hummed "Epistrophy"
  ふんふんと「エピストロフィ 」のメロディをハミングする…
The light of Angels shone above him
  彼のことを、いと高きところから 天使たちが光を照(あ )て、
They mentioned God would surely love him...
  ささやきあいました、神さまは 彼のことが 大好きだから
To play "My dear, Ruby"
 きっと「マイ・ディア・ルビー 」をご所望になるだろうって。
So Monk、Pure Monk、
  だからモンクは、ピュアなモンクは
Sat down and played a chorus
  ピアノに座ると ワン・コーラス弾いたのです
And God said,
  すると神さまは 歓迎のお言葉をくださいました
“Monk...The door is open to My House”
  「お帰り モンク、さあ お入り、待っていたよ 」と
                          ( 意訳 山田 誠 ) 

 前アルバム「モダン・パラダイス mecca for modern 」に収録された傑作「バークレー・スクエアのナイチンゲール 」を思わせる、繊細極まるコーラスが胸に沁みる マンハッタン・トランスファー 畢生の名唱です。
 そのエンディング、絶妙なコーラスが空へ消えてゆくと、まるでこれを追うかのように生前のモンク自身が弾く「ラウンド・ミッドナイト 」 - その朴訥としたピアノの音 - が巧みにコラージュされ、やがてこれも天に召されるかのようにフェード・アウトするという、この秀逸なアイディアを演出したのは 編曲家のジェレミー・ラボック
 順序は逆になりましたが、作詞 / 作曲を手掛けたのは シンガー・ソングライターのロバートクラフト Robert Kraft ( 似ているので たいへん紛らわしいのですが、ストラヴィンスキーの弟子で シェーンベルクなど 新ウィーン楽派の全作品をCBSに録音したことによっても著名な指揮者・音楽学者 Robert Craft とは 別人 )です。

 ジャズの歴史に於ける偉大なチャーリー・パーカーバド・パウエルマイルス、コルトレーンとも並び称される存在で 唯一無比の個性派ピアニスト、セロニアス・モンク Thelonious Monk(1917 – 1982 )が ついに亡くなったのは、1982年 2月17日のことでした。 - 「ついに 」というのは、モンクは亡くなる前の10年間もの長い間、ずっと「双極性障害」という重度の躁鬱病に苦しみ続け、このために演奏活動はおろか新しい楽曲の創作も ほとんど出来なかったからでした。
 一度倒れたモンクが 在宅療養していた時期(70年代 )のジャズ・シーン、音楽シーンは、ご存知のとおり すっかり変貌を遂げていました。50年代から活躍していた モンクと同世代のミュージシャンたちは 産業ロックに押されて仕事を失い、その多くがヨーロッパへと活動の場を移しました。一方、大御所マイルスが 率先して「ビッチ’ズ・ブルー 」で口火を切って以降、われもわれもと これに対抗するようにエイト・ビートのロックやファンクのリズムを取り入れてみたり、大音量の電化楽器を持ち込んだ「新しいジャズの形である 」と(当時は )思われた、クロスオーヴァーフュージョン などと呼ばれる試行錯誤のニュー・グループ全盛となり、その陰で もはやアコースティック・ジャズは すっかり衰退してしまったかのように見えました。
 生きながらにして死んだ状態に等しかった最後の10年間をひっそり過ごしていた “バップの高僧”セロニアス・モンクもまた、世間一般からはもちろん 後輩のジャズ・ミュージシャンからさえも忘れ去られてしまったかのように - その存在は まさしくアコースティック・ジャズの同義語であるかのように -見えたものでした。

 しかし、やがて80年代になって 世の中がロック・ビートの騒がしい電化サウンドにも そろそろ飽きてきたかなーという頃、マルサリス兄弟らを代表とする 当時 新伝承派と呼ばれていた 洗練された4ビート・ジャズに かつてのアコースティック・ジャズ復調の兆しが見えてきたのです。
 けれど・・・ そんな矢先に モンクが天に召されたことは、皮肉でした。訃報を聞いたミュージシャンたちは 誰もが 偉大なモンクの功績と「ラウンド・ミッドナイト 」を思い出しました。今まで モダン・ジャズの恩人を、どれだけ 蔑(ないがしろ )にしてきたかを、それは まるで突然 悟ったかのようでした。

 モンクが亡くなったと聞いて、おそらく最も早く反応したミュージシャンのひとりが ウェイン・ショーターではなかったでしょうか。
Conrad Silvert Presents Jazz At The Opera House Conrad Silvert Presents Jazz At The Opera House left
 この話題は、以前にも ジャズ・カフェ 午後のソッ・ピーナ で 少し触れましたが ( ⇒ 「敢えて ウェイン・ショーターの スタンダード・ナンバーが聴きたい 」 )、不治の病に侵され 死の宣告を受けた若手ジャズ評論家コンラッド・シルバートが 生涯の最期に企画した 大規模なジャズ・コンサートの開催日程が、奇しくも 1982年 2月22日 - そうです、セロニアス・モンクが亡くなって 5日後 のことだったのです。
 ステージに駆け上がったウェイン・ショーター、余計なスピーチは一切省略、
This Is A For Monk !
と、そう一言 告げるなり マウスピースをくわえ、ピアノに座った盟友ハービー・ハンコックと素早くアイ・コンタクトを交わすと、モンクへの追悼と感謝の念をこめた「ラウンド・ミッドナイト 」を 演奏したのでした。

Chick Corea Trio Music_ECM_0001 Chick Corea Trio Music_ECM Chick Corea Trio Music_ECM_Miroslav Vitous Chick Corea Trio Music_ECM_Roy Haynes
 チック・コリアもまた ミロスラフ・ヴィトウス(ベーシスト )、ロイ・ヘインズ(ドラマー )との 歴史的な「ナウ・ヒー・シングス~ 」トリオを 再結成、セロニアス・モンクのオリジナル作品を中心に据えたアルバム トリオ・ミュージック Trio Music を 1982年 ECM からリリースしています。
 もともと このアルバムは、チック・コリアとトリオ・メンバーとのオリジナル曲だけで構成される予定だったようですが、訃報を聞いたコリア 1958年のファイヴ・スポット・ライヴなどでモンクとの共演経験のあった 名ドラマー ロイ・ヘインズの存在を重視し、モンク作品のレコーディングを思いついたものの、権利関係が理由なのか ECM から要請があったのか、何にせよ やむを得ない事情があったのでしょう、急きょアルバムを ( 今 考えれば 少し不自然な ) L.P. 2枚組という規模に拡大、その 2枚目だけ「リズム・ア・ニング 」、「ラウンド・ミッドナイト 」、「エロネル 」、「シンク・オブ・ワン 」、「リトル・ルーティ・トゥーティ 」、「リフレクションズ 」、「ハッケンサック 」といったモンク・スタンダードで 固めています。
 「少し不自然な・・・ 」と 私が思ったのは、わざわざレコードのライナーに印刷されていた チック・コリア自身の言葉でした。
 ここでは「モンクの作品を取り上げたのは 故人のメモリアルが目的ではなく、彼の作品が 20世紀の古典名作であるから 」で、また モンク作品のレコーディングをしていたのは たまたま偶然で、それらは「実は モンクが逝去する何ヶ月も前から録音していたものだった 」などと 説明を加える文章でした。  ・・・って、そんなこと もし事実だったとしても わざわざライナーに書かなくてもよいことではないでしょうか、ひとりの偉大なミュージシャンが逝去した折、追悼を装った企画アルバムを安易に仕立て上げたと思われたくなかったということでしょうか、 いずれにせよ さすが屈折している - と感じました。同時に そこが 多弁な チック・コリアらしいなー とも思ったものです。コンラッド・シルバート・デイショーターの態度とは、まさに対照的です。脱線、すみません。
 けれど このトリオの演奏は、鬼気迫るほどの ホント素晴らしいものでした。私 “スケルツォ倶楽部”発起人 が リアル・タイムで モンクの作品に 本格的に触れるようになったきっかけは、まさに このレコードでした。これによってモンク・オリジナルの面白さに取りつかれるようになり、当時は 2枚組でリリースされていた このセットも チック・コリア・トリオの オリジナル曲が収められていた一枚目に針を降ろすことは 実は殆どなく、モンク作品が収められた二枚目のほうばかり 繰り返し聴いていましたっけ(笑 )。

Thats The Way I Feel Now - A tribute to Thelonious Monk
 モンクの逝去から 2年後 A&Mレーベルからリリースされた、ハル・ウィナーのプロデュースによる「That's The Way I Feel Now - A tribute to Thelonious Monk (1984年 ) 」という 複数のミュージシャンが参加の トリビュート・アルバム、うっかりオリジナルL.P.(これも 2枚組でした )を手放してしまって以来、それきりCDで買い直せる機会がなく、もう一度聴きたくてしょうがありません。
 記憶に残っている範囲で書いていますが、たとえば ファイヴ・スポットに於けるモンクとのライヴ(1958年、リヴァーサイド )盤で名高い 名手ジョニー・グリフィンをフィーチャーした、カーラ・ブレイ・バンドによる「ミステリオーソ 」が面白かったなー、NRBQ & ホール・ホイート・ホーンズによるブチ切れまくった「リトル・ルーティ・トゥーティ 」、ドクター・ジョンのピアノ・ソロによる「ブルー・モンク 」、同じくバリー・ハリスによる「パノニカ 」は いずれも味わい深く、特に後者の独特なピアノの音色は いまだ耳について離れません。名曲「ラウンド・ミッドナイト 」を担当するのは、意外やジョー・ジャクソン。変な曲「13日の金曜日 Friday the Thirteenth 」では、何と ボブ・ドローボビー・マクファーリンという 二人の鬼才の共演。このアルバムの中では スティーヴ・レイシー(ソプラノ・サックス )が大活躍していて、ギル・エヴァンス(ピアノ )と「ベムシャ・スイング 」、エルヴィン・ジョーンズ(ドラムス )と「エヴィデンス 」、モンク最後のレギュラーバンドのテナーサックス奏者だったチャーリー・ラウズとの共演で「アクス・ミー・ナウ 」などが聴けます。
Steve Khahn Donald Fagen
(左 )スティーヴ・カーン、(右 )ドナルド・フェイゲン (スティーリー・ダン )
 でも 中でも やはり極めつけの名演は ドナルド・フェイゲン(鍵盤ハーモニカ、シンセサイザー )と スティーヴ・カーン(アコースティック・ギター )の協演による、美しい「リフレクションズ 」ではないでしょうか。ああ コレ、廃盤となって久しいはずですが、ぜひCDで 完全版を 再リリースしてほしいものです。 今 手元にないと、尚更 聴き直してみたくなります。

■ 「天に召される演奏家 」を 音楽で表現することもできる
 マンハッタン・トランスファーの「モンクに捧ぐ夜 The Night That Monk Returned To Heaven 」 - ここでは、モンクピアノ・ソロ録音「ラウンド・ミッドナイト」が 効果的に使われているわけですが、このように 残された「 」を、演出のマテリアルとして使うことによって、音楽家の「存在 」ばかりでなく、「」をもまた 象徴させることさえ 可能なのです。
 この曲のエンディングで フェイド・アウトする「ラウンド・ミッドナイト 」が、これに当たります。この「音楽 」が、天に召され 高く昇ってゆく「モンク 」自身の「 魂 」のメタファーとなっていることを 誰しもが直感することでしょう。

■ おまけ : モンクの帽子コレクション
Thelonious Monk-Manqoqhapaq Thelonious Monk_帽子コレクション_TOCJ-66474 Thelonious Monk_帽子コレクション (2) Thelonious Himself_Monk_’Round Midnight(Riverside )
Thelonious Monk_帽子コレクション Thelonious Monk_帽子コレクション (3) Thelonious Monk_帽子コレクション_Complete Paris And Milan Concerts 1961_FSRCD‐745.JZ130124-56 Monk in Europe vol.2 Riverside タイム 1964年02月(表紙モンク!)


 今宵は ここまでに。モンク自身の象徴として機能する名曲「ラウンド・ミッドナイト 」についても、またいずれ 別の機会に 触れたいと思ってます。

Snoopy Red Baron       Solo Monk (CBS )

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