スケルツォ倶楽部
名優ゲアハルト・シュトルツェの演技を聴く
オルフ「オイディプス王」(クーベリック)D.G.ゲルハルト・シュトルツェ(最小サイズの肖像写真)    目次は こちら

(5)「ラインの黄金 」 フローを演じる 

 1953年「フロー」
~ ワーグナー:楽劇「ラインの黄金」
ラインの黄金URANIA(RM11.906 2CD)1953  1953RING(ORFEOR809113 )
(左から)海外盤 URANIA(RM11.906 2CD)、オルフェオ(ORFEOR 809113)全曲盤

ワーグナー:楽劇「ラインの黄金」
クレメンス・クラウス指揮
バイロイト祝祭管弦楽団
 ハンス・ホッター(ヴォータン)、
 エーリヒ・ウィッテ(ローゲ)、
 ヘルマン・ウーデ(ドンナー)、
 ゲアハルト・シュトルツェ(フロー)、
 イーラ・マラニウク(フリッカ)、
 グスタフ・ナイトリンガー(アルベリヒ)、
 ヨーゼフ・グラインドル(ファーフナー)、他
ライヴ録音:1953年8月8日 バイロイト 

 
 シュトルツェが「ラインの黄金」の ミーメでなく、ローゲでもなく、「フロー」を歌った、という珍しい記録です。少なくともバイロイトでは 唯一この年だけで その後は演じていませんから、録音が残っていること自体 貴重です。
 そのフローは、雷神ドンナーと常に一対で並んで立っており、彼らは歌唱パートの少ない割に存在感があって、特に大詰め近くでは 虹の橋を架けてヴォータンの先導をするといった(ワーグナーのト書きに忠実な演出であれば)なかなか美味しい見せ場もあるためか、実際の舞台などでは 売り出し中の若手有望株の歌手などに振り当てられることも多いロールです。
 
ゲアハルト・シュトルツェ(フロー1953年)http www.bayreuther-festspiele.defsdb_enpersonen347index.htm 
前髪もふさふさ ・・・いや、カツラか? (バイロイト音楽祭公式サイトより) 
 
 1953年当時は「売り出し中」だったに違いない、若きゲアハルト・シュトルツェのポートレートをバイロイト音楽祭の 公式サイトにあるアーカイヴ http://www.bayreuther-festspiele.de/fsdb_en/personen/347/index.htm から見つけました。なかなか凛々しいです。
 “ 未来の聴き手 ”である私たちの耳には、「その後のシュトルツェ」が演じる あの凄まじい「ミーメ」を知っているが故に 「フロー」ではどうしても違和感が先立つのは致仕方ないことと思いますが、先入観を拭い去って聴けば、少ない台詞の一言一言に シュトルツェらしい 登場人物の背景を感じさせる深みのある解釈に気づくことと思います。虹の彼方のヴァルハラ城へとまっすぐに伸びてゆく、声量あるシュトルツェフローには、率直に好感が持てます。

 なお 指揮者は この翌年の5月に亡くなる巨匠クレメンス・クラウス(Clemens Heinrich Krauss 1893 ~ 1954)です。
 ↓
Clemens Krauss (1918~1954)
 ウィーン・フィル最後の常任指揮者でもあったクラウスが、ヴィーラント・ワーグナー演出による新バイロイトに登板した 最初で最後の機会が、病気を理由に登場しなかったハンス・クナッパーツブッシュの代行を 急遽 務めることになった、この1953年でした。アーカイヴに拠ると、「指環」に関しては アストリッド・ヴァルナイブリュンヒルデ役 を務めた 第2ツィクルス(8/8~8/12)のみタクトを執っており、マルタ・メードルが ヒロインを務めた 第1ツィクルス(7/25~7/29)では、ヨーゼフ・カイルベルトに交替していました。この年 クラウスは 他に「パルジファル」(7/24、8/2、8/15、8/19、8/23)を指揮しています。

ホッター と ナイトリンガーが 最高
 それにしても 今回このディスクを聴き直し、やはり圧倒されたのはハンス・ホッターの素晴らしさです。
 戦後バイロイト音楽祭が再開された、これらの時期のライヴ盤で 最盛期のホッターが演じる主神ヴォータン を聴くと、その威厳・冷徹さ・神々しさは やはり別格の存在であったのだなあ、という思いを 今さらながら 新たにしています。
ホッターのヴォータン(1953年バイロイト)東京創元社.  ナイトリンガーの肖像
(左から)ヴォータンを演じるハンス・ホッター(1953年)、グスタフ・ナイトリンガー

 また、もうひとつ。
 そのヴォータンから むしり取るように指環を奪われる アルベリヒ の憤怒の場面を演じるグスタフ・ナイトリンガーの演技も、ライヴならではの強烈さに思わず傾聴させられました。その激しい怒りが、自嘲の哄笑を経て徐々に呪いへと形を変えゆく過程が明瞭に見えるようです。
 私にとって、その感銘の深さは ショルティ = カルショーによるデッカ(1958年)盤における ナイトリンガー自身が演じた十二分に素晴らしいアルベリヒの印象さえも凌駕してしまうほどでした。

次回 (6)シュトルツェ、「オテロ」を演じる(?) に続く・・・

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