スケルツォ倶楽部 Club Scherzo
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ペパーミント・パティ、エルガー「威風堂々 」に
「生きてて良かった! 」

 
 アメリカには 生のコンサート会場で 年に何回も音楽鑑賞をさせてもらえる小学校なんて 本当にあるんでしょうか - そのような 素晴らしく恵まれた環境にいるらしい ペパーミント・パティと 後輩 マーシーのふたりですが、しかし 往々にして そんな「恵まれた環境 」の中にいる 当の本人たちは その 本当のありがたさには 気づいていないものです。
(1)Whats this new piece they re playing ? (2)Some Conductors like to perform new Music to challenge their listeners. (3)Boring is Challenging ?
谷川俊太郎氏=訳、 講談社+α文庫 )

 シュルツ氏、なかなか 辛辣(しんらつ)ですね・・・。
 でも 実際、ある種の現代音楽には たしかに このように感じざるを得ない瞬間も存在した(する?)ことは 否定できません。
 子どもの頃に こういう経験を度々させられてしまうと、長じて クラシック音楽を 好んで聴かなくなってしまうような大人を育てることになってしまうのではないでしょうか。
(1)The Conductor mounts the podium. (2)He raises his baton... (3)The Music begins... (4) Z....   Z...
谷川俊太郎氏=訳、 角川つばさ文庫 )

 ・・・それが、「この音楽 」が演奏された時だけは 二人の目の色が違ったのでした!
(1)「この曲は?」「エルガーの威風堂々・・・」 (2)「これ好きだな」「私も 」 (3)「生きててよかった! 」
 ( 祥伝社新書 ) 
左から
1.ペパーミント・パティ 「この曲、何? 」、マーシー「“ エルガー作曲 威風堂々 ” ・・・ 」
2.ペパーミント・パティ 「これ、好き... 」、マーシー 「私も… 」
3.ペパーミント・パティ 「私、生きてて良かったわ! 」

エドワード・ウィリアム・エルガー Edward William Elgar( 1857 - 1934 )作曲、
行進曲「威風堂々 」第1番

 ・・・超名曲です。ペパーミント・パティの最後の台詞、決して大袈裟(おおげさ)とは思いません!
 この原題“Pomp and Circumstance ”が、シェイクスピアの「オセロー」第3幕の台詞から採られていることは有名ですよね。Pomp は「華麗な 」という意味、Circumstance は「賑々しい 」という意味ですが、これに「威風堂々 」なる和訳を充てた人は 一体どなただったんでしょう、シェイクスピアエルガーとの両意を汲んだ、素晴らしい名訳と思います。
 中間部トリオの旋律は 親しみやすいポピュラリティと同時に格調の高さをも兼ね備えた 音楽史上でも稀有の素晴らしいメロディだと思います。初演時から、一聴で その価値と魅力がストレートに聴衆へ伝わった音楽作品としては、古今無類の傑作でしょう。
 これに比肩し得るような音楽作品を ちょっと思いつくまま挙げてみましょう、ベートーヴェン「第9 交響曲」終楽章の歓喜の歌、ウェーバー歌劇「魔弾の射手 」序曲におけるホルン四重奏の旋律、チャイコフスキー序曲「ロメオとジュリエット 」に登場する愛の主題プッチーニ歌劇「トゥーランドット 」からカラフアリア「誰も寝てはならぬ 」ラフマニノフ作曲「パガニーニの主題による狂詩曲 」第18変奏、同じく 交響曲第2番 第3楽章に聴かれる比類なき名旋律ラヴェル「逝ける王女のためのパヴァーヌ 」冒頭の第一主題ホルスト組曲「惑星 」第4曲「木星 」トリオ主題など・・・ 古今の名曲・名旋律の数々の中でも 相当上位の席に列せられる価値のある 本当に素晴らしい楽想であると感じます。
 1901年10月19日にリヴァプールで初演され、大成功。
 エルガーの友人でもあった指揮者アルフレッド・ロードウォルドリヴァプール管弦楽団に献呈されたものだったそうですが、それから3日後、ロンドンクイーンズ・ホールで再演された時には 聴衆から熱狂的な喝采が起こり、アンコール演奏を続けて2度 求められた - と伝えられます。
 
 イギリス管弦楽名曲集(Teldec )
イギリスの管弦楽名曲集 BEST of British
アンドルー・デイヴィス指揮 BBC交響楽団

併録曲 : 行進曲「威風堂々」第4番、交響曲第2番 ~ 第3楽章、弦楽セレナード ~ 第2楽章、「朝の歌 」、「愛の挨拶 」、エニグマ変奏曲 ~「ニムロッド 」(以上、エルガー )、フランク・ブリッジの主題による変奏曲 ~ イタリア風アリア、4つの海の間奏曲 ~ 「夜明け 」、「月光 」(以上、ブリテン )、交響曲第4番 ~ 第3楽章、交響曲第8番 ~ 行進曲風スケルツォ(以上、ヴォーン・ウィリアムズ )、河の上の夏の夜 (ディーリアス)、組曲「惑星」~ 木星(ホルスト)、「エルサレム(パリー ~ エルガー編 ) 」 - 「蛍の光 」
Teldec ワーナー・クラシック・ジャパン( WPCS- 5745 )

Edward_Elgar_Wiki.jpg Eduard_VII_WIKI.jpg 
 (左)エルガー(1857 - 1934)
 (右)エドワード七世(1841‐1910 )


 時のイギリス国王エドワード七世から「かくも崇高なる旋律に歌詞あらば、世界に広まるべし。すみやかに歌詞をつけよ 」との要望が作曲家に下り(まるでおとぎ話のようです )、翌年 エルガーは 「国王のための戴冠式頌歌(Coronation Ode ) 」を新たに作曲、その終曲「希望と栄光の国(Land of Hope and Glory ) 」に この行進曲の秀逸なトリオのメロディを使ったのでした。
 エルガー:戴冠式頌歌
 エルガー「国王のための戴冠式頌歌 」 
 アレクザンダー・ギブソン指揮
 スコティッシュ・ナショナル管弦楽団、合唱団
 Chandos ( CHAN-6574 ) 
 併録曲:The Spirit Of England

 ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールを中心に 1895年以来 毎年夏に開催されている世界的に有名な音楽祭 ザ・プロムス The Proms BBC の 最終日(ラスト・ナイト )には、習慣として そのフィナーレで合唱団とBBC交響楽団が全聴衆と一体となって高らかに「威風堂々」を歌い上げますが、その際の歌詞は まさにこれですね。現代の我々にとっては さすがに往時の帝国主義の香りがしますが。

Land of Hope and Glory, Mother of the Free,
  希望と栄光の国、自由を生みし母
How shall we extol thee who are born of Thee?
  汝 祖国を 子たる我らは いかに誉め讃えるべきや?
Wider still and wider shall thy bounds be set;
  何処までも 限りなく拡がりゆく国土を
God, who made thee mighty, make thee mightier yet.
  汝を力強く創りし神よ、汝をして さらに さらに強大にせよ

作詞 : アーサー・クリストファー・ベンソン
A.C.Benson (1862~1925) 

和訳 : 山田 誠  

 プロムス/100th ライヴ 1994 (Teldec) アンドルー デイヴィス
 (左)ジャケット写真
 (右)プロムス、ラスト・ナイトで指揮する アンドルー・デイヴィス


プロムス100年記念ライヴ盤 
アンドルー・デイヴィス指揮
BBC交響楽団、
ブリン・ターフェル(バス=バリトン )他
録音:1994年9月 ロイヤル・アルバートホール


(併録されているラスト・ナイトのプログラム曲:「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565 (バッハ / ヘンリー・ウッド編曲 ) 」、「ベルシャザールの饗宴 (ウォルトン ) 」、「マリンバ・スピリチュアル (三木稔 ) 」、「タイスの瞑想曲 (マスネ ) 」、「イギリスの海の歌による幻想曲 (ウッド ) 」、「ルール・ブリタニア! (アーン / サージェント編曲 ) 」、「エルサレム (パリー / エルガー編曲 ) ~ 蛍の光 」
Teldec ワーナー・ミュージック・ジャパン(WPCS-11150)

■ アニメ「スヌーピー」に、「威風堂々」登場!
 
 ・・・そう言えば CBS - TVのピーナッツ・アニメで 1967年6月に放送されたYou’re In Love, Charlie Brown「恋してるんだね、チャーリー・ブラウン(邦題 : スヌーピー、恋はつらいね ) 」で、この中で エルガーの「威風堂々」が登場した魅力的なシーンがありました。
 物語は、夏休み前の(アメリカでは学期末にも当たる )最後の二日間、主人公のチャーリー・ブラウンが 憧れの赤毛の女の子に自分の好意を告白しようと必死になると言うストーリーで、観ていて切なくなるほどのドラマでした。
 この回の ヴィンス・ガラルディが作曲したオリジナルのワルツが放つ甘酸っぱい香りも決して忘れられませんが、これは また次の機会に触れることにして・・・、エルガーが登場するのは このシーンでした。
 from TV 「Youre in Love,Charlie Brown」
 チャーリー・ブラウンが帰宅すると 妹のサリーが「幼稚園の卒園式の練習 」と称して 「威風堂々 」第1番トリオの部分をL.P.レコードでかけながら 大真面目で部屋の中を行ったり来たりと行進しています。英米の学校の卒業式では 房つきの角帽とフードつきのマント「リゲイリア regalia 」という服装を着用しますが、きちんと その扮装をまとったサリーが歩き回るこのシーン、実に可愛らしいです。
 「威風堂々 」は、今では日本の学校の卒業式などでも「卒業生入場 」のB.G.M.として使用されるようになりましたが、もともとはエルガーが1905年 エール大学の音楽博士号を授与された年に 同大学の卒業式で使用されたことによって習慣となり、広まったものとされています。
 しかしエルガーのレコードを鳴らしているだけで、サリー卒園式「ごっこ」さえも 見事に 厳粛な式典のリアリティを持ち得ていることに、このアニメーションを初めて観た時には 発起人、心底唸ってしまいました。

■ 行進曲「威風堂々」第6番(?) 

 管弦楽のための行進曲集「威風堂々」、エルガー自身が生前完成させた作品は全部で5曲(最も晩年の1930年に完成されたのが第5番 ハ長調 )でしたが、何と これに もう一曲、作曲者の遺稿から発見された未完成の「第6番 ト短調 」が存在するそうです。
 これは、同じくエルガーの未完成作品「交響曲第3番 」も補筆した実績を持つアンソニー・ペイン Anthony Payne によって 近年復元され、2006年8月(第26回BBCプロムス会場で )やはり アンドルー・デイヴィス指揮BBC交響楽団によって初演されました。
 本日 最後に、“ スケルツォ倶楽部発起人 の手持ちのCDをご紹介して 今宵は お別れです。
 「威風堂々」第6番
エルガー : 行進曲「威風堂々 」第6番 世界初録音
(併録曲 : 交響曲第3番 Op.88、「過ぎ去りし あまた誠の王女たち 」 )
収録曲は 三曲ともすべてアンソニー・ペインの補筆版に拠るものです
リチャード・ヒコックス 指揮 Richard Hickox
BBC ナショナル・オーケストラ・オヴ・ウェールズBBC National Orchestra of Wales
海外盤 Chandos(CHSA-5057 )


 A.ペインによるエルガーの未完成作品の復元作業を これ一枚で聴くことができる(!)という、たいへん興味深いディスクなのですが・・・ 困難にして精緻な仕事を仕上げてくださった ペイン氏による仕事の素晴らしさはともかく、「威風堂々」もさすがに第1番の あの突出した素晴らしさと比べてしまうと、この第6番の「名曲度」や「歴史に残る可能性 」etc. について、今は ノー・コメント とさせておいてください。

次回 シュローダー、ベートーヴェンの「悲愴 」を弾く・・・ に続く

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コメント

のり2 さま

お便り ありがとうございます!
さすが のり2さま、「威風堂々“第6番” 」の歴史的な本邦初演(!)のコンサートを お聴きになられていたんですね v-14
きっとエルガー自身、あまりにも出来すぎだった“第1番”を 初っ端(しょっぱな)に放ってしまったので、その後 期待された大きなプレッシャーを はね返すことは やはり難しかった - ということでしょうね。

ご次男さまが 吹奏楽部に在籍なされていたとは 素敵なこと!
きっと 名曲と共に彩られた、良い思い出をたくさんお持ちでしょうね。

URL | “スケルツォ倶楽部” 発起人 ID:-

お久しぶりです。♪

“Pomp and Circumstance ”
これに比肩し得るような音楽作品・・・
どれも素晴らしい名曲ですね、小生も共感です。(笑)

”威風堂々” まさしく名訳ですね。第1番以外は全くの亜流の存在で
第6番もコンサートで日本初演(大友&東響)を聴きましたが第1番に
比べようも無い感じでした。
むしろ二男が中学の吹奏楽部でこの曲の演奏でシンバルを担当
間違えないかハラハラ・ドキドキして聴いたことが懐かしい思い出です。

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