スケルツォ倶楽部 
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「サンタクロース物語」(9)

 「クリスマス・オラトリオ」クイケン(DENON)盤クリスマスの音楽_サンタ_スヌーピー
↑ 今宵の一曲

▽ J.S.バッハ作曲「クリスマス・オラトリオ( Weihnachts-Oratorium ) BWV248
  シギスヴァルト・クイケン(指揮)
  ラ・プティット・バンド(オーケストラ & 合唱団)
  エリザーベト・ショル(ソプラノ)
  カテリーナ・カルヴィ(アルト)
  クリストフ・プレガルディエン(テノール)
  ウェルナー・ヴァン・メヘレン(バス)
録音:1997年12月16日 ベルギー、ブリュッセル、パレ・ドゥ・ボザール、ライヴ
日本コロムビア = DENON Aliare (COCQ-83059~60 )
 2枚組

 J.S.バッハが、その実り多きライプツィヒ時代に作曲した傑作「クリスマス・オラトリオ( Weihnachts-Oratorium ) BWV248 」。
 私 “スケルツォ倶楽部”発起人が敬愛するバッハの 数多くの優れた作品の中でも、大好きな曲です。努めて 一年のうち クリスマスにしか聴かないようにしているので、いつまでも 感動の鮮度が落ちないのでしょうか。
 オラトリオの第6部主よ、おごれる敵の迫りくる時」は、顕現節( ルター派のプロテスタント教会では、いわゆる“三王礼拝”を記念する祭典 )のカンタータとされ、そのテキストは 主に新約「マタイによる福音書」第2章から採られています。
 当ブログ“ スケルツォ倶楽部 ”で 私 発起人が せっせと書いているオリジナル・ノヴェル「サンタクロースものがたり」でも 重要な役割を果たす「東方の三博士」が、この「顕現節」では 幼子イエスに黄金・乳香・没薬を贈り捧げるエピソードが歌われます。
 三博士は、ヘロデ王から 御子の所在を報(しら)せるよう要請を受けていましたが、その夜「ヘロデのもとに引き返すな 」という 神のお告げ に従い、彼らはエルサレムのヘロデ宮殿を二度と通ることなく 東方へ戻った ということが 福音書記者(テノール)によって明かされます。ああ、よかった。おそらく初演の場である聖トーマス教会の聴衆も、知ってはいても一同ここでホッと胸をなでおろしたに違いありません。
 私 発起人 おススメ、一押しの演奏は、シギスヴァルト・クイケン / ラ・プティット・バンド他 による この 1997年ライヴ録音(DENON)盤です。  
 
 思いつくままに 聴きどころを書き出してみると、やはり 第1部の冒頭「いざ祝え、この良き日を」 - 史上最高のティンパニの音色と心地良いリズム、ホント誇張抜きで 心も弾みます。驚くほど柔和な表情でさえずる木管楽器のトリルや、意表を突いて温和な耳当たりの金管楽器の素晴らしさ。私の耳は、このクイケン盤を聴いてしまってからというもの、それまでずっと好んでいた筈のカール・リヒター(Archiv)盤の 祝祭的な金管の音でさえ どこか猛々しく感じるようになってしまったことに 自分自身 驚いています。一体どうしてくれる、シギスヴァルト
 第5曲目にはサプライズが。突然「マタイ受難曲」の あの受難コラールの旋律に乗って、合唱「いかにあなたを迎えれば 」が始まった瞬間 - 忘れもしません - これを知らずに初めて聴いた時の衝撃といったら なかったです。このオラトリオが、単純にクリスマスのお祝いと喜びの音楽ではなく、本来イエス・キリストが この世に遣わされた使命 - 全人類の身代わりとなって死んでみせること - までをも 聴衆に意識させる、偉大なバッハが意図したところの 何という深さでしょうか!
  キリスト受難コラールは このあと第6部 勝利の終曲(第64曲)「いま お前たちの仇は討たれた 」においても、再び 効果的に挟まれていますが、これによって 明白に示されているとおり、楽しいクリスマスにもかかわらず 実は イエス・キリスト受難の生涯が もうすでに始まっていることを 決して忘れてはならぬぞ、と バッハが 示現しているものと感じ、深い感銘を受けるのです。
 順序は前後しますが、全曲中でもおそらく一般的には最も有名な第2部、金管を排した上 全曲中唯一 声楽の入らないインストゥルメンタル楽曲 - イエス誕生を祝いにやってくる羊飼いたちの音楽である名曲「パストラーレ(田園曲)」で始まります。ここで羊飼い を表す柔和な木管による動機を、第23曲「われら主の軍勢と共に歌う」ではコラール合唱と交互に結合させてしまうという バッハの斬新なアイデアがもたらす感動、これにもまた鳥肌が立つほどです。アルト独唱による 素朴な「子守唄」の 渋い輝きも聴き逃せません。
 また 2つのホルンを伴なう第4部「感動と賛美をもってひれ伏せ」は、その楽器編成と共通する調性から 私の大好きな「ブランデンブルク協奏曲第1番 」の 豊かな響きを 勝手に連想します。中でも突出して素晴らしい 第39番「わが救い主よ、御名を歌え(エコー付きのソプラノ・アリア )」の広がりある効果、オーボエ・ソロの音色の見事さ・・・ あーあ、また長文になってしまった。
クリスマス・オラトリオ」の素晴らしさを語り出したら 限(きり)がありません。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「サンタクロース物語」
(9)「主よ、おごれる敵の迫りくる時」


「その子をこちらへ渡せ 」
「その子は、将来 王位簒奪者となる可能性を秘めているのだ 」
同時に 二人のユダヤ兵の両方が声を上げ、イエスを隠すように抱きしめているエリサベトの方へ一歩、近づきました。
妻を守ろうと、宿の主人イヴリーが兵を阻みます。
「おい、宿泊客でないんだったら、こちらはお前らに用なんかない。出ていってくれ 」
父の大声を聞いて、2歳のイエスはエリサベトの腕の中で激しく泣き出しました。
「そうはいかん、ヘロデ王の命令だ。ベツレヘムで2歳以下の男子を一人残らず始末せよ との王の指示なのだ 」
見かねたニコラウスが両手を広げ、彼らの間に 割って入りました。二人の兵士は、頑健な体格の木工職人を見上げると、思わず剣を構えました、
「何だ、こいつは? 」
「オレは 通りがかりの旅行者で この宿屋の宿泊客だ。聞いていると、お前たちは二人とも 残虐な異教徒 ローマ兵ではなさそうだ、違うか 」
二人はたしかに ニコラウスやイヴリーらと同じ ユダヤ出身の兵卒でした。本来はローマ兵一人とユダヤ兵一人の二人一組で行動すべき予定のところ、人数の都合で ユダヤ兵の二人組で イヴリーの宿屋へ押し入ることになったのです。兵士は お互いに顔を見合わせました。 ・・・実は 彼らにとっても この任務は受け入れ難いものだったのです。
「ユダヤ兵だったら、お前らは オレたちと同朋ではないか。同じ民族の者が どうして われらを制圧している外国人の手先になって、同じ先祖を持つ同朋に - しかも 幼児に - 刃を向けようとするんだ、おかしくないか 」
二人のユダヤ兵は、手にしていた剣を下ろしてしまいました。この機を逃さず、ニコラウスも必死で、自分の懐中から おもちゃ制作の代金として東方三博士に支払を受けた 銀30枚の入った袋を 取り出しました。
「アブラハムの子孫であるお前たちと、同じ父祖を持つ我々とで 信頼の取引をしようではないか」
と、ニコラウスは 二人の兵士にその金を全部渡しながら、憑かれたようにしゃべり続けました。
「お前たちは 立場上 受け入れ難い仕事をしなければならない、その事情をオレたちは察する。しかし、この報酬をもって 今 この時間だけ オレに雇われてくれないか 」
銀30枚は ローマでは 1か月暮らせる程度の金額でしたが、帝国より物価の遥かに安い、被支配地ユダヤ国内であれば、半年間は楽に生活出来るほどの価値がありました。二人で山分けすれば 当然二分の一ずつです。
「これをもって オレが依頼することは たった一つだ、簡単なことだ。この宿屋の子どもに会わなかった事にしてほしい。お前たちがここへ来る前に、この子と両親は 外国へ旅立った。お前たちは 留守になった建物に入ってきただけだ。どうだ、それだけのことだ 」
二人の兵士は 再び 顔を見合わせるとしばらく 見つめ合っていました。やがて 両者は 深く頷くと、その一人が言いました。
「わかった、危険だが 取引させてもらおう。何も言わずに お前らと家族はその子を連れて 今すぐに旅立て」
もう一人の 暗い声のユダヤ兵も言いました、
「そうだ、村はずれに 高いイチジクの木があるだろう、そこは 我々兵士の集合場所だから、そちらとは必ず反対の方向へ走れよ。お前たちの脱出が成功しなかった時には、それは 我ら二人にとっても危険なことになる」
「よかった!」
イヴリーは、彼の妻エリサベトと 2歳になる彼の息子イエスを抱きしめながら、ニコラウスには深い感謝の言葉を手短に述べると、次の瞬間 転げるように外へ走り出ました。ニコラウスも おもちゃの袋の口を締め、よっこらしょと肩に背負うと、親子に続いて 外に出ようとしました。
 しかし、その激しい雨の戸外には、すでにそれぞれの持ち場で一仕事終えた 残虐なローマ兵数名を引き連れた 近衛隊長ロンギヌスが 剣を抜いて 立っていたのです。

次回(10)「煙が目にしみる Smoke Gets In Your Eyes 」に続く・・・

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文章:“ スケルツォ倶楽部 ”発起人
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