本記事は 7月 9日 「 注目記事ランキング クラシック音楽鑑賞 」で 第1位 となりました。
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今宵は グスタフ・マーラー 152回目の誕生日
私は この世に忘れられ 」、「私の時代が来るだろう

Gustav Mahler 晩年のマーラー ドッビアーコに建つマーラー記念像 Gustav Mahler(LONDON)108×160
                                              
 今日は、マーラー Gustav Mahler 1860 - 1911 ( が、もし生きていれば )152歳バースデイ
♫ Happy Birthday, dear Gusterl !
 今宵は ここでもう一度 畢生の名歌曲(リュッケルトの詩による )「私は この世に忘れられ 」 を “スケルツォ倶楽部発起人 の お気に入りから、おススメのディスクを いくつか、ご一緒に聴きましょうね。
 あ、その前に ここで もう一度 歌詞の おさらいを・・・。

Friederich Ruuml;ckert  バーンスタイン&D.F=ディースカウ(CBS )L.P.
(左 )フリードリヒ・リュッケルト
(右 )バーンスタインD.F=ディースカウ(CBS )L.P.


私は この世に忘れられ Ich bin der Welt abhanden gekommen
詩 : ヨーハン・ミヒャエル・フリードリヒ・リュッケルト


   私は、この世に忘れられた
   世渡りが上手くなかったせいだろう
   私について話す人も もはや いなくなった
   どうせ 私は死んでしまった と、いうことにでもなっているのだろう

   死んだと思われても それで全然かまわない
   だって 私には、そうではない と 否定することもできないから
   現に、死んでいるわけだし

   もはや うるさい世間とは おさらばし、
   今や私は 静かな場所で ゆっくりと くつろいでいるのだ
   たった独りで わが平安のなかに、
   わが愛のなかに、
   わが歌のなかに、
   そこで私は 今でも生きているのだ
                          意訳 : 山田 誠



■ フィッシャー=ディースカウ、ベーム / ベルリン・フィルとの共演
D.F=D Sings Mahler_0009 D.フィッシャー=ディースカウ(サントリーホール資料) カール・ベーム
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br. )
カール・ベーム指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 
収録曲:リュッケルトの詩による歌曲から(真夜中に、ほのかな芳香を、わたしの歌を覗いたりしないで、わたしはこの世に忘れられ )、歌曲集「亡き子を偲ぶ歌 」
録 音:1963年 4月& 6月 (ベルリン、イエス・キリスト教会 )
音 盤:海外盤 D.G. 00289 477 9375 Original Image Bit-Processing

 マーラー自身のオーケストレーションによる管弦楽伴奏版による、私には懐かしいレコードです。
 タイタニック船内の、マーラー追悼音楽会 」(3)「私はこの世に忘れられ 」 では バーンスタインのピアノ伴奏による名盤を ご紹介しましたが、歌唱は 同じフィッシャー=ディースカウ( 以下 D.F=D )ですから ピアノの音色によるものと オーケストラ伴奏によるものとの 音の配色の変化を 比較して頂けるものと考えます。
 カール・ベームの 数少ないマーラー・レパートリーで、尚且つスタジオ録音正規盤と言えば この「リュッケルト歌曲集」と「亡き子をしのぶ歌」をカップリングした この一枚しかありません。R.シュトラウスをはじめとする ウィーンに縁(ゆかり )の作曲家に尊敬の念を抱くベームが、マーラーに対しても敬意を払っていたことは よく知られていますが、最初のうちは「 マーラー(の音楽 ) は よくわからないなあ 」などと、ボヤいていたのだそうです。
 そんなベームに、マーラーの世界を開眼させたのが D.F=D でした。 D.F=D は かつてフルトヴェングラーにもマーラーの価値を伝え、歴史的な名盤「さすらう若人の歌(EMI )」を残した功績で知られています。 D.F=D によって触発されたベームのタクトも、バイロイトでのワーグナー演奏を思わせる求心力の強いもの。最近でこそ あまり顧みられないレコードになってしまっているようですが、マーラー演奏史の上では決して落とせない、価値の高いディスクであると 勝手に断言します。
 この録音以後、ベームは、 演奏会でもマーラー作品を取り上げるようになり、有名な 1967年ウィーン芸術週間における“マーラー・ツィクルス” においても バーンスタイン、クーベリック、アバド、クライバーら と共に出演しました。 さらに 詳細な情報不明な伝聞ながら、過去 ブエノスアイレス で 「大地の歌 」を振った(! )という記録まであるそうです。 ベームが、ですよ。 うう、聴いてみたい。
 音源の入手も容易なところでは ORFEOライヴ ( 1972年のザルツブルク音楽祭 / シュターツカペレ・ドレスデン )盤では クリスタ・ルートヴィヒとの共演で 「なき子をしのぶ歌が聴けます。
Orfeo C 607 031B  Orfeo C 607 031B
(併録曲 : モーツァルト 交響曲第29番 イ長調K.201、R.シュトラウス 交響詩「死と変容 」 )



■ バロック時代のピリオド楽器編成による編曲版
ポンセール バッハ(Accent) Marcel Ponseele  
収録曲:J.S.バッハ「オーボエ協奏曲 変ホ長調 BWV1053a 」、「オーボエとヴァイオリンのための協奏曲 BWV1060a 」、「オーボエ・ダモーレ協奏曲 BWV1055a 」、オーボエ協奏曲 BWV1059R、マーラー原曲「私はこの世に忘れられ(マルセル・ポンセール編曲版 )
マルセル・ポンセール(Ob )、寺神戸 亮(Vn )ほか
イル・ガルデリーノ・アンサンブルのメンバー
録 音:2004年9月、聖アポリネール教会、ボラン(ベルギー)
音 盤:Accent (ACC-24165 )
 

 マーラーを、音楽史的にはあり得ない発想ながら、バロック時代の楽器で演奏する という、意表を突いたアイデアに絶句します。
 マルセル・ポンセール(1957年~)は、ベルギーのバロック・オーボエ奏者。
 1981年からクイケン兄弟ラ・プティット・バンドトン・コープマン率いるアムステルダム・バロック・オーケストラなどの名門古楽団体を中心に活動を開始しています。また彼は、フィリップ・ヘレヴェッヘが 音楽監督を務めるシャンゼリゼ管弦楽団の創立メンバーでもあり、シャンゼリゼ木管アンサンブル音楽監督も務めたりして、多くのコンサートや録音に参加しています。
 ちなみに ここで使われている楽器オーボエ・ダ・カッチャ(“狩りのオーボエ”の意)は、J.S.バッハ時代のバロック後期に用いられたもので、現在のコール・アングレ(イングリッシュホルン)の原型として知られています。
 ポンセールは、楽器を自分の工房で作ってしまう、という特技(? )でも知られ、凡百のモダン楽器より遥かに優れた品質のピリオド楽器を制作できる その技術は、豊かな音楽性を持って演奏する能力よりも高位にある才能なのではないか、とする識者の意見もあるほどです。
 このCDは、本来バッハのオーボエ協奏曲集としてリリースされたもので、マーラーは、おまけのボーナス・トラックとして、ディスクの最後に 唐突に入っています(編曲もポンセール自身 )。
 「私はこの世に~ 」管弦楽版で活躍するコール・アングレオーボエ・ダ・カッチャに置き換え、ハープチェンバロに置き換え、そして旋律(声楽 )パートも、我が国が世界に誇る名手 寺神戸 亮氏 を 含むピリオド楽器の弦セクションに置き換え、ノン・ヴィブラートで 厳粛に進みますが、これを聴いていると時間も空間も超越した、ある種の凄みまで感じ、期せず悶絶してしまいます。

 ・・・そういえば、バッハの音楽が、生前のマーラーのお気に入りだったことは よく知られていますね。管弦楽組曲第2番第3番から6曲を選んで 4楽章構成の演奏会用組曲として再構築した上、チェンバロ入りの近代オーケストラ用にアレンジ、ニューヨーク・フィルの音楽監督時代に定期コンサートのプログラムにのせたほどでした。そんなマーラー編曲によるバッハの不思議な音響、とても面白いのですけれど この話題は またいずれ・・・。 ► 触れました(マーラー版「G線上のアリア 」 )
 以下は バッハについて語った、そんなマーラーの言葉です。
Johann Sebastian Bach (1685 - 1750) Gustav Mahlerの肖像写真(1909年 )Wikipedeia

 - バッハの奇跡的なポリフォニーは、外には求め得ません。その素晴らしさは、単に その時代で - という相対的なものでなく、あらゆる時代を通じて絶対的なものなのです。

 - 言葉ではとても表現できないほど、バッハからは次々と しかも回を増すごとにいっそう多くを学んでいます(もちろん 私は 幼い時分からバッハに教わってきたと言えるのですが )。というのも、生まれつき身についている音楽の作曲法が まさにバッハ的だからです。この最高のお手本に 集中して割ける時間を もっと作れればなあ・・・



■ ウィンナ・ホルン奏者によるアンサンブル版
わたしは この世に忘れられ_0001 Vienna horns 7
Vienna horns 3Vienna horns 4Vienna horns 5Vienna horns 6
Vienna horns 2
Vienna horns
収録曲:ケイメン「ロビン・フッド 」、コープランド「市民のためのファンファーレ 」、 ホーナー 映画音楽「タイタニック 」から、ジョン・ウィリアムズ「オリンピック・ファンファーレ 」、フンパーディンク 楽劇「ヘンゼルとグレーテル 」から「夕べの祈り 」、シューマン「コンチェルトシュトゥック(ホルン・アンサンブル版 )、メンデルスゾーン「真夏の夜の夢 」から「夜想曲 」、マーラー「私はこの世に忘れられ 」
録 音:2004年
音 盤:ORF-378

 オーストリアのORFレーベルウィーンの森を髣髴(ほうふつ )とさせる独創的なアルバムがあります。12人の名ホルン奏者による、パーカッションウィンナ・ホルン(一部ワーグナー・チューバ持替 )のアンサンブル、トムベック、イェブストルウィーン・フィルトップ奏者に加え、オーストリア各地の名オケで活躍する名手達が参加したもので、選曲の幅広さ(「オリンピック・ファンファーレ 」、「タイタニック(! ) 」、「ロビンフッド 」などの映画音楽までも含む )を見ると、ORFにしては めずらしく“売る気まんまん”です。
 その一方で 注目なのは 玄人筋にも気を配るかのように、シューマンの佳曲「4本のホルンの為のコンチェルト・シュトゥック 」を 12本のホルン・アンサンブルで演奏(! )という快挙もあり、なかなか軽視出来ないディスクです。4本のホルン・ソロ・パートは 原曲を(おそらく )そのまま生かし、本来のオーケストラ・パートは 残り8本のホルンに上手に分けて編曲、それで全曲ノーカットです。特にソロ・パートⅠは、超難度と思われますが、これを 最も若手のイェブストルが吹いており、胸のすく素晴らしい吹奏です。
 そのディスクの中でも異色なのが、最後に収録されているマーラー歌曲「私はこの世に忘れられ」。管楽器の音域の都合なのでしょう、変ロ長調に移調された上、ホルン12本で 演奏されています(正確には11本+ ワーグナー・チューバ 1本 )。
 黄昏のウィーン世紀末を 音で表現すると、こんな感じになるのではないでしょうか。 - どこまでも静かな、乾いた空気です。緩やかに降りてくる宵闇の冷気、孤独、失われた陶酔・恍惚の記憶。
 前小節からの不協和音として残された音を、次小節で回収 / 解決しながら、これにまた新たな不協和音をぶつけ、再び解決に向けて・・・と、これを繰り返す、マーラーには顕著な、繋留を重ねゆく 独特の和声進行の効果を、存分に発揮させるには、ピアノのような打鍵楽器 - 音が伸ばせない - ではなく、やはり ここでのホルンのような管楽器の方が より適していることを、強く実感させられます。

         
■ 日本を代表する 世界的メゾ、藤村実穂子さんの歌唱
藤村 美穂子 ドイツ歌曲集
ドイツ歌曲 リサイタル
収録曲:シューベルト「泉に寄せて 」、「春に 」、 「ギリシャの神々 」、「泉のほとりの若者 」、「春の想い 」、ワーグナー「ヴェーゼンドンク歌曲集 」、R.シュトラウス「私の想いのすべて 」、「君は心の冠 」、「ダリア 」、「私の心は黙り、冷たい 」、「二人の秘密を なぜ隠すの 」、マーラー「リュッケルトの詩による歌曲集 」、シューベルト「夕映えの中で 」、R.シュトラウス「明日 」
藤村実穂子(メゾ・ソプラノ )
ロジャー・ヴィニョーレス(ピアノ )
録 音:2009年 2月25日 いずみホール、2月27日 しらかわホール、3月 1日 所沢市民文化センター ミューズ マーキーホール、3月 3日 紀尾井ホール
音 盤:フォンテック (FOCD-9487 )

 素晴らしい一枚です。
 藤村実穂子さんは、2002年 - 日本人として初めて - バイロイト祝祭劇場リングフリッカ役に抜擢され、その後も9年連続で出演、ヴァルトラウテ、エルダ、ブランゲーネ、クンドリーを 演じています。
 バイロイトだけでなく、ウィーン国立歌劇場、ミュンヘン国立歌劇場、ザルツブルク祝祭大劇場、ドレスデン国立歌劇場、グラーツ歌劇場、ルツェルン音楽祭、パリ・シャトレー劇場、ロイヤル・コヴェントガーデン、ミラノ・スカラ座など ヨーロッパ中の 主要なオペラ・ハウスで絶賛される 世界的な存在となった、我が国の誇りです。
 これは 日本での歌曲リサイタルの模様を収めた 実況録音で 選曲もグレイテスト! 「私はこの世に忘れられ 」は、少しだけ テンポが速いような気もいたしますが、その温かくも厳粛な表現力と 美しいドイツ語には 深く圧倒されます。
 そのほか 藤村実穂子さんのマーラー歌唱といえば、発起人もお気に入り アルミンク=新日本フィル交響曲「大地の歌 」(2005年 6月録音、FONTEC FOCD-9281 )を 落とすわけにはいかないでしょう。
藤村実穂子 マーラー「大地の歌
 ・・・ですが、すみません 本日は気力が尽きてしまいました。また 次の機会に語らせて頂きたく、どうかお許しください。


Gustav Mahler
 おそらく 最も有名な マーラー語録のひとつ - 「私の時代が来るだろう 」 は、正確には「私が死んで50年もたてば、私の時代がくるだろう。そのときリヒャルト・シュトラウスの時代は終わる 」 というものだったそうです。
 これは 妻アルマによって マーラーの言葉として その伝記に書き残された言葉でした。

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