スケルツォ倶楽部 
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「サンタクロース物語」(7)
 
 The Singers Unlimited_Christmas(MPS)クリスマスの音楽_サンタ_スヌーピー
 ↑ 今宵の一曲
「ベツレヘムの夜」 (ベイツ & アルフレッド・バート作曲)
ザ・シンガーズ・アンリミテッド The Singers Unlimited

 
 もともとコンサートやリサイタルなど普通に演奏活動をしていたものの、アーティストの考え方や諸事情によって ライヴ活動を(一時)停止してしまい、レコーディングに専念するようになった有名な演奏家と言えば、たとえば グレン・グールド( 短期間なら ホロヴィッツも )、ロックなら 「サージェント・ペパーズ」以降の ビートルズエイジャガウチョ」期の スティーリー・ダン といった大物の名前がすぐに思いだされますね。
 このア・カペラのヴォーカル・グループ、ザ・シンガーズ・アンリミテッド The Singers Unlimited( 編曲も担当するリーダー、ジーン・ピュアリング Gene Puerling が率いる四人 - ボニー・ハーマン Bonnie Herman、レン・ドレスラー Len Dresslar、ドン・シェルトン Don Shelton )は、グループ発足の当初からライヴ演奏を一切想定しておらず、スタジオに籠って多重レコーディング技術を駆使することで知られた団体でした。具体的には 各歌手が複数パートを重ね録りすることによって 本来の四声を越える多層的ハーモニーを創造、極めて美しいコーラスを聴かせてくれました。
 1967年に結成、1971年 ドイツMPSレーベルと契約、15枚ものアルバムを残しました。まだ未体験という幸運な方は、ぜひ一度。ちなみに “スケルツォ倶楽部”発起人は、彼らが カナダの名ピアニスト オスカー・ピーターソンと共演した名盤「イン・チューン」をお勧めします。
 「ベツレヘムの夜」は、クリスマス・キャロル「ともによろこび過ごせ God Rest Ye Merry Gentleman 」に 酷似したマイナー・メロディの曲。ザ・シンガーズ・アンリミテッドの名盤「クリスマス」は、その全曲が無伴奏コーラス( 冒頭の最初だけ 僅かにパーカッションがSE的に入りますが)、有名な「ア・カペラ」と並び 彼らの最高傑作と呼べるもの。中でも 「あめなる神には It Came Upon The Midnight Clear 」 と 「清しこの夜 Silent Night 」 に聴けるハーモニー、絶品です。

▽ ザ・シンガーズ・アンリミテッド 「クリスマス」 に収録
録音:1971年 フィリンゲン、MPSトン・スタジオ
MPS = ユニバーサル(UCCM-3001)


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「サンタクロース物語」
(7)もうひとつの「ベツレヘムの夜」
 
 
 その頃、おもちゃの大きな袋を担ぎながら走り続けたニコラウスは、やっとの思いで ベツレヘムの村へと到着していました。
 ニコラウスが暮らしていたエリコの町から エルサレム・ベツレヘム方面へ向かう街道は 心臓破りの長い登り坂でした。20km以上の距離を ここまで全力で走ってきたニコラウスは、皆さんもご記憶のとおり この六日間ずっと水以外食事を摂らずに働き続けでしたから、たとえ昨日(きのう)は一日寝(やす)んでいたとは言え、何も食べていない彼の体力は もはや限界でした。
 空腹のあまり ニコラウスは 街道沿いに立つ 高いイチジクの木の下で 遂に倒れ、そのまま気を失ってしまいました。
 その直後、降りはじめた冷たい雨は、イチジクの葉を真っ先に濡らしました。


 ・・・ ニコラウスは、煙突に身体が詰まって抜けられない という不思議な夢から目覚めると、暖かい部屋の長椅子の上で寝かされている自分に気づいて はっとしました。木の下で気絶してしまった彼を 親切な人が この場所まで運んでくれたのです。
「ああ、この人 大丈夫なようだぞ。おっかあ、良かったなあ 」
それは 傍らに立つ親切な若い夫婦 - イヴリーとエリサベトの二人 - で、彼らは顔を見合わせて安心したように笑いました。
 ニコラウスは、まだ自分自身の状況が理解できませんでしたが、さきほどまで ずっと握っていたつもりだった大事な贈り物の袋の紐が 手から離れていることに気づいて、まず そのことに狼狽しました。
「あ、袋は・・・、おもちゃの袋は どこにありますか? 」
「旅のお人、安心しなよ。ちゃんと あんたのお荷物は そこの囲炉裏端に置いてあるからよ。あんた、おもちゃの行商人かい 」
「まあ、そんなようなもので・・・ ともかくありがとうございます。助けてくださったんですね 」
ニコラウスは 上半身を起こしてみましたが、相変らず 空腹のため 頭はふらふらです。
 周囲をゆっくり見回すと、ここは どうやら旅宿の大広間のようで、その広い部屋の中央には 不自然なほど大きな囲炉裏があり、積まれた薪に大きく炎が燃え上がりながらロビー全体を暖めていました。
もはや とっぷりと夜も更けてしまっていたようです。
 「今夜は 相当冷えこむらしいから、こんな雨の中で あんた、もし あのまま倒れていたら きっと命を落としたね 」
宿屋の主人イヴリーは精悍な男で、囲炉裏に近づくと 燃え上がる薪を火掻棒でかき回しながら、
「雨は 夜更けすぎに 雪へと変わるだろう 」
と、つぶやくと 厨房の方へ歩いて行きました。
屋根を強く叩く雨音は この室内まで聞こえています。今や 神の御子 を探し当てるための たった一つの手がかりだった“メシアの星”を 夜空に探すことも、こんな天気の今宵には もはや不可能でしょう。ニコラウスは 溜め息をつきました。
 イヴリーの妻エリサベトは 動作が俊敏で賢そうな若い女性で、彼女が この宿屋の女将(おかみ)でした。
 彼女の優しそうな微笑の視線を追ってゆくと、その先には 囲炉裏端に置かれたニコラウスの袋の口が解け、中から溢れ出したおもちゃで嬉しそうに遊ぶ 幼い男の子の姿がありました。この夫婦の子どもです。
「あ、ごめんね。お客さんの大事な持ち物で 子どもが勝手に遊んじゃって 」
と、しかし さほど悪びれずに エリサベトが謝りました。
「気にしない 気にしない 」と手を振りながら ニコラウスも 笑顔で長椅子に座りなおすと、男の子の名まえを 母親に尋ねました。
「イエスよ 」
母エリサベトが答えます。 ・・・ この “イエス Jesus ”という名前は、この当時 ユダヤの地域では よくある、どちらかと言えば ありふれた名前のひとつです。
ニコラウスは 今度は その幼い子どもに 優しく声をかけました。
「イエス坊や、いくつになったの? 」
「ふたっちゅー 」
男の子は上機嫌で 二本指を立てて見せます。
 ああ、・・・この子は ニコラウスの亡くした子と同じ年齢だったのです、「そうだ、このくらいの年格好だった・・・」、「カルロスが生きていれば 同い年なんだな - 」と、彼は心の中で わが子の表情や仕草を思い出して、一瞬 目頭を熱くしました。

 その時、奥の厨房から出てきた主人イヴリーが 声をかけました。
「旅のおもちゃ屋さん、今夜のお客は あんただけだ。さあ 食事の用意ができたよ! 」
ニコラウスが興奮したのは 言うまでもありません。
「食事! お願いします、ぜひ。実は 一週間 何も食べていないんです 」。

次回、(8)「外は寒いよ」Baby,It’s Cold Outside に続く・・・

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文章:“ スケルツォ倶楽部 ”発起人

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