本記事は、10月 4日の 「注目記事ジャズ ランキング 」、および
10月 6日の「 注目記事クラシック音楽鑑賞 ランキング 」でも
それぞれ 第1位 となりました。
皆さまのおかげです、これからも 何卒よろしくお願い申し上げます。


スケルツォ倶楽部 Club Scherzo
「アフター・シュトラウス & “ バイ・シュトラウス ”」
After-Strauss & “By Strauss”
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(26)1961年 ヘンリー・マンシーニムーン・リヴァー
    ~ 映画「ティファニーで朝食を 」から

BREAKFAST AT TIFFANY’S(RCA )L.P. Henry Mancini  Audrey
(左 )サウンド・トラック盤のジャケット(RCA )
(右 )ヘンリー・マンシーニ と オードリー・ヘプバーン


ヘンリー・マンシーニ Henry Mancini & His Orchestra
録音:1961年 パラマウント映画 オリジナル・サウンド・トラックから
音盤:RCA(BMGビクター/ BVCP-1024)
 
 ニューヨークの高級宝石店 “ ティファニー ” を 一躍観光名所にしたオードリー・へプバーン主演の「ティファニーで朝食を(ブレイク・エドワーズ監督 ) 」の映画主題曲です。
BREAKFAST AT TIFFANY’S
 夜明けのニューヨーク五番街、ジヴァンシーの黒いドレスの装いで イエローキャブからゆっくりと降り立つドラマのヒロイン、ホリー・ゴライトリーを演じるオードリー・ヘプバーンが、ティファニーのショーウィンドウを覗き込みながら、ひとくち クロワッサンを小さくかじる - この映画の冒頭シーン - その背景に流れるワルツヘンリー・マンシーニ作曲の「ムーン・リヴァー 」、同時に BREAKFAST AT TIFFANY’S と タイトルも映し出されます。その独特な雰囲気と音楽との調和、実に素晴らしいです。

■ 映画の原作は トルーマン・カポーティ 
 さて、すでにどなたもご存知のように 活字で表現される「小説 」と 活動映像にサウンドトラックを融合させた総合芸術「映画 」とが 同じものになる筈はありません。表現手段の段階から全く異なるわけですから、原作の小説映画化しようとすれば、当然ストーリー構成から登場人物の扱いに至るまで作り直す必要があるわけで、結局 仕上ったものを観たら全く異なるものになっていたということだって 決してめずらしくはありません。映画が「原作と違う 」と言って 殊更に目くじら立てる人もいますが、それは単に その人が抱いていた原作のイメージと違っていた、ということに過ぎないのですから むしろ両者の相違点を楽しめばよいのではないでしょうか。目くじら立てることを 許される人がいるとしたら、それは原作者だけ でしょう。
 実際 映画版ティファニーで朝食を 」においても わざわざ冒頭から Based on The Novel by TRUMAN CAPOTE と掲げられ、映画があくまで 原作者トルーマン・カポーティ Truman Capote(1924-1984 )の「小説に基づく 」映像作品であることが明示されています。
Based on The Novel by Truman Capote

 そのカポーティは、映画化された自作の試写会にパラマウントから招待された時、いきなりその冒頭から 原作に存在もしない場面 - ヒロインのオードリー・ヘプバーンティファニーの前に立って 紙袋から朝食のデニッシュとコーヒーを取り出すという - しかも それが タイトル「ティファニーで朝食を 」の絵面(えづら )そのままの「映像化 」であることにショックを受け、座っていた席から転げ落ちてしまいます。

■ 村上春樹訳で 映画の原作「ティファニーで朝食を 」を読む。
トルーマン・カポーティ 村上春樹 × トルーマン・カポーティ(新潮社)
(左 )トルーマン・カポーティ(1924-1984 )
(右 )原作「ティファニーで朝食を村上春樹 / 訳(新潮社 )


 今回、私“スケルツォ倶楽部” 発起人、初めて この原作の小説を 村上春樹 / 訳(新潮社 )で読んでみました。もともと村上氏の文章自体が あたかも外国文学を翻訳したかのような文体を装っていますから、これは訳書とは言っても まるで村上氏自身のオリジナルな作品のようにも錯覚させられてしまいます。
 1958年に出版された このおしゃれな小説「ティファニーで朝食を"Breakfast at Tiffany's" 」 の作者カポーティは、まさに多様な意味で「比類なき 」ヒロインであるホリー(ルラメー )・ゴライトリーの、妖精と小悪魔とが混在したようなキャラクターを、実は あのマリリン・モンローを想定して描いていたことは有名な話です。私も 初めて村上訳で原作を読んだ結果、カポーティの意図するホリー像と 映画で彼女の役を務めたオードリー・ヘプバーンのイメージとの間には たしかに大きな隔たりがあることを 実感しました。
 また 原作では苦いながらも余韻の残る結末が 映画では全く異なる甘いハッピー・エンディングになっていることなど、ここで 原作映画との差異を ひとつひとつ列記していこうかな - とも考えましたが、その量も膨大なものとなりそうですし、これから初めて単行本や DVD で作品に接することになるであろう若い世代の皆さまから 両者を比較する楽しみを奪ってしまうのもいかがなものかな と考え直したところです。

■ ヒロインのホリーが フランス訛りの英語をしゃべるのは なぜ?
Audrey Hepburn (1) ≪ Pourquoi pas ?

 それでも たいへん興味深い部分であると私が感じ入り、語らずにはいられないシーンは、ハリウッドで 俳優のエージェントを務めているO.J.バーマンなる登場人物の台詞の中で、彼が田舎から出てきたばかりのホリーに初めて出会ったばかりの頃、その南部の発音の「アクセントがとんでもない代物 」だったので このままではダメだと「矯正するのに丸一年かかった 」と思い出を語るところです。
 その方法とは まず「フランス語の勉強をさせたのさ。いったんフランス語の真似ができるようになると、英語の真似ができるようになるまでにたいして時間はかからなかった」(カギカッコ内 太字、村上訳より引用 )という愉快なエピソードを披露します。
 これは映画版でも ホリーの経歴について ほぼそのまま使われている 両方に共通の話題設定なのですが、ここから私が連想したのは、偶然オードリー・ヘプバーンが この3年後に出演することとなる次の映画「マイ・フェア・レディ 」で 下町の花売り娘イライザの話し方を半年間で 社交界でも十分通用する洗練されたアクセントに矯正してしまう言語学者ヒギンズ教授の存在です (若きアンドレ・プレヴィンが かつてハリウッドの音楽監督として関わった映画「マイ・フェア・レディ 」については、またどこか別の場所で 語りたいものですね )。

■ 「理想の男性を選ぶとしたら・・・ 」 
「ネールか シュヴァイツアー、レナード・バーンスタイン・・・ 」
 さらに もう一つ、映画の中で ヘプバーンが演じるホリーが語る「理想の男性を選ぶとしたら、ネール首相シュヴァイツァー博士か、レナード・バーンスタインね!」という名台詞など、音楽好きには思わず 頬が緩みます。

Jawaharlal Nehru (1889 - 1964 ) Albert Schweitzer ( 1875 - 1965 ) Leonard Bernstein
(左から )ジャワハルラール・ネール Jawaharlal Nehru(1889 - 1964 インド独立運動の指導者、初代首相 )、アルベルト・シュヴァイツァー Albert Schweitzer(1875 – 1965 フランスの医師、哲学者にして オルガニスト )、レナード・バーンスタイン Leonard Bernstein(言うまでもなく20世紀の偉大な指揮者・作曲家 )。

 しかし、カポーティの原作でホリーが挙げている「理想の男性 」とは、そのニュアンスも異なり、「もし今生きている人間の中から誰でも自由に選べて、ぱちんと指を鳴らして、ちょっとあなた、こっちに来てちょうだいって言えるとしたら(中略 )、ネールなんて、けっこういい線いくかな。ウェンデル・ウィルキーも悪くないわね。ガルボならいつだってオーケーよ。それが何か変かしら? 結婚ってどこまでも自由なものであるべきよ。相手が男だろうが女だろうが 」(カギカッコ内、村上訳より引用 )などと言うのです。ガルボとは、グレタ・ガルボ Greta Garbo 以外にはいないでしょう。当時これが同性愛を含んでいるといって物議をかもしたと言われています、・・・ そんな時代でした。

■ 「ムーン・リヴァー 
Moon River 窓辺で「ムーン・リヴァー」を弾き語り
吹き替えなしでオードリー・ヘプバーンの歌声が聴ける稀少なCD。
RCA BMGビクター(BVCG-618 )

 ヘンリー・マンシーニが作曲し、ジョニー・マーサーが作詞した「ムーン・リヴァー 」、これもまたカポーティの原作には 全く面影さえもありませんが、映画同様に大ヒットを記録、1961年のアカデミー作曲賞及び主題歌賞さえも受賞しています。その後、さらに アンディ・ウィリアムスの歌唱でもヒットしました。
 映画では、窓辺に座ったヘプバーンが ギターを爪弾きながら歌を口ずさむという場面、実は わずか一オクターヴという(! )狭い声域しかなかったヘプバーンでも「吹き替えなしで 」歌えるように、という必要に迫られ 制約をも満たしながら マンシーニが工夫しつつ作曲したオリジナルのメロディが、結果的に素朴な節回しも魅力的な仕上がりとなった、このワルツ「ムーン・リヴァー 」となったのでした。
 
 LP「ムーン・リヴァー 」on the Piano

1961年  イスラエルで 元ナチスのアイヒマン裁判、死刑判決。
      ソ連 ボストーク1号で ガガーリン少佐、最初の有人宇宙飛行「地球は青かった 」。
      ブリテン、「戦争レクィエム 」。
      ビル・エヴァンス、ヴィレッジ・ヴァンガードで「ワルツ・フォー・デビイ 」録音、
      その10日後 トリオのベーシスト スコット・ラファロ 自動車事故死。 ・・・に続く


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