本記事は、6月11日「 人気記事ランキング クラシック音楽鑑賞 」で 第1位 となりました。
皆さまのおかげです、これからも 何卒よろしくお願い申し上げます。


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スケルツォ倶楽部 Club Scherzo 
ピッツィカート倶楽部 ! Club Pizzicato
スヌーピー ピッツィカート倶楽部

 こんにちは。“スケルツォ倶楽部”発起人(のほう )です。
 弦楽器(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス )には、弓を使わずに その弦を指で弾(はじ )く - ピッツィカート Pizzicato - という魅力的な特殊奏法があります。
 上手な弦楽アンサンブルが ― 大勢揃って一斉に ― これを鳴らし、しかも見事に決まった時、そのアンサンブルはプレイヤー個々人の存在を超え、一つの大きな弦楽器であるかのような、絶大なる効果を コンサートホールにもたらしてくれますよね。
 そんな快いピッツィカートの音色は、実は 夫の偏愛するサウンドのひとつ・・・そこで 今日は “スケルツォ倶楽部”発起人たるウチの夫(ヤツ )が 朝/晩の通勤の車内で楽しく聴けるよう、お気に入りの「ピッツィカートで(ほぼ )一曲 まるごと演奏された音楽 」ばかり集めたコンピレーション盤 CD-Rで焼いてあげようっ ・・・と、発作的に 思いついたのが 今日のプログラムです。元気に明るく弾(はじ )ける音楽たちを セレクトしましたよ。

   「ただいまー 。おや、それは? 」
わたし 「はい、プレゼント・ディスク。弦楽器がピッツィカート奏法で(ほぼ )一曲 まるごと演奏してる音楽ばかり集めて CD-R に焼いたの。 ね、聴いて、聴いて ♪ 」
   「はあー(ため息 )、昼間 亭主が 一生懸命 外で働いている間に、妻は一体 何やってんだかw 」
わたし 「その疲れきった夫の ササクレた心を癒そうと思って、選曲したんだからさっ 」
   「ふふん、どれどれ・・・おい、ピッツィカートだけじゃない曲も平気で混ざってるじゃないか 」
わたし 「そんなカタイこと言わないの。ヴィヴァルディ”第2楽章や、ハイドンセレナードなんかでメロディを歌っているのは たしかにヴァイオリン・ソロのアルコだけど、その伴奏にまわってる弦楽器が ちゃんとピッツィカート弾(はじ )いてるんだから、いいじゃん 」
   「それゆえ ピッツィカート演奏の多くが ギター伴奏風の効果を模倣したパターンばかりに陥る傾向は、まあ 止むを得ないことなんだろうけど、中には チャイコフスキー第4交響曲スケルツォ楽章のように 純粋にピッツィカートだけのアンサンブルを楽しめる作品ってのも意外に多いんだなー 」
わたし 「題して、“ピッツィカート倶楽部 ! Club Pizzicato ”(笑 ) 。以下はレシピ。下記の曲順で ディスクに入れてゆくと、74分の音楽用CD-R なら 余裕で収まるようになってます! 皆さまも よろしければ “ 個人的に楽しむ範囲で ”お試しくださいねー 」

■ 1  【 ピッツィカート倶楽部 オープニング・テーマ
ルロイ・アンダーソン作曲
「ジャズ・ピッツィカート 」(01:42 )

 ピッツィカート度 : 10点(10点満点 ) 
 ルロイ・アンダーソン アブラヴァネル ルロイ・アンダーソン(Vanguarud)
(左 )ルロイ・アンダーソン
(右 )ヴァンガード盤の ジャケット


演 奏 : モーリス・アブラヴァネル 指揮 / ユタ交響楽団
録 音 : 1967年 ユタ州 ソルトレイク市

収録曲 : そり滑り、ブルー・タンゴ、トランペット吹きの子守歌、舞踏会の美女、トランペット吹きの休日、忘れられし夢、シンコペーティッド・クロック、プリンク・プレインク・プランク、フィドル・ファドル、サンドペーパー・バレエ、タイプライター、サラバンド、ベルの歌、ジャズ・ピッツィカート、セレナータ
音 盤 : Vanguard(COCQ-83883 )
  ピッツィカート倶楽部、つかみの1曲目は やはりコレでしょう。
 才人ルロイ・アンダーソン Leroy Anderson( 1908 – 1975 )が アンコール・ピースを量産していた時代、その比較的初期に放たれた佳作。ジャズっぽい節回しには必須の ブルーノート が多用され、その独特の旋律線は まさにアンダーソンらしい個性がたっぷりと織り込まれています。1938年にアーサー・フィードラー指揮 ボストン・ポップス管弦楽団によって初演され、喝采を博しました。
 本来「ジャズ・レガート 」という曲と一対になっている作品の片割れですが、単独でも普通に演奏されることも多い、ポピュラー名曲です。


■ 2
ヴィヴァルディ作曲 
ヴァイオリン協奏曲集《和声と創意への試み》「四季」
  ~「冬 」 第2楽章 (01:47 ) 

 ピッツィカート度 : 5点 ( 10点満点 )
 ヴィヴァルディ(WIki ) イル・ジャルディーノ・アルモニコ 四季(Teldec)
(左 )ヴィヴァルディ の肖像画
(右 )TELDEC盤のジャケット


演 奏 : エンリコ・オノフリ(ヴァイオリン・ソロ )、
     イル・ジャルディーノ・アルモニコ
録 音 : 1983年9月 ルガーノ

収録曲 :「四季 」、オーボエ協奏曲 ニ短調、ヴァイオリン協奏曲 ト短調
音 盤 : TELDEC(WPCS-4150 )
  ヴィヴァルディの楽譜に添付された 有名な四行詩(ソネット )に描かれた、標題は 以下のとおり。
   Passar al foco i di quieti e contenti      
    室内では 火のそばで 人々は 平穏に安らいでいるし、   
   Mentre la pioggia fuor bagna ben cento     
    戸外では 恵みの雨で 万物が あまねく潤されている
 人の生活の営みを象徴するかのようなヴァイオリン・ソロ(アルコ )と、降る雨が窓を打つ音を模倣しつつ 大自然の存在までをも象徴するピッツィカートを含むアンサンブル・パートとの対比は、実に対照的です。
 雨音として弾(はじ )けるピッツィカートの音色が とりわけ賑やかに聴き取れるような演奏を探したら、やはり イル・ジャルディーノ・アルモニコ Il Giardino Armonico 盤が残りました。彼らは80年代にミラノで結成された先鋭的なイタリアの古楽アンサンブル、その表現力・奏法・語り口のすべてが斬新、衝動的なほど激しいリズム・・・ 大成した今でも 変わらぬ個性的な演奏が魅力的ですよね。


■ 3
伝ハイドン (ロマン・ホフシュテッター )作曲
弦楽四重奏曲 第17番へ長調から
第2楽章「セレナード 」 (03:40 )

 ピッツィカート度 : 5点 ( 10点満点 )
 イタリアSQ 伝ハイドン(Philips)
 (写真 ) Philips盤の表紙 

演 奏 : イタリア弦楽四重奏団
録 音 : 1965年8月11~24日 スイス、ヴヴェイ

併録曲 : 「ひばり 」、「皇帝 」、「五度 」
音 盤 : PHILIPS(PHCP-20476 ) 
  ヴィヴァルディ」の第2楽章などと同様 - 終始 ギター風奏法・音色を模した弦(第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ )がピッツィカートを弾(はじ )くことによって伴奏部を受け持ち、よく歌う第1ヴァイオリンのアルコを引き立てる役割を担っています。
 かつては「ハイドンの『セレナード 』 」と言えば、長らくこの曲を指したものでしたが、戦後も1960年代になって ハイドン作品3に当たる6連の弦楽四重奏曲(第13番から第18番まで )すべてが、実は 修道士ロマン・ホフシュテッター Roman Hofstetter による作曲だったことが 確定されました。
  ⇒ 詳しい関連記事 は、こちら


■ 4
ヨハン・クリスティアン・バッハ作曲
交響曲 変ホ長調 Op.6-2 ~ 第3楽章 (01:28 )

 ピッツィカート度 : 9点 ( 10点満点 )
 ベルリン古楽 ヨハン・クリスティアン・バッハ(DHM)
演 奏 : ステファン・メイ 指揮 / ベルリン古楽アカデミー Akademie für Alte Musik Berlin
録 音 : 2002年10月 ベルリン 

併録曲 : チェンバロ協奏曲 変ロ長調、交響曲ト短調Op.6-6(以上、ヨハン・クリスティアン )、フルート協奏曲 ニ短調( カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ )
音 盤 : D.H.M.(HMC-901803 )
  大バッハ、ヨハン・セバスティアン と その二人目の妻 アンナ・マグダレーナ との間に生まれた末子で、石井宏氏による名著「反音楽史  さらば、ベートーヴェン 」(新潮社文庫 )にも 興味深い人物のひとりとして登場する、ヨハン・クリスティアン・バッハ Johann Christian Bach(1735-1782 )が残した めずらしい交響曲。
 J.C.バッハは、その活躍した時期(場所 )によって、その前半生は「ミラノのバッハ(イタリア風にジョヴァンニ・バーコ ) 」、1762年以降は「ロンドンのバッハ(イギリス風にジョン・バーク ) 」と呼ばれているそうです。社交的で人に好かれるキャラクターだったそうで、ロンドンでは 幼い頃のヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトにも出会い、深く慕われていました。
 「交響曲 変ホ長調 」は、そんな彼のロンドン時代の5楽章作品ですが、第3楽章アレグレット ・・・ まだ「スケルツォ 」との表記こそないものの、これが注目の一曲です。弦楽器の ほとんど ピッツィカートだけで 8分音符のピアニッシモが延々と続く無窮動風の短いスケルツォ楽章。その発想やメロディ、印象も含め、このアイデアは 100年後のチャイコフスキーを先取りしていると思います。
 途中 弓でリズムを刻む箇所も少しあるのですが、そこは駒寄りの位置で擦るスル・ポンティチェッロっぽいし、絶対 普通じゃありません。弓の背中で叩くようなコル・レーニョ風の音まで聴こえてくるんですよー。


■ 5
モーツァルト作曲
フルート四重奏曲第1番 ニ長調 K.285 ~ 第2楽章(02:22 )

 ピッツィカート度 : 5点(10点満点 )
 ランパル モーツァルト フルート四重奏曲集_旧盤(CBS ) ランパル、スターン モーツァルトFl.‐SQ(SONY
(左 )は、旧LP(CBS-SONY )盤のジャケット
(右 )現CD(廉価盤 )のジャケット


演 奏 : ピエール・ランパル(フルート )、アイザック・スターン(ヴァイオリン )、アレクサンダー・シュナイダー(ヴィオラ )、レナード・ローズ(チェロ )との旧録音
録 音 : 1969年12月

併録曲 :フルート四重奏曲第2番ト長調K.285a、同第3番ハ長調K.285b、第4番イ長調K.298
音 盤 : ソニー・クラシカル SRCR-1530
  名手ランパルは この曲を何度も録音していますが、おそらく最も有名なレコーディングと言えば、ランパルスターン以外、ヴィオラ奏者がサルヴァトーレ・アッカルド、チェロ奏者がムスティスラフ・ロストロポーヴィチに代わったオールスター・プレイヤーによる豪華メンバーによる再録音(1986年 )盤のほうではないでしょうか。
 でも個人的には こちらの旧盤が持つ 一体感ある温かさが お気に入りです。
 第1番ニ長調第2楽章は 美しいロ短調の緩徐楽章。フルートのためらいがちなソロを、弦たちのピッツィカートが まるで竪琴を模すかのような 分散和音で支えます。 


■ 6
モーツァルト作曲
歌劇「フィガロの結婚 」 ~ ケルビーノのアリエッタ 「恋とはどんなもの 」 (02:59 )

 ピッツィカート度 : 5点(10点満点 )
 ヤーコプス フィガロの結婚(DHM)
演 奏 : アンゲリカ・キルヒシュレーガー(メゾ・ソプラノ、ケルビーノ )
ルネ・ヤーコプス 指揮 / コンチェルト・ケルン
録 音 : 2003年4月 ケルン、シュトルベルガーザール
音 盤 : F.H.M.(HMC-901818.20 )

  いわゆるズボン役 - 女声(メゾ・ソプラノ )が演じる 少年役 ケルビーノが、第2幕で歌う有名なアリエッタ。弦セクションは 終始控えめなピッツィカートで分散和音を奏していますが、これも明らかにギター伴奏を模した音型であることは、舞台を観ずとも察せられるでしょう。伯爵の小姓を務めている「彼 」ケルビーノは、ここで自身が作った歌を 小脇に抱えたギターで爪弾きつつ、内心憧れの年上の人 - 伯爵夫人ロジーナに これを歌って聴かせるという設定であるからです。
 ちなみに この有名なヤーコプス盤「フィガロ 」、ご存知の方も多いこと、今さら わたしが声高に書くことでもありません、実に素晴らしい演奏・録音でした(伯爵 サイモン・キーンリーサイド、伯爵夫人 ヴェロニク・ジャンス、スザンナパトリツィア・チオーフィ、フィガロロレンツォ・レガッツォ )。発売からもう8年も経つのですね、このセットが新譜として初登場した時には、その新鮮な響きの素晴らしさに、過去の名盤たちすべて(大好きだった フリッチャイ盤、ベーム盤、スウィトナー盤さえも - )が 一瞬で色褪せてしまったような気さえしたものです。
 この感想については、また改めて 別の場で 詳しく語りたいです。


■ 7
ベルリオーズ作曲
劇的物語「ファウストの劫罰 」 ~ メフィストフェレスのセレナーデ (02:21 )

 ピッツィカート度 : 5点(10点満点 )
 ケント・ナガノ ファウストの劫罰 (ERATO) 佐渡裕=ファウスト(Erato )
(左 )「ファウストの劫罰ケント・ナガノ(Erato )盤
(右 )「『ファウスト 』からの8つの情景 佐渡 裕 (Erato )盤

演 奏 : ジョゼ・ヴァン・ダム (Br. メフィストフェレス )
ケント・ナガノ 指揮 / リヨン歌劇場管弦楽団、合唱団
録 音 : 1994年10月 リヨン
音 盤 : ERATO (WPCS-4699~700 )

  この大規模な作品は、作曲者ベルリオーズが現在の「劇的物語 」という形式に仕上げる20年も前に自費出版した「『ファウスト 』からの8つの情景 」という名前の作品が基(もと )になっていました。ここで ジョゼ・ヴァン・ダムが歌う、この魅力的な「メフィストフェレスのセレナーデ 」も 「8つの情景 第8曲が その原型に当たるものですが、誠に興味深いことに その時は「ギター伴奏 」だったのでした。
 作曲者が 新たに「劇的物語 」として規模も編成もまるごと作り直した際、本来ここで使用されていたギターを廃する代わりに 全弦楽器がひとつの巨大なギターであるかのようにピッツィカートを刻む、今日聴かれるような魅力的なアレンジを施したものです。
 ちなみに・・・(上の写真、右側 参照 )
 ・・・その 貴重な 旧ギター伴奏バージョンが聴ける「『ファウスト 』からの8つの情景 」は、佐渡 裕フランス放送フィルハーモニー管弦楽団 )盤、ジャン=ポール・フシェクールのテノール(! )独唱、ギター伴奏 クロード・ジビによる これもERATO盤で 手軽に確かめることが出来ます。


■ 8
ヨハン&ヨーゼフ・シュトラウス兄弟 (合作 )
「ピッツィカート・ポルカ 」 (02:31 )

 ピッツィカート度 : 10点(10点満点 )
 George Szell セル ウィンナワルツ集(SONY)
演 奏 : ジョージ・セル 指揮 / クリーヴランド管弦楽団
録 音 : 1962年1月5日(「こうもり 」のみ1958年 ) クリーヴランド

併録曲 :ワルツ「美しく青きドナウ 」、ポルカ「うわごと 」、ワルツ「春の声 」、「オーストリアの村つばめ 」、「常動曲 」、喜歌劇「こうもり 」序曲
音 盤 : ソニークラシカル(SRCR-2549 )
  以下、不鮮明な記憶ですが(違ってたらスミマセン )、かつて欧米の著名な音楽評論家たちブラインド・テスト(情報を知らさずにレコードをかけ、演奏家が誰かを当てるというゲーム )で 相当枚数のレコードで「美しく青きドナウ 」を聴き比べた際、その場に集められた名うての評論家たち全員が一致して最高得点を与えたレコードが、クライバー盤と同率首位となった このセル盤だった - という事実。
 これは、そんな名盤に収録されている ヨハン二世ヨーゼフ・シュトラウス兄弟の有名な合作。快適に弾(はじ )けるピッツィカートが聴けるセル/クリーヴランド管弦楽団による名演です。
 ・・・余計な話題ですが、全曲が名演と言える、このアルバムの 片隅に隠れている「常動曲 」は、通常ならリピートまで演奏されないことも多い曲ですが、めずらしくもセルは ここでオーケストラにわざわざ一度繰り返しをさせています。レア度高し。またオケのテンションもいと高し。And So Goes・・・


■ 9
ヨハン・シュトラウス二世 作曲
「新ピッツィカート・ポルカ 」 (03:40 )
 
 ピッツィカート度 : 10点(10点満点 )
 2006年ニューイヤー ヤンソンス(D.G.)
マリス・ヤンソンス 指揮 / ウィーン・フィルハーモニー
録 音:2006年1月1日 ムジークフェラインザール

併録曲:ポルカ「狙いをつけろ! 」、ワルツ「春の声 」、「外交官のポルカ 」、ポルカ「ことづて 」「女性賛美 」、ワルツ「芸術家の生涯 」、ポルカ「憂いもなく 」、喜歌劇「ジプシー男爵 」の入場行進曲、歌劇「フィガロの結婚」序曲、「モーツァルト党 」、ギャロップ「愛のメッセージ」、「芸術家のカドリーユ 」、スペイン行進曲、ワルツ「親しい仲 」、ワルツ「クラプフェンの森で 」、「狂乱のポルカ 」、「電話ポルカ 」、「入り江のワルツ 」、ポルカ「ハンガリー万歳」、「山賊のギャロップ 」、ワルツ「美しく青きドナウ 」、「ラデツキー行進曲 」
音 盤 : D.G.(00289.477 5566 )
  こちらはヨハン・シュトラウス二世 晩年(1892年 )の単独作品です。
 すでに弟ヨーゼフの死後、もうひとりの弟エドゥアルドがハンブルグで行う演奏旅行のために書き上げたことを伝える ワルツ王自身の手紙が残っています。さらに後年、コルンゴルトが晩年 ハリウッドで この曲を素材にして、魅力的なシュトラウシアーナ 」の一部を仕上げていますが、この話題は また別の機会に、“スケルツォ倶楽部”夫が “アフター・シュトラウス”で触れることになるものと思います。
 ディスクは、ムジークフェラインザールで毎年恒例、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートの実況録音です。モーツァルト・イヤーでもあった2006年の指揮台に立ったのは、期待のマリス・ヤンソンスでした。
 ≪ 以下、ネタバレ ご注意
 この曲「新ピッツィカート・ポルカ 」のラスト、何とウィーンフィルの弦楽セクションの皆さん、最後の一音のみ エイッ! とばかりに 思いきり「弓で 」弾いてるんです! その意外性には ホント驚かされますよ・・・って、しかし ここを読んでしまった その瞬間から(忍び笑い ) アナタは もう決して驚くことはできませんね。ゴメンなさいでした・・・。


■ 10
ドリーブ作曲
バレエ音楽「シルヴィア 」 ~ 「ピッツィカーティ・ポルカ 」 (01:51 )

 ピッツィカート度 : 10点(10点満点 )
 アンセルメ ドリーブ(Decca)
演 奏:エルネスト・アンセルメ 指揮 / スイス・ロマンド管弦楽団【Decca】
録 音:1959年4月 ジュネーヴ

併録曲:バレエ音楽「コッペリア」抜粋
音 盤:ユニバーサル(UCCD-7038 )
  フランスのレオ・ドリーブ(1836 – 1891 )は、はじめオペラ作曲家として活躍していましたが、1870年 E.T.A.ホフマン原作のバレエ「コッペリア 」に付けた舞踏音楽の大好評によって、バレエ音楽の作曲家として成功を収めました。
 バレエ「シルヴィア 」は、ドリーブの作曲した3作目のバレエ作品で、女神アルテミスに仕える妖精シルヴィアが主人公のドラマ。シルヴィアは決して許されぬ人間との恋愛に悩みますが、愛の神エロスの助けによって 愛する羊飼いアミンタとの結婚を祝福される – というハッピーエンドのストーリー。
 また どうでもいい話題ですが、この前奏曲「狩りの女神 」の途中に現れるホルンによる勇壮なる「狩り 」のテーマって・・・ ワーグナー「ジークフリート 」角笛と出だしが同じ? で、ちょっと笑えます。

■ 11
ビゼー作曲
歌劇「カルメン 」第2幕 ~ カスタネットの歌と踊り(01:59 )

 ピッツィカート度 : 5点(10点満点 ) 
ゲオルギュー カルメン(EMI )
演 奏:アンジェラ・ゲオルギュー(S. カルメン )、ロベルト・アラーニャ(T. ドン・ホセ )
ミシェル・プラッソン 指揮 / トゥールーズ・カピトール国立管弦楽団
録 音:2000年
音 盤:EMI(TOCE-55556~58 )

  かつて傷害犯として捕えられていた美しい女工カルメンの誘惑に負け、わざと彼女を逃がしてしまった伍長ドン・ホセは、その階級も降格された上 兵牢へ入れられていましたが、ようやく許されて 外へ出されます。真っ先に足が向いてしまった その先は、カルメンが待っている約束の酒場リリャス・パスティアでした。そこで初めて二人だけで過ごす情熱的な一夜へのプレリュードとして カルメンは、恩人ホセを歓迎して カスタネットを手にし、その瞳を潤ませながら 歌い踊ります。その場面の音楽 - 弦のピッツィカートカルメンの叩くカスタネットだけで進行 - は、ビゼーによって 実に巧みに作られています。
 それは、踊りの途中 遠くから召集の帰営を告げるラッパが聴こえてくるという設定なのですが、このトランペットの旋律が、実は カルメンの歌と同じ和声進行によって巧みに組み合わされているのです。音感の良いカルメン自身もそれに気づくと「楽団の伴奏が天から降ってきたよ 」と天真爛漫に喜びます。困ったドン・ホセ「違うんだよ、オレは帰らなけりゃ 」だって。「タラタタってラッパに呼ばれたら、それでいそいそ帰るなんて、アナタ伝書鳩? 」と 激怒するカルメン。 ・・・ああ 仕方ない、懐から枯れたばらを出して、さあ歌え ホセ、「花の歌 」を!


■ 12
チャイコフスキー作曲
交響曲第4番ヘ短調 ~ 第3楽章 (05:05 )

 ピッツィカート度 : 10点(10点満点 )
 Tchaikovsky(1840~1893) スヴェトラーノフ チャイコフスキー交響曲全集 (音源 メロディア )
演奏:スヴェトラーノフ 指揮 / ソヴィエト国立放送交響楽団
録音:1967年 モスクワ
音盤:Melodiya(Scribendum SC-024 )
 チャイコフスキー 交響曲全集より
  “Pizzicato Ostinato ”と題された、魅力的なスケルツォ
 基本的にA – B - A´ という三部形式、これに短いコーダがつきますね。古今東西の名スケルツォ楽章の中でも 屈指の諧謔曲と特記したい作品です。本楽章を通して、弦楽器はひたすらピッツィカート奏法を強いられます。特に 主部(A )は 弦のピッツィカート主題だけで進行。続くトリオ(B )は、木管だけによるロシア舞曲(イ長調 )と、ピアニッシモの金管による不思議な行進曲(変ニ長調 )。ここは あたかもシャガールの幻想的な絵のように 脈絡無く異なるイメージが同一次元上に混在するかのような音楽になります。
 主部(A´)が回帰し、コーダはトリオ(B )動機を交えて、弦・木管・金管とめまぐるしく交錯しながら終結。特に そのコーダは これに続く第4楽章との動機の関連も指摘したいです。
 すべての弦楽器奏者に弓を捨てさせ、まるまる一楽章を通してピッツィカートさせるというアイデア、秀逸! 唯一無比、ワン・アンド・オンリー、最高のスケルツォ楽章


■ 13
リャードフ作曲
管弦楽のための8つのロシア民謡 ~ 「ブリャスカ(踊り歌 ) 」 (00:43 )

 ピッツィカート度 : 10点(10点満点 )
 プレヴィン リャードフ ( タワーレコード ) プレヴィン リャードフ(RCA オリジナル・ジャケット)
 (左 )タワーレコード企画による価値ある復刻盤、(右 )オリジナル・ジャケット 
演 奏:アンドレ・プレヴィン 指揮 / ロンドン交響楽団
録 音:1965年8月24日 ウォルサムストウ・アッセンブリーホール

併録曲:交響曲第2番「小ロシア 」(チャイコフスキー )、記念ワルツ「ミュンヘン 」AV.125 ( R.シュトラウス )
音 盤:RCA(TWCL-3017 )
  アナトリー・リャードフ(1855 - 1914 )によって編曲されたロシア民謡は、「ロシア民謡集 」、「35のロシア民謡 第1集」、「35のロシア民謡 第2集 」、「50のロシア民謡 」として1898年から1903年の間にまとめて出版されていますが、そこで扱われた民謡の合計数は150曲にも上るそうです。
 若きアンドレ・プレヴィンのRCAオリジナル盤は チャイコフスキー第2交響曲「小ロシア 」とのカップリングでしたが、リャードフが「管弦楽のための8つのロシア民謡 」として選んだ その第5曲「小鳥の物語 」として編曲したメロディは、同じチャイコフスキー第1交響曲「冬の日の幻想 」第4楽章との関連性も指摘できます。
 ピッツィカートに徹する弦セクションの他、一本のピッコロとタンバリンだけで演奏される 第11曲「ブリャスカ(踊り歌 ) 」での 弾(はじ )けるような楽しさは 格別です。


■ 14
レオンカヴァルロ作曲
歌劇「道化師 」第2幕 劇中劇 ~ セレナーデ (01:44 )

 ピッツィカート度 : 5点(10点満点 )
 ドミンゴ 1985 ウィーン「道化師 」(Orfeo dor ) ハインツ・ツェドニク(D.G.)
 (左 ) Orfeo盤 ジャケットの表紙
 (右 ) ハインツ・ツェドニク

演 奏 : ハインツ・ツェドニク(テノール、ペッペ = アルレッキーノ )
アダム・フィッシャー 指揮 / ウィーン国立歌劇場管弦楽団
録 音 : 1985年6月 ウィーン
音 盤 : Orfeo d'or(C756 081B )

  ルッジェーロ・レオンカヴァルロ(1857 - 1919 )による凄まじいまでの傑作「道化師 」、レコーディングがありそうで 実は意外に少ない プラシド・ドミンゴの「カニオ 」をライヴで聴ける、これは貴重な1枚です。
 劇中劇では 脇役ペッペ扮する二枚目の間男アルレッキーノネッダ扮する道ならぬ恋の相手コロンビーナの寝室に忍びこもうとするシーンですが、その前に彼女の窓辺で ギターを抱えながら古いイタリア歌曲風のセレナードペッペが朗々と歌う場面があります。彼がソロをとる この歌劇中唯一の見せ場ですね。
 オーケストラの弦セクションは、舞台上の道化役者が楽器をチューニングするのに合わせ、開放弦G.D.A.E.と順々にピッツィカートで鳴らしてみせます。そしてペッペアルレッキーノ )のカンツォーネが始まると、今度は 彼のつま弾くギターを模倣して、その音色をピッツィカートで表現するのです。この辺の巧みな処理、レオンカヴァルロ さり気なく ウマイです。


■ 15
ピエルネ作曲
バレエ音楽「シダリーズと牧羊神 」 ~ 「小牧神の入場 」(01:46 )

 ピッツィカート度 : 5点(10点満点 )
 ピエルネ (ERATO)
演 奏 : ジャン・マルティノン / フランス国立放送管弦楽団
録 音 : 1970年 

併録曲 : ハープとオーケストラのための小協奏曲、牧歌風の主題によるディヴェルティスマン、
音 盤 : Erato ( WPCS-22078 )
  1年先輩だったドビュッシーと コンセルヴァトアールでは親しい関係だったアンリ・コンスタン・ガブリエル・ピエルネ(1863 - 1937 )は、マスネに作曲を師事し、19歳でローマ大賞を獲得した才能ある音楽家でした。指揮者、オルガニストとしても高名で、その代表作が 大規模な管弦楽と オリジナル版では合唱まで伴う、このバレエ音楽「シダリーズと牧羊神 」でした。
 冒頭の「小牧神の入場 」だけ突出して有名で、わたしも 正直 コレしか知りませんでした。
 18世紀ヴェルサイユ宮殿近くの森に囲まれた庭園内、架空の「牧神学校 」が舞台、年老いた牧神の先生が 若い生徒(小牧神 )たちに「パンの笛の吹き方 」の授業を始めるところからスタートします。そのストーリーは 国王スルタンに招かれた美しい舞姫シダリーズ小牧神スティラクスとの恋物語ですが、実は詳細はよく知りません。わたしが知っているのは、このレコードに収録されている第1組曲だけで、正直 実際のバレエも観たことありません。
 しかし 不思議な転調を繰り返す魅力的な和声進行によって、聴き終えた後も なぜか いつまでも耳に残ります。そんな入場行進曲は、ピッコロによる特徴的な牧神の笛のテーマとトランペットによるユーモラスな行進曲の旋律、そしてこれら管楽器を支える 弾(はじ )けるピッツィカートの弦セクションの動きが特徴的です。


■ 16
シベリウス作曲
劇音楽「ペレアスとメリザンド 」 ~ 「パストラーレ 」(02:01 )

 ピッツィカート度 : 5点(10点満点 )写真
 カラヤン シベリウス D.G.
演 奏:ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 / ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
録 音:1982年1月、2月 ベルリン

併録曲:交響詩「フィンランディア 」、「悲しきワルツ 」、「トゥオネラの白鳥 」、「タピオラ 」 (オリジナル・カップリングに非ず )
音 盤:D.G.(UCCG-4509 )
  メーテルリンクの戯曲が1905年、ヘルシンキで上演された際 舞台用付随音楽が当地の作曲家ジャン・シベリウスに委嘱されたものです。同年 作曲者自身によって小規模な管弦楽のために その中から8曲が選ばれて組曲となりました。
 同時代の作曲者にとって この「ペレアスとメリザンド 」は魅力ある作品だったらしく、1898年にロンドンでの上演では フォーレが その舞台音楽を作曲したのを皮切りに、1902年 ドビュッシーは有名な歌劇作品に、これと同年 シェーンベルクは交響詩に(R.シュトラウスからは オペラにするようシェーンベルクに勧めがあったそうです )、興味深いことに それぞれ同じ題材を手掛けています。
 シベリウスの「パストラーレ 」は組曲の第5曲、柔らかい管楽器の牧歌的な旋律を支える弦の静かなピッツィカートが効果的です。めずらしくもカラヤンベルリン・フィルと このシベリウス組曲「ペレアス~ 」を録音するのは(たしか )これが唯一の機会で、この時の オリジナル・カップリングは グリーク作曲「ペール・ギュント組曲の再録音・・・だったように記憶してます(違ってたらスミマセン )。


■ 17
バルトーク作曲
弦楽四重奏曲第4番 ~ 第4楽章 スケルツォ (02:58 )

 ピッツィカート度 : 10点(10点満点 )
 ジュリアード バルトーク (SONY)
演 奏 : ジュリアード弦楽四重奏団
録 音 : 1963年3月 ニューヨーク
併録曲 : 弦楽四重奏曲第3番、同第6番
音 盤 : ソニークラシカル(SRCR-2634 )
  1946年 ニューヨークのジュリアード音楽院の弦楽器教授たちによって結成されたジュリアード弦楽四重奏団。早くも結成3年後に、最初のバルトーク弦楽四重奏曲全集がCBSに録音(モノラル )されていますが、その後も 1963年、1981年と少なくとも3度にわたって 彼らは同全集の録音を残しています。これは、最も評価の高い2度目の録音(アナログ・ステレオ )盤で、ロバート・マン(第1ヴァイオリン )、イシドア・コーエン(第2ヴァイオリン )、ラファエル・ヒリアー(ヴィオラ )、クラウス・アダム(チェロ )というピーク時のメンバーによるものです。その演奏の切迫感だるや凄まじく、整った印象さえある1981年盤に比べると、鮮烈な印象では 遥かにこちらの演奏の方が凌駕しています。
 ベラ・バルトークの傑作「弦楽四重奏曲第4番 (1928年 ) 」は 五楽章構成、激しい民族的なリズムと不協和音とが衝突する 先鋭化したシーンでの典型的なバルトーク音楽語法の集大成が聴けます。特に有名な「バルトーク・ピッツィカート 」 - 弦を指で弾(はじ )くなどという 生やさしい奏法ではなく、弦を指先で摘まみ、引っ張っては 強く離す(! )・・・そうすると 弦は同時に指板にも打ちつけられ「バチッ! 」という痛い音を発するのです - これが 音楽史上 初めて登場した 独特な特殊奏法です。
 この視点からも “ピッツィカート倶楽部 ”には 欠かすことの出来ぬ一曲である、と言えましょう。


■ 18
マルタン作曲
「弦楽オーケストラのためのエチュード 」 ~ 「ピッツィカート 」(03:05 )

 ピッツィカート度 : 10点(10点満点 )
 ジョルダン マルタン Paul Sacher
 (左 )ディスクのジャケット、
 (右 ) パウル・ザッハー Paul Sacher( 1906 – 1999 )


アルミン・ジョルダン指揮 / ローザンヌ室内管弦楽団の弦楽セクション
録 音 : 2002年9月7 ~ 10日 ローザンヌ
併録曲 :「協奏的小交響曲 」(マルタン )、「23の独奏弦楽器のためのメタモルフォーゼン 」(R.シュトラウス )、ボーナス・トラック(パウル・ザッハー「R.シュトラウスについて語る 」 )
音 盤 : RSR(RSR – 6172 ) 
  このアルバムは、バーゼル・スコラ・カントゥルムの創設者であり、古楽器研究の先駆者的役割も担ったスイス バーゼル市立音楽アカデミー校長でもあった「20世紀音楽のパトロン パウル・ザッハー Paul Sacher( 1906 – 1999 )に縁(ゆかり )のある作品で構成されている 興味深い1枚です。
 幸運なことに ザッハーは、世界的製薬会社エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社オーナーの未亡人と結婚(! )した事によって莫大な経済力を得、そんな逆玉の輿を背景に同時代の作曲家に 数多く積極的に新作を作曲させる機会を提供したのでした。
 その依頼によって世に出た名曲は数多く、思いつくまま有名なものだけを挙げても、ストラヴィンスキーの「弦楽のための協奏曲(バーゼル協奏曲 ) 」、バルトークの「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽 」、「ディヴェルティメント 」、オネゲル交響曲第2番、同第4番「バーゼルの喜び 」、そして傑作「クリスマス・カンタータ 」など 枚挙にいとまがありません。
 彼がバーゼルに遺した「パウル・ザッハー財団」は、現在は音楽博物館になっていて、現代作曲家の自筆譜の収集にあたりながら 一般公開も行っているそうです。


■ 19
コルンゴルト作曲
「弦楽のための交響的セレナード 」Op.39 ~ 第2楽章「間奏曲 」(04:13 )

 ピッツィカート度 : 7点(10点満点 )
 マウチェリー コルンゴルトDecca
演 奏 : ジョン・マウチェリー指揮 / ベルリン放送交響楽団
録 音 : 1995年4月

併録曲 : 映画音楽「ふたつの世界の狭間に(神の裁きの日) 」、主題と変奏Op.42
音 盤 : Decca(POCL-1692 )
  素晴らしいスケルツォ楽章です。
 しかし 中間部のトリオ (と 一部最後にも )では 弦が かなりアルコ(普通の弓引き )中心の動きをしているので、今回の “ピッツィカート倶楽部” からは 外しておいたほうがいいかなーと、実は 最後まで迷った一曲でした。 とは言っても この楽曲の主部は 全ての弦楽器が猛烈にピッツィカートを弾(はじ )きまくっていますから、これだけの作品に対し 一瞥も与えないというわけにもゆかず、やはり仲間に入ってもらいました ( ・・・逆に、ドビュッシーの “チェロ・ソナタ ” の 第2楽章 とか ラヴェル作曲の “ヴァイオリン・ソナタ ” や 同じく “ ヴァイオリンとチェロのためのソナタ ” の それぞれ第2楽章など、魅力的なピッツィカート場面が用意されている有名曲でも、必ずしも楽章の “主部 ” とまでは言えない場合には、敢えて外しました )。

 ・・・もとい、後期ロマン派の血を引いていた天才 エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト (1897 - 1957 ) は、第二次世界大戦中 ユダヤ系であったためアメリカに避難していましたが、その豊かな才能をハリウッドが放置しておくはずもなく、図らずも映画音楽作曲家として大成功を収めてしまうのです。
 1945年、ようやく戦争が終結し、コルンゴルトは ずっと抑え続けてきたウィーンへの郷愁を胸に、生まれ故郷への帰還計画を立てます。その手みやげに いくつかの新曲も用意しますが、この「弦楽のための交響的セレナード 」Op.39 も そのひとつでした。
 この自信作に対するコルンゴルトの気合の入れ方は尋常でなく、事前に自分自身でピアノを弾きながら熱心に楽曲解説した録音を アセテート盤に吹き込んで、楽譜と一緒にウィーンへ送るほどでした。
 初演は 1950年1月15日、指揮者はヴィルヘルム・フルトヴェングラー、オーケストラは ウィーンフィル という 今日から見ても 望むべき最高の組み合わせでしたが、不幸なことに せっかくコルンゴルトが用意した解説用レコード楽譜までも、手違いから 初演の直前までウィーンの演奏家たちの手許に届くことはなく、フルトヴェングラーもリハーサルを欠席するありさまでした。
 結果、この曲のコンサート演奏は 殆ど ぶっつけ本番の所見で行われ、惨憺たる失敗に終わったそうです。その上 新作どころか 旧作のオペラまで その滞在中にウィーンで上演されることは ありませんでした。かつて ひとりの天才少年を熱狂的にもてはやした、古(いにしえ )の帝都ウィーンは、もはや コルンゴルトの名を忘れていたのです。
 時の流れの速さを思い知らされたコルンゴルトは、失意のあまり 二度とウィーンに定住することなく 再びアメリカへと去り、その 7年後 遠くハリウッドの地で亡くなってしまうのでした。


■ 20
ブリテン作曲
「シンプル・シンフォニー 」作品4 ~ 第2楽章「おどけたピッツィカート 」(03:03)

 ピッツィカート度 : 10点(10点満点 )
 ブリテン シンプルシンフォニー (LONDON)
演 奏:ブリテン自身の指揮 / ロンドン交響楽団の弦楽セクション
録 音:1968年12月 ロンドン

併録曲:「青少年のための管弦楽入門 」、「フランク・ブリッジの主題による変奏曲 」
音 盤:DECCA(KICC-9222 )
  エドワード・ベンジャミン・ブリテン(1913 - 1976 )もまた幼い頃から楽才を表した天才でしたが、ロンドン王立音楽院の在学中に仕上げたのが この「シンプル・シンフォニー 」でした。これは何と 作曲者が 9歳から12歳の間に創作した作品を素材にまとめられたものとされますから、その早熟さには驚くしかありません。
 このピッツィカート楽章は 明らかにスケルツォです。
 ブリテンが11歳の時に作曲したという「スケルツォ 」のテーマでスタート。ヴィオラ、チェロ、コントラバスが刻むギターを模したような規則的な伴奏に乗せて ヴァイオリン群が断片的なトリオ主題を弾(はじ )きますが、こちらもスケルツォ主題と同じく 作曲者が11歳の時に作った歌曲のメロディからの転用だそうです。


■ 21
シチェドリン作曲
無伴奏ヴァイオリンのための「バラライカ 」(02:48 )

ピッツィカート度 : 10点(10点満点 )
 ヴェンゲーロフ ソロ・ヴァイオリン EMI
演 奏 : マキシム・ヴェンゲーロフ(ソロ・ヴァイオリン )
録 音 : 2002年5月24日 ロンドン、バービカン・ホール、ライヴ

併録曲 : 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ短調、同第3番 ニ短調、同第4番 ホ短調、同第6番 ホ長調(以上、イザイ )エコー・ソナタ(シチェドリン )無伴奏ヴァイオリン・ソナタ「トッカータとフーガ BWV565 」(バッハ/フォックス=レフリシュ編 )
音 盤:東芝EMI ( TOCE-55429 )
  これは 期待のヴェンゲーロフによる 無伴奏ヴァイオリンによる作品集でした。
 イザイの6つのソナタから4曲 - の他、ヴァイオリン用に編曲されたJ.S.バッハの「トッカータとフーガ 」など 意外な選曲にも驚かされましたが、ここでの注目は やはりアンコール・ピースとして演奏された、ユーモラスな「バラライカ 」でしょう。
 ロシアの有名な民族楽器バラライカは、三本弦を張った共鳴胴が三角錘形をした弦楽器です。この録音を聴いていると もはやヴァイオリンの音じゃないみたい・・・ ヴェンゲーロフ、きっと楽器をウクレレみたいに小脇に抱え、まさにバラライカを操るごとく軽々と弾(はじ )いてるんじゃないかなーって思えてきます。そして最後の落下するようなエンディング、決してぐちゃぐちゃにならず、一瞬ですが ひとつひとつの音の粒立ちが素晴らしく見事です。これを迎える客席からの盛大な拍手、力強く頷けるものがありますね。


■ 22 【 ピッツィカート倶楽部 エンディング・テーマ
ルロイ・アンダーソン作曲
「プリンク・プレインク・プランクPlink Plank Plunk 」 (02:24 )  
 
 ピッツィカート度 10点 ( 10点満点 )  
 フィードラー アンダーソン RCA ( BVCC-35042 )
演 奏 : アーサー・フィードラー指揮/ボストン・ポップス( の弦楽セクション )
録 音 : 1959 ~ 1966年

併録曲 : トランペット吹きの休日、フィドル・ファドル、ブルー・タンゴ、そり滑り、ワルツィング・キャット、ジャズ・ピチカート、ジャズ・レガート、サラバンド、シンコペーティッド・クロック、クラシックのジューク・ボックス、舞踏会の美女、セレナータ、チキン・リール、タイプライター、トランペット吹きの子守歌、アイルランド組曲
音 盤 : RCA ( BVCC-35042 )
   ■1 と同じく才人ルロイ・アンダーソンによる、もうひとつのピッツィカート作品です。
 ストリングスの弦を 弾(はじ )き、引っ張り、掴(つか )んで放す・・・ 弦楽器の 弓で弾く以外のあらゆる奏法(とまで言ったら大袈裟かしら )が陳列されている魅力的な一曲。その疾走するポップなメロディは アンダーソン特有のシンコペーションの切り方も心地良く、チェロやコントラバスが くるんくるん回ることでも有名(? )。楽譜では 全休符のタイミングで 合いの手を打つように 低音弦奏者は楽器の裏を縦方向に素早く指で擦ってシュッ! という音を立てる指示まであり、大きな低音弦の取り回し効率を考えると、「結果的に 」楽器は 回転させざるを得なかったのが 実態だったのでは? - と 推察するものです。

 最後に ちょっと脱線しますが、わたしたち発起人夫婦もお気に入りの NHK-FMの番組 「気ままにクラシック 、比較的最近( ・・・と言っても 今年2月以降? の放送分 )公開収録時、NHK交響楽団首席コントラバス奏者吉田秀氏が ゲストで ご登場なさった際、この曲で楽器をくるんと回転させる向きは「東日本と西日本では逆になる(! ) 」という 諧謔たっぷりなお話(冗談か真実かは定かでないものの )、たいへん興味深く聴き入りました。
 吉田秀 NHK交響楽団首席コントラバス奏者 うなぎ 関東風? 関西風?
 N響首席コンバス奏者 吉田秀

 ・・・しかも その「東西の境目 」とは、ちょうど鰻の焼き方関東風(背開き、蒸してタレを漬けて焼く)と関西風(腹開き、蒸さずに白焼からそのままタレを漬けて焼く )という地域差異にぴったり重なっている - という 衝撃的な落ち まで、実に 楽しませて頂きました(本当~? 大笑 )。

 スケルツォには ピッツィカートが良く似合う!


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コメント

木曽のあばら屋さま!

この上ない ご評価を頂けて、光栄です。
これだけ集めるのに、 実は 探してみようと意識し始めてから まるまる1年かかりました・・・。
次回も また別の切り口で 楽しんでもらえるような 新しいコンピ企画、スケルツォ俱楽部では 考え中です!
ヴァインベルクさん (? 発起人、全然 知りませんでした )の無伴奏チェロの作品に “ピッツィカート倶楽部” 候補曲があったなんて・・・! いつもながらの 良スレ & ナイス・フォロー、ホントに 心より 感謝申し上げます。

URL | “スケルツォ倶楽部” 発起人 ID:-

す、凄いですね・・・

こんにちは。
いやー、凄いですね。
集めに集めたりピッツイカート!
感服いたしました。
私も半分くらい知らない曲です。

超マイナー作品ですが、私も1曲。
モイセイ・ヴァインベルク(Weinberg, 1919~1996)の
「無伴奏チェロのための24の前奏曲 作品100」より第13番です。
1分半ほどの曲ですが、全曲ピッチカートで演奏されます。
よろしければぜひご一聴を。
ナクソスからCDが出ています(Weinberg/Complete Music for Cello Solo)。

URL | 木曽のあばら屋 ID:GHYvW2h6[ 編集 ]

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