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スケルツォ倶楽部
信州 安曇野 - 「田舎のモーツァルト (尾崎 喜八 ) 」


 こんにちは、“スケルツォ倶楽部発起人です。
 先週の土曜日のこと。
 仕事がお休みの朝には いつもなら10時過ぎまで ぐうたらと寝ている私ですが、その日は 何となく8時前に目が覚めてしまいました。
 ベッドから起き出して 我ながらだらしなくアクビ混じりに頭髪を掻きながら ダイニングのドアを開ければ、いつもながら働き者の妻が すでに甲斐甲斐(かいがい )しくエプロンをきりりと締め、朝食の支度を万全に整えてくれているではありませんか。
 朝の光が射しこむ窓際のテーブル、並ぶ白いお皿、そして コーヒーの香り。
 お、妻の お得意メニュー、フレンチ・トースト “スケルツォ倶楽部” 風 ⇒ レシピ はこちら

 「おはよウナギ、アナタ。今朝は ウォールナッツ(くるみ )ブレッドのフレンチ・トースト、スクランブルド・エッグ に チーズ と サラダ、簡単だけど それに コーヒー ・・・ で いいよね? 」
 「(座りながら )いただきマウス
 「あ、TVつけて アナタ。 NHK 」
 「 ( ぱち ) 」

 画面には 広大な信州安曇野の風景・・・ 北アルプスの山々から湧き出る清流、肥沃な松本盆地、美しい大自然の景観が 映し出され、文字どおりすっかり目が覚めました。

長峰山 蕎麦の花畑  
 (左 )長峰山、(右 )蕎麦の花畑
 安曇野すまいる 連続テレビ小説「おひさま 」応援サイト より

 この4月から新しく始まったNHK朝の連続テレビ小説「おひさま 」なるドラマの舞台が、この長野県中部(中信地方 )安曇野 だというではありませんか。なかなか評判のようですね。
 井上真央 NHK_朝ドラ「おひさま 」ポスター  
 (左 )主演の井上真央さん
 (右 )NHK 2011 朝ドラ「おひさま 」のポスター


 「コレ 観てるのか、毎日? 」
 「うん (ぱくぱく )」
 「ふーん 」
 ・・・ 主演女優の井上真央さんは大好きですが、残念なことに 平日の私は 毎朝7時過ぎには家を出てしまうので、妻と違って毎日 朝ドラを観れる環境ではありません。
 それでも この景色は見事ですね。
 安曇野市観光案内 信州安曇野総合案内所
 (左 )安曇野観光案内 (右 )信州安曇野総合案内所
 
 安曇野 - と言えば、私が思い出すのが 実母の故郷でもある長野県 - その大自然と山岳を愛した詩人 尾崎 喜八( 1892 – 1974 )の作品です。彼は 長野県下を中心に 数多くの小中学校校歌の作詞もしていたのだそうです。
 尾崎 喜八
  尾崎 喜八( 1892 – 1974 ) 
 
 尾崎は 早い頃からクラシック音楽の愛好家としても有名で、日本で最初にベートーヴェン第9交響曲「合唱付き 」終楽章シラーの「歓喜に寄する 」 - の日本語訳詞を手がけたことによって知られ、おかげで ある世代以上のクラヲタ(クラシック音楽の熱烈なファン )は 彼に とても親近感を持っているはずです。
 また、尾崎が晩年に著した音楽随筆集「音楽への愛と感謝 」も忘れることは出来ません。音楽への深い愛情を籠め、詩人が綴った回想録です。
 尾崎喜八著『音楽への愛と感謝』 ( 平凡社 )
 尾崎喜八著 『音楽への愛と感謝 』 ( 平凡社 )
 
 以下、その一部から引用させて頂きましょう(青字 )。 

「 ・・・ 佳く晴れた秋の日の事だった。大町に住んでいる或る友人に誘われて安曇平穂高町付近の有名な山葵田を見物に行った帰り道、その友人の案内で 或る中学校を参観した。
槍ケ岳に源を発する高瀬川の流れを東に、常念や大天井や有明山をつい西の眼前にした。
広い校庭を持つ学校だった。まわりにはぐるりとアカシアの大木が植わっていて、その葉がもうすべて晴天続きの秋を黄ばんでいた。
私は、折からピアノの鳴っている音楽室というのにも案内された。新任だという若い女の先生が弾き、男女の生徒が身体を固くして両手を膝に、目を輝かせて聴き入っていた。輝くような踊るような溌溂たる音の流れ( 中略 )、この若い新任の先生は、孜々として弾き、それをまた、いささかも音楽擦れしていない信州安曇野の中学生たちは身じろぎもせず傾聴しているのである。
この光景は、強く私の心を動かした。そして、自分の音楽がこんな田舎町の純真な人たちから愛されることを、モーツァルトはさぞや喜んでいるだろうと思った。」
       
                      - 尾崎喜八著「音楽への愛と感謝 」平凡社 より

 この文章の中で そのまま言及されてる詩が、あの「田舎のモーツァルト 」です。


  田舎のモーツァルト
                              尾崎 喜八
    中学の音楽室でピアノが鳴っている
    生徒たちは、男も女も
    両手を膝に、目をすえて、
    きらめくような、流れるような、
    音の造形に聴き入っている
    そとは秋晴れの安曇平、
    青い常念と、黄ばんだアカシヤ
    自然にも形成と傾聴のあるこの田舎で、
    新任の若い女の先生が
孜々として
    モーツァルトの みごとなロンドを弾いている

                          
                     孜々(しし )として : 熱心に、真剣に

 
 作者 尾崎喜八自身の回想録「音楽への愛と感謝 」を お読みになれば、ここで「新任の若い女の先生 」が「孜々として 」弾いていたモーツァルトの楽曲が、実は有名な「トルコ行進曲 」であった - ということは すぐ判明しますが、しかし 私にとっては - 自分自身の主観的な想いが 勝手に頭の中に反映されているらしく - この詩の中で 「先生 」が弾いているというモーツァルトのみごとなロンド が、 私の大好きな  K.485 ニ長調 」 だったら どんなにいいだろうなあ - と感じることしきり・・・ きっと合っていると思うんですよ、こんな情景には - 。
 窓の外に目を移すと、視界いっぱい 青い空と蕎麦の白い花が広がるのが見渡せる教室の中、中学校の生徒たちが「両手を膝に、目を輝かせ 」、古い音色のピアノのリズムに合わせながら 皆一斉に頭を振りながら、この音楽が終わるまで ずっと リズミカルに 繰り返し頷(うなづ )き続けているような - 。

■ おススメの一枚
 この文章には モーツァルトの音楽が、意外なほど日本の風景 ‐ 信州の大自然の中へ 見事に溶け込んでいます。
 どうか 一度 ダマされたと思って、試しに K.485 を 聴きながら「田舎のモーツァルト 」、あらためて もう一度 ぜひ ゆっくりと 読み返してみてください。

Mozarts Own Fortepiano_A.シフ盤
▲ モーツァルト : ロンド ニ長調 K.485
アンドラーシュ・シフ (生前のモーツァルトが所有していたフォルテピアノを使用 )
録 音:1991年 ザルツブルク
収録曲:ピアノ・ソナタ第15番ハ長調 K.545、ロンドイ短調 K.511、メヌエットニ長調 K.355(576b )、小さなジーグト長調 K.574、幻想曲ハ短調 K.475、アンダンテ K.616、ロンドニ長調 K.485、ピアノ・ソナタ第16番変ロ長調 K.570
音 盤:L`oiseau-lyre( POCL-1178 ) 

 “スケルツォ倶楽部発起人の 思い入れも深い 大好きな一枚。
 これ、素晴らしいんですよ。 もし私が無人島に持って行けるCDを選べるとしたら、少なくとも最終選考までに残すであろう数十枚の中の一枚となることは 間違いありません。
 その短い生涯をウィーンで終えたモーツァルトが、最後まで自身手元に置いていた愛器のひとつ、1780年頃に製造された歴史的なアントン・ヴァルターのフォルテピアノ、現在はザルツブルクモーツァルト博物館に移され、そこで保管・陳列されています。楽器の大きさは、幅 99.0cm、奥行 224.0 cm、高さ 86.5cm、操作方式はウィーン式と呼ばれるもの。音域は 5オクターヴと狭く、ハンマーとダンパーは 薄い鹿皮で被われています。外装の大部分にウォールナッツ(くるみ )材が豊富に使用され、白鍵盤は黒檀、黒鍵盤は象牙嵌め込み・・・。
 これを用いて録音された、かけがえのないディスク。使用楽器の狭い音域条件を満たす選曲も絶妙。雅やかな、何と素晴らしい音色でしょうか。

 モーツァルト博物館所蔵のアントン・ヴァルターを使用して録音されたモーツァルトのCDは、この他にも たとえば。。。

 Mozarts Own Fortepiano__レヴィン=ホッグウッド コンチェルト Mozarts Own Fortepiano_レヴィン=ホッグウッド コンチェルト(裏表紙)
 ロバート・レヴィンクリストファー・ホグウッド による ピアノ協奏曲(K.450、K.537 )L`oiseau-lyre 
 結局 全集にならなかったのは ホント 返す返すも残念・・・

 Mozarts Own Fortepiano_アンサンブル(Teldec )盤
 シフ、塩川悠子、ミクローシュ・ペレーニらの共演による 室内楽曲の演奏(Teldec )
 ここで聴くことが出来る ヴァイオリンも、また モーツァルトが所有していた楽器だそうです。
 これら企画盤の素晴らしさについては、また いずれ別の機会に 詳しく。

 ・・・けれど、このフォルテピアノ、実は モーツァルトの死後 20年ほど経ってから、その当時(1810年頃 )の一般の楽器仕様に合わせて - 良かれと思ってのことだったのでしょうが - 加工・改造されてしまった( ! ) のだそうです。
 Oh、No !
 せっかくモーツァルトが所有していた 歴史的にも価値の高い楽器なのに、厳密には オリジナル状態では保存されていない - オリジナル・コンディションに復元することも もう不可能だそうで、当然 その音色も本来のものとは異なるのでしょう - などと書いてしまったら、すべて夢は壊れて逝きますが・・・ Orz

Mozarts Own Fortepiano_A.シフ盤
 それでも 名手アンドラーシュ・シフの 飾り気ない演奏で聴いていると、その独特の硬い音・狭い音域に 220年前 ありし日のモーツァルト自身が弾いていた フォルテ・ピアノの典雅な音の実体は深くしのばれ、私の心に豊かなイマジネーションが 雲のごとく 勝手に湧き立つのでした。
 そう、たとえ それが幻想でもいいんです。「フォルテ・ピアノの音フェチ 」! でもある 私 “スケルツォ倶楽部” 発起人の、コレは「心の愛聴盤 」の一枚。誰に何と言われようと、私にとっては やはり 座右の名盤だからです。

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