本記事は、1月11日「 人気記事ランキング クラシック音楽鑑賞 」で 第1位 となりました。
皆さまのおかげです、これからも 何卒よろしくお願い申し上げます。


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スケルツォ倶楽部
「鉄オタクラシック 」 - 鉄道博物館と 音楽


 かつての万世橋から、現在は 埼玉県さいたま市(大宮区)に移った、鉄道博物館へ初めて お正月休みに 足を運びました。1月3日の大宮は 晴天でありました。

 鉄道博物館 のホームページ は こちら

鉄道博物館 鉄道博物館 規模の大きさにびっくり
 
 まず その規模の大きさ、広さにビックリでした。これほどの施設だったとは、 恥ずかしながら、まったく想像していませんでした。
鉄道博物館 御料車 
 今回は「走る美術館」「走る宮殿」とも呼ばれる、明治・大正・昭和 それぞれの時代の歴史的な「御料車」(天皇・皇后両陛下皇太子殿下がご乗用される車両の総称 )の特別企画展(1/16まで )も催されており、半日程度の時間では(甘かったです! )この博物館の素晴らしい全貌を知ることは とても出来ませんでした。
二階からヒストリーゾーンを望む 蒸気機関車の汽笛を聴く 
 それでも ランチタイムには中庭(?)に解放されてる車両の中へ駅弁を持ち込んで旅気分を満喫したり、ミニ運転列車体験運転シミュレーションで童心に帰ったり、転車する蒸気機関車の汽笛が大音量でヒストリーゾーン・フロア全体に轟(とどろ)くのを聴いて感動したり・・・ とても楽しんでまいりました。
 帰りの時間となり、立ち去りがたい想いを振り切って 出口へ向かおうとした直前、あ そうそう おみやげ と - ふと立ち寄ったミュージアムショップクラヲタの血が騒ぐ一品を 見つけてしまったのでした。
 
 ・・・ それが これです。
鉄オタクラシック(KKC-5580) 鉄オタクラシック_Kaiserslautern Radio Orchestra

「鉄オタクラシック 」 ~ オーケストラ曲編
   鉄道にちなんだオーケストラ曲を集めたアルバム。
   いわゆる世の「鉄道オタク」のかなりが「クラシック音楽オタク」と重複しますが、
   実音を収録した効果音CDは数多いものの、
   芸術音楽としてのアルバムは何故かこれまでありませんでした。
   そこにファン狂喜の本格的CDが登場します。
   収録されているのは名だたる大作曲家たちがオーケストラで機関車を描写したもので、大半が世界初録音。
   古くは 19世紀半ばのものから 新しいところではバーンスタイン作品まで多種多様。
   しかし各自がリアルかつユーモラスに機関車を描写していて興味津々。
   鉄オタならば超興奮で座右の盤となること間違いなし と申せましょう。

      (以上、ここの文章のみ、キングインターナショナル広報に拠ります )

収録曲
1. ロンビ(ルンビー ) : 「コペンハーゲン蒸気鉄道 」
2. コープランド : 「ジョン・ヘンリー、鉄道のバラード 」
3. パッヒャーネグ : 「出発進行! 列車通過 」
4. イベール : 「地下鉄 」
5. ダンディ : 「緑の水平線、ファルコナーラ 」
6. エドゥアルド・シュトラウス : ポルカ「テープは切られた! 」
7. ドヴォルザーク(B.レオポルト編曲) : 「ユモレスク 」
8. ヴィラ=ロボス : 「カイピラの小さな列車 」
9. E.シュトラウス : ポルカ「蒸気をあげて! 」
10. レブエルタス : 「鉄道敷設 」
11. ルーセンベリ : 「鉄道のフーガ 」
12. J.シュトラウス二世 : ポルカ「観光列車 」
13. バーンスタイン : 「地下鉄乗車と空想のコニー・アイランド 」
14. オネゲル : 「パシフィック231 」

 
イジー・スターレク(指揮)Jiri Starek
カイザースラウテルン南西ドイツ放送管弦楽団 Kaiserslautern Radio Orchestra

録音:2005年10月13-14日、11月29日-12月2日、2006年2月21日
Heanssler Classic = SWR Music(キング・インターナショナル:KKC-5080)

「鉄オタクラシック」から 主要な収録曲を聴く

ロンビ_Hans Christian Lumbye(Wiki) ハンス・クリスチャン・ロンビ (ルンビー )
「コペンハーゲン蒸気鉄道 」 
 1駅目 「コペンハーゲン蒸気鉄道 」の作曲者ハンス・クリスチャン・ロンビ(ルンビー )(Hans Christian Lumbye 1810 - 1874 )は、シュトラウス・ファミリーに似たテイストを持ち「北国のヨハン・シュトラウス」との異名をとるデンマークの作曲家です。「コペンハーゲン蒸気鉄道」は1847年に作曲された描写音楽で、静かな駅に停車している汽車が徐々に走り出し、間もなく次の駅に停まるまでの楽しい様子を 簡潔に描いています。
 
コープランド_Aaron Copland アーロン・コープランド
「ジョン・ヘンリー、鉄道のバラード」  
 2駅目 「ジョン・ヘンリー、鉄道のバラード(1940年) 」は、20世紀アメリカの代表的作曲家アーロン・コープランド(Aaron Copland 1900 - 1990)の作品。一聴してすぐコープランドだ!と感じる 旧き良き「アメリカ」のイメージが 一杯に広がる 個性的な苦みのある和声が 心地良いです。
 「エル・サロン・メヒコ(1936年)」、「ビリー・ザ・キッド(1938年)」と、「ロデオ(1942年)」、名曲「アパラチアの春(1944年)」といった傑作群などと同時期の作品で、雄大な音楽ではありますが、どちらかというと「汽車」というより「遥かなる西部の幌馬車」といった感じ? です。
 
イベール_ibert ジャック・イベール
「地下鉄」 
 一駅通過して、4曲目はジャック・フランソワ・アントワーヌ・イベール(Jacques François Antoine Ibert 1890 - 1962)による1931年の作品、交響組曲「パリ」から第1曲「地下鉄」です。これも短い曲ですが、オーケストラの各セクション、それぞれの各楽器がお互いに関連の薄いフレーズを勝手に演奏してゆくうち、やがてその断片がブロックのように積み重なり、しまいにひとつの造形物として落ち着いたような、そんな注目作です。
 
ダンディ_Vincent dIndy ヴァンサン・ダンディ
「緑の水平線、ファルコナーラ 」
 5駅目は 発起人も大好き な、あの芳しいフランスの山人の歌による交響曲で知られる ポール・マリ・テオドール・ヴァンサン・ダンディ(Paul Marie Théodore Vincent d'Indy 1851 - 1931 )が1921年に作曲した 交響組曲「海辺の詩」から「緑の水平線、ファルコナーラ 」という曲。
 汽車が快適に走る魅力的な部分と、海辺の駅における長い停車時間とを表す二つの部分から成ります。国内盤の解説文を執筆されている岩野裕一氏の文章 - 「そのリズムからはアドリア海に沿って走る蒸気機関車のドラフト音が確かに聞こえてくる 」という詩的な一行から拡がる素晴らしいイメージは 曲の印象をそのまま見事に表現しています。
 
シュトラウス三兄弟 (左から)エドゥアルトヨハンヨーゼフシュトラウス三兄弟
ポルカ「テープは切られた!」、「蒸気を上げて!」 &「観光列車」 
 6駅目「テープは切られた! 」と 9駅目「蒸気を上げて! 」は、どちらもヨハン・シュトラウス二世ヨーゼフ・シュトラウスの弟 エドゥアルト・シュトラウス(Eduard Strauß, 1835 - 1916)が作曲した 楽しいポルカの傑作です。特に後者「蒸気を上げて! 」が作曲されたのは、偶然 わが国で最初の陸蒸気が新橋-横浜間を走った記念の年(1872年)にも当たるそうで、その意味でも 記憶に残る作品です。
 シュトラウス・ファミリーエドゥアルトは、20歳の時 兄ヨハンのオーケストラの楽団員として最初のステージに立ちますが、その時のパートは 意外にも「ハープ奏者」だったそうですよ。
 停車駅の順序は前後(!)しますが、12駅目「観光列車」の作曲者は、今さら申すまでもなく 上記 エドゥアルトの長兄、ヨハン・シュトラウス二世ですよね。
 このポルカは 今もウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートでも頻出の常連曲。かつて名指揮者カルロス・クライバーが この曲をプログラムで取りあげた際、惚れぼれするようなその華麗な棒さばきから一転、指揮台から客席の方を振り向くやいなや 列車の車掌が使う警笛ラッパを咥えて突然吹き鳴らしてみせたことがありましたが、そんなユーモラスな演出をとらえた映像が目に浮かびます。

ドヴォルザーク Dvorak アントニン・ドヴォルザーク
「ユモレスク 変ト長調 」 
 7駅目に登場するドヴォルザーク(Antonín Leopold Dvořák 1841 - 1904 )は、知る人ぞ知る「筋金入りの 」鉄道オタクでした。プラハ音楽院時代には しばしば最寄りのフランツ・ヨーゼフ駅まで散歩に出かけ、心から楽しんで汽車を眺めていました。それだけでなく、彼は旧式の鉄道駅員用の懐中時計まで所持しており、すべての列車の到着時刻、記号、番号、駅間の所要時間ばかりか 列車の走行音の特徴までも 正確に記憶していたそうです。
 現在、音楽の都ウィーンチェコの首都プラハとを結んでいる特急列車の名前は、なんと「アントニン・ドヴォルザーク号 」 - ああ、これに一番乗りたがる人って 間違いなくドヴォルザーク 本人だったでしょう。 ・・・乗せてあげたい。

EC-70 ANTONÍN DVOŘÁK ( Wien Südbf – Praha-Holešovice )
▲  ウィーン - プラハ間を走る 特急列車アントニン・ドヴォルザーク号
写真は こちらからお借りしたものです
⇒ 1014 005-1 ÖBB EC-70 ANTONÍN DVOŘÁK ( Wien Südbf – Praha-Holešovice )


 ・・・で、 収録曲は 有名な「ユモレスク 変ト長調 」です。この原曲はピアノ曲ですが、ボフスラフ・レオポルトによるオーケストラ編曲は 往年の 「NHK名曲アルバム 」を思わせる 穏当で聴きやすいアレンジです。

ヴィラ=ロボス_Vila-Lobos エイトル・ヴィラ=ロボス 
「カイピラ(田舎)の小さな列車」  
 8駅目に収録されている「カイピラ(田舎)の小さな列車 O Trenzinho do Caipira 」は、アントニオ・カルロス・ジョビン以前のブラジルを代表する作曲家 エイトル・ヴィラ=ロボス(Heitor Villa-Lobos 1887 - 1959 )が1930年に作曲した「ブラジル風バッハ Bachianas Brasileiras 第2番」の第4曲(トッカータ)です。ヴィラ=ロボスが 走行中の客車の中でインスピレーションを得て書き上げた音楽と伝えられています。
 オーケストラの中で(ソロ楽器としてでなく)リズム・セクションとしての仕事に徹するピアノがガタゴト揺れる汽車を模したリズムを刻み始めると、聴いている私 発起人の耳も 愉悦感で一杯になります。

バーンスタイン_Bernstein OnThe Town(「踊る大紐育」)
(左)若き日のレナード・バーンスタイン
(右)映画版「踊る大紐育(On The Town)」の一場面

「地下鉄乗車と空想のコニー・アイランド」 
 いくつかの駅を通過させて頂きましたが、13駅目の「地下鉄乗車と空想のコニー・アイランド」は、若きレナード・バーンスタイン( Leonard Bernstein 1918 - 1990 )によって作曲され、1944年に初演されたミュージカル「オン・ザ・タウン On The Town 」からの情景的楽曲です。後半「コニー・アイランド」のシーンは ジェローム・ロビンスの振付けによって有名だそうですが、ダンスとストーリーとの高度な融合は、この後の傑作「ウエストサイド・ストーリー」で大輪の花を咲かせることになります。
 この「オン・ザ・タウン」は5年後、邦題「踊る大紐育」として ジーン・ケリー、フランク・シナトラらの主演によって映画化されますが、この時には 脚本とともに音楽も オリジナル舞台版からは大きく変更され、不幸にして バーンスタインの音楽の多くも わかりやすい流行作曲家による無難な新しい歌に差し替えられてしまいました。

オネゲル アルテュール・オネゲル 
「パシフィック231 」 
 さて、この個性的なアルバムの終着駅としてラストに置かれた名曲は、鉄道の音楽として昔から高い評価を得てきた フランスのアルテュール・オネゲル(Arthur Honegger 1892 - 1955 )によって1923年に作曲された 交響的運動第1番「パシフィック231 」 (スイスの名指揮者、エルネスト・アンセルメに 献呈されているそう)です。
 これには オネゲル自身が音楽について述べた文章( 「わたしは作曲家である吉田秀和氏=訳、創元社 )があり、たいへん興味深い内容です。「パシフィック231」の主部は 二分音符=80で「運動」が始まるものの、やがて「四分音符=(160 )→ 152 → 144 → 138 → 132 → 126 」と、意外や 段階的にテンポが落ちてゆくように書かれているのだそうです(!)。
 以下は オネゲル自身による 種明かしの文章です。
(このため)音楽自体は徐々に緩慢になっているのだが、楽譜のリズムは細かくなっていくため、逆に聴いている者には 音楽が加速しているように感じられる。この仕掛けこそ 作曲者の意図なのである 」 ・・・ これ、結構 目からウロコが 落ちますよね。

鉄オタクラシック」、素晴らしいです。
日本語解説書が付された 国内盤(キング・インターナショナル:KKC-5080)を お求めになることを、おススメします。

 その他の「鉄道」音楽「鉄道」を連想させる音楽

 さて、それでも このディスク - 「鉄オタクラシック」 - に収録されなかった作品で、まだ他にも「鉄道」をモティーフにした音楽、もしくは 鉄道を連想させる音楽を 私“スケルツォ倶楽部”発起人が、 東京方面へ帰る新幹線の中で、以下 思いつくままに 妄想をまじえて 追加してみました。

Rossini Complete Works for Piano Vol.3
ロッシーニ:「楽しい汽車の小旅行」、「楽しい汽車の小旅行のおかしな描写」
~ ピアノ独奏作品集「老いの過ち」第6集 から
( 併録曲:同第6集から「苦悶のワルツ」、同第9集から「右手の4分音符による茶化したメロディーの見本」、「キャンディードのメロディ」、「イタリア風前奏曲」、「イタリア風クリスマスの歌の見本」、「タランテラ風の即興曲」、「わが最後の旅のための行進曲と思い出」、同第10集から「三全音をお願いします」、「小さな思い」、「バガテル」、「イタリア風メロディ(父の御名に)」、「小カプリッチョ(オッフェンバック風に)」
パオロ・ジャコメッティPaolo Giacometti(1849年製エラール・ピアノ)
録音:1998年
海外盤( CHANNEL-20-14 )

 「セビリアの理髪師 」、「アルジェのイタリア女 」など オペラ作曲家として空前の成功を収めたイタリアのジョアキーノ・ロッシーニ ( Gioachino Rossini 1792 - 1868 )。けれど、彼の実質的なオペラ作曲家としての活動期間は、皆さん ご存知のとおり、その生涯の わずか20年間だったのです。絶頂期には、年間3~4本ものペースで大作を仕上げていたのに、長大な傑作「ウィリアム・テル」完成以降は、わずか37歳にして オペラ作曲家としての筆を折ってしまい、恵まれた年金生活に入ってしまいました。
 その後は 美食に明け暮れ、レストランの経営をするなど 悠々自適の生活を送ったとされています。その 若き「楽隠居」中には、サロン風の歌曲やピアノ曲、宗教作品を中心に作曲だけは続けていました。「老いの過ち」は、そんな後半生の頃のピアノ小品集です。
 ところで ロッシーニは、一体どこで汽車に乗ったんでしょうね。蒸気機関車を発明したイギリスが国内で鉄道事業を本格化させるのが1820年代以降だそうですから、すでにこの時期のヨーロッパにも 鉄道が普及し始めた頃だったのでしょうか。寡聞にして 当時の詳細を知りません。
 約10年かけて ロッシーニ全てのピアノ独奏曲の録音を完成させたミラノ出身のパオロ・ジャコメッティによる、全集からの分売に含まれています。この第3集は「楽しい汽車の旅」で開幕、終着を「楽しい汽車の旅のおかしな描写」で締めくくるという選曲の配列も絶妙ですね。表紙の写真は 汽車の模型で遊ぶジャコメッティ。この人もまた鉄オタだったのか?

ショパン「英雄ポロネーズ」ホロヴィッツ(CBS)
ショパン:ポロネーズ第6番変イ長調 「英雄」から トリオ(第81小節)以降
ヴラディーミル・ホロヴィッツ(ピアノ) 
海外盤(CBS M-30643)
( 併録曲:幻想ポロネーズ、マズルカ第13番、エチュード「黒鍵」、序奏とロンド 作品16、ワルツ第3番作品34-2 )
録音:1966&71年 
 
 作曲者の祖国ポーランドの栄光を讃え、ショパン( Fryderyk Franciszek Chopin 1810-1849 )の愛国心の表明とも解釈されている名曲 - いわゆる「英雄ポロネーズ」。
 ショパン自身は この音楽に汽車を関連づけるような発言などは まったくしておりませんが、私 “スケルツォ倶楽部”発起人は この雄大な音楽を聴くたび、いつも中間部(トリオ)で ホ長調に転調するやいなや 左手オクターヴで繰り返し連打される劇的なリズム蒸気機関車の猛烈なピストン運動そのものではないかと 内心「勝手に」思っていました。
楽譜:ショパン「英雄ポロネーズ」第83小節以降(ドレミ楽譜出版)
 また、この推進力満点の駆動部に乗せて 気品あるファンファーレのように姿を現わす右手の旋律のイメージから、美しいフォルムで走行する機関車の姿を連想して どこが悪いんですか(って・・・妄想も重症 )?

パノハ弦楽四重奏団_ドヴォルザーク「アメリカ」(Camerata)
ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番 ヘ長調 作品96「アメリカ」から 第4楽章 
パノハ弦楽四重奏団
録音:2002年4月23~26日 プラハ
カメラータ(CMCD-28025)
併録曲(同:弦楽四重奏曲第11番 ハ長調 )

 はい、ここで 再び “鉄オタ”校長、ドヴォルザーク先生の登場です。
 潜在的に列車のリズムが聴こえてくるような音楽 - と言えば、やはり 私はニューヨーク滞在中に書かれた傑作「アメリカ」の終楽章を思い出します。これは快速に走行します、エンディングの和音などは まるで蒸気スチームが噴き上がるようではありませんか( ドヴォルザーク自身は、この曲と汽車との関連については触れていません。あ、妄想ですから、ここでも念のため )。
 渡辺護氏の著作「休止符のおしゃべり(音楽の友社) 」に拠れば、1891年当時 すでに国際的な名声を確立していたドヴォルザークニューヨーク・ナショナル音楽院院長職就任を請われた当初は、これを受諾すべきかどうか躊躇していたものの、「アメリカへ行けば新しい大陸鉄道がふんだんに見られる! 」と気づき、結局その招聘に応じた、と書かれています。
以下、カッコ内は 渡辺護氏の文章を引用です -
「 ・・・ ニューヨークに着き、グランド・セントラル・ステーションの中に立ったときの感激はどんなに大きかったことでしょう。一七番街から一五五番街まで 彼(ドヴォルザーク )は毎日のようにでかけ、シカゴ・エキスプレスが矢のように疾走する光景を、いつも変わりのない興奮をもって眺めたのでした  」
  - 良い文章ですよね。

ラトル_パーシー グレインジャー(EMI)
パーシー・グレインジャー:「トレイン・ミュージック」
サイモン・ラトル指揮
バーミンガム市交響楽団
併録曲:組曲「In a nutshell早わかり(要するに)」、「カントリー・ガーデンズ(イングランドのモリス・ダンスの調べ) 」、組曲「リンカーンシャーの花束」、戦士たち(想像上のバレエ音楽) 、「パゴダ」(ドビュッシー作品の編曲)、「鐘の谷」(ラヴェル作品の編曲)
録音:1996年12月 バーミンガム
東芝EMI(TOCE-13382)

 パーシー・オルドリッジ・グレインジャー( Percy Aldridge Grainger 1882 – 1961 )は、オーストラリアの作曲家、ピアニスト。
 「トレイン・ミュージック」、実は 未完成作品です。グレインジャーは18歳の時、イタリアへの汽車旅行でこの作品を着想し、総計150名の大規模な管弦楽によって、走行する汽車の音リズムだけでなく天候や景色の変化も盛り込もうという計画だったそうです。 
 このラトル盤での演奏は、エルドン・ラスバーンという現代作曲家によって 通常のオーケストラ編成でも演奏できるよう 規模が縮小された編曲版です。斬新でありながら とても親しみやすく、グレインジャーが途中で投げてしまった理由を問いただしたくなるほどです。残された草稿が僅かなので、途中1分30秒ほどで唐突に終わってしまいますが、この後も 楽しく展開されそうな可能性を秘めた音楽と思います。実に惜しいことです。 
 グレインジャーは「In a Nutshell 早わかり(要するに) 」という奇妙なタイトルの組曲の中でも「列車到着のプラットホームで歌う鼻歌 」という音楽を書いています。

プロコフィエフ_交響曲第5番(バーンスタイン)Sony
プロコフィエフ:交響曲第5番 変ロ長調 から 第2楽章、第4楽章
レナード・バーンスタイン指揮 
イスラエル・フィルハーモニー
録音:1979年8月25日,同26日 ミュンヘン、ライヴ
海外盤(CBS CD-35877 )

 重ねてお断りしておきますが、作曲者プロコフィエフ( Sergei Prokofiev 1891 – 1953 )は この交響曲のタイトルには 一切「鉄道」とか「汽車」とか、これに類する表題は付しておりません。語ってもいません。すべて私が勝手に感じている妄想イメージです。
 しかし、交響曲の偶数楽章のリズムをご存知の方は、多少なりとも同意してくださるのではないかと ひそかに期待してます。ここで頷いてくださった方は 私の同志です岩野裕一氏の秀逸な表現をお借りすれば、これは まさしく「濃い鉄分を感じる」音楽作品なのです。(主観的には )絶対に鉄道の音楽、少なくとも機械を表現したメカニカルな音楽であることは間違いない! と発起人は 信じてます。
 もし未だ聴いたことがない、あるいは そのように意識して これら第2楽章、第4楽章を聴いてみたことがない、という幸運な方、ぜひ一度そう思い込んでから 目を閉じ、スピーカーの前にお座りになってみてください。停滞することなく走り続ける機関車・・・ 間もなく途中駅(トリオ)に停まりますが、間延びしたような高いクラリネットの特徴的なフレーズが 田舎の駅員が吹く警笛にさえ聴こえます。えーい、列車の窓なんか ばーんと開けちゃいましょう、車窓の風景が 次から次へとブンブン目の前を飛んでゆく様子を眺めているうち なんだか楽しくなってきちゃいますよ。偶然でしょうか、曲調は「鉄オタクラシック」の5番目に収録されていた ヴァンサン・ダンディ作曲の「緑の水平線、ファルコナーラ 」に 似ていなくもないではありませんか。
 そして、やはり第4楽章の基本的なリズム! これはやっぱり汽車でしょう。あなたは やがて 唸りを上げて鉄路を走り抜けてゆく蒸気機関車の轟音が冬の空高く響き渡るのを、きっと耳にされるに違いありません。
 おススメの一枚は、1979年8月 - バーンスタインがCBS (ソニー・クラシカル )レーベルに残した最後の録音とされ、相性の良かったイスラエル・フィルとのツアーで訪れたミュンヘンでのライヴ・レコーディングです。つい最近、タワーレコードから 国内盤も復活したようで、祝!

ライヒ「Different Trains」Nonesuch
スティーヴ・ライヒ:「ディファレント・トレイン Different Trains 」
スティーヴ・ライヒSteve Reich
クロノス・クァルテットKronos Quartet
録音:1988年8月31日~9月9日
Nonesuch(ワーナーミュージックジャパン WPCS-5053 )

(併録曲:「エレクトリック・カウンターポイントElectric Counterpoint 」パット・メセニー Pat Metheny )
 鉄道の音とは、同じ音型を延々と繰り返しながら構築されるミニマル・ミュージックの素材として、まさに打ってつけの発想ではありませんか。聴感触がざらざらで荒々しい弦楽四重奏が、どこまでも続く線路のように 同じフレーズを延々と繰り返すことによって列車の走行音を劇的に表現します(繰り返されるので、これが そのままリズムになるのです!)。
 ライヒのアイデアはそれだけではありません。第1楽章「第2次世界大戦前のアメリカ」、第2楽章「大戦中のヨーロッパ」、そして第3楽章「戦後」 ‐ と、3つの時代/場所が特定され、時間もシーンもそれぞれ異なる 個人的な列車での思い出(と思われる)を呟く人々の言葉を録音したサンプリング音源が、列車(=音楽 )に乗って 繰り返されます。新しく重ねられる「呟き」のサンプリング音源が登場するたびに、これに合わせて 弦楽四重奏による鉄道フレーズも変化します。その効果はあたかも カメラが撮影角度を変えることによって映像もまた切り替わるのにも似て、その発想は 実に斬新です。
 音楽(=列車)に「言葉」が乗車してくることによって 聴き手の音響イメージは、突如 具体的なものへと変貌します。ストリングスは 巧みに人の声の抑揚やイントネーションを模倣するわけですが、聴いていると まるで楽器が人語を操っているかのようです。
 人が言葉を話すときには、息の切れ目ごとに上がったり下がったりと その調子は異なるものです。疑問や断言などを表現する時の音調は、同じ言葉であっても 発話者の感情の起伏に影響を受けます。その微妙な語調の差異を 楽器がなぞっているわけですが、繰り返されるのを聴いているうち、ストリングスに合わせて人が喋っているかのような、そんな不思議な感覚にも聴者は とらわれてしまうのです。
 また、途中で何度も強烈に鳴り響く警笛は、このディーゼル機関車のタイホンサンプリング音だそうです。特に第2楽章、鉄道のリズムに乗せ、この警笛と一緒に 空襲警報のサイレンヴァイオリンの金切り声のような高音とが交錯する場所が凄いのですよ。しかも音楽=列車疾走し続けているのです。もしも これを初めてお聴きになるという幸運な方は、衝撃を受けること間違いなしの鉄道音楽です。
 「ミニマル・ミュージック」については、また改めて語る機会を設けたいと思ってます。

鉄道博物館からの帰路・・・

 大宮から東京方面への帰路は、あろうことか 正月休みの帰省ラッシュ時刻 - しかもピーク・タイムで超ギュウ詰めの - 新幹線の自由席で 戻ってまいりました。
 凄い混雑でそれなりに大変でしたが、それでも ホント揺れの少ない新幹線ですから、一昔前の通勤ラッシュに比べたら、いくら混んでいると言っても 比較にならない快適さでした。
 いやー、昔はホント大変でしたよね。
 ・・・今回は また結構 長文になってしまいました。
 読み難(にく)くてスミマセン、でも ここまで 厭(いと)わずに おつき合いくださった“スケルツォ倶楽部”会員の貴方さまは、本当に 私の大事な お友だちです。読んでくださって 誠にどうもありがとうございます。

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コメント

あわわ さま!

“あわわ”さまも 実は 鉄オタですか? 玄人なコメント、ありがとうございます。
「史上初の鉄道音楽 」は、アルカンの「鉄道 」Op.27b だったのですね。いつも「知ったかぶり 」の発起人も 初めて知った情報でした!
まだアムランには録音がないんですか、残念ですね。流麗なアムランの演奏でなら ぜひ聴いてみたいものです。
“あわわ”さま には これからも どうぞよろしくお願いします!

URL | "スケルツォ倶楽部" 発起人 ID:-

はじめまして

ネットサーフィンでここにたどり着きました。
紹介された曲は半分以上が未聴、鉄道音楽の世界も奥が深いですね。
ところで(英雄ポロネーズを入れなければ)史上初の鉄道音楽と思われるアルカン「鉄道」Op.27bが紹介されていないのは、あまり良い音源がないからでしょうか? アムランなら完璧に弾きそうですが、ペトルーシュカですら「音楽性に乏しい」といって弾かない彼が手を出すとは思えない……。

URL | あわわ ID:EGTCt1XI[ 編集 ]

のり2 さま

こちらこそ、いつも 真心の(!) 応援、本当に ありがとうございます。
のり2さまから頂ける コメント、これほど励みになるものかと 心より感謝申し上げます。
ところで、のり2さまの お住まいが 埼玉だったとは!
・・・などと 驚いてみせても、キチンと 「のり2クラシカ」を読んでいれば
ある程度 察しがつくことでしたよね。 http://plaza.rakuten.co.jp/noclasica/diary/201101030000/
今回は 県内を通り過ぎるだけで どうも失礼いたしました。 ・・・お近くです。 また!

URL | “スケルツォ倶楽部” 発起人 ID:-

Good evening!

こんばんは!

をを!鉄道博物館行かれたのですね。かなりのスケールのようですね。
埼玉に住んでいながら路線が違うので中々機会がありません。(爆!

ところでプロコフィエフ5番の第2第4楽章はなるほどと合点がいきました。
ありがとうございます。
お礼の真心応援完了です。♪(笑)

URL | のり2 ID:-

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