本記事は、3月27日「 人気記事ランキング クラシック音楽鑑賞 」で 第1位 となりました。
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スケルツォ倶楽部 Club Scherzo
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シュローダーが「悲愴 」を弾いたのは、
ベートーヴェンの命日 ≪ 3月26日≫ だったかも。

スヌーピーとチャーリー「雲を眺める三人」 「スヌーピーとチャーリー」シュローダー
映画「スヌーピーとチャーリー 」から
(左)ルーシー、チャーリー・ブラウン、ライナス
(右)シュローダー

 
 チャールズ・M.シュルツ氏 原作の「ピーナッツ 」記念すべき最初の劇場用アニメーション、1969年に製作されたCBS映画「スヌーピーとチャーリー A Boy Named Charlie Brown 」の中盤辺りで、シュローダーベートーヴェンピアノ・ソナタ第8番「悲愴 」から第2楽章 アダージョ・カンタービレ の全曲  を弾く - という場面がありました。
 映画をご覧になられた方であれば おそらく どなたにもご同意頂けると信じるものですが、この「悲愴 」第2楽章を弾くシュローダーの姿と映像は、スヌーピーベートーヴェンの両者を愛好する者にとっては 永遠に記憶に残るほどの強烈なインパクトがありました。
 普段から シュローダーは 日常的にベートーヴェンの曲を弾いているのに、なぜ「このシーン 」に限って、これほどまでに深い感銘を与えられたのか、30年以上 ずっと考えてきました。
 私“スケルツォ倶楽部”発起人 は、その理由を シュローダーがこれを演奏した日 ‐ それが 実はベートーヴェンの命日 ≪3月26日 ≫ だったのではないか(?) という仮説を立てました。本日の文章のテーマは それです。

 ( なお 映画では この第2楽章、第17~36小節、第59~65小節が省略され、演奏時間も 3分30秒程度に縮められています )。

■ まずは おススメの一枚
 悲愴 アシュケナージ UCCD-3865
 ベートーヴェン作曲 
 ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 作品13「悲愴 」
 ヴラディーミル・アシュケナージ (ピアノ )
 録音:1972年5月 イリノイ州 クラナート・センター
 Decca ( UCCD-3865 )
 併録曲 : ソナタ第7番ニ長調、第23番ヘ短調「熱情 」

 
 ペダルを浅く制御した歯切れの良い このアシュケナージ盤は、ベートーヴェンの肖像を使ったジャケットの良さで選びました。
 めずらしくもベートーヴェン自身が名づけたタイトルと伝わる「悲愴 Pathetique 」とは、単に 哀しい、 痛ましい、という有様ばかりを指しているわけではなく、さらに 英雄的に、 感動的に、などという 一種崇高なニュアンスさえ伴った言葉だそうです。
 すなわち、この「悲愴 」というタイトルを 渾身の自作に命名したベートーヴェンは、これを作曲した当時 回復不能な耳の疾病という 音楽家にとって致命的な症状に悩まされていたわけですが、自分にのみ与えられた かくも過酷で不当なる運命に 雄々しく立ち向かおうという それは 決意の表明であると同時に、彼らしい 多少のヒロイズムによって おのれ自身の精神を昂揚させることで、背負された苦しみを麻痺させる必要があったかもしれない - と、私 “スケルツォ倶楽部”発起人 は 考えるものです。

■ 映画「スヌーピーとチャーリー 」は 3月の物語である
  - との仮説を (無理やり? )論証する
 
 まず、この映画「スヌーピーとチャーリー A Boy Named Charlie Brown 」のストーリーに描かれたシーズン = そこに設定された季節の特定から始める必要があるでしょう。
 シュルツ氏原作の ピーナッツのアニメーションは、たとえば 同じく劇場用アニメーション映画だった「スヌーピーの大冒険 Snoopy、Come Home 」なら夏休み、TVシリーズの名作「チャーリー・ブラウン・クリスマス A Charlie Brown Christmas 」なら12月、というように その他 同じく「バレンタイン 」、「ハローウィン 」、「感謝祭 」など、いずれも季節感を とても大事にしているではありませんか。

■ で、季節はいつ?
 凧揚げ
 まず 映画の最初のほうで、チャーリー・ブラウンによる印象的な凧(たこ)揚げのシーン、当然ですが アメリカには日本のように「正月だから皆で揚げよう 」などという習慣はありませんが、やはり風が強くなる春先(2月 )から初夏にかけて遊ぶことが、地域にも拠るようですが 多いそうです。
 
 今年初めての野球だからわくわくするな  
 これも映画の前半、チャーリー・ブラウンが ボールとグローヴを持って登場する時、「今シーズン初めての野球だから わくわくするなー」と言う台詞があります。彼がシーズン最初に グラウンドへ向かっているのが 明らかに春であるということが推察されます。
 実際、アメリカでは野球のシーズンが本格的にスタートする前の2月中旬から3月下旬にかけて、日本の春季キャンプにあたるスプリング・トレーニングがスタートする習慣です。子どもたちのリトルリーグも同様で、最初のシーズンといえば この時期を指すのです。

 何でマウンドにタンポポが咲いてるの?
 また、続くグラウンドの場面でチャーリー・ブラウンのピッチャー・マウンドを思いきり覆っていたのは、アメリカでは雑草扱いされている西洋タンポポで、これは3月頃に咲き始めますから、映画の時期に 一致しています。

 では 学校は?
 3月末であれば 春休みじゃないか ・・・って?
 いいえ、アメリカの小学校であれば「 3月26日 」は、1月中旬 ~ 5月中旬にわたる「春学期 」の真っ最中で、子どもたちは 普通に学校へ通っている時期なんです。
 また、この映画の中で重要な役割を占めている「スペリング・コンテスト Spelling Bee( 英単語のスペル=つづりを いかに正確に答えるかを競うゲーム )」は、実は アメリカではたいへん人気のある競技だそうで、これが全米規模で(!)行なわれるのは、まさしく 2月から5月にかけてなのです。

 あたかも「はじめに答えありき 」を狙ったような 私“スケルツォ倶楽部” 発起人による論理の進め方に、もし「ちょっと強引だなー」っていう印象を抱かれたとしたら・・・ おっしゃるとおり(笑 )自覚しております。どうぞ お許しください。
 しかし この映画は 間違いなく まさに春を迎えようとする季節の物語であると 私は 確信しております。そうでないと、この文書は続きません。。。

■ 次に、画像を観ながら 検証してまいりましょう。
 尊敬するベートーヴェンの胸像を愛用のトイ・ピアノの上に置き、シュローダー「悲愴 」ソナタの まず 第3楽章を稽古しています。
 観ていると、もうそれだけで 発起人には ワクワクしてくるシーンなのですが、そこへルーシーがやって来て ピアノから胸像を退かすと 自分がピアノに寄りかかり、あれこれとシュローダーに話しかけ始めます。そのうち「ピアニストってお金になるの? 」という いつもの「愚問 」に対し、今回は めずらしくシュローダー 腹も立てずに「それは個人差があるね、一生懸命 練習すれば の話だよ 」と返事してあげたりしてます。
 「若者は一生懸命 勉強しなきゃね 」

 すると これを聞いたルーシー、「妻(わたし )を養えるよう しっかり練習を続けなさい 」と高飛車に告げるや シュローダーの鼻に素早くキスするのでした。そして嫌がるピアニストに向かい さらに追い討ちをかけるように ベートーヴェンの胸像を眺めながら「コレ誰? ジョージ・ワシントン? 」などとシュローダーにとっては侮辱的な言葉を残し 部屋を出てゆくのでした。悔しさのあまり思わず取り乱し、ピアノを叩くシュローダー
 これ誰? ワシントン? 取り乱すシュローダー
 
 しかし やがて気を取り直すと、深呼吸をひとつ。何事もなかったかのように 静かな一曲を弾き始めるために、その両手を小さな鍵盤の上へ伸ばすのでした。
 「悲愴」弾き始めるシュローダー

 それは「悲愴」ソナタ 第2楽章 アダージョ・カンタービレ - 。
 シュローダーが弾き始めると、徐々に映画の画面は それまでの日常的な部屋の背景から 幻想的で不思議な空間へと変容を遂げます。
 ピアノを奏でるシュローダーを取り囲むように、ベートーヴェン自筆の音符たちが まるで空中へ撒かれたかのように散りばめられると、画面の左側から すーっと 五線が川の流れのように押し寄せ その音符たちをすくい上げるという、実にファンタジックなシーン。
 シュローダーの背景が変容 楽譜の海・・・ 
 
 トイ・ピアノはぐんぐん大きくなってゆき、不思議なことに いつの間にか 楽器ベートーヴェンが 生前使用していたハンマークラヴィーアを思わせる姿に変貌してゆくのです。
 ピアノの変貌(1) ピアノの変貌(2)
 
 シュローダーが弾いているのは もはやおもちゃではありません。私たちが伝記やレコードの解説書などでもしばしばお目にかかる、ベートーヴェン晩年の乱雑な部屋に無造作に置かれていた あのピアノではありませんか(参照 ) - そう気づいた時には もう鳥肌が立っています。
 晩年のベートーヴェンの部屋を描いた絵(意図的に反転)
(Wikipedeia )

 ウィーンの古い教会のイラストが次々と映し出され、建物のてっぺんに設置された十字架がクローズアップされます。教会の回廊を 多くの古(いにしえ )の聖人たちの魂が ゆっくりと流れてゆく宗教的なイメージ・・・
 浮遊する聖人 お墓の場面  
 彼らの魂が向かうところは 墓地です。さまざまな形の墓、墓石が並んでいます。次には可憐な花、その花をモティーフにした教会のステンド・グラス・・・ と、この辺りまで来ると、もはやシュルツ氏の描いたオリジナルな筆致やタッチからは 遥かに離れてしまってはいるものの、製作に携わったスタッフの斬新な感性には 大いに称賛の拍手を送りたいです。
 荒々しい海の波のイメージが映し出され - それはベートーヴェンの生涯の象徴でしょうか。やがて 楽聖が その後半生を過ごした 懐かしいウィーンの街や風景が 様々な角度から描かれます。その背景にはベートーヴェンの遺した自筆楽譜もオーヴァーラップしたりします。
ウィーンの街や風景(1) ウィーンの街や風景(2) ウィーンの街や風景(3)

 そして 時系列順に ベートーヴェンを描いた有名な肖像画 を素材に、これを巧みにアレンジした魅力的な画像が 次々と ゆっくり浮かんでは消え、消えては現われ・・・
ベートーヴェンの肖像画が映るシーン(1) ベートーヴェンの肖像画が映るシーン(2) ベートーヴェンの肖像画が映るシーン(3)
 
 最後に 天使が昇天するイメージと、楽聖の有名なデス・マスクが暗闇に浮かび上がります。ここまで辿り着くと、初めて観る人は きっと深い悲しみに胸を突かれるはずです・・・。
 天使に召される ベートーヴェンのデスマスクが映るシーン

 “スケルツォ倶楽部 ”発起人が この映画を劇場で観たのは、本邦初公開の1972年 - 小4の時でしたが、自分でも 理由がわからぬまま ここで涙が止まらなくなり、座席で嗚咽していたことが忘れられません、恥ずかしかったです。
 子どもの頃には 正確に解ってはいませんでしたが、歳を重ねるにしたがって その後 ベートーヴェンの生涯を いろいろな書物やレコードの解説などで読んだりするうち、映画館で感じた自分の直観の正しさを少しずつ意識し始めました。
 このシーンを一貫して支配しているのは、楽聖ベートーヴェン のイメージなのです。
 シュローダーは、自分が心より敬愛するベートーヴェンの命日 3月26日 - 惜しむべき記念日に、楽聖を追悼する気持ちを籠めて この「悲愴」を演奏したのです。
 映画の中では これが「その日」かどうかについては、シュローダー自身は 謙虚にして一言も発言していません。ただ黙ってピアノに向かい、真摯に弾き始め、そして弾き終えると・・・
 弾き終えて 黙祷するシュローダー
 ・・・静かに 深く黙礼するのみです。これが全てを語っているように思えます。
 演奏を最後まで聴いてからシュローダーの顔を窺うと、そこから読み取れる 深い敬意と悲しみさえ湛えた表情 - 少年の楽聖に対する想いの深さが伝わってきて それは実に感動的です。
 思えば この映画「スヌーピーとチャーリー 」が製作された時期は 1969年 - それは 「ベートーヴェン(1770 – 1827 )の生誕200年 」という記念の年を 僅か1年後に控えた時期でした。映画の中でシュローダーの演奏シーンが まるでディズニーの「ファンタジア 」のように 大きくフィーチャーされた理由は、原作者シュルツ氏の嗜好もあったでしょうが、やはり重要な背景として、映画製作当時 ベートーヴェンの偉業に世界的な注目が集まっていたというタイミングもまた 追い風だったことでしょう。


■ 映画「スヌーピーとチャーリー」、サントラ盤 CD復刻希望!  
 今回は シュローダーの弾いたベートーヴェンの音楽にスポットを当てましたが、映画「スヌーピーとチャーリー」本編全体の中身につきましては、また別の機会に 改めて語りまくりたいと思っております。乞うご期待。
 映画は、現在 DVDで容易に入手可能。ありがたいことです!

 DVD 映画「スヌーピーとチャーリー 」パラマウント・ジャパン
 映画「スヌーピーとチャーリー A Boy Named Charlie Brown
 ( PPB-109772 パラマウント ジャパン株式会社 )
  ・・・このDVDのジャケット表紙にだけは 正直 いささか違和感があります。 

 この映画の オリジナル・サウンド トラック (これは L.P.です。CD未発売・・・ )
 推定Sonyさま! CD化を 強く希望します。
 「スヌーピーとチャーリー」 サウンドトラック CBS Sony
 - ヴィンス・ガラルディ によるTVシリーズと同じテイストの よく知られたオリジナル曲の数々、ジョン・スコット・トロッターによる仕事、ロッド・マッケン(マッキューン )による 渋いオリジナル主題歌、映画ストーリーに沿って 子どもたちの台詞まで収録されてる 実に楽しい一枚でした ・・・。

■ 本日 3月26日は、ベートーヴェンの命日です。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
Ludwig van Beethoven(1770 – 1827 )
 
「悲愴」作曲の頃のベートーヴェン 発起人、ベートーヴェンの お墓まいりをする(1999)
 この写真(右 )は、1999年 ウィーン中央墓地 ベートーヴェンのお墓参りに詣でた時のもの。お墓の傍らに立って献花している人物は、今から12年前 の “スケルツォ倶楽部” 発起人(夫 )でございます。
 
楽聖ベートーヴェンに あらためて深い感謝をこめて・・・ 心より合掌



では次回 復活祭に イースター・ビーグルは ベートーヴェンの第7交響曲で 卵を配る ・・・に続く


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