クラヲタに捧ぐ、ジャズ=フュージョンの名盤 ランダム辞典
スケルツォ倶楽部、
スティーヴ・ガッド Steve Gadd を讃える。
   
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【 番外編 】
日本語版 「スティーリー・ダン Aja 作曲術と作詞法 」
(D.ブライトハウプト/著_ディスク・ユニオン )
ウェイン・ショーターに関わる、35年ぶりの補足情報

スティーヴ・ガッド(Warner Bros.) スティーリー・ダン Aja作曲術と作詞法_ドン・ブライトハウプト著、奥田祐士訳 Steely Dan_Club Scherzo
(左から )スティーヴ・ガッド、日本語版 「スティーリー・ダン Aja 作曲術と作詞法 」D.ブライトハウプト /著_ディスク・ユニオン )、“スティーリー・ダンドナルド・フェイゲン ウォルター・ベッカー(ギター) 

 「スティーリー・ダン Aja作曲術と作詞法ドン・ブライトハウプト/著、奥田祐士/訳 ) 」と題された、ドナルド・フェイゲン自身が「エイジャ 」メイキングに関する数々の質問に答えた貴重なインタヴュー(2006年 )を基に書かれたオフィシャル・ブックが、日本でもディスク・ユニオン(DU BOOKS )から2012年 9月に出版されていた(!)という情報を、ごく最近teamoon.さんに教えて頂くまで、わたし まったく知りませんでした。すぐにネットで注文することに。

台本を読むルーシー(C.M.シュルツ氏 )
 ・・・で、本日 届いた書物を早速 開き、音楽関係の訳書にありがちな 些か硬い文体をばりばりと噛み砕きながら斜め読みしつつ、単にドナルド・フェイゲンへのインタヴュー情報だけに寄りかかることなく、一枚の偉大な傑作レコード「エイジャ 」が、同時代 - 70年代当時のカリフォルニアでは - いかに認識され 受容されてきたか、スティーリー・ダンの諸作の中で この一枚がいかなる位置にあるか、参加したミュージシャンについて、また収録された各曲の情報などといった、極めて多角的な視点から きちんと書かれていることに気づきました。
 素晴らしいお仕事に、拍手! そして、この本を国内出版にまで漕ぎつけてくださった ディスク・ユニオン さすがの勇断にも、拍手!

 それでも 最も価値の高い情報は、やっぱりフェイゲン自身が語る言葉でしょう。でも わたしが個人的にちょっと残念だったのは 「エイジャ 」におけるスティーヴ・ガッドの神技プレイについて、フェイゲンのインタヴュー・コメントが・・・なかった(!)ということでした ( あ、もし万が一 わたしの見落としだったとしたら、スミマセン。その場合は、必ず後で訂正します )

■ かつてS.D.のドラマーには 一度も課されなかった仕事が ガッドに。
それは ・・・ 「ソロをとってくれ。 」


 「エイジャ 」について一冊の書物を著そうとする以上、スティーヴ・ガッドのプレイについて 書き落とすわけにはゆかないでしょう。フェイゲンにこそ聞けなかったようですが、著者ブライトハウプト氏がお書きになった文章 (青字部分 )は、以下のようなものでした。

 ― オケの4小節のオスティナートにあるすべてのアクセントを捕えながら、ガッドはキック・ドラムとタムの組み合わせによる16分音符の3連というトレードマーク的なフレーズを含んだ、短いが複雑な連続的動作を、リズム的なグリッドに散りばめた。
 ガッドのおかげでポップ界は、皮肉っぽい卑下の王様たるベッカーとフェイゲンが、たまには何の縛りもない即興も受け入れることを知ったのである(チック・コリアの〈 カルテット♯2 - パート2 〔Quartet No.2 - Part 2 〕 〉 〔 1981年 〕におけるガッドのソロと比較されたし )。
引用 - 同書「セッションミュージシャンたちの手法 」より P.84~85


 但し、この個所に限ってですが、わたしには必ずしも適切ではなかったように思える文章が ひとつだけあるのです - と言っても 原書でブライトハウプトさんのオリジナル文章の確認までしたわけではないので、そこは われながら無責任ですが - この「エイジャ 」の中で、ベッカーフェイゲンが「何の縛りもない即興も受け入れ 」たなどということはあり得ません。むしろ彼らは、彼ら自身が設けた楽曲のソロ枠の中に、ガッドが即興的な才能を最大限に生かせる場所を わざわざ作って きちんと空けておいたのだ、と言ったほうが 正しかったでしょう。そこは、たしかに一聴「何の縛りもな」かったようにさえ感じるほど 奔放で素晴らしいガッドのドラムス・ソロも、実は フェイゲンたちが仕切った升(ます )の中に、彼らが計画したとおり、きっちりと収まった駒のひとつに過ぎないのです。
 それは、皮肉にもブライトハウプト自身が書いているとおり、チック・コリアの 「カルテット♯2 - パート2 」(Warner / Stretch = GRP )と聴き比べて頂ければ、それぞれの曲における ガッドのドラムス・ソロの性格が異なることは どなたにも明白ではありませんか、 ぜひ 比較されたし。 
Chick Corea_Three Quartets_Warner-Stretch-GRP
Chick Corea_Three Quartets(Warner-Stretch-GRP )
 ・・・ って、すみません、ここだけは スティーリー・ダンの「エイジャ 」一曲を理解する上でも重要なことと感じましたので、些細な言葉尻を捕えるようで 恐縮ですが 思わず拘(こだわ )ってしまいました。
▼ ふふん、どうかお許しくださいね (てへぺろ )。
てへぺろ_“スケルツォ倶楽部”


■ そして ショーターのプレイは、「一発録り 」ではなかった!
若きドナルド・フェイゲン、1974_スケルツォ倶楽部 Steely Dan AJA ウェイン・ショーター Wayne Shorter

 ドナルド・フェイゲン自身のインタヴューによって、それまで認識されていた情報 - ウェイン・ショーターの迫真のテナー・サックス・ソロは バンドのメンバーと接触することなく一回限りの即興だった、という伝説 - は、あっさりと覆されました。

「 ≪彩( エイジャ ) ≫ 」 では、〔 プロデューサーの 〕ゲイリー・カッツに、ウェイン・ショーターに吹いてもらえるかどうかたしかめてくれ、と頼んだんだ (中略 )すると『断る 』という答えが返ってきたんで、その話を、ぼくらが作業していたスタジオ〔 ヴィレッジ・レコーダーズ 〕のマネージャーだったディック・ラパームにした。彼はたぶん、ウェザー・リポートの仕事でウェインを知っていたんだと思う。それで彼がぼくらのために、口をきいてくれたんだ 『 いい連中だよ、ここでしょっちゅうレコーディングしてるし、古いジャズのレコードも大好きらしい。だって、ジャッキー・マクレーン【表記のママ】の話をしてたんだぜ! 』なんて感じで。それでぼくらはオケをつくって、ウェインに譜面を送った。そしたら『わかった 』と言って、来てくれたわけさ。すばらしかったよ。ちょっと時間はかかったけど。2テイクほど録ったら、もっとじっくり見てみたいと言いだしてね、 『1分くれ 』って。譜面を持ってピアノの前に座ると、それから30分以上、スケールをあれこれいじっていた。それから戻ってきて、3、4テイク録ったけど、もうどれも最高だったよ (以下略 ) 」
以上、ドナルド・フェイゲン談(前掲書より )


 ショーターは、短い時間ながらも、フェイゲンが書いた「エイジャ 」のスコアとコード進行という楽曲情報を きちんと事前に受けた上で、サックス・ソロに臨んだのです。それも、2テイク + 3,4テイク ・・・少なくとも5回は 演奏し、そのいずれもが「もうどれも最高だったフェイゲン談 ) 」 - って、くーッ! コンプリートに聴きたいものだなー その音源 残ってないのでしょうか? もとい。すなわち 重要なことは、名曲「エイジャ 」における あのショーターの名ソロ、実は 複数のテイクを つないだものだったという事実です!

スケルツォ倶楽部”過去の関連記事は こちら ⇒ エイジャ Aja 1977年

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コメント

Re: かえるさま!

発起人(妻 )です。
毎度ご訪問 ありがとうございます( いつも おかまいしなくて すみませんね~ 笑 )。
うれしい お褒めの 過分なお言葉に、思わず照れちゃいます( 「てへっ 」 )。
スティーリー・ダンのスタジオに招かれた時の ガッドの機能的に徹するプレイったら どれも注目ですよねー。特に 「エイジャ Aja 」と「グラマー・プロフェッション Glamour Profession 」の二曲などは その方向性も真逆なのに、どっちも全力投球で 目が離せない。
かえるさん家(ち )にも おじゃましてます。するどく的を射られた視点に、けっこう触発されてるんですよ。
カフェ ソッ・ピーナにも いらっしゃってくださいね!

URL | “スケルツォ倶楽部” 発起人 ID:-

興味深く読ませていただきました

お久しぶりです・・と言って実はいつも訪問しています(^^♪
「AJA」は好きなアルバムで、今でも良く聴いています。この名盤については多くの方が取り上げていますが、いやー”スケルツォ倶楽部”(奥様)の記事は素晴らしいです。奥深く書かれておりじっくり読みました。勉強になりました。

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