スケルツォ倶楽部 Club Scherzo
「アフター・シュトラウス & “ バイ・シュトラウス ”」
After-Strauss & “By Strauss”
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(22)1951年 ユベール・ジロー
   「パリの空の下 Sous le ciel de Paris 」
 
 (パリの空の下、話題は イヴ・モンタン恐怖の報酬 」へと脱線し、
  クルーゾー監督から カラヤンへと 流れ 漂ふ ・・・ )
 

 Hubert Giraud Yves Montand ESCA-5065
 ユベール・ジロー (写真 左 ) Hubert Giraud 作曲
 シャンソン 「パリの空の下 Sous le ciel de Paris  」
 イヴ・モンタン 
(写真 右 )Yves Montand
 録 音:推定1960年代
 音 盤:France - CBS(Epic-SONY / ESCA-5065 )
 
  
 エリック・サティの「カフェ・コンセールのシャンソン=ワルツ に源流を発し、 プーランクオーリックを経て フランスの大衆歌曲に根ざしたワルツの系譜が、大戦後シャンソンの中に 生き残っていることを示す実例です。
 その流麗にして収まりの良い 卓越したメロディ・ライン、旧き良きカフェ・コンセール歌曲の伝統を脈々と伝えながら、しかし ここで炸裂する新しいリズムは、ナチス・ドイツの支配からパリを解放した連合国アメリカによってもたらされた モダンなジャズ・ワルツの三拍子に 他なりません。


 セーヌ川流れる花の都パリ - 1950年のある日 - そこで暮らす多種多様な人々の複雑な人間関係を 日常的な生活を通して描き出した 映画「巴里の空の下、セーヌは流れる (1951年製作、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督 ) 」の挿入歌として ジャン・ドレジャック Jean André Dréjac(作詞 )、ユベール・ジロー Hubert Giraud(作曲 )のコンビが作った、これは 戦後シャンソンの傑作です。
 実は 本来の映画主題歌は「パリの心 」という別の曲だそうで、他の歌手が歌っていたものの そちらはまったくヒットせず、単なる挿入歌の一曲に過ぎなかった「パリの空の下 」の方が、遥かに有名になってしまった という興味深い逸話があります(こういうことは よくあることですね )。

 映画「パリの空の下 」DVD表紙  Jean Bretonniere
(左 )映画「巴里の空の下、セーヌは流れる」 DVD表紙、
(右 )映画で最初に「パリの空の下 」を歌ったジャン・ブルトニエール

 
 映画の中で このシャンソン「巴里の空の下 」を アコルディオン奏でながら歌ったオリジナル歌手は、ジャン・ブルトニエール Jean Bretonniere という人で、フランスのポール・アンカ(? )のような人だったらしいです。残念ながら 現在 LPはおろか CDでも この人の音盤は入手困難らしく、私自身も ブルトニエールの声が聴けるディスクを探していますが、未だ出会えません。
 では 他に有名な録音と言えば? ・・・そうですね、やはりピアフ Édith Piaf、あるいは 若き日のマイルス・デイヴィスとの恋愛関係で知られるジュリエット・グレコ Juliette Gréco、それとも ミレイユ・マチュー Mireille Mathieuなどでしょうか。でも やっぱり男声の歌唱で聴きたいものです - そうすると個人的に最も思い入れの深い人は -

 ピアノにもたれる若きイヴ・モンタン ピアノにもたれる 若き日のイヴ・モンタン 

 - やはり イヴ・モンタン ではないでしょうか。
 モンタンのシャンソンは 独自の小粋な節回しが特徴で、とにかく粋で 格好良いです。


■ モンタン主演 映画「恐怖の報酬
   ショッキングなラストシーンの 直前まで流れていた「美しく青きドナウ
 
 さあ、ここから脱線スタートです、(申し訳ありません )。“スケルツォ倶楽部”発起人に 勝手に語らせてください。題して、「名優イヴ・モンタンとヨハン・シュトラウス 」について - というお話。
 あまり関連なさそうに聞こえるでしょうか、彼の主演した映画「恐怖の報酬 Le Salaire De La Peur (1952年製作、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー 監督、ジョルジュ・オーリック オリジナル音楽 )」の衝撃的なラストシーンに、シュトラウスⅡの「美しく青きドナウ 」が使われていたのをご記憶の方も多いでしょう。昼間のTV洋画番組でこの映画を初めて見た当時、私 “スケルツォ倶楽部”発起人は まだ小学校の高学年頃だったでしょうか、その意外な選曲から受けた驚きを よく憶えています。
 映画「恐怖の報酬」_Le_salaire_de_la_peur  映画「恐怖の報酬」_Le_salaire_de_la_peur-2
(左 )映画「恐怖の報酬 」ポスター
(右 )主演のイヴ・モンタンヴェラ・クルーゾー
 

僅かの振動でも爆発するニトログリセリンを、メキシコ近く中米はラス・ピエドラスの 険しい山上にある大火災中の油田までトラックで運搬するという、到底考えられ得る限り最悪の条件の仕事を、多額の報奨金欲しさに買って出る男を演じたのがモンタンでした。

以下 ネタバレご注意 ≫ 
映画「恐怖の報酬 」
 映画では 最後に、この危険な仕事を成功させたモンタン演じる主人公が、莫大な金額である「恐怖の報酬」を受け取り、嬉々として、カー・ラジオをがんがんに鳴らしながら 恋人のもとへと帰路 トラックを走らすシーンになります。モンタンは、彼女と一緒に彼自身の故郷であるパリへ行くつもりなのです。ここでラジオが受信している音楽が、ヨハン・シュトラウス二世の「美しく青きドナウ 」でした。
 トラックはラジオのワルツに合わせ、踊るように蛇行運転を繰り返しながら爆走、スピードを上げ続けます。その挙句、道路のセンターラインを飛び出し、反対車線から崖下へと落下してしまいます。めちゃめちゃに大破して火を噴く車と、運転席から投げ出されてもパリへのメトロの切符を固く握りしめたまま 血だらけになって死んでいるモンタンの姿が映し出されるところで 唐突に映画も終わるのですが、映像作品として 私が秀逸に感じた このラストシーンは、モンタンの生還を待ちながら 彼の任務成功の暁には 共にパリ行きを約束したヴェラ・クルーゾー演じる恋人も、実は 事故と同じ時間にラジオから流れている同じ音楽 - ヨハン・シュトラウス二世の「青きドナウ 」で踊っており、彼女もまた激しいワルツに眩暈を起こして(それはまるでモンタンの訃報を聞いたショックからででもあるように )恋人の事故死と同じ瞬間 ダンス・フロアに倒れる、という幕切れです。ここでは ワルツが一種「死の舞踏 」になっているのです。
 物理的に遠く離れた恋人同士が 同じ時間ラジオの電波を共に受信することで 繋がり合っている関係を表現しながら、同時に映画制作者は 車の転落事故によってラジオからのワルツを途絶えさせることで モンタンの演ずる主人公の死が 恋人同士の関係に終焉が訪れたことを象徴的に示すという( シベリウスワルツの使われ方と同じ ⇒ 「悲しいワルツ )、クルーゾー監督の素晴らしいアイデアが活かされた結末には、子供心にも 大きな衝撃を受けました。


クルーゾー監督とカラヤン  
 さらに脱線話を繋げるようで恐縮ですが、この 映画「恐怖の報酬 」のアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督と言えば、1960年代にヘルベルト・フォン・カラヤンが企画した「コンサート作品の映像化 」に尽力したことで知られていますね。
 A.J.クルーゾー監督と カラヤン(右)
 クルーゾー監督と、指揮者を「演じる 」カラヤン(右 )

 シューマンの交響曲第4番、ベートーヴェンの交響曲第5番、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」、メニューイン独奏によるモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番・・・
 クルーゾー監督は カラヤンの意図を汲んで真摯に映像演出し、ウィーン交響楽団ベルリン・フィルハーモニー を指揮する「俳優カラヤンの姿を ひとつの見事な映像作品に仕上げることに成功します。モノクロ映像でありながら、斬新なカメラ・ワークや 視覚的効果を高めるための楽団員の大胆な配置など、その後 音楽(演奏 )の映像化に強い関心を示すことになるカラヤンに 強烈な影響を与えました。この映像企画について カラヤンは、フランス人監督に感謝を表明しつつ 以下のように説明しています。
 「これらは安易なコンサート・リポートとは一線を画す、映像によるひとつの音楽解釈です。これに接した聴衆の皆さんが、偉大な音楽から より一層の深い意味を感じ取ることができますように - 」。

 (今回は 脱線したまま 最後までテーマに戻れず、涙流れる如く 終わります・・・ )


1952年  ジョージ六世英国王死去、エリザベス二世女王継承。
      西ドイツ主権回復(ボン協定 )。
      ヘルシンキ・オリンピック開催。
      チャップリン、映画「ライムライト」をイギリスで封切り。
      米司法長官、チャップリンの反米的言動に「再入国を保証せず」と発表。
      映画「禁じられた遊び(ルネ・クレマン監督 )
         「雨に唄えば(スタンリー・ドーネン監督 )」 
         「赤い風車(ジョン・ヒューストン監督 )」
         「天井桟敷の人々(マリセル・カルネ監督 )」
         「巴里のアメリカ人(ヴィンセント・ミネリ監督 )」
         「風と共に去りぬ(ヴィクター・フレミング監督 )」
      歌曲「ウィーン わが夢の街 」のジーツィンスキー、シュテファン教会の上空を舞う ・・・に続く


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