クラヲタに捧ぐ、ジャズ=フュージョンの名盤 ランダム辞典
スケルツォ倶楽部、
スティーヴ・ガッド Steve Gadd を讃える。
   
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Steve Gadd (1981 日本コロムビア)

「ストローキン 」(リチャード・ティー )     

 はい、ここは 発起人(妻 )のコーナーです。今回は キッチンから お送りしています。
「今晩は 美味しい 欧風ビーフカレーにするから、アナタ 帰りに福神漬けを明治屋で買ってきてね 」って、夫に頼んでおいたのに。彼ったら ・・・ 忘れてきやがった(怒 )。
 ふふん、当然 買いに行かせましたよ。買って戻るまで アイツには わたしのカレーを 食べさせるものか(忍び笑 )。福神漬け抜きで 美味しいカレーを食べるなんて、考えられないでしょ? そんなの スティーヴ・ガッドのドラムス抜きで  リチャード・ティーの ピアノを聴くようなものだと思いません?
 いえいえ、決してガッド様 が福神漬け だってゆーわけではありませんケド・・・あ、そう言えば 名前にガッド(神 )が入ってる(スペルが違うって )?

Richard Tee(1943‐1993)Sony 
リチャード・ティー Mr.Richard Tee (1943~1993 )

 前回、「ハッスル 」の話 のついでに、ガッドがドラムスを務めた最強のセッション・バンド「スタッフ 」の話をしていたら、無性に 唯一無比のキーボード奏者 リチャード・ティー Richard Tee のピアノが聴きたくなっちゃって、今回は カレーを作るために、ティーのファースト・アルバムを聴きながら 玉ねぎの皮を剥きました
 もちろん ここでの強力なドラムスは、この名ピアニストの盟友だったガッドです!
Strokin(R.Tee) 1978Tappan Zee 
1978年の名盤 ストローキン Strokin’ (VICJ-60988 )
 
 ディスクのジャケットは、ゴルフ・ボールを支える“ ティー ”の写真。
 あくまで“ ティー ”が主で、ゴルフ・ボールは従。“ ティー ”は、言うまでもなく ショットの時にボールを打ちやすくするために持ち上げる 小さな杭状のスタンドで、リチャード・ティー自身が バンドのリズム・セクションとしての “ 縁の下の支え役 ”的な 自分の存在を その名前にひっかけたもので、タダのオヤジ・ギャグではない・・・ と思っています。
ストローキン by Charles M. schulz ナイス・ショット!
 
 その1曲目は、軽妙な「ファースト・ラヴ First Love 」という曲。
 エレクトリック・ベース奏者チャック・レイニーの作品で、このアルバムでベースを演奏しているのも作曲者レイニー自身です。飄々とした空気を醸し出しているのは、やはりウネウネと動きまわる おもしろいベース・ラインのせいでしょうか?
 ティーが このファースト・アルバムの冒頭に この一曲を配したのには 実は理由がありました。
 1969年、エレクトリック・ベースのパイオニアともいうべき チャック・レイニーコーネル・デュプリー、エリック・ゲイルら 親しい仲間たちとのセッションから作り上げた、フュージョン史上 重要な名盤「ザ・チャック・レイニー・コーリション The Chuck Rainey Coalition 」に参加していたキーボード・プレイヤーが ティー( 注・ドラムスは ガッドではなく、名手バーナード・パーディ ) だったのです。
ザ・チャック・レイニー・コーリション The Chuck Rainey Coalition -2Chuck Rainey Coalition (SKYE )
参考 ) これが ザ・チャック・レイニー・コーリション The Chuck Rainey Coalition
後年 スタッフのレパートリーともなる How Long Will It Last も演奏されてます!

 実は、この名盤の冒頭に置かれていた一曲目こそが まさしく「ファースト・ラヴ 」だったのです(レイニー盤での表記こそ「エロイーズ Eloise 」とされていますが、誰しも聴いてみれば 一瞬で 同じ曲だということが判ります )。
 チャック・レイニー盤と ティーのファースト・アルバムである この「ストローキン’ 」の両方に参加しているギタリストが、個性的なプレイヤー エリック・ゲイル Eric Gale です。彼が、几帳面に裏リズムを刻むも、どこか この曲には合っていないような、変な感じ。ゲイルの感性って ちょっと変わってて、彼の発想は 一般的なギター奏者とは 同列に語れないものがあります。これが行き着くと、後に レゲエ・ミュージック( “ Blue Horizon ” )へ行ってしまうのですが、それはまた別の話なので 次の機会に。けれども 繰り返し聴いているうちに、「いや、やっぱりこの曲には ゲイルのギター・リズムの刻みしか あり得ないなー 」って、納得しちゃうのです。
 ティーのアコースティック・ピアノの気合い十分な打鍵も気持ち良いですが、そんな中、やはり曲を支配する まるでスキップするような独特のビートは、ガッドにしか表現できない快打です。サックス奏者トム・スコットTom Scottによる ここでの単純な音列を並べるテナー・サックスのソロは、ソニー・ロリンズ? の 線の細くなったフュージョン版 といったところかな。
 2曲目は、リチャード・ティーの名曲「エヴリ・デイ Every Day 」。
 これ 大好きです。
 冒頭のピアノの分散和音、ティー以外の 誰でもないプレイ。とにかく この超・重たいリズムに、ティー独特の 素人の隠し芸っぽい(失礼?)ソウルフルなヴォーカルをたっぷり聴くことができます。丸太のような腕が真上から鍵盤の上を叩くようなピアノ・ソロも 技巧とは縁遠いのに素晴らしい。ガッドのリズムは、彼がよく演ってくれる「 ドラム・ロールを二小節以上伸ばすことによって 刻むリズムに大きくタメを作って音楽に息吹を与える 」独特のワザを 聴かせてくれます。これにブルージーなエリック・ゲイルの、まるでギターの弦を引きちぎるようなピッキング、これも気持ち良い!
 この録音から3年後の1981年、ティーガッドを含む スタッフが バッキングに回って、女声ジャズ・ヴォーカリストのサリナ・ジョーンズ(Salena Jones 1944 ~)と 東京で録音することになる名盤「マイ・ラヴ My Love(JVC)」のA面1曲目が、この歌「エヴリ・デイ Every Day 」でした。そちらは、「ストローキン」収録の初演ヴァージョンにおける 野郎ばかりのコーラス隊( 「エーヴリデーイ、Wow – Wow! 」 )と比べると、ずっと瑞々しく、やっぱり歌は 旦那芸の ティーより 本職の サリナだなーって思ってしまいます。
Salena Jones “ My Love ” (JVC)1981
サリナ・ジョーンズ with スタッフ の推薦盤「マイ・ラヴ 」、
ティーとの I Don’t Want To Be Alone Tonight は必聴!

 ちなみに このアルバムで ティーサリナがデュエットしている「 I Don’t Want To Be Alone Tonight 」という歌ですが、これがなんともグルーヴィーな名曲! 二人がハモるコーラス部分の気持ち良さ、ティーのフェンダー・ローズ・エレクトリック・ピアノの軽妙さ、そして ガッドの余裕たっぷりのドラムス、んもーっ とても言葉には表せません。ジャガイモの皮もサクサク 剥けちゃいますよ。
Salena Jones with Stuff 1981(JVC) 
「はい、ポーズ ! 」、「オイ 誰か 彼女に言えよ、ピアノから降りろって 」
 
 ・・・もとい、アルバム「ストローキン」に 話を戻してと。
 いよいよ3曲目がアルバム・タイトル曲の「 ストローキン Strokin’ 」。
 わたし、個人的には これは絶対アルバムのA面1曲目に置くべき だったのに・・・って いつも思うんです。曲頭の力強いピアノのコード、ティー以外には あり得ない特有のタッチが素晴らしいですし、2:08頃から開始される、ガッドのドラムスとティー のピアノによる、あの 二人三脚のサンバ攻撃プレイスタッフ や 後年の ガッド・ギャングライヴでも いつも必ず聴かせてくれた お約束の、興奮しちゃうハイライトなんですから。
 その後、3:56頃から サックス奏者マイケル・ブレッカー Michael Brecker の 実に簡潔なテナー・ソロが始まります。マイケル(・ジャクソンではない)、ホントに上手いなー。
Michael Brecker (Better Days)
 マイケル・ブレッカー、若い!
 マイケルは、この後 少し喉を痛め、80年代中頃以降 テナーの音が微妙に変わってしまう(それが良いという人も多い)のですが、これは まだ以前の若いマイケルの音です。言葉では上手く表現できませんが、がりがりした鋭角的な岩のような音。実は わたしは この頃の音(オリジナルの ブレッカー・ブラザース時代)が ホント好きでした、判って頂けるでしょうか。しかし、ここでは ソロが短い。短すぎる! もう3コーラスくらい演らせなさいよ、マイケルに。まだ 燃えてないじゃないの! と言いたい。カレーだって よーく煮込まなくちゃ、お肉は美味しくならないもんね。
 その 若きマイケルのソロが 仕方なく終わる(4:42 )頃、ティーが リフのような新しい旋律を繰り返しピアノの鍵盤で叩き始めます。それは、前回 話題にした「リアル・マッコイ Real McCoy 」のテーマを 短く刈り込んだような、あの不屈のメロディに 酷似した旋律です。ここ、聴くたびに何だか胸が熱くなってきてしまうのは 私だけでしょうか。
 しかし何と言っても 凄まじいのは、やはりラストの「 A列車で行こう Take the“ A ”Train(デューク・エリントン楽団の ビリー・ストレイホーン作曲 ) 」でしょう。これは ガッドのドラムスとティーのアコースティック・ピアノのデュオなのですが、これは とにかく聴いて頂かなくては 話になりません。そのアイディアの斬新さ、文字どおり機関車が唸りを上げて走り出すような ピアノ左手の16ビートで連打しまくる強烈さティーを支え まさにピアノと一体化して音楽を転がすガッドのドラムスの豪快さ を ぜひお聴きになってください。

 この秀逸なアイディアは、ティーの次なるソロ・アルバム「ナチュラル・イングリーディエンツ Natural Ingredients(直訳すると、“ 天然素材 ”ってところ? ) 1980年 」でも発揮されます。
Natural Ingredients(R.Tee)1980 Tappan Zee ナチュラル・イングリーディエンツ Natural Ingredients
 ティーバッグをカップに入れたところ。ちなみに 一分後、裏ジャケでは 紅茶の色、濃くなってます。
 それが このジャケット。
 わかります? 今度は“ ティー ”カップ だって・・・ ぷっ 。
 音楽は 大体「 ストローキン 」路線を継承したアルバムづくりですが、ティーのヴォーカルが好評だったのか(わたしは 正直 そうは思わないけど・・・)、ティーが自慢の(?)のどを聴かせるナンバーは増えちゃってます。なんで歌いながら ゲヘゲヘ笑ってみたりするかな、ワル乗りは 止めてさ、もっと きちんとピアノを聴かせていただきたいんですけど。
 けれど「 Tell It Like It Is 」など の快適さは やっぱり格別。ドラムスの細かい粒立ちが見事なリズムのおかげに違いないです、これは 繰り返し聴きたくなっちゃいますよー。
 アルバム最後のトラックは、再び ガッドのドラムスとティーのピアノによるデュオで、何と 意表を突いてメンデルスゾーン(?)の「紡ぎ歌 Spining Song 」ですって。 あ・・・でも、これだけは 間違いを訂正しておかなくっちゃ。これ、メンデルスゾーンの曲じゃないよ、同じ「紡ぎ歌 」でも アルベルト・エルメンライヒ( Ellmenreich ドイツ 1816~1905)が作曲したほうの「紡ぎ歌 Spinnerlied Op.14-4 」ですから。日本でも よく子どもたちのピアノ発表会などで 弾かれてる練習曲。わたしも かつて純真だった幼い頃に お稽古したおぼえがあるから、間違いない。
 いずれにせよ ティーの、タイトルどおり ぐるぐるスピンするような ピアノこれを煽るガッドの興奮のドラムスが ここでも聴きもの。衝撃度では 前作のエリントン・ナンバーの方が大きかったですけど・・・。それでも やはり 必聴ですよ。

 あ! 玄関ベルが鳴った。
 きっと夫が 福神漬け を買って 戻ってきたに違いない。ずいぶん遅かったわねー、どうせ また駅前のCDショップあたりで 寄り道してきたんでしょ。 さ、ビーフ・カレー 温め直さなくちゃね

 では 次回 ボブ・ジェームス「One (はげ山の一夜 ) 」に 続く!  またね。

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コメント

ヤシャス さま !

お便り ありがとうございます。
そうなんですよ、これ もともと タッパンジーのオリジナル盤に 堂々とMendelssohn 原曲って誤記されていたのが イケナイと思いますね。
「ワン・トリック・ポニー 」良いですよね!  この話題についても いずれ記事を書きたいなーと 前から思いつつ 幾年月(笑 )。

URL | “スケルツォ倶楽部”発起人 ID:-

NoTitle

Spining Songがメンデルスゾーンではないと初めて知りました。ずっと勘違いしていたのです。ちなみに私はポールサイモンから彼らを聞くようになりました。ワン・トリック・ポニーでは彼らは映画にも出ていますね。

URL | ヤシャス ID:-

ソウルブラザー

はじめまして。スティーブ・ガッドにはリチャード・ティー、リチャード・ティーにはスティーブ・ガッドですね。二人のコンビネーションにかなうコンビはいません。福神漬けなしのカレーライス・・・まさにそのとうり、さび抜きの寿司とも・・・4月25日発売の発掘ライブでのA列車!最高です。もう神がかりですね。スティーブ・ガッド、リチャード・ティー最高!

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