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スヌーピーの作者シュルツ氏と
「イタリアのハロルド(ベルリオーズ作曲 ) 」
 

1) Buying some new records cheers me up・・・ 2) I was so depressed today. I bought Mendelssohns violin concerto etc. etc... 3) Wow ! 4) How depressed can you get?
谷川俊太郎・訳(鶴書房 )

 今回から 「スヌーピー(コミック『ピーナッツ 』 )」の生みの親である チャールス・M.シュルツ氏が遺した語録から、音楽について語っている文章を いくつかご紹介しましょう。
 まだ若きシュルツ氏が、大手雑誌へ作品を投稿し続けていた1950年以前のエピソードです。
24歳のチャールス・M.シュルツ氏(角川書店) 
24歳の頃のシュルツ氏(アート・スクール教官時代 )角川書店

 「・・・セント・ポールへの帰路、・・・ 非常に面白そうな人を相手に よもやま話が始まりました。その人は 小さな音楽雑誌の社長だということでした。おりしも 私はクラシック音楽を聴くようになったばかりで、クラシックに関することなら 何であれ興味津々。それでいて掛け値なしのシロウトですから、訊きたいことは山ほどありました。当時 ベルリオーズ交響曲イタリアのハロルド』のレコードを買ったばかりで、そのうっとりするような数々の旋律にすっかり参っていたところだったので、『イタリアのハロルド』をどう思うか、と彼に尋ねてみました。彼は しばらくじっと押し黙っていたかと思うと、やおら私を見て言ったものです、『まあ、そうですね、人の耳ってのは実に不可解だ』と。その主旨がどういうことなのか、私にはとても重ねて訊いてみる勇気がなかった、ここは ひとまず 訊かずにおくのが無難だ という気がしたものです。」 
(チャールズ・M.シュルツ/松岡和子 訳 “ ピーナッツ・ジュビリー ”より 角川書店 )


 この記事の当時 まだ20代だったチャールズ・M.シュルツ氏が 購入されたというベルリオーズヴィオラ独奏付き交響曲イタリアのハロルド」のレコードとは、はたして誰の演奏だったのでしょう。たいへん関心があります。
 最初、私は シャルル・ミュンシュ(Charles Munch 1891年~1968年)が ボストン交響楽団を指揮した(ヴィオラ独奏ウィリアム・プリムローズ による)RCAの名盤(1958年3月録音)辺りではないかなー などと 予想しておりました。
ミュンシュ(左)と プリムローズ(BMGジャパン) 
指揮者シャルル・ミュンシュ(左 )と ヴィオラ奏者 ウィリアム・プリムローズ(BMGジャパン )

 しかし文章をよく読んでみると、シュルツ氏のエピソードは 終戦からあまり間もない 1949年頃の話ですから、その時期 1958年に録音されたミュンシュ盤ということは あり得ません。もっと以前の、古い録音から探さねばならないことに、気づいたのでした。
 結論から先に言ってしまうと、平林直哉氏の名著「クラシック名曲 初演 & 初録音事典(大和書房 )2008年 」に やはり 頼ることとなりました。さすが同書には、しっかりと正確な情報が掲載されていました。ベルリオーズの「イタリアのハロルド」が世界初録音されたのは意外に遅く、何と それは1944年11月28日、セルゲイ・クーセヴィツキー(Sergei Koussevitzky 1874年~1951年)指揮 ボストン交響楽団(於 ボストン・シンフォニーホール )による演奏であった というのです。

ナクソス盤で 復刻されているおかげで、容易に聴けます。ジャケはプリムローズの写真
ベルリオーズ:交響曲「イタリアのハロルド」クーセヴィツキー/ボストン交響楽団(プリムローズ)http ml.naxos.jpalbum8.110316
エクトル・ベルリオーズ Hector Berlioz (1803-1869)
ヴィオラ独奏つき交響曲「イタリアのハロルド」 Op. 16
ウィリアム・プリムローズ William Primrose (ヴィオラ・ソロ )
ボストン交響楽団 Boston Symphony Orchestra
セルゲイ・クーセヴィツキー Sergey Koussevitzky (指揮)
URL http://ml.naxos.jp/work/90258
 
 
 確証はありませんが、時期的に考証すれば シュルツ氏の購入したレコードが クーセヴィツキー盤だった可能性は、非常に高い と思います。
クーセヴィツキーをはさんで、ピエール・モントゥー(左)、ミュンシュ(右) ANDaNTE 
クーセヴィツキー の両側に、
ピエール・モントゥー(左)と ミュンシュ(右)
写真は アンダンテ ANDaNTE より


 平林直哉氏の解説によれば、ソリストのウィリアム・プリムローズ(William Primrose 1904年~1982年 )は、もともと アルトゥーロ・トスカニーニ(Arturo Toscanini 1867年~1957年)の率いていた名オーケストラ NBC交響楽団ヴィオラのトップ奏者を務めていた名手で、彼は以前からトスカニーニの指揮で 頻繁に同曲の演奏経験があったのだそうです。 
Arturo Toscanini http upload.wikimedia.orgwikipediacommons220Arturo_Toscanini2 
大指揮者トスカニーニ 今日も 機嫌悪いのかなあ(Wikipedia )
 残念なことに トスカニーニが指揮したオーケストラを伴奏に、プリムローズが 同曲のソリストを務めた 正式なスタジオ録音は、存在しません( 1939年、1946年録音とされる 非公式なライヴ・レコーディングであれば 別ですが )。しかし クーセヴィツキーによる世界初録音「イタリアのハロルド」のレコードを聴いた 巨匠トスカニーニは、その出来に 大いに不満を表明、「あんなヒドイ伴奏では ソリストのプリムローズが 余りにも かわいそうだ」などと、相当 貶していた、という逸話(・・・それは あんまりですよね)、たいへん興味深く読ませて頂きました。
 「スヌーピー 」の作者、若き日のチャールス・M.シュルツ氏が、セントポールへの帰路 同行することになった、例の「音楽雑誌の社長 」のご意見 「人の耳とは実に不可解 ~ 」という言葉も、もしかしたら その 「社長 」の感想 って、トスカニーニの意向に同調するものだったのではないかなー などと考えると、面白いですよね。

 さて、天国にいらっしゃるシュルツ先生、
 貴方が若き日に お買い求めになられた ベルリオーズの「イタリアのハロルド 」は、クーセヴィツキーの指揮に拠るレコードでしたか?

次回、 (3)シュルツ氏「 シュローダーについて語る 」 に続く・・・
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