今回は「追記あり 」です。
本ブログ 一番下の「追記欄 」も ご参照ください。
以前 別の記事だった「後白河法皇にゲーテの魔王が憑依する話 」 ( 2012年11月11日 投稿記事 )も、この「追記 」に合体させた上、並記させて頂きました。


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NHK大河「平清盛 」(3月25日 放送回 )に、
伝カッチーニの 「アヴェ・マリア 」が流れた

NHK大河ドラマ「平清盛 」  吉松隆
 今晩は、“スケルツォ倶楽部” 発起人です。
 午前0時を過ぎて 今日は明日になってしまいました。本当なら 昨日(25日 )のうちに 投稿したかった話題だったのですが・・・

 今年のNHK大河ドラマは、平安末期という古(いにしえ )の時代を( 平成17年放送『義経 』以来 )久しぶりに描いた、「平清盛 」です。皆さま、ご覧になっておられますか。貴族政治終焉をもたらした平家一門の栄枯盛衰を、主人公 平清盛を演じる松山ケンイチ が 捨て身の演技です。
NHK 平忠盛 中井貴一 NHK 源義朝 玉木宏 (1) 清盛 松山ケンイチ と 平盛国 上川隆也(右 )
 (ドラマでは )清盛の「養父 」という設定の 平忠盛 を演じる中井貴一清盛 のライヴァル的存在 源義朝 役の 玉木宏 や、清盛 の側近で この後 壇ノ浦後まで生き長らえることになる平盛国 役を演じる 上川隆也 の演技など、出色と感じています。
 「視聴率競争 」でこそ苦戦してるようですが、ここまでの展開は 多様多方面に伏線が張られ、この先を大いに期待させるドラマの流れが興味深く、全然悪いことありません作品の質には 必ずしも関係しない視聴率など 一切気にされず、NHKには がんばれエールを贈りたいものです。

 さて、昨日(25日 )放送された第12回( 「宿命の再会 」 )、時は 1145年夏、檀れい 演じる 落飾した待賢門院 璋子(たまこ )は 病の床で死に瀕しています。待賢門院を慰めるため、鳥羽院三上博史 )は 彼女の愛する水仙の花(季節外れ )を探すようにと配下の武士団に命じます。水仙の花は、鳥羽院 璋子 の 二人の間だけでしか 解り得ない、実は 深い愛情を 意味する「 シンボル的な 符牒 」だったのですが、その説明は ここでは省略させて頂きます。
 花を求めて 京の野山を必死にかけまわる清盛松山ケンイチ )の目の前を、すでにひと足早く水仙を手に入れ これを 鳥羽院に届けようと、清盛の 宿命のライヴァルである 源義朝玉木宏 )が 得意気に通り過ぎてゆきます。
 ・・・このエピソード、クラヲタ(クラシック音楽愛好家 )にとっては マーラー「嘆きの歌 」 第一部で 赤い花の探索を競い合う兄弟の物語を連想する 興味深い挿話です。
NHK 壇れい 待賢門院 璋子 NHK「平清盛 」伝カッチーニ「アヴェ・マリア 」が流れたシーンの画像
 待賢門院 璋子檀れい )は、鳥羽院から手渡された その花を いとおしく胸に抱きながら ついに亡くなるのですが、その哀しいシーンで 夏の蜩(ひぐらし )の声と共に流れていた 美しいピアノ・ソロ によるB.G.M.は、しかし ドラマのオリジナル曲ではない、たしかに どこかで聴いた覚えのある音楽・・・。
 えーと、これ何だっけなーと、私 発起人が 必死に思い出そうとしていると 傍(かたわ )らで 一緒にTVを観ていた (自称 壇れい 似だと ? )、お茶を飲みつつ 事もなげに呟きます、
「あら、カッチーニの“アヴェ・マリア”じゃない 」
 ・・・おお、そうでした!

Bust of Giulio Caccini
ジュリオ・カッチーニ(カッツィーニ )の胸像 Bust of Giulio Caccini(1545頃 – 1618 )
イタリア・ルネサンス音楽末期からバロック音楽初期に活躍した、モノディ様式の代表的な音楽家の一人として伝えられます。 ・・・しかし この極めて美しい旋律を持った「アヴェ・マリア 」が、実際には ソ連の作曲家ヴラディーミル・ヴァヴィロフ Vladimir Vavilov(1925 – 1973 )による作品だったこと、もう今では定説ですね。
Вавилов Владимир Фёдорович (1925#8211;1973) 
ヴラディーミル・ヴァヴィロフ(1925–1973 )

ヴァヴィロフ自身、しばしばクライスラーのように 自作を古典作曲家の曲として発表する事がよくあったそうですから仕方ないとも言えますが、いまだに「カッチーニ作曲 」としてCDがリリースされることが多いのは、肝心な情報が定着していないためでしょうか。

 ドラマでは あまりに純粋でイノセントであったが故に、彼女自身は意図していなかったにもかかわらず 結果的に朝廷内での様々な諸問題の根源となってしまった不幸な存在として - 待賢門院 璋子最期のシーンに使うには、この儚(はかな )く美しいメロディは、とても効果的でした。
 けれど、大河ドラマの音楽でオリジナル以外の既存の名曲を使うことって、かなり珍しいのではないでしょうか。 ・・・他にちょっと思い出せません。
 強いて挙げれば、平成21年11月から 平成23年12月まで 足掛け三年にも渡って 断続的に放送された 記録的な名作「坂の上の雲 」で・・・
スペシャル・ドラマ「坂の上の雲 」(NHK )
 ・・・主人公 秋山真之 (写真右 : 本木雅弘 )が 東郷平八郎渡哲也 ) と再会する 佐世保の海軍パーティ会場で ローザスワルツ「波濤を越えて 」が使われていた場面があった - という程度で、その時は 劇中の背景で海軍軍楽隊によって演奏されている という設定でしたから、今回の「平清盛 」のように 画面オフから B.G.M. として使われたわけではありませんでした。なので、よく考えてみれば これとは同列に扱えませんね。


■ 『平清盛 』の劇中 音楽担当は 吉松隆
NHK大河ドラマ≪平清盛≫サウンドトラック
吉松隆 : NHK大河ドラマ「平清盛 」サウンドトラック
井上道義 / NHK交響楽団、舘野泉(ピアノ )
藤岡幸夫 / 東京フィルハーモニー交響楽団
木嶋真優(ヴァイオリン )、伶楽舎(雅楽 )、松浦愛弓(歌 )
日本コロムビア( COCQ-84927 )

 今年のNHK大河ドラマ、この「平清盛 」で音楽を担当しているのは、意外なことに 吉松隆氏(1953~ )です。重厚にして繊細、とても耳に馴染みやすい上、説得力もある雄弁な音楽に 毎回感嘆しています。たとえば、映像に伴なって使われると 驚くほど真摯で悲愴な空気を 醸(かも )しだす一曲「勇み歌 」が、個人的には 大のお気に入りです、そのメロディ自体は 中島みゆきのようですが(スミマセン )。
 ドラマの重要なメイン主題のひとつといえる、清盛子守唄として登場した『梁塵秘抄(りょうじんひしょう ) 』に収められた今様(いまよう )「遊びをせんとや生まれけむ 」の素朴な旋律が、当初 音声合成ソフトウェアのヴォーカロイド初音ミク 」を使用する計画だった(! )ということ(結局 放送では子役の歌唱に差替え )や、エマーソン・レイク & パーマーの「タルカス 」の吉松編オーケストラ版が使われるということ、そして ご病気によって半身の機能を奪われてもなお「左手のピアニスト 」として ご活躍の 舘野泉氏のピアノが テーマ音楽演奏に参加、さらに 吉松氏の 美しい旧作「5月の夢の歌 」も劇中で使用されることなど、音楽面での話題は 実はたいへん豊富でしたが、今回の 伝カッチーニ(ヴァヴィロフ )の「アヴェマリア 」まで登場するということまでは 知りませんでした。
 吉松氏は この「アヴェ・マリア 」を「3つの聖歌~ピアノ(左手のための ) 」第2曲として シューベルトの「アヴェ・マリア 」(第1曲 )、シベリウスの「フィンランディア賛歌 」(第3曲 )と共に 自身 編曲の手を加えた作品があったのです!
 この曲は「子守歌 」、「4つの小さな夢の歌 (3手連弾のために ) 」と一緒に「館野泉 左手のピアノシリーズ 」として出版もされており、人気の「プレイアデス舞曲集 」とのカップリングによってCDもリリースされています。
 以前から北欧の音楽テイストを得意とされてきた 舘野氏による演奏は、吉松作品への適性も極めて高く、その繊細な演奏の内面に秘める豊かな訴求力は 素晴らしいです。“スケルツォ倶楽部発起人も おススメします、まだ未聴の方は ぜひ一度。

舘野泉 アイノラ抒情曲集(吉松隆 ) Avex Classics(AVCL-25138 ) 館野泉と吉松隆(左 )
吉松隆「アイノラ抒情曲集 」
アイノラ抒情曲集(左手のための )作品95 / 舘野泉に捧げる( ロマンス、アラベスク、バラード、パヴァーヌ、モーツァルティーノ、パストラール、カリヨン )、4つの小さな夢の歌 / 三手のための春:5月の夢の歌、夏:8月の歪んだワルツ、秋:11月の夢の歌、冬:子守歌 )、プレイアデス舞曲集(前奏曲の記憶、静かなる雨の雅歌、西に向かう舞曲、間奏曲の記憶、遠く暗い牧歌、東に向かう舞曲、アレルヤの季節 )、ゴーシュ舞曲集 / 左手のための 作品96 / 舘野泉に捧げる(ロック、ブルース、タンゴ、ブギウギ )、左手のための3つの聖歌(シューベルトのアヴェ・マリア、伝カッチーニのアヴェ・マリア、フィンランディア賛歌 )、三手のための「子守唄 」
舘野泉(ピアノ )
音盤:Avex Classics(AVCL-25138 )


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4月 8日 追記 
 本日( 4月 8日放送分 )第14回「家盛決起 」を観ていたら、意外なことに 今回もまた 伝カッチーニ「アヴェ・マリア 」が ピアノ・ソロで流れていました。。。
 私 “スケルツォ倶楽部” 発起人、この音楽が 吉松隆氏のオリジナル曲ではないため、きっと 第12回( 「宿命の再会 」 )において 待賢門院 璋子(たまこ )の死 - という歴史的にも一回限りの場面一度だけ使われるのであろう・・・などと、根拠もなく 勝手にそう考えていたのですが、本日 平清盛と積極的に跡目争いを始め、仲違いをしてしまった弟 家盛(大東駿介 )が 落馬するラストシーン近くで 再び使われていたことに気づきました。
 ということは、サウンド・トラックとしてレギュラー的に 今後もB.G.M.で 使われてしまうのでしょうか。それが 悪い とは言いませんが、何だか ヴァヴィロフの書いた あの切ないメロディの価値が 私の中で ちょっぴり下がってしまったような・・・ そんな複雑な気持ちになりました。勝手に思い込んで、勝手に残念がって、何だか しようもない話で、どうもすみません。
 
 ところで、今日のドラマを観ていて、これも勝手な想像ですが、以下のようなことを 考えました。
 歴史的にも 平家盛鳥羽法皇の熊野参詣に随行した後 都へ戻る途中で病死(享年23とも )してしまうのですが、考えようによっては 祇園闘乱事件によって謹慎させられていた嫡男 清盛に代わって、一時的ではあっても平家の跡目を継ぐ者と見なされていた時期、まさに 延暦寺平家を呪詛する呪いの対象となってしまったと言えるかも知れません。つまり弟 家盛は はからずも 清盛身代わり となって死んだのではないでしょうか?
 (以上、4月 8日 午後 8時50分 追記 )

5月13日 追記 
 本日( 5月13日放送分 )第19回「鳥羽院の遺言 」において、鳥羽法皇(三上博史 )が崩御し、後世に多くの火種を残しつつ その悩み多き生涯に終止符を打ちました。三上博史 の 類のなかったほどにエキセントリックな熱演も白眉でした。
 もしや・・・ との予感はありましたが、やはり 今回も 伝カッチーニ「アヴェ・マリア 」が 死に瀕した法皇の最期の場面に ピアノ・ソロで流れました。もはや その選曲に意外性や驚きは感じなくなりました。さすがに 三度目の正直ともなると 間違いありません、この大河ドラマのサウンド・トラックにおいて 「アヴェ・マリア 」は 主要な登場人物の「 」の場面に 常に紐付けて扱われるようです( 但し、清盛の父である 平忠盛が亡くなる場面には 使われていませんでしたが、そこに 何か特別な意図やこだわりがあったのかどうか までは、私にも わかりません )。
 また 音楽面で 特別 新しい気づきがありましたら、ここに追記を重ねようと思ってます。
 (以上、5月13日 午後 9時10分 追記 )


11月11日 追記 および 妄想 ☆ 
NHK大河ドラマ《平清盛》 平清盛 其の二 
 そう言えば、「平清盛 」オリジナル・サウンドトラック 其の二 がリリースされましたね。
 其の壱 と重複している音源は 一曲もありません。ここでは エマーソン・レイク & パーマー E.L.& P. の「タルカス 」(冒頭 )の吉松隆氏編曲による管弦楽版館野泉氏の繊細なピアノによる 伝カッチーニの「アヴェ・マリア吉松編曲版 ) 」、おなじみ「平清盛 」の 少し影のある主要動機が 明るいハ長調で大爆発する「栄華 」などが聴けるほか、特に重要なモティーフ「遊びをせんとや 」の 巧みなヴァリエーションである小曲の数々 -  ミニマル風のリズムが特徴的な「風見 」、「風早 」、これに「タルカス 」の“噴火”リズムを融合させた「走狗 」、滴り落ちるような弦の美しい「悲歌 」、まるでファーフナーが洞窟から登場するかのような 底なしのチューバが主導する「宿業 」では「清盛 」の主要動機とにらみ合うように組み合わされた緊張感、、弦の刻む切迫感が白眉の「奈落 」、そして 放送では使われない 初音ミク音源によってレコーディングされた デモ・ヴァージョンなどなど 、其の壱 では聴けなかった、話題の音源が満載なのですが、実は さらに12月には このドラマのために吉松隆が用意した ほぼすべての音源を収めた、「平清盛 × 吉松隆 : 音楽全仕事 NHK大河ドラマ≪ 平清盛 ≫ 」 CD- 5枚組BOX(!)という特別企画も予定されているそうですよ。

 あらためて感じたことですが、このドラマに 毎回映し出される 多くの映像の特徴は (決して難解とまでは思いませんが )あまりにも芸術的、また 試みに 毎週少しでも日本史を予習してから観るようにすれば、脚本・製作側によって張られまくった伏線 / 回収 のきめ細かさや 歴史人物の意表を突かれる新解釈のオンパレードに ノックアウトされること必至の 面白さたるや 絶大です。
京の市中をスパイする 禿童(かむろ )NHK
 一例を挙げれば、清盛の義弟、平時忠(森田 剛 )が放つという設定で、真っ赤な直垂を着て京の市中をスパイする 禿童(かむろ )という14~15歳の児童集団が 平家物語の記述そのままドラマにも登場しましたが、その鮮烈な衣装の色彩とともに 舞踏的な動きを伴って画面に登場した、彼らの存在の象徴性に感嘆しました。
若き義経 こと 牛若丸(神木隆之介 )NHK 武蔵坊弁慶(青木崇高 )NHK
 さらに、京都・五条大橋の上で 若き源義経こと遮那王(神木隆之介 )武蔵坊弁慶(青木崇高 )が長刀を振り回して襲い掛かる名場面。どうして弁慶が切りかかってきたのか、その理由とは、彼が 平氏政権に叛意を抱いているため、赤い薄被衣を被った 遮那王 のことを 憎むべき平氏の手先である禿童のひとりと勘違いしたから - という 新しい斬新な設定に、深く納得しつつ 唸ってしまいました。

後白河法皇(松田翔太 )NHK 清盛(松山ケンイチ )と嫡男・平重盛(窪田正孝 )NHK
 さて、昨日(11日 )放送された 第44回 「そこからの眺め 」では、朝廷の権力者である後白河法皇(松田翔太 )と 政治の実権を握っている平清盛(松山ケンイチ )との政争の狭間において 長年 調整役に徹してきた苦労人 嫡男の平重盛(窪田正孝 )が、度重なる心労の余り 遂に病の床に伏しています。
 病床の枕元まで後白河法皇が見舞いに訪れるものの、法皇父・清盛両者の和解を切に望む 瀕死の重盛の願いを「聞き入れるには わしとの双六(すごろく )勝負に勝たねばならぬ 」などと言って、無理やり双六「遊び 」を押しつけて苦しめます。まるで 映画「アマデウス 」で 瀕死のモーツァルトに徹夜で「レクイエム 」の作曲を強いるサリエリのような場面ではないですか。
NHK《平清盛》第44回 「そこからの眺め 」-2 幼い重盛を賭けて 雅仁親王(後の後白河法皇 )と 双六で勝負する 若き清盛(NHK)
 かつて後白河法皇は、まだ奔放な雅仁親王だった頃にも、若き平清盛の子で まだ幼児だった重盛を 無理やり賭けの対象にして、清盛を双六「遊び 」に誘い込んだことがあったのでした(上・右の写真、中央には幼い重盛。「遊びをせんとや生まれけむ 」!
 そんな つらい場面の音楽は ・・・ああ、やはり ここでも伝カッチーニ の「アヴェ・マリア 」が 流れてきました - もはや「死亡フラグ(Marked For Death ) 」が 立てられたようなものではありませんか?
⇒ NHK大河「平清盛 」に、伝カッチーニ「アヴェ・マリア 」が流れた

 ドラマで後白河法皇を演じている 松田翔太君が 浮かべる その憎々しげな表情の巧さに、思わず 私“スケルツォ倶楽部” 発起人の想像力は爆発し、これに シューベルトの作曲で知られる、ゲーテの「魔王 」を 勝手に思い重ねていました。

妄想「後白河 法皇魔王” 

<語り手> 夜の風を切って 馬で駆け行くのは誰だ?
        それは父親とその息子
        父親は 息子を腕に抱え、
        しっかりと温めている

清盛:「息子よ、重盛よ、何を恐れて顔を隠すのだ? 」
重盛:「お父さんには 後白河法皇がやってきたのが見えないの?
     ほら、スキンヘッドで 金色の法衣をまとった法皇が 」
清盛:「重盛よ、あれは たなびく霧だよ 」


法皇:「可愛い重盛や、私と一緒においで
     楽しく双六(すごろく )で遊ぼう
     お前が勝ったら
     どんな願いも聞き入れてやるぞ 」

重盛:「お父さん、お父さん!
     後白河法皇の 無茶で怪しい ささやきが聞こえないの?
清盛:「落ち着くんだ、重盛
     あれは 遠くで蝉(せみ )が鳴いている声だよ 」

法皇:「可愛い重盛よ、私と一緒においで
     健春門院滋子や祇園女御が一緒に遊んでくれるよ
     高倉帝准母の准三宮盛子も最近 来たんだよ 」

重盛:「お父さん、お父さん!
     あれが見えないの?
     暗がりにいる 法皇の 亡くなったはずの側室や
      かつて仕えていた宮中の人たちの姿が! 」
清盛:「重盛よ、確かに見えるよ
      でもそれは 庭先で風に揺れる柳の枝だよ 」

法皇:「わしは お前が大好きだ。仕事のできる その姿が。
     イヤがっても 力ずくで賽(サイコロ )を振らせるからな 」
重盛:「お父さん、お父さん!
      ああ、『忠ならんと欲すれば孝ならず 』なんて言って
      お父さんの出兵を止めなければよかった、
      やっぱり法皇は 酷い人だった! 疾(と )く死なばや 」

<語り手> 父親は恐ろしくなり 馬を急がせた
        苦しむ息子を腕に抱きながら
        疲労困憊で 六波羅の小松殿に辿り着いたものの
        7月29日、重盛は死去した。
        その死によって 清盛と後白河法皇の対立を抑えていた
        最後の歯止めは失われ、両者の関係は ・・・瓦解した。


NHK《平清盛》第44回 「そこからの眺め 」
NHK「平清盛 」第44回 「そこからの眺め 」[再放送 ] は、
11/17(土 ) 13:05~13:50(NHK総合 )だそうですよ。お時間があれば 是非。
 お口直しに 格調高き ゲーテオリジナル原詩を どうぞ
  ↓ この下です。

Erlkönig 「魔王
  Johann Wolfgang von Goethe
  ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ (原詩 )

Goethe(Wikipedia).jpg シューベルトの肖像画
Wer reitet so spät durch Nacht und Wind?
Es ist der Vater mit seinem Kind;
er hat den Knaben wohl in dem Arm,
er faßt ihn sicher, er hält ihn warm.
<語り手> 夜の風を切って 馬で駆け行くのは誰だ?
        それは父親と子供
        父親は子供を腕に抱え、
        しっかりと温めている

Mein sohn, was birgst du so bang dein Gesicht? ―
Siehst, Vater du den Erlkönig nicht?
Den Erlenkönig mit Kron' und Schweif? ―
Mein Sohn, es ist ein Nebelstreif.
父 :「息子よ、何を恐れて顔を隠すのだ? 」
息子:「お父さんには 魔王が見えないの?
     王冠をかぶり、長いマントの魔王が 」
父 :「息子よ、あれは たなびく霧だよ 」

"Du liebes kind, komm, geh' mit mir!
Gar schöne Spiele spiel' ich mit dir;
Manch' bunte Blumen sind an dem Strand,
meine Mutter hat manch' gülden Gewand."
魔王:「可愛い坊や、私と一緒においで
     楽しく遊ぼう
     キレイな花も咲いているし
     黄金の衣装もたくさんある 」

Mein Vater, mein Vater, und hörest du nicht,
was Erlenkönig mir leise verspricht? ―
Sei ruhig, bleibe ruhig, mein kind;
In dürren Blättern säuselt der Wind. ―
息子:「お父さん、お父さん!
     魔王のささやきが聞こえないの?
父 :「落ち着くんだ、坊や
     枯葉が風で揺れているだけだよ 」

"Willst feiner Knabe, du mit mir gehn?
Meine Töchter sollen dich warten schön;
Meine Töchter führen den nächtlichen Reihn,
und wiegen und tanzen und singen dich ein,
Sie wiegen und tanzen und singen dich ein."
魔王:「素敵な少年よ、私と一緒においで
     私の娘が君の面倒を見よう
     歌や踊りも披露させよう 」

Mein Vater, mein Vater, und siehst du nicht dort
Erlkönigs Töchter am düstern Ort? ―
Mein Sohn, mein Sohn, ich seh' es genau;
Es scheinen die alten Weiden so grau. ―
息子:「お父さん、お父さん!
     あれが見えないの?
     暗がりにいる魔王の娘たちが! 」
父 :「息子よ、確かに見えるよ
     あれは灰色の古い柳だ 」

"Ich liebe dich, mich reizt deine schöne Gestalt;
Und bist du nicht willig, so brauch' ich Gewalt." ―
Mein Vater, mein Vater, jetzt faßt er mich an!
Erlkönig hat mir ein Leids getan!
魔王:「お前が大好きだ。可愛いその姿が。
     いやがるのなら、力ずくで連れて行くぞ」
息子:「お父さん、お父さん!
     魔王が僕をつかんでくるよ!
     魔王が僕を苦しめる! 」

Dem Vater grauset's, er reitet geschwind,
er hält in Armen das ächzende Kind,
Erreicht den Hof mit Müh' und Not;
In seinen Armen das Kind war tot.
<語り手> 父親は恐ろしくなり 馬を急がせた
        苦しむ息子を腕に抱いて
        疲労困憊で辿り着いた時には
        腕の中の息子は息絶えていた


 オリジナルのゲーテによる歌詞は Wikipedia「魔王 (シューベルト ) 」から
日本語対訳は「有名なクラシック音楽 解説と視聴 」から
・・・それぞれ お借りしました、心より感謝申し上げます。

関連記事
ゲーテ「魔王」に曲を付した11人の作曲家
  ⇒ ゲーテの「魔王 」を聴き比べる
18人の歌手によるシューベルト「魔王」  
  ⇒ シューベルトの「魔王 」を聴き比べる


☆ 以上、 ■ 11月11日 追記 および 妄想 は、2012年11月12日投稿の文章 NHK大河 『平清盛 』(11月11日放送回 )の 後白河法皇に ゲーテの魔王が憑依したら… ( 記事番号 243 ) に、一部 手を加えたものです。
 これに伴って オリジナル記事のほうは、2013年 3月27日、私 発起人自身の手で 削除いたしました。

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一大河 さま!

大河ドラマ批評Blog で 有名な 一大河さまは 『大河ノ城 』 http://taigadrama.com/ を運営しておられます。
歴史好きのあなたも その熱い文章には きっと共感せずには いられないでしょう! 応援しています。
ところで、“スケルツォ倶楽部” 発起人の、個人的な思い入れ歴代大河ドラマと言えば、順位はナシで 「花神(当人物全員があまりにも魅力的すぎる ) 」、 「黄金の日々(史実とフィクションとの巧みな融合が絶妙 ) 」、「草燃える(源平合戦から承久の変まで、史実にほぼ忠実、安心して観ていられる直球勝負が好感度高し ) 」、「新選組!(毎回 創意工夫に溢れた脚本が とても良かった! ) 」 そして 「風林火山 (大河の王道のような安定感と 俳優の個性が際立っていた ) 」・・・です。
厳密には NHK大河ドラマのシリーズには含まれない スペシャル枠でしたが、司馬遼太郎 原作 の「坂の上の雲 」は 歴代の最高傑作ではないでしょうか。

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はじめまして。
大河ドラマ情報発信ブログ『大河ノ城』を
運営しております、一大河と申します。

このたびは、コメントをいただき有り難うございました。
大河ドラマでオリジナル曲を使うというのは、あまり例が
ないと思います。
吉松隆氏のタルカス、かっこよすぎです!

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