本記事は 9月 7日「 注目記事ランキング クラシック音楽鑑賞 」で 第1位 となりました。
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スケルツォ倶楽部 Club Scherzo
「アフター・シュトラウス & “ バイ・シュトラウス ”」
After-Strauss & “By Strauss”
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(25)1959年 リチャード・ロジャース
 「エーデルワイス
  ~ 「サウンド・オブ・ミュージック
から


サウンド・オヴ・ミュージック サウンドトラック盤  Edelweiss (2)
クリストファー・プラマー (トラップ大佐 ) Christopher Plummer
ジュリー・アンドリュース (マリア ) Julie Andrews
収録曲 : Prelude / The Sound Of Music プレリュード/サウンド・オブ・ミュージック、Overture / Preludium (Dixit Dominus ) 序曲/プレリューディアム(主は言われた )、Morning Hymn / Alleluia 朝課/アレルヤ 、Maria マリア、I Have Confidence 自信をもって、Sixteen Going On Seventeen もうすぐ17歳、My Favorite Things マイ・フェイヴァリット・シングス、Do-Re-Mi ドレミの歌、The Sound Of Music サウンド・オブ・ミュージク、The Lonely Goatherd ひとりぼっちの羊飼い、So Long, Farewell さようなら ごきげんよう、Climb Ev`ry Mountain すべての山に登れ、Something Good なにか良いこと、Processional / Maria 結婚行進/マリア、Edelweiss エーデルヴァイス、Climb Ev`ry Mountain (Reprise ) すべての山に登れ
録音:1965年 パラマウント映画オリジナル・サウンド・トラックより
RCA (海外盤 07863-66587-2 )


 ワルツエーデルワイス Edelweiss 」 は、第二次大戦前夜のオーストリア・ザルツブルクを舞台にした、オペレッタの系譜に連なるミュージカル 「サウンド・オブ・ミュージック 」の ドラマの核心で歌われる名曲です。素朴なレントラーだけに 本物のオーストリア民謡にさえ聴こえますが、これを作曲したリチャード・ロジャースユダヤ系のアメリカ人です。
 ロジャース & ハマースタイン
リチャード・ロジャース(作曲-写真左 )と オスカー・ハマースタイン二世(作詞-写真右 )と という当時ブロードウェイの超売れっ子作家コンビによって生み出された このミュージカル作品の最高傑作は、1959年 舞台初演されて以来 大成功を博していましたが、それから 6年後の1965年「ウェストサイド・ストーリー 」の監督だった名匠ロバート・ワイズによって映画化、公開されるや大ヒットとなり、一気に世界的な規模で知られるようになりました(・・・とは言っても 物語の舞台となった 肝心のザルツブルクでは なぜか大不評で、当時 封切りから僅か2週間で上映も打ち切られてしまい、現在でもオーストリアでは殆ど知られていないそうです・・・って本当でしょうか。もし適切にドイツ語訳されて フォルクスオパーの舞台などででも再演すれば 必ず成功すると思うのですが )。
 翌1966年、この映画は 第38回アカデミー賞において10部門もノミネートされ、そのうち五部門(作品賞、監督賞、音響賞、編集賞、編曲賞 )を獲得するという栄誉に輝いたのでした。

■ ドラマにおける「エーデルワイス 」の扱われかた
 Edelweiss.jpg 
 歴史的には1938年、ナチスの侵攻を受けて ドイツに併合されてしまうオーストリア・・・ ブレーメルハーフェンの海軍基地からUボートに乗って地中海へ向かうべし - との指令とともにドイツ海軍からの召集令状が マリアの夫となったトラップ大佐に届きます。
 大佐子供たち の音楽ファミリーを連れ スイスへ亡命しようと決意、そしてまさに国外逃亡しようとした時に拉致されてしまい、政治的な圧力から逃れるため 家族と共にザルツブルク音楽祭の舞台に上がることを口実に、脱出の隙をひそかに狙いながらステージに立ちます。ナチスのザルツブルク地方長官ツェラーやドイツ軍将校、親ナチの民間人らが最前列に座る聴衆の前で 演奏会を成功のうちに務め上げ、いよいよプログラムの終わりに近く、トラップ大佐が 祖国を離れる想いをこめ 独りで 「エーデルワイス 」を歌い始める場面が、ドラマのクライマックスを予感させます。
 大佐は、祖国オーストリアへの想いが高まるあまり、途中で胸が詰まって歌えなくなってしまいます。そこへ妻マリアがさりげなく歩み寄り、の中断した個所の途中からすくい上げるように歌い継ぐと 子供たち も駆け寄って「エーデルワイス 」を 家族全員で一緒に歌いとおすのです。
 Edelweiss (3) 
 山岳地帯の難所にしか咲かない高貴な花エーデルワイス ” は、オーストリアの国花であるばかりでなく、当地では最愛の人に贈る慣わしもあるそうです。逆風の中に咲く誇り高い国花の姿を 国家存亡の危機に瀕するオーストリアのイメージと重ね合わせたに違いない 会場にいるザルツブルクの聴衆もここでその全員大佐とマリアの音楽ファミリーの歌声に合わせ、この「エ-デルワイス 」に唱和するのです。ひとつになった会場の大合唱に 圧倒されたナチ将校らが顔色を変える様子も秀逸でした。

■ 「エーデルワイス 」は オスカー・ハマースタインⅡの絶筆

 さて、映画は ドラマの設定や細部にこそ かなりの脚色はあるものの、ストーリーの大筋は ほぼ史実に近いものとされています。
 実在した「トラップ・ファミリー合唱団 」の物語は、渡米してからマリア・トラップ夫人自身が書いた回顧録「トラップ・ファミリー合唱団物語(サウンド・オブ・ミュージック ) 」として出版されたものでしたが、これを原作として映画「菩提樹 」が、戦後 まず西ドイツで1956年に製作、好評だったため 続編「続・菩提樹 」も1958年に作られました。これを観たアメリカの舞台女優メアリー・マーティン Mary Martin が「『菩提樹 』をミュージカル化してはどうか 」というアイディアを閃(ひらめ )くように思いつきます。その作詞・作曲を 当時高名だったリチャード・ロジャースオスカー・ハマースタイン二世というコンビに持ちかけたのが、原作の使用権利を取得したアメリカのミュージカル・プロダクションでした。
 オリジナルの舞台版「サウンド・オブ・ミュージック 」の幕が上がったのは、1959年11月、主演のマリア役を務めた女優は ドラマのミュージカル化を最初に思いついたメアリー・マーティン自身、そして その質の高さ から 大ヒットを記録します。あらゆるミュージカル作品の古典となった「サウンド・オブ・ミュージック 」は、その翌年(1960年 )の8月23日に亡くなってしまう オスカー・ハマースタイン二世が作詞を手掛けた最後の作品として記憶されています。彼が亡くなった晩には ブロードウェイのすべての劇場は弔意を表して灯火を消し、その死を悼んだそうです。絶筆となった最後の歌曲が、この「エーデルワイス 」だったのでした。

■「サウンド・オブ・ミュージック舞台版映画版との差異

 映画化に際して、オリジナル舞台ミュージカルからは 三曲のナンバー - すなわち 「恋の行方は How Can Love Survive?エルザ男爵夫人興行主マックス・デトワイラーのユーモラスなデュエット ) 」、「誰も止められない No Way To Stop Itエルザ、マックス、トラップ大佐の三重唱 ) 」、「普通の夫婦 An Ordinary Coupleマリア大佐のデュエット ) 」が 削除されています。
 ブロードウェイの舞台のオリジナル・キャスト・レコーディングメアリー・マーティンの歌唱による貴重な録音でマリアが聴けます )で これらを確かめて頂ければ判りますが、曲は決してワルイ出来ではないものの、でも 直感で 何かが足りません。
 The Sound of Music_Original Broadway Cast  舞台でマリアを演じる メアリー・マーティン(中央 )
 (左 )ブロードウェイ・オリジナル・キャストCDのジャケット、
 (右 )舞台で 初代マリア役を演じた、メアリー・マーティン(中央 )

 結局 映画版には使われなかった 舞台の「三曲 」 - 「恋の行方は How Can Love Survive? 」、「誰も止められない No Way To Stop It 」、「普通の夫婦 An Ordinary Couple 」 - の代わりに リチャード・ロジャースによって 映画用として 新たに作曲され、差し替えられた二曲 -
 I Have Confidence Something Good
(左 )「自信をもって I Have Confidence
(右 )「何か良いこと Something Good
  - ここには 削除された「三曲 」に欠けているものすべてが 備わっています。それは 前者の持つ突進するような勢いある迫真性 +α、そして後者の憧れに満ちた憂いと叙情性の素晴らしさ +αです。
 映画の製作が決まった時点で すでにオスカー・ハマースタインⅡは亡くなっていました。ですから この二曲に限っては、作曲家リチャード・ロジャース自身が 作詞も手掛けた(! )と伝えられています。

■ ミュージカルに登場するワルツは 名曲ぞろい
 西暦2000年、映画「サウンド・オブ・ミュージック 」35周年記念のコレクターズ・エディション盤として 興味深い(未発表曲やオリジナル・サウンド・トラック未収録曲、リチャード・ロジャースのコメントなどを収めた )ボーナス・ディスク一枚を含む 2枚組サントラ盤が 限定発売されました。
The Sound of Music_35th Anniversary Collector's Edition
The Sound of Music_35th Collectors Edition
収録曲 : Prelude / The Sound Of Music プレリュード/サウンド・オブ・ミュージック、Overture / Preludium (Dixit Dominus ) 序曲/プレリューディアム(主は言われた )、Morning Hymn / Alleluia 朝課/アレルヤ 、Maria マリア、I Have Confidence 自信をもって、Sixteen Going On Seventeen もうすぐ17歳、My Favorite Things マイ・フェイヴァリット・シングス、Do-Re-Mi ドレミの歌、The Sound Of Music サウンド・オブ・ミュージック、The Lonely Goatherd ひとりぼっちの羊飼い、So Long, Farewell さようなら ごきげんよう、Climb Ev`ry Mountain すべての山に登れ、Something Good なにか良いこと、Processional / Maria 結婚行進/マリア、Edelweiss エーデルヴァイス、Climb Ev`ry Mountain (Reprise ) すべての山に登れ、
以下、特典盤の収録曲 : プレリュード/サウンド・オブ・ミュージック、自信をもって、もうすぐ17歳、マイ・フェイヴァリット・シングス(以上、オリジナル・サントラ未収録部分を含む版 )、エーデルヴァイス(オリジナル・サントラ未収録版 )、Grand Waltz グランド・ワルツ、Laendlerレントラー(Waltzワルツ(オリジナル・サントラ未収録曲 )、すべての山に登れ、なにか良いこと(以上、オリジナル・サントラ未収録部分を含む版 )、もうすぐ17歳 リプライズ(ヴァース追加版 )、エーデルヴァイス リプライズ(以上、オリジナル・サントラ未収録部分を含む版 )、Chase逃走(オリジナル・サントラ未収録曲 )、Escape 脱出 / Climb Ev'ry Mountain すべての山に登れ / Finaleフィナーレ( オリジナル・サントラ未収録曲、未収録部分を含む版 )、Richard Rodgers Speaks 作曲者リチャード・ロジャーズの語り
(海外盤 RCA 07863-67972-2 )

 注目したいのは、オリジナルのサウンド・トラック盤には未収録だった 素晴らしいインストルメンタル・ワルツが ここで じっくりと聴けることです。

ワルツ その1「グランド・ワルツ 」Grand Waltz  
 映画では舞踏会のシーンに流れていた この「グランド・ワルツ 」の原曲とは、雷鳴に怯えてマリアの寝室に集まってきた子供たちに「辛い時でも好きなことを思えば、コワくないよ 」とマリアが歌って聞かせる場面で登場した あの名曲・・・
My Favorite Things
 ・・・「マイ・フェイヴァリット・シングス My Favorite Things 」の旋律が このワルツの原曲ですね。ヨハン・シュトラウス風にアレンジされたオーケストラ曲になっています。
 ところで このナンバー、映画版に親しい私たちにとっては意外なことに、オリジナルのミュージカル舞台版では 修道院長マリアに「トラップ大佐のところへ家庭教師に行きなさい 」と勧める場面で(! )歌われているそうですよ。

ワルツ その2「レントラー 」Laendler
Laendler.jpg
 「レントラー 」と名付けられたこの舞曲は、舞踏会の夜 中庭の子どもたちの前で トラップ大佐マリアと 戯れに 初めて踊るシーンで流れていたチロル風の軽いワルツです。このメロディー って、実は ホラ あの有名なマリオネットのシーン・・・
 IMG_1864.jpg
 マリア先生と子どもたちが 屋敷内で人形劇を熱演してみせる場面で使われていた音楽 - 「ひとりぼっちの羊飼い The Lonely Goatherd 」が原曲ですね。
 “スケルツォ倶楽部”会員の皆さまは、このメロディの最初の音列にご注意ください。よく聴くと - 偶然でしょうが - R.シュトラウス「ばらの騎士 」のオックス男爵のワルツ とそっくり(! )であることに お気づきになられるでしょう。
 ・・・そう言えば、映画版ミュージカル舞台版との差異が 特に顕著なのは このナンバーも また同様で、雷鳴の夜 マリアの寝室に子どもたちが集まってくるシーンで歌われるのは、舞台版では 「マイ・フェイヴァリット・シングス 」ではなく、この「ひとりぼっちの羊飼い 」なんです。「えっ? 」って思いますよね。

ワルツ その3「プロセッショナル・ワルツ 」Processional Waltz
 これもたいへん興味深いです。これは のちにマリア結婚式の場面で使われる「(合唱付き )結婚行進の音楽 Processional And Maria 」荘厳な旋律三拍子にアレンジしたもので、おそらく特免を得て還俗したマリア大佐と結婚することになるという今後のストーリー展開も暗示しています。
 オリジナル舞台版では「ガウデアムス 」とも呼ばれていた「結婚行進 」女性合唱パートは、開幕から間もなく修道院の尼僧たちが信仰生活には不適合なマリアの困った性格を 楽しく分析しつつユーモラスに歌っていた佳曲「マリア Maria 」のメロディーと 実は同じで、これが結婚行進の旋律「ポリフォニックに重なる 」対位法的な効果を発揮するのでした。 
ご参照 ⇒ 「二つのメロディが同時に重なる音楽の素敵な効果 」

 ・・・あ、そうそう、ワルツ「マイ・フェイヴァリット・シングス My Favorite Things 」を素材に モダン・ジャズの世界で ジョン・コルトレーンが果たした 偉大な仕事については、またいずれ 喫茶ソッ・ピーナ 発起人(妻 )が 話題にさせて頂きます!

1960年  新日米安保条約、強行採決。
      キプロス共和国、ナイジェリア連邦共和国、独立。
      ケネディ、第35代アメリカ大統領に当選。
      ブリテン、歌劇「真夏の夜の夢 」初演。
      ゴダール監督、映画「勝手にしやがれ 」。
      クレマン監督、映画「太陽がいっぱい 」。
      マルセル・カミュ監督、映画「黒いオルフェ 」
     
1961年  ケネディ、南ベトナム米軍事顧問団を16,000人に増強を決定。
      東西ベルリンの境界線が封鎖される 「ベルリンの壁」。
      ワイズ監督、映画「ウェストサイド・ストーリー 」。
      エドワーズ監督、映画「ティファニーで朝食を 」(ムーン・リヴァー )・・・に続く


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