本記事は、1月22日の 「人気記事ジャズ ランキング」 で 第1位となりました。
皆さまのおかげです、これからも 何卒よろしくお願い申し上げます。

Getz Children Of The World (CBSソニー 25AP-1696 ) スケルツォ倶楽部 ⇒ 全記事 一覧は こちら
午後のジャズ喫茶 「カフェ ソッ・ピーナ」から
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「鏡の国のマイルス・デイヴィス 」
鏡の国のマイルス_肖像(「パンゲア」より) 対称形(2) 鏡の国のマイルス_肖像(「アガルタ」より)

 お久しぶり。 スケルツォ倶楽部“発起人” 妻 のコーナーです。
 先月(12月 )は、週3回のパートの他に 実家の両親の都合で 自宅との間を何度も往復せねばならず、それだけでも忙しかったとゆーのに 夫の創作ノヴェル「サンタクロース物語」の校正やアップ作業も手伝わされ( シンガーズ・アンリミテッドジェイムス・テイラーマンハッタン・トランスファー などの記事部分は お察しのとおり! わたしの分担でした。 )・・・で、結局 自分の時間が全くなくなり、お気に入りの喫茶店「ソッ・ピーナ」にも行けず、結果的に 本ブログ更新も滞っておりました。スミマセン。

ジャズ喫茶「ソッ・ピーナ」とは
 わたしの自宅から徒歩10分ほどの近距離、公園のそばに建つオレンジ色の雑居ビル2階にあり、ホールの壁一面は明るいガラス張りなので「ジャズ喫茶らしくない」健全な内装が特徴です。
 音楽オタクで 独身の二代目マスターが選んでくれる ジャズ や ジャズ周辺 の ディスク を、先代オーナーから伝承の巨大なオーディオ・セットで 思いきり大音量で聴かせてもらってストレスを発散しつつ、ときどき美味しい(?)コーヒーと一緒に マスターが爆発させるウンチク話を聞かされるので またストレスをもらって帰ってきてしまう、と まあそんな感じです。

 さあ、今日は一体どんな音楽がかかっているのかしら? と、小さな胸をわくわくさせながら 外の寒い階段を登ってゆくと、その踊り場の辺りから もうすでにお店から漏れてくる音楽が聴こえてきます。 ・・・ あ、この曲 知ってる! えーと、何だっけ。
 この心地良いエイト・ビートのリズム、シンプルながら ワン・コーラス終える度にドンドン派手なフィル・インを叩きまくるドラムスは 若きトニー・ウィリアムスに違いありません。放っておけばファンキーなフレーズを飛び散らせてしまうので 懸命に抑え込みにかかるエレクトリック・フェンダー・ローズの音は、まさか もしやの ハービー・ハンコック・・・。
 ということは そうそう、これは「スタッフ」! おーっと、同名のグループのほうじゃありませんよ、もちろん そっちも大好きですが、この音楽は「 マイルス・デイヴィスの“ スタッフ ” 」ですね。 

Miles in the Sky_マイルス・イン・ザ・スカイ
マイルス・イン・ザ・スカイ Miles In The Sky
 収録曲 : 「スタッフ 」、「パラフェルナリア 」、
       「ブラック・コメディ 」、「カントリー・サン 」
 マイルス・デイヴィス(トランペット )
 ウェイン・ショーター(テナー・サックス )
 ハービー・ハンコック(ピアノ、エレクトリック・ピアノ )
 ロン・カーター(ベース )
 トニー・ウィリアムス(ドラムス )
 ジョージ・ベンソン(ギター ) 
 録音:1968年1月16日、5月15、16、17日


わたし  「マスター、新年最初の挨拶よ、明けまして おめでとう! 去年 新しく替えたトースターの調子どう? 」
マスター 「あ、奥サン。いらっしゃいませ、今年もどうぞよろしく。・・・トースターですか? いやー、せっかく買ってきたのに 出番激減ですよ。何たって ほら、あの日以来 常連さんが みんな メニューに載せてもいない フレンチトーストばかり注文するようになっちゃって・・・ (詳しくは 前回の記事 ⇒ 「トースター壊れる」を ご参照 ) 」
わたし  「マスター、わたしのレシピで フレンチ・トースト 焼けるようになったのね(忍び笑い) 」
マスター 「卵に牛乳、マーガリンにメイプル・シロップって、コストばかりかかって 利益にならないんですよね 」
わたし  「(小声で)なに経営者ぶったこと言ってんのかしら、ただのジャズヲタのくせに。 ・・・ところで マスター、この格好良い音楽、“イン・ナ・サイレント・ウェイ ”が録音される前のマイルス・デイヴィスの演奏よね。このお店でマイルスのCDがかかるのって、珍しくない ? 」
マスター 「そうなんです。いくら マイルスが好きだと言っても 店で聴いて自宅に帰ってからも聴いて、それで聴き飽きてしまったら悲しいですからね、できるだけ 店ではかけないようにと思って、セーブしてきたんです 」
わたし  「そうだったの、エライわね。でも そんなマスターが お店で“マイルス・イン・ザ・スカイ”を 今 聴いてるのは なぜ ? 」
マスター 「昔からずーっと疑問に思ってきたことが、最近ようやく解ったような気がしているんですよ。そう思ったら どうしても確かめたくなっちゃって、60年代の黄金クインテット マイルスウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、ロン・カーター & トニー・ウィリアムス - の諸作から70年代の“ 2枚組アルバム時代 ”まで 聴き直してみているんですが、うーん・・・誰かに説明すれば 考えも まとまるかもしれないな - 」
わたし 「じゃ それを、マスター、わたしに説明してご覧なさいよ 」
マスター 「それでは - 」( 以下、「ソッ・ピーナ」マスターのおはなし )

 「鏡の仕掛け 」
マイルスのアルバムには、隠された 不思議なシンメトリーがある(?)


Miles Smiles_マイルス・スマイルズ
マイルス・スマイルズ Miles Smiles
録音:1966年10月
 

 最初に 何となく気になりだしたアルバムが・・・コレでした。
 「マイルス・イン・ザ・スカイ」と同じ演奏者 - 黄金の60年代クインテットによるスタジオ録音盤、とにかく格好良い名演「フリーダム・ジャズ・ダンス Freedom Jazz Dance」、「ジンジャー・ブレッド・ボーイ Ginger Bread Boy」、ウェイン・ショーターの名曲「フットプリンツ Footprints」、「ドロレス Dolores 」などを収録した名盤です。
 当時ステージでは 聴衆に決して笑顔を見せることのなかったマイルスの珍しい「笑顔」をジャケットにした一枚でしたが、そのタイトル「マイルス・スマイルズ Miles Smiles 」も ただの語呂合わせ程度だと思っていました。しかし このアルバムのタイトル名は、「Smiles」の「S」を 中心に据えて 二つの「Miles(miles)」が 並進操作における連続的対称の関係にある、と考えることができます。
 この後も、マイルスのアルバムにおける「鏡の仕掛け」は、手を変え 品を変え 延々と続くこととなります。
 で、次は この2枚の名盤です。クラヲタの皆さんにも 受け入れられる高いクォリティではないでしょうか。

Sorcerer_ソーサラー Nefertiti ネフェルティティ
(左)ソーサラー Sorcerer
(右)ネフェルティティ Nefertiti
録音:1967年5月(ソーサラー)、
    同年6月~7月(ネフェルティティ)
 
 マイルスは、この2枚のアルバムを あまり間隔を置かず 一気に録音しています。
 2枚は、演奏メンバー(黄金の60年代クインテット)は もちろんのこと、基本的なサウンド・コンセプトも 互いに近似しており、オリジナル作品中心という方向性も似ています。
 ジャケットも「ソーサラー 」の表紙は マイルスの当時の恋人( かなり後に4番目? の妻となる シシリー・タイソン )の横顔。 「ネフェルティティ 」の表紙は マイルス自身の横顔。
 この2枚を並べて置いてみると、まるで対幅の絵のようです。
 憶測になりますが、これらは 本来2枚組セットでリリースされるべきアルバムだったのが、何らかの事情によって Wアルバムには出来なかったのではないでしょうか。少なくともプロデューサーのテオ・マセロは、きっと2枚組アルバムとしてリリースしたかったのではないでしょうか・・・ と、そう思いたくなるほど 両作品には とても似た雰囲気があります。
 もし 仮に この2枚のL.P.が、Wセットの見開きジャケットに収められていたら・・・と想像してみるのは楽しいです、ちょうど中央に位置することになるナンバーが、ボブ・ドロー Bob Dorough のヴォーカル曲、あの「ナッシング・ライク・ユー Nothing Like You 」( これ1曲だけ1962年の古い音源 )だから・・・です。
 アルバム「ソーサラー」のラストを飾る一曲「ナッシング・ライク・ユー Nothing Like You 」 - 誰もが首をひねる、この奇妙なカップリング - ですが、穿(うが)った視点で見ると、まるでのような存在として これを センターに配置することによって 二つのアルバムは 見事にシンメトリカルな構図を成立させるではありませんか。ひょっとして「ナッシング・ライク・ユー 」の存在理由とは、こだわりのプロデューサー氏の、そんな思いつき程度(?)の発想からだったのではないでしょうか。
 ⇒ ナッシング・ライク・ユー Nothing Like You 」 について、さらに考える。
 
 また(さらに考え過ぎかもしれませんが )、実は この L.P.2枚とも ステレオ・スピーカーの前できちんと聴いてみると、リズム楽器の定位ドラムスが左寄り、ピアノが右寄り )は、従来これ以前のマイルス・コンボのステレオ・レコード( 1959年の 「カインド・オブ・ブルー 」 から1966年の 「マイルス・スマイルズ 」に至るまで )の定位置ドラムスを右寄り、ピアノを左寄り )とは真逆に定位されていることにも、これら2枚のアルバムに 何らかの共通した意図( 「音の鏡 」? )があったことを 疑わせるのに充分です。
 注:但し、1998年にリリースされたCDセット 『 1960年代 黄金のクインテットの全貌 コンプリート・スタジオ・レコーディングBox( ↓写真:SRCS-8575~80) 』においては、
黄金の60年代クインテット・コンプリート・ボックス(Sony)6枚組
・・・収録したすべての音源を おそらく基本的に統一して定位させることが目的だったのでしょう、その真意は不明ですが、ドラムスの位置は右へピアノは左へ と、修正されています。と言っても、単純にL-Rの位相逆転というわけでもないようなので、この辺りは ご注意ください )。

Miles in the Sky_マイルス・イン・ザ・スカイ
マイルス・イン・ザ・スカイ Miles In The Sky
録音:1968年1月16日、5月15、16、17日
 
 そして 次が 「ソッ・ピーナ」の店内で 今も流れている このレコード
 60年代 黄金クインテットのメンバーに、A面2曲目「パラフェルナリア 」にのみ 若きジョージ・ベンソンがエレクトリック・ギターで参加し、あたかも ツヤ消ししたような渋い音色で リズムを刻んでいます。
 この不思議なカヴァー・アートを手掛けた画家はヴィクター・アトキンス Victor Atkins (同名の白人ジャズ・ピアニストもいるようですが、同じ人かどうかは不明 )ですが、初めてレコードを手にした時は 一体何が描かれた絵なんだか 全く解らなかったものです。しかし・・・ 

≪ 以下、ネタばれに ご注意 ≫
 
 ひょっとして これも シンメトリカルな「鏡の仕掛け 」では? と気づいたら、意外にあっさりと正解が出ました。
 ↓ こちらの 絵の輪郭に ご注目ください。
Miles in the Sky 顔(?)の輪郭 ネフェルティティ 顔の輪郭
(左 ) 「マイルス・イン・ザ・スカイ 」の片側の輪郭
(右 ) 「ネフェルティティ 」のマイルスの横顔
 
 ほら・・・これ、何と マイルスの横顔のシルエットをイラスト化して、 線対称で反対側へ開いてみせたデザインだったのですよ。
▼ はい、こうなります。
ネフェルティティ 顔の輪郭ネフェルティティのマイルスを さらに反転

 これが 答えだ !  って、スケルツォ倶楽部 発起人の妻、真っ先に 手を挙げます。
 見慣れたジャケットデザインなのに - っていうか、見慣れたデザインだからこそ? - というべきか、長い間 ずっと気づきませんでしたし、それ以前に 考えてみたことさえありませんでしたよ。

 んー、なんか乗ってきましたね! では 次のアルバム・ジャケットを ・・・

Filles de Kilimanjaro_キリマンジャロの娘
キリマンジャロの娘  Filles De Kilimanjaro
録音:1968年6月、9月
 
 
 ここでの仕掛けは 言うまでもなく、一目瞭然。
 1968年9月 - ということは この録音と同時期に 42歳のマイルスと結婚したばかりの 当時23歳(!)の 若きベティ・メイブリー( = ベティ・デイヴィス・・・といっても 映画「イヴの総て 」や「八月の鯨 」で有名な 同じ名前のアカデミー賞女優では もちろんないです。念のため )の 二重映しになっているダブルの肖像写真でした。 - こちらは 解りやすいですね。
 黄金の60年代クインテット・メンバーにも そろそろ若干の異動がみられます。フェンダー・ローズ・エレクトリック・ピアノで参加のチック・コリアハービー・ハンコックの、ベースのデイヴ・ホランドロン・カーターの、それぞれ代わりを務めたプレイ2曲、収録されています。
 はい、その次は これも ジャズ史に刻印を残した名盤です。

In A Silent Way_イン・ナ・サイレント・ウェイ
イン・ナ・サイレント・ウェイ In A Silent Way
録音:1969年2月18日
 
 マイルス以下、黄金のクインテットから ハービー・ハンコック(エレクトリック・ピアノ)、トニー・ウィリアムス(ドラムス)、ウェイン・ショーター(ソプラノ・サックス)と この後 ウェザー・リポートを結成するジョー・ザヴィヌル(キーボード)、リターン・トゥ・フォーエヴァーチック・コリア(エレクトリック・ピアノ)、マハヴィシュヌ・オーケストラジョン・マクラフリン(エレクトリック・ギター)、そして 名手デイヴ・ホランド(ベース) - という 超豪華メンバーが揃いました。
 ここでの「鏡の仕掛け 」は、実は ジャケット・デザインには ありません。
 これは アルバムの音楽を 全部聴かないと わからないようになってるんです - と言っても、中山康樹氏がその執念と渾身の著作「マイルスを聴け!」の中で指摘するまでは、殆ど誰も気づいていなかった・・・ いえ、たとえ気づいた人がいたとしても きっと「いや、まさか。そんなの あり得まい 」と自分自身の気づきを 誰しも否定したに違いない、そんな「コロンブスの卵 」のような仕掛けだったのです・・・。
≪ 以下、ネタばれにご注意 ≫

 ・・・それは、素晴らしい B面の全てを占める「イン・ナ・サイレント・ウェイ In A Silent Way」 → 「イッツ・アバウト・ザット・タイム It's About That Time 」 → 再び「イン・ナ・サイレント・ウェイ」という秀逸なメドレーの中にあります。
 まるでクラシック音楽の三部形式にも似たシンメトリカルな構成は、クールであるのに素晴らしく優雅でダンサブルな「イッツ・アバウト・ザット・タイム」という美味しい具を、ウィーン出身のジョー・サヴィヌル作曲の「イン・ナ・サイレント・ウェイ 」という静寂のパンで 前後を挟んでサンドイッチに仕上げたもの。しかし、このパンの部分 - 最初と最後に登場する「イン・ナ・サイレント・ウェイ 」を、マイルスのグループは スタジオで二度演奏したわけではなかったのです。なぜなら、それらは 同じ音源(テープ )を そのまま切って貼っただけだったから(!)なのでした。 ・・・絶句
 
 さて ここから以降、次からが いよいよ「2枚組アルバム 」時代に 突入です。

Bitches Brew_ビッチズ・ブルー
ビッチズ・ブルー Bitches Brew
録音:1969年8月19、20、21日
 
 ジャズ=フュージョン史に燦然と輝く超名盤2枚組の Wジャケットです。デザイン的には 夜と昼 - なのでしょうか。
 音楽の中身については、またいずれ 機会を設けて 詳しく語りたいです。

Miles at Fillmore_アット・フィルモア
マイルス・アット・フィルモア Miles Davis At Fillmore
録音:1970年6月17~20日
 
 ロックの殿堂フィルモア・イーストにおけるマイルス・グループの4日間 - 水曜日、木曜日、出色の金曜日、そして土曜日 - の実況録音を マテリアルとして、 2枚組LP( = つまり四面 )に それぞれ一晩ずつ 演奏の抜粋が レコードの片面一面に配され編集の上 収まった、他に類例を見ない 特殊なライヴ盤です。
 これは、4日間の公演L.P.2枚 = 四面均等に収めるという発想が シンメトリカルなアイデアです。

 ・・・そういえば、マイルスの過去ライヴ・アルバムの名盤は 以下に掲載の諸作のように、オリジナル・リリース時には 2枚ずつ 分けて発売されることが多かったのでした。
 なぜ 最初から2枚組で出さなかったんでしょうね(・・・って、今だから言えるということも ありますが – )。

ブラック・ホーク(金曜日 ) ブラック・ホーク(土曜日 )
(左から)金曜日(4月21日 )土曜日(4月22日 )
アット・ザ・ブラック・ホーク Miles Davis In Person At The Blackhawk
録音:1961年 サンフランシスコ


MyFunny Valentin_マイ・ファニー・ヴァレンタイン “Four”  More_“フォア” アンド・モア
(左 )マイ・ファニー・ヴァレンタイン
(右 )“フォア ”アンド・モア
録音:1964年2月12日 ニューヨーク、リンカーン・センター


プラグドニッケルVol.1 プラグドニッケルVol.2
ライヴ・アット・ザ・プラグド・ニッケル Live At The Plugged Nickel
(左 )Vol.1
(右 )Vol.2
録音:1965年12月22~23日、シカゴ


 これら、過去のライヴ・アルバムの制作に関わっていたのも「マイルス・スマイルズ」以来のプロデューサー、才人テオ・マセロでした。
テオ・マセロ 肖像写真 後年のテオ・マセロ Teo Macero

 うーん、どうやら テオ・マセロ重要な鍵を握っている様子。
 この件については また後ほど 触れましょう。

 ・・・もとい。
 話題を もとの70年代アルバムのシンメトリーへと戻すことに。

Live‐Evil_ライヴ‐イヴル
ライヴ・イーヴル Live Evil
録音:1970年、ワシントン
 
 セラー・ドア におけるライヴ音源 スタジオ録音と交互に聴ける、これもまた おもしろく編集されたアルバムです。
 ここでの「鏡の仕掛け 」は、2枚組アルバムである、という自明の点以外には その奇抜なタイトルに注目でしょう。「 Live Evil 」とは、「Live」とコレを逆さまから読んだ「 Evil 」を並置したもの。スタジオ録音の曲には「ジェミニ Gemini(= 双子座 )ダブル・イメージ Double Image 」というタイトルの作品も含まれています( マイルス自身の星座が、二面性が魅力の双子座です )。
 Selim、Sivad などに至っては もはや言うまでもなく。死と繁殖、という相反するテーマを 内包するコンセプトも アルバムのイメージづくりに一役買っています。
  やはりライヴ音源が圧倒的に素晴らしい聴きものとなっています。特に 若きキース・ジャレットが 雄叫びを上げながら 憑かれたように鍵盤を叩きまくる フェンダー・ローズ・エレクトリック・ピアノの 熱いソロ演奏 - んもー圧巻です。もしも キースジャレットといえば「ケルン・コンサート」しか聴いたことない、という幸運なクラヲタさんがいらっしゃったら、このプレイを 一度聴いて ぜひ 腰を抜かしましょう。

On the Corner_オン・ザ・コ-ナー
オン・ザ・コーナー On The Corner
録音:1972年6月1日、6日 ニューヨーク
 
 もはや ジャズではありません。
 冒頭の 敢えて徹底的なまでにメカニカルなリズムは もう少し時期が後だったら 絶対にリズム・ボックスを使用していた筈、無機質なテクノを遥かに先取りしています。傑作「ブラック・サテン 」の 凄まじいまでの熱狂が大好き。
 ところで、70年代のマイルス「2枚組アルバム 」時代にありながら、この「オン・ザ・コーナー 」だけは 珍しく シングル(1枚)リリースのLPでした。
 けれど、パッケージは 同時期の 他の2枚組アルバムと同様、見開きのWジャケットになってます(写真をご参照 )。
 ・・・そこが、今回の仕掛け なのです。
 これは、実は「架空の2枚組レコード 」だったのではないでしょうか。
 レコード・プロデューサー氏が、ここで 洒落(しゃれ )てみせます!
 1枚目は「オン・ザ・コーナー 」ですが、架空の2枚目とは 裏ジャケットのイラストにあるとおり、電化トランペットのプラグを抜いた 「“オフ ”ザ・コーナー Off The Corner 」 (!)だったのです。

Get Up With It_ゲット・アップ・ウィズ・イット
ゲット・アップ・ウィズ・イット Get Up With It
録音:1970~1974年
 

 今回のジャケットには、凝った仕掛け というほどのものは 感じられないようですが、どうでしょう。
 マイルスの 同じポートレートを 裏ジャケットにも配した2枚組です。
 これは 70年代マイルスの オリジナル・スタジオ・アルバムとしては最後の作品となった傑作レコード。当時亡くなった、偉大なジャズ史のコンポーザー、デューク・エリントンに捧げられたアルバムとして知られています。
・・・でも 正直なところ、その追悼曲「ヒー・ラヴド・ヒム・マッドリー He Loved Him Madly 」は個人的に あまり思い入れはなく、本当に好きな曲は セヴンス・コードで気持ち良くリズムを刻むギターにフルートも美しい「マイシャ Maiysha 」だったり、ブ厚いブラス・セクションに コーネル・デュプリー(エレクトリック・ギター )やバーナード・パーディ(ドラムス)まで参加した「レッド・チャイナ・ブルース Red China Blues 」だったりするのです( すみません )。

Agharta_アガルタ
(上 ) 「アガルタ Agharta 」(同日 昼の公演 )
(下 ) 「パンゲア Pangaea 」(同日 夜の公演 ) 

Pangea_パンゲア
録音:1975年2月1日 大阪 フェスティヴァル・ホール 
 マイルスが いよいよ(一時的ながら)隠退してしまう1975年、その最後に発表されたオフィシャル・ライヴ盤。日本(大阪)公演における 同じ日の昼と夜の2ステージを、それそれ2枚組セットに分けて収めたアルバムでした。
 シンメトリカルな仕掛け に凝ってきたプロデューサー氏の技巧も ここに極まった感があります。
パンゲア」の - 特に後半の - まったく予期出来ぬスペイシーなグループ・インプロヴィゼーションと そのライヴ展開の素晴らしさには、何度聴いても アタマ吹き飛ばされます。

■ もうひとりのマイルス(?)「テオ・マセロ 」の存在
 マイルスとテオ・マセロ(右) スタジオのマイルステオ・マセロ(右)

 マイルスのCBSコロムビア時代のアルバムを語る時、極めてクリエイティヴな名プロデューサーで ミュージシャンでもあった才人テオ・マセロ Teo Macero (1925 – 2008 )の存在を 忘れることは出来ません。
 マイルスとのコラボレーションについて、テオ・マセロ自身の発言が残っています。
マイルスは演奏をするだけ。彼は、自分が演(や)りたいことを演れば、スタジオを去ってしまう。そのままの形では作品にならないから、私(テオ・マセロ)がマイルスのイメージを考えながら あとに残った録音を編集して アルバムとして仕上げ、完成させている
 マイルス自身もそれを認め、テオ・マセロ には 全面的な信頼 - とまではいかなかったようですが、それでも 自分自身のアルバム制作については かなりの部分で任せきっていたのは事実でした。

 1948年にジュリアード音楽院の作曲科を修了したテオ・マセロは、CBSコロムビアのジャズ部門で活躍しました。当初は 自身でもテナー・サックスの演奏やバンドの作・編曲も行なっており 録音も残っています。
 テオ・マセロマイルスとの邂逅 - 出会いは、1956年7月、レナード・バーンスタインの監修・解説によってCBSで企画された「What Is Jazz」というアルバムにおいて でした。
Leonard Bernstein What Is Jazz_Bernstein_0002 What Is Jazz_Bernstein_0001
(左から ) バーンスタイン、「What Is Jazz」のオリジナル・ジャケット(Sony Records : FCCP-3008 )上記音源を含む「Bernstein On Jazz 」(Sony Classical SMK-60566 )
 
 このレコードでは、バーンスタインが ジャズの成立と歴史、音楽を構成する要素 - ブルーノートを含む音階、ハーモニー、メロディ、リズムや形式 - や即興演奏・編曲について、バーンスタイン自身の歌を含む豊富な実例を引用しながら わかりやすく解説し、ディスクの後半では ビクター・ヤングの「スイート・スー Sweet Sue,Just You 」を素材に、コールマン・ホーキンスのテナー・サックスを含む バック・クレイトン(のディキシー・スタイル )、ボイド・レイバーン(のスイング・スタイル )、テオ・マセロのテナー・サックスを含むドン・バターフィールド(の チコ・ハミルトン風な室内楽的スタイル )、そしてマイルスのコンボによるモダンな演奏をそれぞれ収め、それらスタイルの相違を聴き比べることが出来るのです。
 このレコードを制作時、バーンスタインのアシスタント的な役割を務めていたのが テオ・マセロ その人であり、彼は ここでマイルス・バンドが演奏した「スイート・スー」の編曲も手掛けていたのでした。これが、テオ・マセロマイルスが関わった最初の仕事でした。
 その後、彼は 1959年の名盤「スケッチズ・オブ・スペイン」から 本格的にマイルスのレコード・プロデュースを手掛けるようになり、約5年間の隠退期間を除き、その概ね良好な関係は マイルスがコロムビアを去る1980年代まで続きました。

■ はい、ここから 再び 発起人(妻)の文章に戻ります。
 
 ・・・おや、「マイルス・イン・ザ・スカイ」最後の一曲、過激な「カントリー・サン Country Son 」も いつの間にやら、終わっちゃってましたね。

わたし 「では マスター、次は ずばり 今 アナタが 一番聴きたいマイルス!」
マスター 「うーん、やっぱりアルバム『ライヴ・イーヴル』から、セラー・ドアーにおける爆演『ホワット・アイ・セイ What I Say 』ですね 」
わたし 「よーし、それ 行ってみよう! 」

Live‐Evil_ライヴ‐イヴル 表紙
 おお、マイケル・ヘンダーソンの重たいファンクなエレクトリック・ベース、狂ったように転がり回るエレクトリック・ピアノに あたかも轢かれたように絶叫するキース・ジャレット。うーん、やっぱりマイルス 格好良いなー。
 ・・・でも アイアート・モレイラのパーカッションは なくってもよかったんじゃないかなー、はっきり言って キライだな。まして 笛なんか吹かなくていいのに・・・。

 おおっと、そこへ めずらしく「ソッ・ピーナ」に お客様のご来店です!
わたし  「大変。マスター、お客さまだよ! 」
 何と、70年代のマイルス・デイヴィステオ・マセロ そっくりな男性お二人が、お店入口のカウベルを鳴らしながら 入ってくるではありませんか!
 スタジオのマイルスとテオ
 マスター、やや緊張気味な表情で お冷やとおしぼりをトレイに乗せ、テーブルへ飛んでいきます( むムっ、わたしには 今日も出し忘れてるくせに )。

マスター 「い、いらっしゃいませ。よいお天気ですね 」
マイルス似 「So What? それが何か 」
マスター 「えーと、オーダーを どうぞ 」
マイルス似 「オレは キリマンジャロを頼む、ブラックでな 」
マスター 「はい、かしこまりました。お隣の お連れさまは - 」
テオ・マセロ似 「フレンチ・トーストください 」
 100×100 絶句 by Schulz
マスター 「フレンチ・トースト・・・ 」
わたし 「 (激しく忍び笑い) 」

今回は 新年号の ワイド特集(?)
長い文章、最後まで読んでくださって ホントありがとうございます!

次の 喫茶「ソッ・ピーナ」では、
マイルスの「ソーサラー 」に収録された、謎の一曲
ナッシング・ライク・ユー 」と 歌手 ボブ・ドロー について
考えてみたりします ⇒ 次回へ続く!

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