スケルツォ倶楽部 Club Scherzo
「アフター・シュトラウス & “ バイ・シュトラウス ”」
After-Strauss & “By Strauss”
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(18)1940年 フランシス・プーランク 
   歌曲 「愛の小径(こみち ) 」


1940年  ドイツ軍、パリ占領。
1940年  フランシス・プーランク 歌曲 「愛の小径 Les Chemins De L'Amour - Valse Chantee 」 
ピアノに向かうプーランク  愛の小径_シュトゥッツマン(RCA)盤.
(左)ピアノに向かう プーランク
(右)シュトゥッツマン(RCA)盤の表紙


ナタリー・シュトゥッツマン ( コントラルト ) Nathalie Stutzmann 
インゲル・ゼーデルグレン ( ピアノ) Inger Södergren

併録曲 : 「平凡な話 ( 5曲 ) 」、「村人達の歌( 6曲 ) 」、「偽りの婚約 ( 6曲 ) 」、「画家の仕事 ( 7曲 ) 」、「平和への祈り 」、アポリネールとベリの詩による2つのメロディ「はつかねずみ 」「雲 」、「この優しい顔」、「心に支配される手」、「モンパルナス」、「ギターに寄せて」、アラゴンの詩による2つのメロディ「C(セー)」「雅やかな宴 」
BMG-RCA(BVCC-34014 )
録音:1998年6月3~8日 ザントハウゼン

 第一次大戦後フランスにおける歌曲作家の中で最重要な存在のひとりが、フランシス・ジャン・マルセル・プーランク Francis Jean Marcel Poulenc(1899-1963)です。
 音楽は 「失った過去の愛への惜別 」を表現する旋律( 00:13 ~ )を短調で、「過去の懐かしい愛を思い出として心に刻み生きてゆきたい 」と歌うリフレイン部分のワルツの旋律( 01:02 ~ )を長調で - というように、二つの相反するメロディの相互作用によって それは まるで日向(ひなた)と日影の間を行き交うように効果的です。
 このワルツが作曲された当時、ナチス・ドイツの占領下にあった フランスの首都「パリ」を 歌詞の中の「 」という言葉に 置き換えて読んでみれば、そこに 祖国を愛するフランス人としての深い象徴性があることに気づかされます。
 
 “スケルツォ倶楽部 ”発起人、オススメの1枚は やはり ナタリー・シュトゥッツマン盤ですね。
 いろいろ聴き比べた結果、私の主観的感覚では この歌曲には 絶対に低域の女声が合っていると思うのです。ドイツ・リートを得意なレパートリーとする世界的なコントラルト歌手シュトゥッツマンは、母国フランスの作曲家たち - ドビュッシー、ラヴェル、フォーレ、ショーソン - の歌曲作品に取り組んで 安定した成果を収めてきましたが、これは そんな彼女が満を持してプーランク作品に取り組んだ 意欲的なアルバム「モンパルナス Montparnasse 」からの一曲です。
 静かに目を閉じ、シュトゥッツマンの低音域の深い声を聴いていると、高級家具などの素材として重用される黒檀のような落ち着いた渋い輝きを連想してしまいます。
 そのわかりやすい旋律がマイナーからメジャーへと転調する瞬間は、あたかも花が開くような美しさですが、意外なことに その旋律線は R.シュトラウスの楽劇「ばらの騎士に登場するオックス男爵「例の 」ワルツのメロディにたいへんよく似ているのです。一度 ぜひお聴き比べください。
 また脱線しますが、R.シュトラウス自身も この「オックス男爵ワルツ 」のメロディが ヨーゼフ・シュトラウスのワルツ「ディナミーデン(1865年初演) 」から拝借したことを認めていた(!)という裏話も有名ですよね。

 ・・・もとい。
 さて、この美しいシャンソン=ワルツ愛の小径 Les Chemins De L'Amour - Valse Chantee 」は もともと芝居の劇中歌で、これを舞台で歌ってもらうことを想定しながらプーランクが作曲したオリジナル創唱歌手であるイヴォンヌ・プランタン Yvonne Printemps( 劇作家サッシャ・ギトリーや名優ピエール・フレネーの妻でもあった大女優 ) - 彼女自身の歌唱によって 初演の翌(1941)年に録音された 貴重な音源が残っています。

愛の小径_イヴォンヌ・プランタン(Pearl)盤 Yvonne Printemps
イヴォンヌ・プランタン Yvonne Printemps “ La Saison d'Amour ”
収録曲 1. Le Pot-Pourri D'Alain Gerbault、2. C'est Estelle Et Veronique~ Duo De L'Escarpqlette ~ Duetto De L'ane(ジャック・ジャンセンとのデュエット ) ~ Adieu Je Pars、 3. Viens S'il Est Vrai、4. Dites-Lui、5. Air De La Lettre、6. Air des adieux、7. C'est La Saison d'Amour、8. Je T'Aime、9. C'est Le Destin Peut-Etre、10. Je Ne Suis Pas Que L'On Pense、11. Sourire Aux Levres、12. Air De Cartes De Visite、13. Printemps、14. Les Chemins De L'Amour、15. Plaisir D'Amour(マルティーニ「愛の喜び」 )、16. Au Claire De La Lune、17. Goodbye, Little Dream, Goodbye、18. I'll Follow My Secret Heart
録音(HMV):1929年、1931年、1934年、1937年、1940年
復刻盤:Pearl( GEMM CD 9158 )

 伝説のチャーミング・ヴォイス、イヴォンヌ・プランタンが 実際にはどんな声で歌っていたのか、やっと音源のディスクを(最近)入手しましたが、自分で勝手に膨らませた期待が大き過ぎたせいもあるのでしょう、最初 再生して聴き始めたところ、その音質には正直 軽い失望を感じました。何故、古いS.P.音源から聴こえてくる歌手( 特に女声 )は 皆 鼻が詰まって震えるような声で再生されてしまうのでしょうか。
 しかし 徐々に聴き進めるうち、当時の貧弱なマイクロフォンでは拾えずに落とされてしまったイヴォンヌ・プランタン自身の声が発する幾多の情報を、私の耳が自分の想像力で勝手に補い始めました。そしてディスクの最後を飾る「I'll Follow My Secret Heart 」において ノエル・カワード Noël Coward( 1899 – 1973 )と共演した録音を聴き終える頃までには、この20世紀前半のフランスを代表する女優の歌唱にすっかり魅せられてしまっていました。
 1曲めの「ポ・プリ Le Pot-Pourri D'Alain Gerbault 」ではイヴォンヌ・プランタンの様々な異なるスタイルの歌唱が聴けますが、プッチーニのアリア「ある晴れた日」まで登場します。ドラマティックな個所でも表現力に過不足ない上、基本的に声質が柔らかいので、聴くほどに親しみが増します。
 第2曲目の「 Duetto De L'ane 」では 当時の代表的なペレアス歌手として知られた名バリトン、ジャック・ジャンセン Jacques Jansen( 1913-2002 )と組んで、何とオッフェンバックにも似たスタイルの軽いオペレッタ風のナンバーで 息もぴったりの二重唱を聴かせてくれます。
 第5曲目「 Air De La Lettre 」、同じく6曲目「 Air des adieux 」 - これは 初めて聴くアリアでしたが、実はプランタンの夫だったギトリー(脚本)と 名歌曲「私の詩に翼があったら」で有名なレイナルド・アーン(作曲)とのコンビによる「モーツァルト(1925年) 」というタイトルの 極めて珍しい音楽劇の中からのアリアで、初演の舞台では プランタンが主人公でズボン役の若きモーツァルトに扮して歌ったのだそうですね。たいへん興味深い 貴重な録音と思います。
 ジョルジュ・オーリック Georges Auric( 1899 – 1983 )による、繊細なハープと木管だけによる、プランタン自身の名を冠した「 Printemps 」( ディスクの13番目に収録 )は、短くも美しい一曲。恍惚とします。

■ フランスのシャンソン=ワルツ、その後・・・
 プーランクシャンソン=ワルツの系譜は、サティ、もしくは彼と同時期にその源流を発しています。
 その流れは、同じフランス六人組の仲間だった 上記 オーリックへと受け継がれます。オーリックジャン・コクトーに誘われて映画音楽への道を選び、オードリー・ヘプバーン が初主演した 名画「ローマの休日 」で音楽を担当していたことは サントラ盤が存在しないために 多分 あまり知られてはいませんが、さらに後に 彼は ロートレックの生涯を描いたイギリス映画「赤い風車(1952年製作 )」の有名な主題曲「ムーラン・ルージュの唄 (これもワルツ! ) 」を作曲、こちらは 大ヒットを放つことになります。
 戦後のシャンソンにも、ワルツのリズムは しっかりと生き残ってゆくのでした。
 ジョルジュ・オーリック Georges Auric 1899-1983) 映画「赤い風車」( <strong>オーリック</strong>音楽) 
 (左)ジョルジュ・オーリック Georges Auric
 (右)ロートレックを主人公に描いた 映画「赤い風車 ムーラン・ルージュ 」(オーリック 音楽 )

1941年  ウィーンフィル 最初のニューイヤーコンサート、
      初代指揮者は クレメンス・クラウス (~1945年)。
      日ソ中立条約。
      日本軍、真珠湾を奇襲、太平洋戦争(~1945年)。  
      連合国の結束、大西洋憲章。
      ドイツ軍、ソ連へ侵攻。     
      レールモントフ 戯曲「仮面舞踏会」、ハチャトゥリアンの劇音楽により再演。
・・・に続く

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