スケルツォ倶楽部 
クリスマスの音楽    もくじ はこちら 
 
「サンタクロース物語」(13)

 Chris Rea  クリスマスの音楽_サンタ_スヌーピー

↑ 今宵の一曲
▽ クリス・レア Chris Rea
 「ドライヴィング・フォー・クリスマス Driving Home For Christmas 」

 録音:1988年 スイス モントルー、プロヴァンス 南フランス
 「ベスト・オヴ・クリス・レア New Light Through Old Windows 」に収録
 レッツ・ダンス、ワーキング・オン・イット、エース・オブ・ハーツ、ジョゼフィン、キャンドル、オン・ザ・ビーチ、フール、ハート・ビート、シャムロック・ダイアリーズ、スティンズビー・ガールズ、ウィンディ・タウン、ドライヴィング・フォー・クリスマス、スティール・リヴァー
 イーストウェスト・ジャパン(WMC5-411 )

   クリスマスに家に帰ろうと 
   ぼくは車を走らせている
   みんなの顔が今すぐ見たくてたまらないよ
   クリスマスを家で迎えられるよう
   ぼくは車を走らせている

   もう随分とごぶさただ
   でも もうすぐ家に帰れる
   たっぷり時間があるから
   ぼくは きみのために歌うよ
   たとえきみの耳に ぼくの声が
   届かなかったとしても
   
   無事に辿り着いたら
   きみにぴったり寄り添うんだ
   だから 車を走らせている
   クリスマスに間に合うように

   山ほどの思い出に浸りながら
   ぼくの隣の車の男を見たら
   彼も同じみたいだった
   彼もまるで一緒なのさ

   親父は言うよ“お前の考えはわかっている”
   古ぼけたこの町にもいいときがあった
   でも 今は旅立ちのとき

歌詞 (クリス・レア中川五郎 = 対訳 ) からの抜粋


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「サンタクロース物語 」
(13)バラバの父

 
 ヘロデ・アンティパスが 宮殿での宴席の戯れに、妃ヘローディアスのわがままな要請を聞き容れ、世間に偉大な預言者として知られていたバプテスマのヨハネを斬首してしまったことを、ローマ総督ピラトは 大いに問題視しました。
 父だったヘロデ大王の立場とは異なり、息子ヘロデ・アンティパスは ユダヤ地方の一領主に過ぎない存在でしたから、本来なら 総督ピラトの許可を得ず 私的に囚人を処刑するような権限など 彼にはなかったのです。
 ・・・この機会を利用しない手はないぞ、ユダヤの名門ハスモン王家の末裔ヘローディアスを妻に迎えているヘロデの力を またひとつ削ぐことの出来る絶好の口実ができたわい、と総督ピラトは 忍び笑いを隠せませんでした。
 それからしばらくして 総督ピラトの命令により、ヘロデ・アンティパス宮殿の地下牢は その機能と役割を全面廃止されることになりました。今までヘロデが「私的に」投獄していた全ての囚人は、ローマ総督ポンテオ・ピラトの管轄する市内の監獄へとその身柄を移されることが決まりました。もちろんニコラウスとイヴリーの二人も地下牢から出されます。彼らは「ヨハネの予言が的中」したことに本当に驚き、これはきっと次の解放への一歩に違いないと信じて、互いに励まし合っていました。しかし見方を変えれば、囚人を処刑する権限のある檻に移されたことで、身の危険が高まったとも考えられるのです。
 
 移送される朝、明るい地上へと一時的に出た二人は、30数年ぶりの太陽の眩しさに目まいを覚えて倒れそうになりましたが、それは全身に陽が当たることへのあまりの喜びのためだったのかもしれません。
 今度の監獄施設は 専らローマ総督が執り行う裁判所の近くにあり、その建物はかつての狭い地下牢に比べると 遥かに明るくて広い雑居房が整然と並ぶ構造でした。囚人の多くはローマ帝国の支配に反対するユダヤ独立運動の活動家でしたから ローマ側にとっては 反体制的な存在で、彼らは遠からず十字架刑に処されることが決まっているのでした。
 ニコラウスとイヴリーの二人が あらたに入れられた大きな牢獄にも すでに11人もの若い政治犯が監禁されていました。彼らは同じ主義主張を持った盟友であるらしく、部屋の奥には そのリーダーとおぼしき30代くらいの精悍で礼儀正しい男が座っていて、彼の方から口を開きました。
「お二人とも ずいぶん お年を召されているようですね。われらと共に、ここに収監されたということは、憎き侵略者たる帝国の連中にとって、危険人物である との名誉ある評価を与えられた ということですが、あなたがたはどんな活動をしてこられたのでしょうか。もしや ガリラヤに本拠を構えてゲリラ戦を繰り返している 有名なゼロテ党の長老では 」
白いひげを掻きながら、ニコラウスが答えます。
「いえ、とんでもない。われらは二人ともヘロデ王の牢獄から移されてきただけです。尤も祖国の独立を望まぬユダヤ人は決していない筈で それは私たちも同様ですが、特に政治的な活動をしてきたというわけではありません 」
これを聞いて 志士のリーダーは少し失望したような表情を浮かべましたが、やがて 自分自身が何故これほどまでにローマを憎んでいるかを語り始めました。
「私の両親はベツレヘムで小さな宿屋を営んでいましたが、まだ私が物心つかない2歳を過ぎた頃、ご存知でしょう、あの有名なヘロデ王の幼児殺戮事件が起きたのですよ。私にはもちろん記憶はないのですが、その夜の宿泊客だった親切な旅人が、襲ってきたユダヤ兵を必死に買収してくれて その隙を突き、母は私を抱いて逃げてくれたのです。しかしローマ兵は何の容赦もなく追いかけてきました。私の父が奴らの行く手を遮ってくれたおかげで 母と私は脱出することが出来たのです。でもローマ兵どもは無情にも両親の宿屋を焼き払い、父と旅人の二人をその場で殺してしまったそうです 」
そう言うと、リーダーの男は 少し涙ぐみました。
「だから、私はユダヤの地を不当に制圧している憎きローマ勢力を 祖国から排除する運動に参加してきたんです。母も賛成してくれています 」
ニコラウスは たいへん驚きました。彼の言う「旅人」とは、30年前の自分自身に他なりません。けれど、もっと驚いていたのは もちろんイヴリーその人だったに違いありません。彼は、興奮を必死に抑えながら「息子」に尋ねました。
「お前は・・・いや、あなたの名前は イエス・バラバというのではありませんか 」
「そうですが 何か 」
と、リーダーの男は 怪訝そうな顔になりました。その表情は、ニコラウスが初めて出会った時の 若きイヴリーが火掻棒で囲炉裏の薪をかき回していた時の煙たそうな表情そのものでした。これは間違いないや。
「お前 イエス、わが息子よ。オレだ、イヴリー・バラバだ。オヤジの名前を聞いているだろう 」
「ええっ? - ほ、本当ですか。 それじゃ ・・・ 母の名前をおっしゃってみてください 」
「お前のおっかあで、オレの女房はエリサベトだ 」
「彼女の特徴を言ってみて 」
「美しい。賢く敏捷で 足も速いが、胸は小さい 」
「うおお、親父! い、生きていたのかあーっ 」
「おお、息子よ! 無事だったんだなー、こんな立派に でかくなりゃがってー・・・ 」
牢内で 感動的な対面となりました。ニコラウスだけでなく、リーダーを囲む仲間たちも 事情を知っているだけに この意外な展開に もらい泣きしています。

(14) 塀の中のイエスと 塀の外のイエス 」 に続く・・・

 ↓ 清き一票を
にほんブログ村 音楽ブログ ジャズへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
blogram投票ボタン
人気ブログランキングへ
Club Scherzo, since 2010.1.30.


文章:“ スケルツォ倶楽部 ”発起人
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

トラックバック

トラックバック URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)