本記事は 6月19日「 注目記事ランキング クラシック音楽鑑賞 」で 第1位 となりました。
皆さまのおかげです、これからも 何卒よろしくお願い申し上げます。


スケルツォ倶楽部
「タイタニック船内のサロンにおける、
グスタフ・マーラーを 追悼する 架空の音楽会 」

Titanic 表紙 1912-2 Gustav Mahlerの肖像写真(1909年 )Wikipedeia   もくじ

(13)沈没まで あと 一時間半 ・・・ 「楽器を持って甲板へ! 」

 さて、これをもって タイタニック号 一等船客サロンにおける 今宵の特別な音楽プログラムは、その幕を閉じました。
 当初 予定もしていなかった曲目 - 自動ピアノによるマーラー自身の演奏というハプニングなど - も含め、サロン楽団のメンバーが そのすべてを 演奏し終えたのは 船内のカレンダーが日付を翌日に変えた、4月15日 午前 0時 5分頃のことでした。 その 全演目 - 13曲 - のリストを、以下 振り返っておきましょう。

スペシャル・プログラム
昨年 5月18日に 逝去したマエストロ・マーラーの夕べ
~ 副題 
偉大な指揮者の作曲家としての 知られざる一面を聴く” 」 


1.ピアノ四重奏曲断章 イ短調
  編成 → オリジナルどおり
2.歌曲「私はこの世に忘れられ 」
  編成 → ピアノ伴奏 + バリトン独唱
3.歌曲集「さすらう若人の歌 」全曲
  編成 → 室内楽伴奏 + バリトン独唱
4.交響曲第1番 ニ長調 第1楽章 
  編成 → ピアノ連弾
(予定されていなかった演目 )交響曲第1番 ニ長調 第2楽章 
  編成 → ピアノ独奏
5.アルマの歌曲「わたしの父の庭
  編成 → ピアノ伴奏 + メゾ・ソプラノ独唱
6.アルマの歌曲「わたしの父の庭 」
  編成 → 室内楽伴奏 + メゾ・ソプラノ独唱
7.交響曲第4番 ニ長調 第1楽章 
  編成 → 室内楽
(予定されていなかった演目 )交響曲第4番 ト長調 第4楽章「天上の生活 」
  編成 → マーラー自身による自動ピアノ伴奏 + ソプラノ独唱
(予定されていなかった演目 )交響曲第5番 嬰ハ短調 第1楽章 
  編成 → マーラー自身による自動ピアノの独奏
8.交響曲第5番 嬰ハ短調 第4楽章 アダージェット 
  編成 → 室内楽(ヴァイオリン、チェロ、コントラバス、アコルディオン )
(予定されていなかった演目 )「大地の歌 」第5楽章「春に酔える者 」
  編成 → 独唱テノール歌手自身による ピアノ弾き語り
9.「大地の歌 」第6楽章「告別 」
  編成 → 室内楽 + メゾ・ソプラノ独唱

 ・・・ とうとう唯一の「聴衆 」になってしまった 喪服を装った一等船客の女性「アルマ夫人 」は、最後の演目である「大地の歌 」が まさに永遠の中に鳴り終えたのを確かめると、最前列の席を立ち上がり サロンのミュージシャンたちに対し、たったひとり 心からの拍手を贈り続けました。
Alma Mahler
 「マーラーの未亡人から喝采を受けた 」という この上ない名誉に酔いしれたセカンド・ヴァイオリン奏者ジョック・ヒュームは、自分の楽器を椅子に置くと、「アルマ夫人 」の許へ 今にも駆け降り、挨拶しようとしました。
 しかし その時です。サロンの3つのドアが 外側から一斉に すべて開け放たれるやいなや、いずれも上等な身なりの、けれど その全員が白い救命胴衣を身に着けた 一等船客たちの団体が、雪崩のように どっとサロン内に押し寄せてきました。
 肝心の演奏中には ごく僅かな人数しかサロン内には いなかったというのに、今や - 皮肉なことに 演奏が終わった途端 - この同じ場所は 溢れんばかりの超満員です。ヒュームが話しかけようとしていた「アルマ夫人 」も とうとう その人混みの中に紛れてしまい、もはや姿は 見えなくなってしまいました。
 物凄い人波に揉まれながら、一等航海士マードックが、乗船客たちに 大声で注意を繰り返している言葉が、呆気にとられている ステージ上の演奏家たちの耳にも届きました。
「どうか落ち着いてください、皆さん。大丈夫ですから。皆さんの救命ボートは しっかりと確保しております。この後 ご婦人とお子さまから順番に ボートへと移って頂く手筈を 私どもでは 只今 整えておりますので、どうか このサロンにて、今しばらく お待ちになってください 」
乗船客たちは誰しも 不安気な顔色で 口々に「この船は本当に沈むのか 」、「部屋に置いてきた 大事な荷物はどうしてくれるんだ 」、「貨物室に預けてある高価な家具や自家用車は一体どうなるんだ 」などと 騒ぎ始めてしまいました。
「ああ、困ったなー 」
マードックは、一緒に連れてきた見習いの航海士 マルティン・クレッツァー少年 - 彼は先ほど マーラーの第4交響曲の第1楽章で、トランペット吹奏で参加した 船内信号ラッパ手でした - を 自分の側(かたわら )に待機させながら、パニック状態一歩手前の船客たちを いかに落ち着かせたらよいか途方に暮れて 天井を仰ぎました。
 一方、サロンが乗客で一杯になったことに気づくと、自然に タイタニック音楽家たちは、自分たちの使命に目覚めていました。
 まず、エキストラを務めてくれたロンドン交響楽団のメンバーらに 深く礼を述べると、若い歌手らとともに 彼らを ステージから去らせました。そして船内を「いつもの日常 」に戻すべく 必要な軽音楽のレパートリーを すばやく仲間同士で打ち合わせたのです。
「よし、『アレクサンダー’ズ・ラグタイム・バンド 』 を演(や )ろう! 」
リーダーのウォーレス・ハートリーが告げると、全員が一斉に楽器を構え、次の瞬間 ピアニストのパーシー・テイラーが アウフタクトで「かっこう 」の逆行するベース・ラインを力強く叩き始め、これに続けとばかりに 楽団全員で ハ長調の軽快なラグのイントロから演奏が始まりました。シンコペーションを効かせたアーヴィング・バーリン作曲の 近年の大ヒット『アレクサンダー’ズ・ラグタイム・バンド 』です。短いイントロダクションに続けて、軽くスキップする 有名なメイン・テーマに移ると そこからは ヘ長調に転調しています。そのツービートの明るい音楽は、まるでサロンの人波を切り分けながら進む カーニバルの行列のようでした。
映画「タイタニック 」出演のサロン楽団
映画「タイタニック 」に登場する イ・サロニスティ が演じたサロン・バンド

 一等船客たちは、まるで「 いつものように 」サロンで音楽が始まったことに気づきました。
「おや、音楽だ 」、「あら、 音楽が始まったわね 」
家族連れで船旅を楽しんでいた裕福な階級の父親は、怖がっている幼い子どもたちを 安心させようと、演奏を始めたハートリー楽師たちのほうを指さしながら言いました。
「なあ 坊や、考えてもごらんよ。もし本当に お船が沈没するとしたら、そんな大変な時に、ほら、あんな楽しい音楽を 陽気に演奏したりする理由(わけ )がないじゃないか。だから、ね 心配いらないよ 」
周囲からも 互いの安心を確かめ合うような声が 徐々に広がっていました。
「それもそうだ。真実の緊急事態だったとしたら、あんなに のんきに音楽なんかを演奏しているわけがないよ 」
そして バンドアーヴィング・バーリンの演奏を終えると、この航海中 ほとんどなかったことでしたが、サロン中が めずらしくも 拍手に包まれたのです。
「やっぱり大丈夫だよ。だって これは “ 不沈船タイタニック号 ”だもの 」
その喝采の裏には、乗船客らが 自分たちの旅の行方への安堵感を 無理にも得たがっている、という空気が感じられました。ゆえに 楽師たちが奏でる 一種 日常的な 音楽演奏が、彼らにとって 心理的な救いになっていることは 明白でした。
 さて、次は パーシー・テイラーが独りで アントン・ルビンシュタイン作曲の「へ調のメロディ 」を ソロ・ピアノで弾きはじめました。可憐で親しみやすい この人気曲テイラー翁が演奏している最中、他のバンド・メンバーと 急きょ 次の演奏曲目について打ち合わせをしていたウォーレス・ハートリーのもとへ、ようやく甲板からサロンへと ひとり戻ってきたトーマス・アンドリューズが近寄ってきて 話しかけました。
ハートリー君、素晴らしいぞ、君たちは。音楽の力は やはり偉大だな 」
アンドリューズさん・・・ 」
「さっきは マーラーエンディングが聴けなくて 実に残念だった 」
「 ・・・ アンドリューズさん、教えてください 」
ハートリーは、誰もが知りたがっている船の状況を おそるおそる尋ねました。周りをはばかって アンドリューズは、小声で答えます。
「君たちにだけは 本当のことを言っておこう。 ・・・さっき スミス船長と一緒に タイタニックの事故状況を検分してきたばかりだ。 船首から船尾に向かって浸水が拡大、ゆっくりと沈没を始めている。 - 実は もう絶望的だということがわかった 」
彼はそこで苦しそうに声をひそめました
「 - あと1時間半ぐらいで、この船は沈むんだよ 」
ハートリーは驚いて 聞き返しました。
「で、でも アンドリューズさん、あなたは 数時間前 タイタニック不沈船だっておっしゃったではありませんか 」
「うん、もちろん何もなければね。でもタイタニック号は、巨大な氷山と接触したとき、右舷船首に100メートルもの長さの裂傷を受けていた。それは、私が設計した安全防水隔壁の限界を超える規模だったんだよ 」
その場に集まっていた音楽家たちは皆、深刻な現実を 知って 黙ってしまいました。独り、テイラー翁が弾く ノスタルジックな「へ調のメロディ 」だけが サロン全体に鳴り続けています。
「それで・・・ 実は 諸君に頼みがあるんだ 」
アンドリューズが そこで言葉を繋ぎました。
「はい、どんなことでしょうか 」
ハートリーは尋ねます。
「それこそ ここだけの話なんだが・・・・ 実はね、乗船客数に対して救命ボートの数が 全然足りない。三等船客を避難させる頃には 船全体がパニックになっているかもしれない。 そこで・・・ なんとか 少しでも お客様を落ち着かせてほしいんだ 」
「しかし・・・ われわれに何ができるでしょう。情けないですが、私たちは 海難救助のお手伝いどころか、ボートをつなぐ綱の解き方さえ知らないんですよ 」
「君たちにしか出来ないことだよ。いいかい、このまま音楽を演奏し続けてほしいんだ。音楽には 精神安定の効果も期待できるということが、今の諸君の演奏によって実証された - 」

 その時、一等航海士マードックと、若い見習い航海士マルティン・クレッツァー少年の二人が サロンの入り口で 一等クラスの船客達を 大声で呼ぶ声が ここまで聞こえてきました。
「さあ、お待たせしました。救命ボートの用意が出来ましたので、ゆっくりと甲板へ出てください、どうぞ 」
一等船客の皆さま、ボートには ご婦人とお子さまから 優先的にお乗り頂きます、さあ どうか 一列にお並びください 」
アンドリューズは振り向くと、今度は 懇願するようにハートリーに言いました。
「さあ、楽器を持って、お客様と一緒に 甲板へ上がってくれ、頼むよ 」
「か、甲板で、演奏するんですって? 」
「だって乗船客は全員 避難するため甲板に行くんだもの。 - あ、凄く寒いから、厚いコートを着て出たほうがいいと思うよ 」
「う ・・・ 」
自分は 今宵 北大西洋氷海殉職することになるのであろうか - と、ハートリーが 初めて を意識したのは、まさに このときでした。彼の頭の中では、故郷で彼を待っている 若い婚約者マリア・ロビンソン の泣き声が、一瞬 聞こえたような気がしました。
ちゃんと無事に帰って来るって、アナタ 約束したじゃないの! ウォーレスの ウソつき、アナタのことなんか きっと忘れてやるんだから !

☆ おことわり ストーリー部分は フィクションであり、実在の登場人物も そのキャラクターは すべて架空のものです。

タイタニック楽師たちは、実際には 船内で どんな音楽演奏したか
 製作費240億円以上とも言われる 史上最高額の製作費が投じられた、ジェームス・キャメロン監督による空前の大作映画「タイタニック 」 - 1997年12月の映画公開から すでに15年を経過し、膨大な量の証言称賛感想から 果てはやっかみに至るまで、もう十ニ分に語り尽くされた感もある大成功作ですが - もし これに まだ私 “スケルツォ倶楽部発起人 の語る余地が残されているとしたら、やはり音楽についてでしょうか。
 映画中で再現されたものは タイタニックの船内だけでなく、100年前という時代の空気感でした。その説得力ある真正性が、たしかにスクリーンの向こう側から押し寄せてきたものです。圧倒的に質の高い精巧さを誇る大道具、時代考証的にもあらゆる細部にこだわった小道具や 忠実な歴史衣装とともに、聴覚的な面でも非常に大きな効果を上げていた演出が、サロン・ミュージックの姿を 現代に再現する室内楽団 イ・サロニスティ のメンバーが 船上で奏でていた音楽でした。彼らは、沈みゆく船の甲板上で 最後まで演奏を続け、船と運命を共に海中へと没した楽団員たちの役で登場、その演奏ばかりか 楽師としての演技面でも 立派に務めていたのでした ( ・・・但し 肝心のウォーレス・ハートリーに相当すると思われる 楽師らのリーダー役を 映画で演じていたのは、俳優でヴァイオリニストでもある ジョナサン・エヴァンス=ジョーンズ Jonathan Evans-Jones でした。彼は イ・サロニスティの正規メンバーではありません 、念のため )。
映画「タイタニック 」のラストシーンに 一瞬 映る楽師たち 映画「タイタニック 」より サロン・バンドのシーン
イ・サロニスティ I Salonisti
  ダニエル・ツィスマン Daniel Zisman(ヴァイオリン )
  トーマス・フューリー Thomas Füri (ヴァイオリン )
  ローレンツ・ハスラー Lorenz Hasler (ヴァイオリン )
  フェレンツ・セドラーク Ferenc Szedlak (チェロ )
  ベラ・セドラーク Bela Szedlak (コントラバス )
  ヴェルナー・ジャイガー Werner Giger (ピアノ )


 このサロン楽師たちが 実際に演奏していた楽曲は、この当時の流行音楽ポピュラーなクラシック名曲などにアレンジを施した親しみやすい軽音楽が中心でした。 グスタフ・マーラーの作品を演奏した、という 当ブログ “スケルツォ倶楽部” のオリジナル文章は、 私 発起人による ありもしない イマジネーションの産物たる 「フィクション小説 」ですので、ここも ご注意のほど。

映画「タイタニック 」サウンド・トラック (2012アニヴァーサリー・エディション ) イ・サロニスティ I Salonisti (2)
映画「タイタニック 」サウンド・トラック (2012アニヴァーサリー・エディション )
Disc 1 映画 「『タイタニック 』 オリジナル・サウンドトラック 」(ジェームズ・ホーナー )
1.ネヴァー・アン・アブソルーション - NEVER AN ABSOLUTION – 2.遠き日の記憶、3.サウサンプトン、4.ローズ、5.出港、6.航海ヘ、ミスター・マードック! 7.トラブル発生、8.とどまれない、離れられない、9.沈没、10.タイタニックの死、11.約束、12.人生、13.メモリー“海” 14.愛のテーマ「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン 」 (セリーヌ・ディオン )、15.海の讃歌
Disc 2 「イ・サロニスティによる、タイタニック船上のサロンで演奏された楽曲集 」
9月のワルツ(F.ゴーディン )、マルゲリータのワルツ(グノー作曲「ファウスト 」より )、ウェディング・ダンス(P.リンケ )、詩人と農夫(スッペ )、美しく青きドナウ(J.シュトラウスⅡ )、無言歌(チャイコフスキー )、エストゥディアンティーナ(ワルトトイフェル作曲 通称「女学生 」 )、ヴィジョン・オブ・サロメ(ジョイス作曲「サロメの出現 」 )、ティッツィー・ビッツィー・ガール(キャリル & モンクトン )、アレクサンダー’ズ・ラグタイム・バンド(バーリン )、スフィンクス(ポピー、プージェ & シャペラ )、バルカロール(オッフェンバック作曲「ホフマンの舟歌 」 )、オルフェウス(オッフェンバック作曲「天国と地獄 」 )、ソング・オブ・オータム(ジョイス )、讃美歌「主よ御許に近づかん 」(サリヴァン )
 + セリーヌ・ディオン「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン (ディカプリオ台詞入り ) 」
オリジナル盤リリース:1997年
音 盤:ソニーミュージック(SICP3457~8 )

 Disc 1 には 映画「タイタニック 」アカデミー賞を受賞したジェームズ・ホーナーによるオリジナル・サウンドトラックの音源が、新規リマスターを施された上 収録されています。 
 Disc 2 には、船内サロンの楽師役を演じながら イ・サロニスティ が 映画のために用意した すべての演奏楽曲が、未発表だった音源も含め、多数収められていることに注目です。
 たとえば 「ウェディング・ダンス 」は、映画の中では タイタニックの沈没が始まり 楽師らが甲板に上がってきてからの 最初の一曲として演奏されていた優雅なワルツです。
 「オルフェウス 」とは 言うまでもなく オッフェンバック作曲「天国と地獄 」のこと。映画の中で、この音楽の有名なカンカンのテーマが 実に興味深い使われ方をされていました。沈没が始まったタイタニック号の傾き始めた甲板上で 走り逃げ惑う人々 - そんな中で このナンバー楽師らが軽快に演奏し始めた瞬間、悲劇的なパニックシーンが一瞬で コミカルな印象へと変貌を 遂げてしまったのです。たとえ同じ場面であっても B.G.M.(背景音楽 )の選択次第で、悲劇にも喜劇にも なり得るものなのだ・・・ という、映画の演出においては 一面の真実を突いた提起でもありました。
 アーヴィング・バーリンの有名な出世作「アレクサンダー’ズ・ラグタイム・バンド 」は、映画では(甲板上ではなく )船内サロン合奏シーンで、ストリングスがピアノとユニゾンで演奏していましたが、今回の「2012アニヴァーサリー・エディション 」盤では なぜかピアノ連弾によるヴァージョンが収録されているのみです。しかも 1998年に発売された同映画のサウンドトラック盤バック・トゥ・タイタニック 」に収録されていた同曲と 聴き比べてみたら、なんと、新盤は 単に「バック・トゥ・タイタニック 収録同じテイクから 弦楽セクションの音を わざわざカットして ピアノ連弾の音のみを残した マイナス・ミックス・ヴァージョンに過ぎないことが判ります( ミックスダウン時に取り除かれたオリジナルの弦の音を かすかにピアノのチャンネルに使ったマイクロフォンが拾っているため )。なぜ こんな無駄なことを わざわざしたのでしょうか、オリジナルアンサンブル版のほうが 十分に素晴らしいというのに。

Back To Titanic(ソニー SRCS-8747 )
 そういうわけですから、現在 「アレクサンダー’ズ・ラグタイム・バンド 」 を もし映画と同じの、あの魅力的なストリングス入り合奏ヴァージョンで聴きたいと思われたら、こちらの旧サントラ盤「バック・トゥ・タイタニック Back To Titanic 」(ソニー SRCS-8747 ) 上掲写真 - でしか 今は 聴くことが出来ません。どうぞ ご注意のほど。

The Music Heard On The Fateful Voyage of the TITANIC(WDR、DHM )
ラスト・ダンス~タイタニック号の音楽
The Music Heard On The Fateful Voyage of the TITANIC
イ・サロニスティ
収録曲 : ヘ調のメロディop.3 (ルビンシュタイン )、セレナータ (トセリ )、村の結婚式 (ゴダール )、亜麻色の髪の乙女 (ドビュッシー )、レントよりおそく(ドビュッシー )、「カヴァレリア・ルスティカーナ 」間奏曲 (マスカーニ )、ユーモレスクop.101-7 (ドヴォルザーク )、「悲しきワルツ 」op.44-1 (シベリウス )、「スペインの時 」(ラヴェル ) 、シンコペーション (クライスラー )、スペイン舞曲 第1番、第2番 (モシュコフスキ )、花のささやき (ブロン )、ウィーン風小行進曲 (クライスラー )、乙女の祈り (バダジェフスカ )、チャールダーシュ (モンティ )
録 音 : 1998年
音 盤 : WDR / DHM (BMGジャパン BVCD-37008 )


・・・ And The Band Played On(LONDON )
タイタニック号の音楽 ~ イ・サロニスティ
“ ・・・ And The Band Played On ”
収録曲 : コミック・ケイク・ウォーク(フォルシュテット )、運命~ディスティニー(ベインズ )、エル・カピタン(スーザ )、ただ憧れを知る者のみ(チャイコフスキー )、岸辺のモリー(グレインジャー )、「カヴァレリア・ルスティカーナ 」間奏曲(マスカーニ )、蛍 ~ リュシストラータ(リンケ )、喜歌劇「リュシストラータ 」牧歌(リンケ )、シューベルトのセレナード、エリート・シンコペーション(ジョプリン )、ウィーン気質(J.シュトラウスⅡ )、カヴァティーナ(ラフ )、エブリバディズ・ドゥイング・イット・ナウ(アーヴィング・バーリン )ユモレスク(ドヴォルザーク )、行進曲「威風堂々 」第一番(エルガー )、讃美歌「主よ 御許に近づかん 」(サリヴァン )
録 音 : 1997年 5月16、19、20日 スイス、ブルーメンシュタイン教会
音 盤 : LONDON (ポリドールPOCL‐1788 )


■ ・・・ 今宵の最後に、もう一枚。
 イ・サロニスティの演奏ではありませんが、これは 悲劇の客船タイタニック号を所有していた英国海運企業名 ホワイト・スター・ライン社 White Star Line の名を冠した演奏団体 - ザ・ホワイト・スター・オーケストラ -  による、もうひとつの「架空の音楽会 」です。
TITANIC - MUSIC AS HEARD ON THE FATEFUL VOYAGE
ザ・ホワイト・スター・オーケストラ / タイタニック 運命の航海に捧げられた音楽
TITANIC - MUSIC AS HEARD ON THE FATEFUL VOYAGE
収録曲 :
1.ホワイト・スター・マーチ The White Star March、
2.「失われたタイタニック号に寄せて 」(詩の朗読 ) The Convergence Of The Twain: Lines On The Loss Of The "Titanic"、
3.グロウ・ウォームGlow-Worm、
4.マイ・ハート・アット・ユア・スウィート・ヴォイス(サン=サーンス : 歌劇「サムソンとデリラ 」から「あなたの声に心は開く 」原曲 ) Mon Coeur S'Ouvre A Ta Voix: My Heart At Thy Sweet Voice、
5.イン・ザ・シャドウズ In The Shadows、
6.ビューティフル・ドール Oh, You Beautiful Doll、
7.ミュージックホール・ワルツ・メドレー Music Hall Waltz Medley : Are We To Part Like This, Bill ? ~ If Those Lips Could Only Speak、
8.モスキート・パレード The Mosquito's Parade、
9.メリー・ウィドウ・ワルツ The Merry Widow Waltz、
10.アレクサンダー’ズ・ラグタイム・バンド Alexander's Ragtime Band、
11.サムホエア・ア・ヴォイス・イズ・コーリング Somewhere A Voice Is Calling、
12.ミュージック・ホール・マーチ・メドレー Music Hall March Medley : Do Like To Be Beside The Seaside ~ Fall In And Follow Me ~ Ship Ahoy ( All The Nice Girls Love A Sailor )、
13.ミュージカル・コメディ「ザ・アルカディアン 」セレクション Selections From The Musical Comedy "The Arcadians": Chorus Of Waitresses ~ My Motter ~ Arcady Is Ever Young、
14.シャイン・オン・ハーヴェスト・ムーン Shine On Harvest Moon、
15.メズマライジング・メンデルスゾーン・チューン(「春の歌 」原曲 ) That Mesmerizing Mendelssohn Tune、
16.デスティニー Destiny、
17.ウェイティング・フォー・ザ・ロバート・E.リー Waiting For The Robert E. Lee、
18.愛の挨拶 Salute d'Amour、
19.フランキー & ジョニー Frankie And Johnny (You'll Miss Me In The Days To Come )、
20.シルヴァー・ヒールズ Silver Heels、
21.リリー・オブ・ラグーナ Lily Of Laguna、
22.ムーンストラック Moonstruck、
23.ドリーム・オブ・オータム Songe D'automne (Dream Of Autumn )
録 音 : 1997年
音 盤 : Rhino(Atlantic )AMCY-2458

 これは、タイタニックとともに 流氷の北大西洋へと沈んだ悲劇の楽師たちが - ウォーレス・ハートリー率いるサロン楽団が - 船上で 実際に演奏していた楽曲レパートリーを集め、運命の夜を再現してみせた、という たいへん興味深いアルバムです。
 「架空のマーラー作品 」で構成した現在進行中拙文(フィクション )より このプログラムの方が 当夜のタイタニック号サロンで演奏されていた現実内容に近かったことは、申すまでもございません(笑 )。
 おそらく このレコーディングのみを目的に創設された ホワイト・スター・オーケストラは、かつて1965年 「You Turn Me On 」で 全米8位という大ヒットを放った、ビートルズと同世代英国シンガーだったという 意外な前歴を持つ才人イアン・ウィットコム Ian Whitcomb (1941 - ) による秀逸なプロデュース能力によって企画された、臨時編成の演奏団体と思われます。
Ian Whitcomb 
イアン・ウィットコム Ian Whitcomb  
 ウィットコムは、アルバムの解説文(・・・というか、このディスクに付されたライナー文章も 一種のノヴェル作品と呼べる質の高さ )まで執筆していますが、その美しいブックレットの冒頭には 「このアルバムを、ダイニングルームの片隅で演奏するすべての無名の楽団員に捧げる。彼らの奏でる心地よいバックグラウンド・ミュージックは、豪華な食事や食卓での楽しい会話が終わってもなお、我々の心に入り込んで響き続けるだろう(国内盤対訳より ) 」という 彼の言葉が添えられています。

 ・・・次回 『甲板上で 最期に演奏された曲とは - 』 に続く。


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